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MIT、衣服に編み込め洗濯もできる「LED埋め込みファイバ」を開発
~半導体を組み込んだ繊維で“スマート包帯”の実現も
2018年8月10日 15:14
米マサチューセッツ工科大学(MIT)は8日(米国時間)、衣服に織り込むことができる「LED埋め込みファイバー」の開発に成功したことを発表した。
本研究を行なったのは、MITのほか、NPO法人のAdvanced Functional Fabrics of America(AFFOA)、スイス連邦工科大学ローザンヌ校、リンカーン研究所らのチーム。
研究者らは、半導体を繊維の中に組み込むことで、長年達成できなかった“スマート”繊維を実現し、「ムーアの法則」のように、急速かつ指数関数的に能力が進歩する状況を繊維にもたらすとしている。
開発された繊維は、光ファイバにLEDと銅線を組み込んだもの。一般的に光ファイバは、プリフォームと呼ばれる円筒状の素材(巨大かつ太い光ファイバのようなもの)を加熱して、重力に従って垂らすことで細く伸ばすという工程で製造されている。
今回、開発チームは、砂粒ほどの小さなLEDと、髪の毛よりも細い銅線をプリフォームに添加することでLEDファイバを実現しており、延伸プロセスで、炉内でLED添加プリフォームが加熱されると、ダイオードの中心にLEDが並んでいき、それが銅線によって接続されるという。
今回研究で開発されたファイバ内の固体構成要素は、標準的なマイクロチップ技術を用いて製造された「発光ダイオード(LED)」および「光検出ダイオード」の2種類となっている。
研究を行なったMIT大学院生のMichael Rein氏は、「LED埋め込みファイバーを織り込んだものを10回洗濯しても動作することを確認しており、衣類に利用可能な材料としての実用性を実証できた」としている。
繊維材料自体に半導体の機能を組み込む利点の1つとして、繊維が防水性を持っているという点がある。
チームでは、光検出ファイバの一部を水槽に入れて、水槽外のランプから音楽データを高速な光信号としてファイバーに転送し、水槽内の繊維の光検出ダイオードが光をパルスに変換、データ再生を行なう実験を行なったところ、水中で数週間動作したという。
Rein氏は、Nature誌に掲載される論文は、半導体を繊維に組み込むためのスケーラブルな方法について説明されており、AFFOAなどの産学官連携の構築によって、本技術が組み込まれた商用製品が、早ければ2019年にも市場に登場すると説明している。
最初の製品は通信と安全に関する製品になる見込みで、初の“繊維通信システム”になるとしている。また、商業用途に加えて、AFFOAの主な支援者の1つである米国防総省が、制服へ本技術を組み込むことを検討しているという。
また、コミュニケーション用途だけでなく、生物医学の分野でも重要な存在になる可能性があり、心拍数や血液酸素レベルを測定できるリストバンド、治癒過程を監視できる包帯といった応用も考えられるとしている。