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Apple、アップデートによる旧型iPhoneの性能抑制について提訴される

画像はiPhone 6s

 米国の法律事務所Atlas Consumer Lawは21日(現地時間)、Appleの提供したiOSアップデートが旧モデルのiPhoneを意図的に低速に動作させているとして提訴した。原告は複数の旧モデルiPhoneユーザーで、同法律事務所は代理人となる。

 原告らは、Appleが新しいiPhoneの購入を迫るためにiOSアップデートをつうじ、意図的にiPhone 5/6/7などの旧モデルを低速にしていると主張。

 さらに、Atlas Consumer Lawは、Appleがこの「仕様」についてユーザーに情報を開示していないことも問題視しており、もし実際に買い替えの促進目的で旧モデルを低速にしていることが明確になれば、カリフォルニアを含む複数の州の法規制に抵触すると述べている。

「Appleが旧モデルのiPhoneを低速としている」という主張について

 ニュースサイトTechCrunchの20日づけの記事によれば、Appleは同誌の取材に対し、「バッテリの経時的な劣化からくる供給可能電力の減少に起因した不意なシャットダウンを防ぐため、旧モデルのiPhoneについてバッテリの供給能力を超えるようなピークの発生を防ぐしくみを実装してきた」と、アップデートと性能抑制の関係性について認めている。

 また、iOSのバージョンとベンチマークのスコアに関連が見いだせることは実際にベンチマークアプリGeekbenchの開発者であるJohn Poole氏の18日づけのブログ投稿でも確認されており、iPhone 6sとiPhone 7のベンチマークスコアについて、iOSのバージョンごとにはっきりとスコア分布の偏りを見いだせる。また、スコアの低い個体はバッテリの交換によって解決することがあるとのことだ。

 掲載されているグラフではiOS 10.2.0では1つのピークをもった分布となるのに対し、以降のバージョンでは層状にいくつかの低いスコアに集中して分布する点が特異だ。熱やバックグラウンド処理の影響などでスコアが多少変動するにしても、本来であれば分布は10.2.0のグラフのように1つのピークの周辺に集中するはずであるからだ。

 この分析に用いたデータ数など詳細は明らかにされていないが、複数の"コブ"をもった分布であることから、温度などほかのバッテリの出力電流にかかわる要因を含めてピークを抑制するような制御をしているとすれば、先のTechCrunchへのAppleのコメントともかなり整合する。

 過去にiPhone 6sは「突然シャットダウンする問題」に対する無償修理プログラムが発表されていた経緯もあり、性能抑制については薄型化や高性能化の追求への代償である可能性が高い。性能の抑制が買い替えを促進する意図に基づいたものかどうかはともかく、本体購入前にこうした「仕様」について告知されてもよいのではないだろうか。

左はiOS10.2.0の推定されたスコア分布。
右はiOS10.2.1のもので、複数の"コブ"をもった分布になるのが特徴的。縦軸は密度(頻度のようなもの)で横軸はベンチマークスコア