レビュー

“史上最大のリリース”を謳う「iOS 10」主要機能をプレビュー

iOS 10

 iPhone、iPad、iPod touch用OSの次期バージョン「iOS 10」は、6月14日より開催されたAppleの年次開発者会議「WWDC 2016(Worldwide Developers Conference 2016)」においてもっとも時間が割かれてプレゼンテーション、デモンストレーションが実施された。今のAppleにとっての主戦場がスマートフォンであることを雄弁に語るできごとと言えよう。

 「私たちにとって史上最大のリリースです」と宣言されたiOS 10は、6月14日からデベロッパー向けプレビューが、7月8日からパブリックベータの提供が開始されており、7月22日にはパブリックベータ2がリリースされている。Appleは正式版を今秋発表予定としているが、例年通りのスケジュールで次期iPhoneがリリースされるのであれば、9月16日(金)または9月23日(金)発売が濃厚であり、iOS 10の正式発表はその1週間前になる可能性が高いだろう。

 iOS 10のパブリックベータには「Apple Beta Software Program」のページから誰でも参加できる。パブリックベータをインストールする端末からApple Beta Software Programのページを開き、Apple IDでサインインしてから、プロファイルをインストールする。端末を再起動した後「設定→一般→ソフトウェアアップデート」を開くと、その時点で最新のパブリックベータが候補として現われる。

 このようにパブリックベータは非常に容易にインストールできてしまうが、基本的にメイン端末に導入するべきものではない。入念な動作チェックを経てリリースされているわけではないので、一部のアプリケーションで正常に動かないなどの不具合が起きる可能性が高いためだ。スマートフォンを2台持ちしているような好事家がパブリックベータを試すのを止めたりはしないが、iPhoneをメイン端末として利用している方は本記事をご覧いただくことに留め、今秋発表予定の正式版を待つことをお勧めする。

メッセージ~特殊効果や手書き機能により表現力が向上

 今回分かりやすく、派手な新機能が多数追加されたのが「メッセージ」アプリケーションだ。メッセージングにおける表現力を高めるためや、利便性を向上させるための新機能が数多く盛り込まれている。

 吹き出しの現われ方を変更できるのが「Bubble effects」。圧力を感知する「3D Touch」対応の「iPhone 6s/6s Plus」では、「送信」アイコンを強くプレスすると効果選択モードに移行する。このモードでは、叩き付けるような「スラム」、震えながら大きく表示される「ラウド」、控えめに小さな字から現われる「ジェントル」、指でなぞるまで表示されない「見えないインク」の4種類を利用可能だ。なお、これらの効果はテキストだけではなく画像を送信する際にも使用できる。

 「Bubble effects」と同時に利用できるのが「Full-screen effects」。「風船」、「紙ふぶき」、「レーザー」、「花火」、「流れ星」などの画面いっぱいに広がるアニメーション効果が用意されている。なお、パブリックベータでは「おめでとう」というテキストを送ると、「Bubble effects」を選択しなくても紙ふぶきのアニメーションが表示された。

 手書きのメッセージを送れる「Handwritten messages」という機能も新搭載された。端末を横持ちにすると自動的に手書きメッセージ入力モードに切り替わる。この手書きメッセージは、一画ずつペンが動いているかのようにアニメーション表示される。心のこもった思いを伝えたい時に活用するといいだろう。

 「Apple Watch」で初採用された手書きイラストを送れる「Digital Touch」がiOS 10にも搭載された。メッセージ入力ボックス左の「>」アイコンをタップした後に表示される「ハートマーク」からDigital Touchモードに移行可能だ。画面が大きいぶん凝ったイラストを描けるし、タップやハートビートを送ることも可能だ。

 素早くリアクションを返すための機能が「Tapback」。メッセージを長押しすると吹き出しが表示され、ハート、いいね、よくないね、笑い、ビックリ、はてなの6種類のリアクションを選択できる。多忙な時に手短かに気持ちを伝えるのに重宝するだろう。

 写真を送る際にイラストや文字で強調、または補足するための機能が「Markup」。メッセージ入力ボックス左の「>」アイコンをタップした後に表示される「カメラマーク」から写真撮影/選択モードに移行してから、任意の写真を長押しすると拡大表示され左下に「マークアップ」ボタンが現われる。このマークアップボタンをタップすると描画モードに切り替わる。ペンの色は8色、太さは3種類から選択可能で、ズームイン機能や、テキスト文字入力機能も用意されている。プリクラ気分で楽しめる機能だ。

 絵文字をスピーディーに入力できる機能が「Tap to replace emoji」。いつも通りテキストを入力した後に、絵文字入力モードに切り替えると、絵文字に変換可能な単語が黄色くハイライト表示される。あとは絵文字に変換したい単語をタップするだけで、絵文字をふんだんに活用したメッセージが完成する。なお、絵文字は従来よりも3倍の大きさに変更されている。

 WebページやYouTubeの動画などを共有する際に便利なのが「Rich links」機能。URLを貼り付ければ、そのページの代表画像がサムネイルで表示される。YouTube動画はタップすればそのまま再生することが可能だ。

 メッセージアプリケーションはiOS 10から開発キットが提供されており、コンテンツを作成・共有したり、支払いに利用するためのアプリケーション、そしてスタンプなどを「App Store for iMessage」から入手可能となる。パブリックベータ2試用時には、「Classic Mac」、「Hearts」、「Hands」、「Smileys」などのスタンプのみが提供されていた。また、Apple Musicの音楽を共有するための「ミュージック」、画像や動画を検索してメッセージに添付するための「#images」というアプリが実装されているが、後者は7月28日時点では利用できなかった。

ユーザーエクスペリエンス~ロック画面、ホーム画面の使い勝手が向上

 ロック画面とホーム画面のユーザーエクスペリエンスも大幅に変更されている。端末を手に取って持ち上げるとスリープが解除され、ロック画面が表示される「Raise to Wake」機能を搭載。端末上部を起こしてそのままホールドした時のみスリープが解除される。継続的に画面が揺れているような状態を再現してみたが、再びスリープに入って、画面が表示されることはなかった。バッグなどの中で揺れていても、スリープが解除され続けてバッテリを浪費する心配はないわけだ。なお、スリープが解除されている時に「Touch ID」(指紋認証センサー)に指をあてがっても、ロックは解除されない。ロックを解除するためには、ホームボタンを押す必要がある。

 ロック画面には直近の通知が全て表示される。通知が来た瞬間や、Raise to Wakeでスリープが解除された時に内容を確認できる。ただし、ロックをいったん解除してホーム画面を表示すると、ロック画面に表示されていた通知は全て消去される。

 全ての画面から通知を確認するための機能が「Notification Center」だ。ロック画面、ホーム画面、アプリケーションなど、どの画面にいても上からスワイプすれば表示される。表示されている通知は、個別にタップしてアプリケーションに移動するか、3D Touchで深くプレスして表示されるプレビューで「×」マークをタップすれば閉じられる。全ての通知をまとめて消去したい時は、「Notification Center」の「×」マークを深くプレスすると表示される「全ての通知を消去」を選択すればいい。

 ロック画面またはホーム画面で左からスワイプすると「Today view」が現われる。標準設定では、天気、次の予定、Siriの検索候補(APP)、NEWS、マップ(次の目的地)、カレンダー、リマインダー、株価が表示されるが、任意のアプリケーションのウィジェットで自由にカスタマイズ可能だ。ロックを解除していない状態でToday viewを開いた場合は、「友達を探す」などプライバシーに関わる情報は表示されない。

 なお、ロック画面で右からスワイプするとカメラアプリが起動する。従来のロック画面で右下に表示されていたカメラアイコンは廃止された。

Control Center(左)
Control Center(右)

 各種設定を素早く変更するための「Control Center」は、ロック画面、ホーム画面、アプリケーションなどどの画面からでも、下からスワイプすると表示される。Control Centerは2画面構成に変更され、左側の画面は機内モード、Wi-Fi、Bluetooth、おやすみモード、画面縦向きのロック、画面の明るさ、AirPlay、AirDrop、Night Shift、ライト、タイマー、電卓、カメラ用、右側の画面ではミュージックやPodcastの再生コントロール用と役割が分けられている。

 iOS 10は、ロック画面やNotification Centerで可能なアクションが増えている。例えばロック画面のままで、スケジュールの出席依頼やメッセージに返信したり、配車サービスUberで現在位置を確認しつつ、ドライバーにメッセージを送ったり、キャンセルを通知することが可能だ。ただし、ロック画面から各種操作を行なうためにはアプリケーション側の機能実装が必要。メジャーアプリケーションがスピーディーに対応することを期待したい。

QuickType~より高い精度で文章を解析し入力候補を提案

 iOS 10の「QuickType」キーボードは、ディープラーニング技術によって従来よりも高い精度で入力候補を提示できるようになった。文章全体から解析する「Intelligent suggestions」、自分のいる場所を手軽に共有できる「Current location」、連絡先のメールアドレスなどを参照する「Contact Information」、一連のやり取りから半自動でスケジュールを登録する「Intelligent scheduling」などが実装される予定だ。パブリックベータ2では日本語でこれら新機能を試せなかったが、iOS 10の日本語公式サイトでは本機能が紹介されている。正式版では日本語に対応する可能性が高いだろう。

ディープラーニング技術によって文章全体を解析して、より正確な候補を提案する「Intelligent suggestions」
自分のいる場所を手軽に共有できる「Current location」。入力候補のCurrent Locationをタップすると、現在位置が地図で挿入される
連絡先のメールアドレスなどを参照する「Contact Information」
一連のやり取りから半自動でスケジュールを登録する「Intelligent scheduling」

写真~忘れてしまった大切な写真を掘り起こす「メモリー」機能

 「写真」アプリケーションに新搭載された「メモリー」は、ユーザーのライブラリーの写真やビデオを全てスキャンして、忘れてしまった大切なイベント、旅行、人々を見つけ、美しいアルバムとして表示してくれる機能だ。メモリーにはタブが1つ用意されており、毎日最大3つの新しいメモリーが表示される。気に入ったメモリーは画面一番下に表示される「お気に入りのメモリーに追加」を選べば、「アルバム→お気に入りのメモリー」からいつでも再度鑑賞することが可能だ。ユーザーがメモリーを登録すればするほど、関連する写真や動画を中心にした新たなメモリーを作成するように成長していく。

 メモリーは最上段にスライドショーを、その下に写真と動画をサムネイル表示する。スライドショーは、テロップ、音楽、トランジションが追加された状態で再生されるが、長さを短編、中編、長編から、テーマをドリーミー、センチメンタル、ジェントル、チル、デフォルト、ハッピー、アップリフティング、エピック、クラブ、エクストリームから設定できる。テーマを変えれば音楽だけでなく、テロップの書体やトランジションの種類まで変わるので、まるでまったく違った動画作品を観ているようで楽しいこと請け合いだ。

 メモリーの下には、ピープル、撮影地、関連というくくりで写真がグループ化されている。ピープルと関連の写真グループは画面下の「メモリーに追加」をタップすれば、メモリータブのトップ画面に新規メモリーとして追加される。

 写真アプリケーションはビーチ、犬、山、風船のようなシーンやオブジェクトを認識するために、ライブラリーの中をスキャンする。人の写真をグループ分けするためには高度な顔認識技術が使われており、人々が現われる頻度に基づいて、ライブラリーの中で人物に優先順位を付けている。「アルバム→ピープル」の中に人々が分類されて記録されているが、名前は当然登録されていない。ピープル内のグループそれぞれに名前を付けた上で、特に重要な人物については「お気に入り」に登録しよう。

 シーンやオブジェクトを認識した際に、各写真にはキーワードが登録されている。写真とアルバムのタブには虫眼鏡を模した「検索」アイコンが右上に配置されており、山、馬、ラーメンなど任意のキーワードで目的の写真を検索・表示できる。

 写真の編集機能もいくつか追加されている。1つ目は「Live Photo」の編集機能。画像の回転、フィルタの追加、ライト/カラー/白黒の調整を静止画に変換することなく適用することが可能だ。2つ目は暗い部分を明るく補正する「ブリリアンス」。「ライト→ブリリアンス」から適用可能で、元々明るい部分はほとんどエフェクトを加えないので、白飛びせず画面全体に光が回った写真に修正できる。手軽で応用範囲が広い機能だ。

電話~IP電話アプリと連携、留守電のテキスト化、迷惑電話判定機能を搭載

 「電話」アプリケーションで注目すべきはサードパーティー製IP電話アプリケーションとの連携だ。iOS 10ではIP電話を標準の電話アプリケーションで着信したり、メッセージを送ることが可能となる。連絡先アプリケーションも統合されており、通話アイコンにIP電話サービスを割り当てて、シームレスにIP電話をかけられるようになる。現在でも固定電話や携帯電話回線経由での通話は減少する傾向にあるが、この動きがますます加速することは間違いない。

iOS 10搭載iPhoneにWhatsAppメッセンジャー経由でIP電話がかかってきた様子。標準の電話アプリケーションと同じ画面で受けられる
連絡先アプリケーションの通話アイコンにWhatsAppメッセンジャーが登録されている。一度通話アプリケーションとして指定すれば、IP電話であることを意識せずに電話をかけられる

 ユニークな新機能が留守番電話メッセージをテキスト化する「Voicemail trancription」。ベータという位置付けだが、留守番電話メッセージを音声認識して、内容をテキスト表示してくれる。スピーカーを耳に当てることなく通話内容を確認できるのは非常に便利なはず。iOS 10正式リリースの際にはぜひ日本版にも実装して欲しい機能だ。

 見知らぬ番号からかかってきた電話を、サードパーティーのデータベースと照合し、迷惑電話か否かを判定する新機能も重宝しそうだ。信頼性はどのくらい精度の高いデータベースが提供されるかにかかっている。電話アプリケーションに発信元を通報する仕組みを組み込むなどして、信頼性の高い機能に育て上げて欲しいところだ。

Siri~開発キット提供開始、サードパーティーアプリと連携可能に

 iOS 10で「Siri」には待望の開発キットが用意され、サードパーティーがSiriと連携できるアプリケーションを開発できるようになった。例えばメッセージ、電話、写真の検索、予約、個人の支払い、ワークアウトアプリケーションなどをSiriと連携するように設計することが可能だ。

 メッセージアプリケーションでは、異なる話し方でSiriにメッセージの送信を依頼できる。例えば、「Tell Nancy I’ll be five minutes late with WeChat」と「WeChat Nancy I’ll be five minutes late」では同じように「I’ll be five minutes late」というメッセージがWeChat経由でNancy宛てに送信される。

 配車サービスの「Uber」、「Lyft」、「Didi Chuxing(滴滴出行)」などがSiriに対応する予定だ。料金、到着時間などはSiri上で確認できるので、条件が合わなかった時にはべつの配車サービスにすぐに切り替えられる。

 ユーザーが「Pinterest」など任意のアプリケーションで写真や動画を検索したり、スライドショーを開始できる。

 「MapMyRun」、「Runtastic」、「Runkeeper」などのお気に入りのワークアウトアプリケーションで、開始、一時停止、終了などを音声操作できる。厳しいワークアウトに励んだあとほど、フリーハンドで操作できるのはありがたいはずだ。

 ユーザー間の個人的な支払いを仲介する「Square Cash」などのアプリケーションを利用して、送金したり、相手からの支払いを要求することが可能。

 サードパーティー製IP電話アプリケーションでビデオ通話や音声通話を開始できる。

 Siriの活用シーンとしては車内での利用も大いに注目されている。Siriの開発キットは、自動車メーカーのCarPlayアプリケーションにも対応している。エアコンの制御やラジオの選曲、ボリューム調整を音声で操作できる。

Maps~積極的に目的地を提案、レストランと配車サービスを予約可能

 「マップ」アプリケーションはiOS 10で新しくデザインされている。検索バーを下からスワイプすると、普段の行動やカレンダーに登録されている予定に基づいて、マップが積極的に目的地を提案してくる。目的地が表示されていたら、その項目をタップするだけで車、徒歩、交通機関を利用したナビゲーションを利用できる。

 目的地はジャンルなどで検索することも可能だ。また、「レストラン」で検索してから、人気、日本食、カフェ、ダイナー、ファストフード、イタリア料理、バーガー、寿司バー、中華料理、パブフード、アイランドパブ、ピザ、ステーキハウス、チキンショップ、インド料理、韓国料理、アメリカ伝統料理、モダンアメリカ料理、フードコート、夜食、シーフードなどのサブカテゴリで絞り込みも行なえる。なお、重なって表示しきれない場合は、そのエリアにある店舗数が数字で表示される。

 車のためのナビゲーション機能も今やスマートフォンの重要な機能の1つだ。順調に流れている道路、少し混んでいる道路、混雑している道路をリアルタイムで色分けして表示するのはもちろんのこと、「Dynamic view」機能によりカーブが近付くと詳細を確認できるようにズームインし、直線が続く時にはズームアウトして先のルートを広域地図で表示する。もちろん、好きな時にピンチイン、ピンチアウト、スワイプ操作で縮尺や、表示する場所を調整することも可能だ。

 カーナビゲーション中に画面の下から「Quick Controls」を引き出せば、周辺のガソリンスタンド、レストラン、喫茶店を素早く検索・表示できる。急にガス欠に気付いた時にも心強い機能だろう。

 マップにも開発者キットが提供されており、サードパーティーが拡張機能を作成できる。拡張機能を利用した「OpenTable」などのアプリケーションを利用すればレストランを予約できるし、Uberで配車サービスの手配も行なえる。「Apple Pay」サービス対象国ではマップ上から決済することも可能だ。

ミュージック~デザイン一新、より直感的に音楽を探せるように改善

iOS 9のミュージックのMy Musicタブ
iOS 10のミュージックのライブラリタブ

 「ミュージック」アプリケーションは、構成、デザインともに大幅に変更が加えられている。まず画面下部のタブは、iOS 9ではFor You、New、Radio、Connect、My Musicという構成だったが、iOS 10ではライブラリ、For You、見つける、Radio、検索という構成に変更されている。

 それぞれのタブの中身を大きく変わった。各タブの最上部にはその名称が大きく記載されており、メニューは分かりやすく大きなテキストで並んでいる。例えばライブラリで例を挙げると、iOS 9のミュージックアプリケーションはアーティスト、アルバム、曲、ミュージックビデオ、ジャンル、作曲者、コンピレーションが折りたたまれており、2回タップしないとその項目を一覧表示できない。しかしiOS 10のミュージックアプリケーションはプレイリスト、アーティスト、アルバム、曲、ダウンロード済みが最初から展開されており、ワンタップでそれぞれを一覧表示可能だ。

iOS 9のミュージックのFor Youタブ
iOS 10のミュージックのFor Youタブ

 同じFor YouタブでもiOS 9とiOS 10では構成が大きく異なる。iOS 9ではそれぞれのプレイリストに最大28文字×2行の説明文が掲載されていたが、iOS 10では説明文は省かれている。その代わりに「ドレイクに似たタイプの曲」、「Alan Braxeが好きなあなたに」などのキャッチが大きく目立つように掲載されている。アートワークも大きく表示されており、ジャケットからも選びやすい構成と言えよう。

iOS 10の音楽再生画面

 待ちに待った新機能が歌詞表示機能。音楽再生画面で下にスクロールすると「歌詞」という項目があるので、「表示」を選べば歌詞が表示される。全ての楽曲の歌詞が用意されるわけではないだろうが、英語のラップなどヒアリングが非常に困難な曲を聞く時に重宝すること間違いなしの機能だ。

ホーム~ホームオートメーション製品をSiriで音声操作

 「ホーム」はiOS 10で新たに搭載されたアプリケーションだ。Appleが規格制定した「HomeKit」に対応しているホームオートメーション製品を、iPhone、iPad、Apple Watchからコントロール可能となる。HomeKitはエアコン、空気清浄機、カメラ、ドアベル、ファン、ガレージドア、加湿器、ライト、ロック、アウトレット、セキュリティ、センサー、サーモスタット、ウィンドウシェードなどのコントロールをサポートしている。

 ホームアプリケーションの操作部は「Favorite Scenes」、「Favorite Accessories」に大きく分かれており、後者は個別にオン/オフや出力を調整可能で、前者ではあらかじめ登録した複数のコマンドを同時に実行できる。どちらを操作する場合でもSiriによる音声コントロールに対応しており、「I’m home」などとSiriに話しかければ、リビングの照明を付けて、エアコンを稼働し、セキュリティをオフにする……といった一連の動作もこなせる。

 自宅にApple TVを設置していれば、外出先からホームオートメーション製品をコントロールできる。もちろん通知も受けられるので、センサーが人を感知したら、カメラで家の安全を確認する……といった利用方法も可能だ。外出先からインターフォン経由で宅配便の再配達の手続きをすることもできるだろう。

 Appleによれば、6月14日時点で約100種類のホームオートメーション製品がHomeKitを採用しており、2016年後半からBrookfield Residential、KB Home、Lennar Home、R&F Propertiesなどの米国の大手住宅施工業者が対応製品の設置を開始するとのこと。日本の大手住宅施工業者も積極的に参入することに期待したい。

ニュース~日本でのサービスインはいつか?

 iOS 9から搭載された「ニュース」アプリケーションは、iOS 10版ではサブスクリプションやニュースの通知機能を実装するなど進化を続けているが、現時点では日本でいつサービスを開始するかの正式な発表がない。ホーム画面で左からスワイプすると表示されるToday viewには「NEWS」からの通知があるが、タップして表示されるのはニュース配信元のサイトだ。iOS 10の公式サイトにもニュースアプリケーションに関する記載は一切存在しないので(7月29日時点)、日本でのサービスインにはまだ時間がかかりそうだ。

Today viewに表示される「NEWS」のアイコンは、ニュースアプリケーションのものがそのまま使われている

対応端末であればインストールしない理由はない!

Safariで2つのサイトを左右に分割表示する「Split View in Safari on iPad」

 iOS 10にはこのほかにも、ブラウザの「Safari」からApple Payによる支払いを行なう「Apple Pay on the web」、メールアプリケーションでスレッド上のメッセージを全て展開表示する「Conversations in Mail」、ノートアプリケーションを複数人で編集可能な「Notes collaboration」、Safariで2つのサイトを左右に分割表示する「Split View in Safari on iPad」などの新機能が搭載される。

 iOS 10が対応するのはiPhone 5以降、iPad 第4世代以降、iPad mini 2以降、iPod touch 第6世代以降となっている。もし対応機種に含まれているのであれば、Appleがマイルストーンとして位置付け、数多くの新機能を追加したiOS 10をインストールしない理由はないはずだ。