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NVIDIA、コマツとAIで建設現場のスマート化に向け協業
2017年12月13日 11:37
NVIDIAと株式会社小松製作所(以下コマツ)は、NVIDIAの開催する「GTC Japan 2017」にて、建設現場におけるAIの導入で協業を行なっていくことを発表した。
コマツが建設現場全体を可視化し、分析するためにNVIDIAのGPUを活用していくとしており、コマツの提唱する「スマートコンストラクション」の現場に導入を行なう。
協業の中心はNVIDIAの「Jetson」AIプラットフォームで、コマツのパートナーである米SkyCatchのドローンと通信し、3D画像を収集して地形データを作成するのに利用される。そのほか、コマツの建機に搭載し、接触や衝突などの事故を回避するのに使われるほか、カメラに接続することで状況をリアルタイムにAIで認識し、オペレータに的確な指示を可能にするという。
また将来的に、機器の自動制御に加え、建設現場や採掘現場の高解像度レンダリングや仮想シミュレーションなどに利用される予定としている。
今後コマツでは、NVIDIAの持つ画像処理や仮想化、AIに関する技術やノウハウを活用し、スマートコンストラクション事業をさらに推進していくとする。
エヌビディア合同会社 インダストリー事業部 事業部長の齋藤弘樹氏は、NVIDIAの事業領域について、ゲーミング、エンタープライズグラフィックス、HPC & クラウド、インテリジェントマシンの4つを挙げ、ゲーミングではGeForce、エンタープライズグラフィックスではQuadro、スーパーコンピュータやデータセンターではTeslaブランドを用意しており、AIではJetsonをプラットフォームとして用意していると説明。
NVIDIAはエッジからクラウドまで、AIをさまざまなフォームファクタで使えるよう、ソリューションを展開しており、他社にないユニークな点としてすべて同一のアーキテクチャで展開していることをアピールし、ユーザーは同じツールで開発・研究できるのが、同社のAIプラットフォームの大きな利点の1つであるとした。
今回コマツと協業し、AIの導入を目指す建設や鉱業といった産業は、多くのプロセスが同時に進行する点や、現場ごとに異なる要素が多く多様性があり、AIによって次の大きな産業だと述べ、そういった産業では、効率性と安全性が求められるとした。
齋藤氏は、それらの業界ではAIの必要性が高いとアピール。まず実現が求められているのが労働安全性で、建設機械はオペレータが周りを見渡しづらい環境にあることが多く、安全のためには周辺を認識することが重要となる。これはまさに自動運転車と同じ要素であり、AIが貢献できるポイントと説明した。
次が生産性の向上で、現場では、複雑なプロセスの管理や追跡などを人間の監督者がすべて行なっており、ここでも、3Dでスケジュール管理に必要な情報を提供するコンピュータビジョンなど、作業進捗や品質管理など現場監督が認識する必要のある情報を提供するという形でAIが貢献できるとした。
最後が効率性で、建機は高価な機械ということもあり、できるだけ稼働させておきたいというニーズがあるという。そこで、カメラなどでの建機の活動状況を把握により、作業内容まで把握して管理することで、できるだけダウンタイムのない運用を実現できるとした。
それらの実現に向けては、Jetsonを建機への搭載やカメラなどと接続し、現場のコンピュータにはTeslaを搭載することで、エッジやオンプレミスな部分をカバーし、クラウドにもNVIDIAのスーパーコンピュータ「DGX-1」を配置することで、AIの学習だけでなく、クラウドからさまざまな管理サービスを実行するといったように、一貫したエンドツーエンドな形で提供できるとした。
今回のコマツとの協業では、コマツの建設現場へのAI導入にNVIDIAが採用されたと述べ、ドローンによる地形の把握や、建機のカメラをJetsonに接続し、衝突回避のための周辺認識を行わせるといった形で同社のGPUが使われていくとした。
四家氏は、まず国内の建設業界では、高齢化や熟練工の減少などにより、2025年までに、技能労働者約340万人のうち、3分の1に相当する約110万人が離職すると予測されており、深刻な労働力不足が課題になっていると説明。そのため、現実的に労働者不足を解決するには、残りの230万人で300万人超の働きを実現する、すなわち労働生産性の向上が必要とされていると語った。
コマツでは建設機械の施工をICTで自動制御する「情報化施工建機(ICT建機)」を開発し、2013年より市場に導入しており、これはハードの進化で顧客の課題解決に取り組んだものだと述べた。
しかし、ICT建機の導入では、あくまで効率化されるのは施工の全体の一部に過ぎず、施工全体の生産性向上に大きく寄与できていないという課題に気づき、その結果として、自分たちのサービスにこだわらず、そこから離れても、安全で生産性の高いスマートな現場を実現するため「スマートコンストラクション」事業を2015年から開始しているとした。
スマートコンストラクションでは、この3年で、建設生産プロセスの全体を3次元データでつなぎ、生産プロセスに関わる人や機械、土などの資材まですべての“コト”をつなぐことで、「建設現場の見える化」まで可能になったと述べ、これによって中間地点まで来れたと説明。
全体図としては、測量データをドローンで取得し、施工計画をシミュレータで作成。ICT建機による施工を行ない、施工後の検査も3次元の施工実績データを用いることで簡単に行なえるようになるとした。
実際の建設機械は、コマツ以外の建機を含めて機材や人、場所が大量に存在するが、全体を可視化するとなったとき、パワーショベルのバケット1つにまでセンサーをつけるのか、一時的に土砂を置く仮置き場までスキャンするのかといった問題がある。
四家氏は、難しいからこそ可視化する価値があると語り、ICT建機なら、すでにGPSをベースとしたGNSSで、3~5cm未満の高精度で刃先の位置情報をリアルタイムで取得できると述べ、建機に搭載するステレオカメラで周りを撮影し、周辺情報もカバーできるとした。
加えて、それよりもさらに広範囲の部分を日々可視化するため、ドローンを飛ばすという。
コマツは米Skycapchaと共同で自動飛行のドローンを飛ばし、現場の写真を撮影させるというシステムを構築。しかしこのとき、撮影データから3次元データを生成するさいに、従来では2GB超のデータを6~7時間かけて3次元データへ変換し、そのあとに不要データの除去などで15~20時間を費やしてようやく3次元データを得られていたという。
これではとても毎日のデータを収集することができないため、Jetsonを搭載した機器「Edge Box」をスマートコンストラクションで採用。Edge Boxはドローンと接続され、撮影データを撮影と同時に3D化するという。機器の上部にはGNSSモジュールが搭載されており、ICT建機のゲートウェイとしても利用できるという。
そのほかのGPU活用としては、たとえばダンプカーが土砂の積み込みで待機している時間なのか、積み込みを行なっているダンプがいるために、順番待ちで待機しているのかというのが位置情報だけでは判別が困難という課題があったが、定点カメラの映像をAIに学習させることで、前述の「順番待ちの違い」や、作業員が建機に接近してしまったといった危険な事象の把握を行なえるようになり、その処理にGPUを活用していくという。
建設や掘削といった現場は、屋外であり現場も場所がさまざまなため、デジタル化が困難と言われてきたと四家氏は述べ、しかし今では、画像認識によって、手付かずだった建設業界が最先端のデジタル化された業界になりつつあると語った。
建機は高価な機材ということもあり、すでにカメラやコンピュータも搭載しているため、可視化されることでスマートな建設現場の実現ができると考えていると述べ、NVIDIAとの協業で、1日も早く安全でスマートな現場を提供できるようにしたいと語った。
また、日本国内だけでなく、海外への展開も考えているとした。
以下は、コマツのスマートコンストラクションのコンセプトを示した映像となる。