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Microsoft、量子コンピュータ向けアプリの開発キットを公開

~新言語「Q#」や量子コンピューティングシミュレータなど

 米Microsoftは11日(米国時間)、量子コンピュータ向けプログラミングを行なうための「量子開発キット(Quantum Development Kit)」プレビュー版を公開した。

 キットには、プログラミング言語「Q#」、量子コンピューティングシミュレータ、およびサンプルやライブラリなどのリソースが含まれる。

 Q#は量子コンピューティングのために開発されたプログラミング言語で、そのほかのプログラミング言語と同様にVisual Studioに統合されているという。

 加えて、開発キットの一部として提供されるローカル量子シミュレータで動作するよう設計されており、一般的なノートPCを使用して、約30論理量子ビットの量子コンピューティングのシミュレートが可能となっているとする。これにより、開発者は自分のPC上の小さなインスタンスで、量子コードとテストプログラムをデバッグできる。

 より大規模な量子アプリケーション開発は、同社の提供するAzureベースのシミュレータを利用することで実現できる。Azureのシミュレータは40以上の論理量子ビットをシミュレートできるという。

 このキットに加えて、量子テレポーテーションのような、量子システム特有のコンピューティング要素を扱うためのドキュメント、ライブラリ、サンプルプログラムの包括的コンテンツも提供する。

Microsoft Quantum Development Kit: Introduction and step-by-step demo

 開発キットは、量子コンピューティングハードウェアから完全なソフトウェアスタックまでを網羅した本格的な量子コンピューティングシステムを構築するための、同社の計画の一環であるとしており、同社の開発者らは、量子コンピューティングの世界で暗号とセキュリティに重点を置いたプロジェクトに取り組んでいるという。

 同社は量子コンピューティングの実用化に向けて、「トポロジカル量子ビット」の開発に注力している(過去記事:Microsoft、「トポロジカル量子ビット」の実現で汎用量子コンピュータの実現に近づく)。トポロジカル量子ビットは、同社が実用的で拡張性の高い量子コンピューティングのための、より良い基盤を提供できると考えている、より堅牢な量子ビットのタイプ。

 量子コンピューティングにおける大きな課題の1つは、極低温環境を用意しなければ破壊されてしまうといったように、量子ビットが非常に不安定なことだ。そのため、量子ビットを構築するためのほとんどの手法は、情報が確実に配信されることを保証するため、膨大な量のエラー訂正技術を必要とする。

 トポロジカル量子ビットでは、量子ビット自体の物理学に誤り訂正が組み込まれているという。これにより、信頼性の高い結果をスケールアップして配信することが簡単になり、ほかの量子システムより量子ビットが少なくても計算を行なえるとしている。

Microsoft Quantum

 同社の量子力学部門を担当するバイス・プレジデントTodd Holmdahl氏は、リリース中で「(我々が)極めて複雑な量子物理学を理解した上で、量子物理学が分からない人々のために、量子開発キットのようなツールを提供することが同社の役目である」と述べ、開発ツールについて、量子コンピューティングの力をより多くの人々が利用できるよう期待していると語っている。