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クララが立つ日は来るか。信州大学がロボティックウェア「curara」4号機を発表
~将来は体内埋め込み型サイボーグ技術にも応用
2017年9月20日 17:28
信州大学 繊維学部 機械・ロボット学科バイオエンジニアリングコース 橋本・塚原研究室は2017年9月20日、“着る”生活動作支援ロボットとして開発中のロボティックウェア「curara(クララ)」の新型発表会を文部科学省で行なった(curaraは信州大学の登録商標)。
人にあわせる同調制御と相互作用トルク検出で動作
信州大学の橋本稔教授は、「ウェアラブルなロボットは人との関係がきわめて重要。ヒューマンフレンドリーで人を中心としたウェアラブルなロボット技術の視点で研究を進めてきた」と述べた。
「curara(クララ)」のコンセプトは、衣服のように軽量で、人の骨格系を利用することで形状を維持し、ロボットとしての機能も発揮できる「非外骨格型構造」ロボット。人の歩行軌道をアシストする。
人は相手にあわせることができる。curaraはそれと同じように、ロボットが人の動きにあわせることをコンセプトとしている。リズム生成器(神経振動子)を制御に用いて、人の動きに動作の調子をあわせることができる「同調制御法」を用いている。
つまり、人の歩行のリズムにあわせた、ロボットのリズムを生成して動作することで、ロボットと人がたがいにリズムをあわせて動作する。
もう1つの特徴は、減速機に内蔵されたトルクセンサーを使って、人からのわずかな動きを検出することでロボットが動く「相互作用トルク検出法」を用いていること。そのため、人の体表に貼りつける必要がある筋電センサーを使う必要がない。
着る感覚で着用できるロボット
今回発表された新型は、リハビリ施設などで不特定多数が着用することを想定した装着型のスタンダードモデルと、在宅等で特定個人が使うことを想定した衣服一体型のパンツモデル。
フレームはナイロン樹脂。装着者の自然な動作を妨げないことが特徴で「着る」感覚で装着できるという。パンツモデルの布部分は洗濯可能。
背中に装備されたコントローラ(制御回路)と薄いプレート型のバッテリのほか、関節部に配置されたモーターからなる。いずれもモーター数は4個で、腰と膝の関節をアシストする。バッテリ連続時間は1.5~2時間程度。総重量はスタンダード型が4kg、パンツ型が5kg。
従来型に比べるとフレーム形状を変えて、着座が自由にできるようになった。ベルトの締め付け力の調整はダイヤルを回すことで簡単に行なえる。
curaraのコントローラやモーターを置く場所を作った専用イスを使うことで、着用者が1人で着脱できる。デモでも着用がおおよそ1分程度、外すのは着座から17秒程度だった。
モーター部分は、扁平化のためのアキシャルギャップモーターと遊星減速機からなる。トルクは8Nm。今回の新型から減速機をハーモニックドライブではなく遊星減速機にしたため、バックドライバビリティが向上し、電源が切れた状態でも関節部を動かせるようになった。
モバイルデバイスを使うことで、歩行状態をグラフ表示したりできる。着用者の改善度合いをグラフで見ることができる。たとえば脳卒中の被験者がより早く歩くことができるようになるという。実際の着用者からは「コードがついた面白いズボン」が、足を動かすのを手伝ってくれる、といった感想が得られているとのことだ。
2019年に製品化・事業化を予定
背景は高齢化。一般の高齢者にも、できるだけ長い期間、自分の足を使って歩くための歩行支援技術が必要な時代が来ていると考えて、2008年に0号機を開発。2013年から国際福祉機器展に出展してきた。
今回発表されたモデルが4号機目。基本技術は完成しており、ユーザーに使いやすいという視点で改良したと橋本教授は述べた。
橋本教授は「curara」や、高分子素材を用いた人工筋肉であるソフトロボティックデバイス「PVCGEL」の製造、研究開発を行なうAssistMotion株式会社を2017年1月に設立。PVCGELはアシストウェア、布状アクチュエータ、リンパ浮腫ケア用マッサージ器、マイクロポンプなどを応用分野としている。
今後、耐久性と安全性を高めて、2018年にcurara5号機を開発し、2019年に製品化、事業化を予定する。価格は未定。現在、問いあわせに応じて装着体験のほか、病院や施設への短期貸し出しを行なっているとのことだ。なおcurara4は「国際福祉機器展」にも出展される。