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産総研、燃えない全固体のリチウム二次電池を開発

~FZ法で安定なガーネット型酸化物単結晶を世界初合成

現行のリチウム二次電池の構成(左)と今回の全固体リチウム二次電池の構成(右)

 国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研)は2月1日、酸化物の単結晶を固体電解質部材として用いた「小型全固体リチウム二次電池」を開発したと発表した。

 リチウム二次電池は高いエネルギー密度を持つことからさまざまな機器で使われており、次世代品ではエネルギー密度の向上や安全性確保、長寿命化が期待され、特に可燃性の有機電解液に代わり、不燃性の固体電解質を用いた全固体リチウム二次電池の登場が待たれている。

 現在有力な無機固体電解質には硫化物系と酸化物系の2種類があり、前者は後者よりも1桁程度リチウムイオン導電率が高いが、大気中に暴露した際に有毒な硫化水素ガスを発生する問題を抱える。後者については安定性は高いが、導電率が有機電解液より低く、隙間のない稠密な固体電解部材が作れず、金属リチウムの貫通で内部短絡してしまったり、電極と固体電解質の界面の接合が強固でないといった課題を抱えている。

 今回産総研は、「フローティングゾーン溶融法(FZ法)」を用い、困難と言われていた固体電解質材料「ガーネット型酸化物単結晶」を合成。FZ法の条件の工夫により、世界で初めて安定な単結晶成長を実現した。

 これを使った固体電解質部材は、従来の焼結体よりも稠密で、金属リチウムの貫通を防げると言い、試験の結果10mA/平方cmの大電流でも内部短絡しない信頼性の高さを見せた。また、25℃で導電率10^-3S/cmを超える、現時点の酸化物系固体電解質材料で世界最高のリチウムイオン導電率を示した。これは有機電解液と同等以上の導電率という。

 電極と固体電解質の接合が強固でないという問題については、AD(Aerosol Deposition)法を応用し、密着性が高い電極-電解質界面を形成することに成功した。

 これらによって、25℃で可逆的な充放電ができ、短絡と発火の危険性がほとんどない安全・高信頼性の小型全固体リチウム二次電池を開発。サイズは直径5mm、厚さ0.7mmとなっている。

 今後は量産化と品質安定化を進め、関連企業との連携によって2020年頃までの実用化を目指す。