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リチウムイオン電池の容量を倍増させる二次電池材料の開発に成功

~シリコン系金属化合物により大容量化と長寿命化の両立を実現

ナノ構造からなるシリコン系金属化合物の電子顕微鏡像

 国立研究開発法人 物質・材料研究機構(NIMS)とジョージア工科大のグループは17日、シリコン系金属化合物を用いた高容量リチウムイオン二次電池材料の開発に成功したと発表した。

 現在、リチウムイオン二次電池の負極材料としては炭素系の材料が用いられており、容量は最大でも1gあたり370mAhだが、もし純粋なシリコンを負極材料として利用できれば、理論的には1gあたり4,200mAhと、現行の炭素系材料の10倍以上の高い容量を達成できる。

 しかし、リチウムイオン挿入時のシリコンの体積膨張は300~400%と高いため、充放電サイクルを繰り返すごとに負極材料に大きな応力が発生し、破壊されてしまうという問題がある。従って、シリコン元素のみからなるバルク材料を負極材料として使用すると、サイクル寿命が極端に短くなってしまうため、現在まで使用されてこなかったという。

 今回、NIMS 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点の深田直樹氏を中心とする研究グループとジョージア工科大のの研究グループは、この問題を解決するため、金属基板上にゲルマニウムで1次元のワイヤ状のナノ構造を形成し、それを下地にナノ構造のシリコン系金属化合物を形成した。

 形成されたナノ構造材料は、数10nmから100nm程度のナノ粒子の集合体内部に空隙が多数存在し、ゲルマニウムナノ構造体との間に大きな空隙が存在するため、体積膨張による応力を緩和できる。また、下地のゲルマニウム構造体を介して基板から成長する時に、自動的に金属原子(主に鉄)が供給されたシリコン系の金属化合物となるため、純粋なシリコンのみで形成されていないという特徴を持つ。

 作製された試料にて充放電特性を評価した結果、負極容量を現在の炭素系材料の2倍程度に増大できるとともに、サイクル寿命の増大にも成功したという。

 なお、本研究成果は5月6日にNANO Energy誌オンライン版にてに掲載されている。

(佐藤 岳大)