やじうまミニレビュー
15年ぶりの新型テンキー「REALFORCE RT1」は全キープログラマブルで登場!
2024年12月3日 10:00
東プレ製の有線テンキー「REALFORCE RT1」が12月3日発売となった。実売価格は1万3,200円前後。
REALFORCEシリーズのテンキーは2009年に「REALFORCE 23U/UB」という製品が発売されたのだが、現在は終売となっている。そのため、静電容量無接点方式のキータッチや耐久性に魅了されたファンが、同じタッチのテンキーが欲しいと思ったら、REALFORCEのフルサイズキーボードを買うしかない状態が続いていた。
筆者もREALFORCEシリーズの長年のファンで、現在はゲーミング向けモデルの「REALFORCE GX1」を使用しているが、確定申告の時期になるとテンキーが欲しくなる。やむなく他社製のテンキーを使ってきたが、やはりしっくりこない。
今回、本機が登場したことで、単体のテンキーが入手可能になったことは喜ばしい。もちろん「テンキーに1万円以上もかけるの?」という声は多いと思うが、本機はきちんと今風の進化を遂げ、テンキーとして以外の使い道も考えられる製品になった。
プレミアムモデルキーボードと同等品質のキーを搭載
まずはスペックを確認。テンキーに対してスペックという言葉が出てくる時点ですでに面白い。
【表1】REALFORCE RT1の主なスペック | |
---|---|
キースイッチ | 東プレスイッチ(静電容量無接点方式) |
キー数 | 23 |
押下圧 | 45g |
押下耐久性 | 1億回以上 |
キーストローク | 4mm |
バックライト | なし |
Nキーロールオーバー | フルNキーロールオーバー(Mac接続時はNキー) |
本体サイズ | 93×152×37mm |
インターフェイス | USB(ケーブル長0.8m) |
重量 | 0.3kg |
実売価格 | 1万3,200円前後 |
キースイッチは静電容量無接点方式で、押下耐久性は1億回以上。キーストロークは4mm、静音仕様で、キーキャップは昇華印刷のPBT製となっている。この仕様は、REALFORCEシリーズのプレミアムモデル「REALFORCE R3」シリーズと共通だ。
カラーは、今回試用しているブラックの「T1UX11」と、スーパーホワイトの「T1UX21」の2種類。REALFORCEシリーズではキー荷重が選べる場合があるが、本製品はこれ以外のモデルはなく、キー荷重は45gのみということになる。
接続はUSBの有線接続。ケーブル長が0.8mと短めなので、キーボードとPCが離れている場合は延長ケーブルやUSBハブなどを活用するといい。
REALFORCEシリーズならではの手堅いつくり
次に実機を見ていく。レイアウトはフルサイズキーボードのテンキー部分とは異なり、右上の方にBackspaceキーが用意されている。また左下は0キーが2つに分離し、00キーが追加されている。この配置は他社のテンキー製品でも採用が多い。
本機にはこれに加え、最上段に4つのキーを追加で配置。左からEsc、Tab、Shift、Fnとなっている。表計算などの数値入力では、メインのキーボードまで手を戻さなくても済む場面が増え、作業効率を上げられると見ているのだろう。独自配置なので覚える必要はあるが、馴染めば便利だと思う。
キータッチは軽いクリック感がありつつ、滑らかに沈んでいく。いつもの45g東プレスイッチの手触りだ。底打ちが低音で耳障りな感じがなく、強めにキーを叩いてしまってもあまりうるさく感じない。
ケーブルは左上に直付けされており、奥に出る形。ほかの場所からは取り出せない。キーボードやノートPCの右側に置いて使うことを想定しているのだろう。ケーブルはREALFORCEでは伝統的な太めのビニールコードで、頑丈ではあるが取り回しはあまりよくない。
本体は0.3kgとテンキーのみにしては重め。裏面には小さいながらもしっかりした滑り止めがある。安定感は抜群で、キー入力でズレ動いたりする心配はない。REALFORCEシリーズはどれも重めに作られており、本機もこれに沿った形だ。裏面にはチルトスタンドもある。
試しに筆者所有のREALFORCEキーボードと並べてみると、高さはベース部分もキーもほぼ同じ。キートップのステップスカルプチャ(傾斜)も同等だ。横に並べて使えば、全く違和感なく入力できる。
全キープログラマブルが最大の魅力
REALFORCEシリーズというと、静電容量無接点方式のキースイッチに目が行ってしまいがちだが、本機の本領はむしろソフトウェア側にあると思う。REALFORCEシリーズで使われている設定アプリ「REALFORCE CONNECT」が本機でも使用でき、さまざまなカスタマイズが可能だ。
機能としては、キーマップ入替とAPC(アクチュエーションポイントチェンジャー)が使用できる。特に重要なのがキーマップ入替で、各キーの機能を自由に変更できるというものだ。
設定画面では、上に本機のキー配置が表示され、下にさまざまなキー入力が並んでいる。通常のキーだけでなく、画面の明るさや音量調整といったマルチメディアキーや、CtrlキーやShiftキーと組み合わせたショートカット、好きなHexコードを指定できるユーザープリセット、複数のキー入力を入力時間まで記録/再生できるマクロ設定などが使える。ほぼ何でもできると言っていいだろう。
キー配置の変更は、本機にある全23キーが対応している。さらにFnキーとの組み合わせ入力も可能で、その場合はFnキーを除いた22×2、44キーが設定可能ということになる。キーはFnキーの位置まで変更可能だ。
変更したキー配置は、キーマップとして4つまで本体に保存できる。切り替えは「REALFORCE CONNECT」経由だけでなく、キーボード入力でも行なえる。
つまり、初期配置を完全に無視して、自分の好きな機能を持たせたテンキーを作れる。もはやテンキーと呼ぶべきではないかもしれないが、これこそが本機の最大の魅力だ。
もう1つのAPCは、アクチュエーションポイントを0.8~3.0mmまで、0.1mm刻みで調整できる機能。テンキーにはあまり必要のない機能だが、テンキーとしてではない使い方を考えた時には役立つかもしれない。1キーごとに変更が可能。このAPC設定も4つのパターンを保存でき、キーボード入力でも切り替えが可能だ。
最高級のテンキーであり、高性能なプログラマブルキーボード
本機をどう評価するかは、とても悩ましい。まず1万円オーバーのテンキーと言われて、手に取る人はそう多くないとは思う。あり得るとしたら、テンキーレスタイプの高級キーボードユーザーが、同等以上のキータッチのテンキーが欲しくなった時。あとはノートPCで経理など数値入力が多い仕事をしている方が、最高の入力環境を求めて、というのはありそうだ。
これは、本機をテンキーとして評価した時だ。REALFORCEシリーズの名に恥じない、最高の使用感を与えてくれるテンキーであることは間違いない。
では、全キープログラマブルなテンキーとしてはどうか。「REALFORCE CONNECT」によるカスタマイズは極めて自由度が高く、ユーザーごとに思い思いの使い方ができるだろう。いわゆる左手キーボードとしても使えるだろうし、クリエイターや動画配信などにも活用法がありそうだ。
テンキーとしてではなく、プログラマブルキーボードとして評価するなら、最高のキータッチで使用できる、ハード/ソフトとも最高級の製品であると言える。ダイヤルが欲しいなどと言われたら別だが、キーボードとしてであれば本機に勝る性能を持つものはほぼないだろう。
惜しい部分は2点ある。1つは直付けの有線ケーブル。テンキーとしての使用を想定した配置なのは分かるが、プログラマブルキーボードとして使うには自由度が低い。ケーブルを脱着可能にして長さや端子の角度が違うものに変更できるか、あるいはBluetooth対応であればよかった。
もう1点はキーキャップ。キートップの文字はすべてテンキーとして書かれているので、キー配置を変えると見た目と違う入力になる可能性がある。キーキャップを抜いて差し替えは可能だが、ステップスカルプチャー形状なので別の段のキーは形が異なる。
本機にはオプションとして、Mac用のキーキャップが別売りされる。ならば別オプションとして、すべて無地、あるいはキートップが透明で手書きシートを挟めるようなキーキャップがあれば嬉しい。
価格的にも性能的にも、万人向けの製品とは言いにくい。ただ、テンキーとしても、プログラマブルキーボードとしても、「これがあってよかった!」と感じる人は確実にいるであろうとも思う。少なくとも筆者は、来年の確定申告作業が少し快適になりそうだ。