やじうまミニレビュー

PCI Express 5.0の限界速度?14GB/s超えのSSD「Crucial T705」を試す

やじうまミニレビューは、1つ持っておくと便利なPC周りのグッズや、ちょっとしたガジェットなど幅広いジャンルの製品を試して紹介するコーナーです。
Crucial

 CrucialからPCI Express 5.0対応の最新SSD「T705」(以下T705)が発表された。グローバルでは3月12日より発売されており、日本国内でも近日中に発売を予定している。今回は2TBサンプルを一足早く入手できたので、簡単にレポートをお届けしたい。

 T705は、2023年6月頃より発売された「T700」の後継もしくは上位にあたるモデル。T700でシーケンシャルリード12,400MB/s、同ライト11,800MB/sだった最大転送速度が、それぞれ14,500MB/s、12,700MB/s(2TB)へと高速化が図られため、T705は「世界最速」が謳われている。

 バリエーションとしてはヒートシンク「あり」と「なし」、容量はそれぞれに「1TB」、「2TB」、「4TB」の3種類、2TB版のみホワイトヒートシンクのLimited Editingの合計7モデルが用意されているのだが、今回は2TBのブラックヒートシンク版を用いてテストしている。

 このヒートシンクはファンレスで比較的コンパクトだが、ある程度高さがあるため、スロットの位置によってはビデオカードと干渉する可能性がある。現代的なマザーボードであればヒートシンクがあらかじめ装着されたマザーボードも多いため、そういった環境ではヒートシンクなし版を選ぶのもありだろう。

製品パッケージ
底面

 今回ヒートシンクの取り外しは行なっていないため写真はないのだが、本製品のコントローラはT700と同じPhisonのE26、NANDも同じMicronの232層TLC NANDが用いられているという。

 ともすれば「いかにしてT700から高速化できたのか?」となるわけだが、T700はNANDフラッシュの速度が2,000MT/sであるのに対し、T705では2,400MT/sに引き上げられ、その結果SSDとしての性能をより発揮できるようになったと考えるのが妥当だ。

 なお、PCI Express 5.0 x4のデータリンク層の転送速度は片方向で15.75GB/sなので、T705はその帯域幅をほぼフルに使えるSSDと考えていい。

テスト環境

 それではベンチマークを実施していこうと思うが、その前に1つ注意点がある。冒頭で述べた通り、T705はPCI Express 5.0対応のSSDだが、Intelのメインストリームである第12世代Coreから最新第14世代Coreまでのプラットフォームでは、PCI Express 5.0に対応しているものの、それはCPU直結の16レーンのみとなっており、それ以外はPCI Express 4.0までの対応となる。

 そのため、T705を5.0で使おうと思うと、この16レーンを分割するしか手段はなく、その際はビデオカードへの接続が8レーンに制限される。ほとんどのシーンではゲーム性能に大きく影響はないと思うし、NVIDIAのGeForce RTX 4060 Tiなど下位のGPUではそもそも8レーン接続なので関係はないのだが、ハイエンドビデオカードの性能をフル優先したいのであれば、使用は控えたほうが良い。また、一部マザーボードではそもそも4.0のM.2スロットしか備えていないことも多いので十分に注意したい。

 一方、AMDのRyzen 7000シリーズなら、CPUから28レーンのPCI Express 5.0が出ており、ビデオカードを接続しても余裕があるので十分にポテンシャルを活かすことができる。また、より高性能なプラットフォームであるSapphire RapidsベースのXeon Wや、Ryzen Threadripper 7000/PRO 7000ではかなり余裕があり、性能を活かすのにも最適だ。

 今回は以前テストを行なったXeon w9-3495Xの環境でテストを行なう。マザーボードはSupermicroの「X13SWA-TF」、メモリはMicronの16GB DDR5-4800 RDIMM「MTC10F1084S1RC48BA1R」×8(合計128GB)、OS用SSDはLexar Professional NM800 M.2 2280 NVMe SSD 512GB、ビデオカードはGeForce RTX 3080 Ti、OSはWindows 11 Homeである。

【表】テスト環境
CPUXeon w9-3495X
メモリDDR5-4800 RDIMM 16GB(MTC10F1084S1RC48BA1R)×8(128GB)
マザーボードSupermicro X13SWA-TF
SSDOS用:Lexar Professional NM800 M.2 2280 NVMe SSD 512GB
テスト:Crucial T705 2TB
ビデオカードPalit GeForce RTX 3080 Ti GameRock OC
OSWindows 11 Home

世界最速の名に恥じぬ性能

 実施したベンチマークテストは、「CrystalDiskMark 8.0.4 x64」のブロックサイズ1GiBと64GiB、「ATTO Disk Benchmark 4.00.0f2」、および「PCMark 10」のFull System Drive Benchmarkだ。比較参考用にLexar Professional NM800の結果も入れているが、こちらはOSやアプリケーション環境をセットアップした後のため空き容量は33%程度となっている点に注意したい。

 CrystalDiskMarkでは安定した性能を発揮し、シーケンシャルリード14,500MB/s、シーケンシャルライト12,580MB/sを超える性能を安定して発揮した。Q1T1のランダム4Kリード/ライトもそれぞれ89MB/s、221MB/s超と非常に高い数値だ。

T705のCrystalDiskMark 8.0.4 x64の結果(ブロックサイズ1GiB)
T705のCrystalDiskMark 8.0.4 x64の結果(ブロックサイズ64GiB)
NM800のCrystalDiskMark 8.0.4 x64の結果(ブロックサイズ1GiB、参考)
NM800のCrystalDiskMark 8.0.4 x64の結果(ブロックサイズ64GiB、参考)

 ATTO Disk Benchmarkでは若干数字が劣るが、リード最大13.5GB/s、ライト最大11.9GB/sをマーク。冒頭で述べた通りPCI Express 5.0の仕様では理論値の上限が15.75GB/sなので、これに肉薄する数値だ。

T705のATTO Disk Benchmark 4.00.0f2の結果
NM800のATTO Disk Benchmark 4.00.0f2の結果(参考)

 PCMark 10のストレージベンチマークテストでは「4971」というスコアを記録した。これはNM800の2倍以上である。今回テストしたNM800は512GBモデルは、1TBと比較するとリード/ライト速度ともに低いのでそれを差引くする必要があるが、以前テストしたPCI Express 4.0対応SSD 2機種の3,100台のスコアと比較しても1,800近いスコアアップとなるわけで、世界最速の名にふさわしい実力を備えていると言えるだろう。

T750のPCMark 10 Full System Drive Benchmarkの結果
NM800のPCMark 10 Full System Drive Benchmarkの結果(参考)

活用できる環境があれば大いにオススメ

 すでに高速なT700からさらにパワーアップを果たしたT705は、PCI Express 5.0のポテンシャルを十分に活かしたSSDである。現時点ではメインストリームのIntel環境でその性能をフルに発揮できるのはやや限定的だが、AMD環境やハイエンド環境においてストレージ性能を極限にまで高めたいユーザーにとって魅力的な製品だ。

 もちろん、4Kランダム性能が大きく向上するわけではないので、今すぐにOSやゲームのロード時間を大幅に短縮できるものではないというのも確かではあるのだが、高解像度の動画編集や、大量かつ頻繁ぶファイルコピーが生じるようなクリエイティブ作業において、時間の短縮で作業効率向上に貢献することだろう。

Crucial T705実機ライブ解説!実測14,000MB/sの世界をお見せします

3月26日(火)21時より、Crucial T705をライブ配信で解説します。最新・最強SSDの仕様、特長、構造から、ベンチマーク結果、実動デモまでお届けします。解説は芹澤正芳氏。MCはPADプロデューサーの佐々木です