やじうまミニレビュー
大草原不可避なダサいMicrosoftセーターを本気で2週間着てみた、その結論は?
2023年12月22日 06:22
Microsoftは、「Windows Ugly Sweater」(直訳するとWindowsチョダサセーター)を毎年ホリデーシーズンに合わせて「Xbox Gear Shop」で販売している。
今年(2023年)のチョダサセーターは「Windows Ugly Sweater: Bliss Edition」という名称で、日本語に直訳するのであれば「Windows チョダサセーター:大草原版」とでもなろうか。
その大草原不可避なセーター、筆者も12月の上旬にMicrosoftより提供を受けて入手し、2週間さまざまな機会に着てみて、周囲からどのような反応を得られたのか、その様子などを紹介していきたい。
なぜダサいセーターがMicrosoftより販売されているのか
Microsoftは、米国Xbox Gear Shopで毎年11月に「Ugly Sweater」をホリデーシーズン向けのグッズとして販売している。Windows Ugly Sweaterは2023年版という扱いだ。
なぜ、そんな自分で「ダサイ」なんて卑下しちゃっているグッズを、世界的エクセレントカンパニーである「Microsoft」が販売しているのかというと、米国ではホリデーシーズン(クリスマス前後)中に、ダサイシャツやセーターなどを着て、お互い褒め殺すというという一大イベントがあるからだ。つまり素敵なトナカイやサンタがデザインされたセーターを着て、お互いに“いかにダサイか”を競い合い、そうしたユーモアあふれる一大イベントがそこかしこで行なわれている。
そうした市場ニーズ向けに数年前に、自虐的なネタのセーターを販売したところ、大いに受けて予定数はあっという間に販売し、もっとほしいという声がMicrosoftに寄せられるほどの人気商品になったのだ。
2年連続でダサさを高めてきたWindows Ugly Sweater
で、歴代の「チョダサセーター」を見ると、Microsoftの数十年に歴史の中で愛されキャラだったもの、黒歴史キャラだったもの……それが採用されていることが分かる。
たとえば、2021年に販売されたのは、「かつてWindowsでもっとも使われている標準アプリケーション」の不動の座を得ていた「マインスイーパー」がテーマになっている。マインスイーパーは地雷が置かれていないマスを開けていくという非常に単純なゲーム。だが、それだけに誰でもできるようなゲームで、昔の雑誌によく掲載されていたクロスワードパズルに似たようなゲームだ。
そうしたマインスイーパーをテーマにして、前面に大きなクリスマスツリーが描かれているという究極のダサさを実現したのが、2021年の「Microsoft Minesweeper Ugly Sweater」だった。
もしかしたら、今の若いPCユーザーの方はマイスイーパーを知らないのかもしれないので、改めてご紹介しよう。かつてマインスイーパーはWindowsに標準添付(普通のOSをインストールしたら入っている標準アプリ)だったのだが、Windwos 8.1以降はWindows Storeからユーザーが能動的にダウンロードしなければならない。
標準添付されていた時代の話をしよう。スタートメニューを開くと、そこにはマインスイーパーがいて、仕事に疲れたユーザーがさぼる(ゲフンゲフン)……いや仕事の疲れをいやすために起動して、時間をつぶす(ゲフンゲフン)……そして熱中してしまい気がつくと時間が過ぎていることも多々あったのだ。
そして昨年(2022年)に販売されたのが「Windows Ugly Sweater: Clippy Edition」だ。こちらはクリッパー(アメリカではClippy)という米国版のOfficeのキャラクターとしていろいろな意味で愛されていたものが採用された。
ちなみに、日本のユーザーはあまりこのClippyにはなじみがないと思う。なぜなのかというと、実は日本のOfficeにはこのClippyは搭載されておらず、その代わりになっていたのが有名なOfficeのイルカのキャラクター「カイル」だ。
このカイル君、Officeユーザー向けのアシスタントという位置づけだったのが、たいていの人は「お前を消す方法」という身もふたもないことを聞いてしまうということは流行になっていたほど。Clippyのセーターというのはカイル君のセーターがあれば……ということを想像してみれば、その「チョダサ」さが想像できるのではないだろうか。
Microsoftという会社は1975年にビル・ゲイツ氏とポール・アレン氏により設立され、もうすぐ半世紀に達しようという歴史がある。
他社同様Microsoftも黒歴史話題が事欠かない会社だが、その中でもAIっぽいキャラクターに関しては、当時のAIの技術が未熟だったこともあり、ユーザーから黒歴史的に「愛され」キャラだったものは多数ある。
その代表例は「Microsoft Bob」(興味がある人は検索してみるといろいろ楽しい話が見つかると思う)であり、そしてこの「Clippy」もそのラインに続くAI(愛)されキャラの代表だったのだ。
今年はWindows XPの標準壁紙だった「Bliss」の柄。ダサさいまいち?
2021年版、2022年版を経て、今年発売されたのが「Windows Ugly Sweater: Bliss Edition」だ。冒頭でも述べたとおり、意訳すると「Windows チョダサセーター:大草原版」となり、既に名称だけで大草原不可避だ。価格は日本円で1万495円と、セーターとしてはかなり高額な部類と言える。
なぜ製品名が大草原なのかというと、それは今年の柄がWindows XPの標準壁紙だからだ。壁紙のファイル名もまさに「Bliss」で、Wikipediaによれば米国カリフォルニア州のナパ・バレー(ワインの産地として有名な地域)の草原を撮影したものだという。元の壁紙を見るとCGのように見えるが、現実のシーンを撮影したものだ。
Windows XPは2001年に投入されたOSで、それまではWindows 2000(NTの後継)、Windows Me(95の後継)という2つのラインがあったWindowsを1つのラインに統一したという意味で、Windowsの歴史上最も重要で、成功したバージョンの1つと言ってよい。
Windows XPは、最新バージョンの座を2006年に登場するWindows Vistaに譲ったものの、その軽量さなどでネットブック向けには継続提供されていたし、多くの企業などで利用が続いていた。メインストリームサポートは2009年に終了したが、その後も延長サポートなどが2014年まで提供され続けるなど、息の長いOSとして知られていた。
そんな、おそらく世界一有名なOSの壁紙と言ってよいBlissを採用したのが今年のダサセーターになる。昨年のモデルもそうだったが、かなり豪華な箱に入って届く。ふたを開けるのと目に入るのは説明書のカードで、メモ帳(Notepad)の中に説明書きや、使い方に関する説明が書かれている。
で、肝心のセーター自身だが、率直にいって昨年の衝撃的なダサさに比べると、圧倒的にダサくない。
唯一「ダサくしようとしているのだな」と感じられたのは、ちょうどお腹の辺りに入っているサイズが「巨大版」のマウスポインターなのだが……よく見ないと気がつかないぐらいの場所に入っているため、Clippyの顔がデカく描かれていた昨年版に比べると、だいぶ普通になった印象を受ける。
女性に「カワイイ」と言われる始末
今回筆者は入手したWindows Ugly Sweater: Bliss Editionを着て、アメリカで行なわれた某大手のイベント、日本で行なわれた記者発表会イベントに実際に着ていって参加してみた。
実は、昨年のWindows Ugly Sweater: Clippy Editionでも着ていったのだが、どちらでも大受けで、人が寄ってきては「これはダサイ」、「これはステキ(もちろんアイロニーとして)」という期待通りの反応が返ってきた。飛行機の中でも、フライトアテンダントさんが吹いてくれるなど、ひとしきり盛り上がれた。その意味で、「ダサさで話題を奪う」というコンセプト通りの働きを示してくれた。やるな、クリッパーくん!!
では今年のWindows Ugly Sweater: Bliss Editionではどうだったかというと、米国で行なわれたイベントでは、知人の米国の記者に「いいセーター着てるな」とか「それ今年の?」……と、やや薄く冷たい反応。
しかも、女性の記者には「そのセーター、カワイイね」なんて言われてしまう始末で、意外に普通に着られるねぇ……なんて言われてしまう始末。「Ugly Sweater」なハズなのに、ハズなのに……いいのかそれで!?
ただ、やはりIT系のイベントではWindows Ugly Sweaterの知名度は抜群で、着ているだけで「つかみはオッケー」という程度の感じだった。
国内ではどうか? 先日行なわれた某社の発表会でも、こちらを着て最前列に座ってみた。後ろから知人の記者に写真をとってもらったのだが、意外と普通に溶けこんでいることが分かる。
ではご本家は? ということで日本マイクロソフトが大阪で行なったイベントで着てみた。もちろん多くの関係者の人に「あ、それは!」とか「それWindows XPですよね?」みたいな反応をいただいた。さすがお膝元のイベントだけに、Windowsの柄にはみんな敏感なようだ。ここでのハイライトは、会場でご挨拶させていただいた日本マイクロソフトのとても偉い方に「そのセーター、ステキですね、アレですよね?」という温かい一言を頂いたことだ(キリッ)。
実際、講演で先頭に座って取材していたのだが、全然違和感はなかった。その意味ではMicrosoftのイベントには、いつでも着ていけるセーターだと言える。
チョダサセーターを2週間着てみた筆者の結論。Windows Ugly Sweater: Bliss Editionは、そういうパーティーではなくてもフツーに着ていて、違和感がない。そして意外と女性の反応がよく、それほしいという人が多かった。また、IT関連の人には「アレですよね?」という反応はもらえて、そこから話題が広がっていけるという意味で話のつかみを得るためのネタグッズとしては有効だということだ。
だが、昨年のClippy Editionほど、一般の方にもウケるダサさにパンチはなく、IT業界ではない方に「ダサい」と褒めてもらうのが難しい。
ということで、来年は日本向けだけでもいいので、カイル君のセーターを作ってほしいと心の底から願った。いや冴子先生でもいいです、今でも冴子先生と日本マイクロソフトの契約が続いているのかは、知らんけど!