やじうまミニレビュー

30~60gに変化する押下圧がポイント。エレコムのラピッドトリガーキーボード「VK600A」を試す

やじうまミニレビューは、1つ持っておくと便利なPC周りのグッズや、ちょっとしたガジェットなど幅広いジャンルの製品を試して紹介するコーナーです。
VK600A

 エレコム株式会社から、ゲーミングキーボード「VK600A」が10月18日に発売された。磁気式アナログ検知スイッチを採用し、いわゆる「ラピッドトリガー(Rapid Trigger)」と呼ばれる機能に対応した高速応答性の高い製品となっている。

 最近の同社は本格的なゲーミングデバイスを「V custom by ELECOM」というブランドで展開しており、マウスやキーボードを販売している。本機はその中でもフラグシップモデルとなる製品だ。

 日本メーカーのゲーミングキーボードで、流行りのラピッドトリガーも搭載しているとなれば、気になる人も多いはず。今回はこちらの製品のサンプル機を一通り試していきたい。

日本語配列のコンパクトなゲーミングキーボード

 まずはスペックの確認から。

【表1】VK600Aの主なスペック
キースイッチ磁気式アナログ検出スイッチ
キー数71(日本語配列)
押下圧30~60g
押下耐久性未公開
キーストローク4mm
バックライト1,677万色
本体サイズ約322.4×124.7×36.2~48mm
インターフェイスUSB 2.0
ケーブル長約2m
重量約662g(ケーブル含まず)
価格オープンプライス(直販価格2万2,980円)

 キースイッチは磁気式のアナログ検出スイッチとされており、これによりいわゆるラピッドトリガー機能を実現する(同社が追従式アクチュエーションポイント/リセットポイントと説明している機能がこれに相当する)。キー数は71で、テンキーやファンクションキーなどを省いた65%キーボードとしている。キーストロークは4mmと標準的だ。

 押下圧は最初が30gで、底打ち時に60g。引っかかりのないリニアタッチで、押し込むほどに徐々に重くなるという形だ。耐久性についてはスペックの言及がないのだが、スイッチが物理的に接触するタイプではないので、高い耐久性を備えていると思われる。

 価格は直販サイトで2万2,980円。キーボードとしては高価な部類ながら、ラピッドトリガー対応の製品としては安価な方だ。特に日本語配列の製品が欲しい場合にはコストパフォーマンスも高い。

 本体色はブラックとホワイトの2種類。ゲーミングキーボードはとにかくブラックの製品が多いので、ホワイトが選べるのも大きな魅力だ。

ファンクションキーなどが省かれた71キーの65%キーボード
ケーブルは着脱式で、とても柔らかい。端子形状は本機側がUSB Type-C、PC側はType-A
ワイヤレスマウスのレシーバーなどを接続するのに使えるUSB 2.0ポートを備える
角度調整スタンドは1段階
磁気式のキースイッチ。白い軸に四角い枠が付いている

最初と最後で押下圧が大きく変わるタッチの意味

 実機を触ってみると、キータッチはかなり柔らかい。筆者は普段、押下圧30gのキーボードを使用しているが、押し始めの軽さは確かに似た感じがする。違いを感じるのは底打ちしてからキーを離す時で、底打ち時60gとする反発力がかなり強い。最初軽め、最後重めという押下圧のバランスは、ほかではあまり感じられない独特な手触りがある。

 このタッチはラピッドトリガーを前提にした設計だろう。入力オンはなるべく軽く、入力オフはなるべく戻りを速くすることで、どちらも高速に応答できる。実際の差は微々たるものだろうが、究極を突き詰めようという姿勢は評価すべきだ。

 入力時の音は、底打ち時や戻り時にプラスチックが当たるカチャカチャという音が鳴る。スイッチは非接触型なので無音のはずで、内部にシリコン吸音パッドを入れて振動を抑えているというのだが、キー自体が静かという印象はなく、一般的なキーボードとさほど変わらない。

 機能設定は専用ツール「EG Tool」で行なう。キーの機能変更とラピッドトリガーの設定、ゲーミングモード設定時の一部キーの無効化、キーボードバックライトの調整が可能。ラピッドトリガーについては後述するとして、そのほかの部分を見ていく。

ゲーミングモードは選んだキーを一括で無効化する機能

 キーの機能変更は、別のキーの割り当てやLEDバックライトの変更、ゲーミングモードのオン・オフ、各種メディア操作が設定可能。詳細設定を選ぶと、1入力で3つのキーを同時押ししたように認識させる設定や、押し込みの深さで入力内容を変える2ndアクションも設定可能。また後述するラピッドトリガーのキー感度も個別に設定できる。ただし個別に設定できるのは20キーまでに制限されている。

キーの機能変更は3キー同時押しなど詳細設定が可能

 LEDバックライトは基本的にキーボード全体での設定となり、いくつかのエフェクトの違いや色の調整ができる。ほかに指定したキーを指定した色で常時点灯させたり、キー入力のオン時に緑、オフ時に赤に光るという設定もある(何も入力していない時は光らない)。

LEDバックライトは光り方を選べる
キー入力のオン・オフ状態に対応して光る設定はなかなか面白い

ラピッドトリガーの効果は歴然

 では注目のラピッドトリガーについて見ていく。まず重要なこととして、本機は常時ラピッドトリガーが有効の状態で、無効化はできない。

 その上で、4mmのキーストロークに対し、入力オン・オフの感度はそれぞれ0.1~3.8mmの間で0.1mm間隔に調整できる。最も感度が高い設定だと、入力オン・オフともに0.1mmとなる。つまり、0.1mmでも押されればオンになり、0.1mmでもキーが戻ればオフになるということだ。

 この設定で文字入力を試してみると、入力したキーとは別のキーが押しっぱなしの状態として認識されることがあった。マニュアルによると、アクチュエーションポイントを0.1mmなど極端に小さい値にすると、感度が高すぎて誤作動することがあるとされている。

 この対応として誤作動防止機能が用意されており、有効にすると0~0.2mmまでの入力オンと、4~3.6mmまでの入力オフは行なわれなくなる。結果として、キーを完全に押し込む形での入力オン・オフの反応はごくわずかに遅くなるはずだが、0.2~3.6mmの間でのストロークは正しく0.1mmでのオン・オフが可能となる。

 欲を言うなら、誤作動防止の範囲もユーザーが設定できるとさらによかった。今回お借りした製品も、誤作動するキーはごく一部だけで、製品ごとの個体差や経年劣化で変化する可能性もあるので、その際に細かく調整できれば長く安心して使えると思う。

感度を極端に高くして使うなら誤作動防止機能を使う方がよさそう

 続いてはラピッドトリガーの効果を確かめるべく、キー入力のオン・オフ時間を測定してみた。今回はRazer製設定ツール「Razer Synapse」のマクロ設定機能を使い、キー入力時間を測定した。エレコム製のツールにも同種のマクロ機能があればよかったのだが、本機の設定には見当たらなかったのでやむを得ない。

 測定方法は、Aキーを素早く叩くように入力するのを10回繰り返し、入力時間の平均値を取る。本機の設定は、初期設定の入力オン・オフいずれも1mmで誤作動防止有効のものと、入力オン・オフいずれも0.1mmで誤作動防止無効という最も高感度な設定。加えて筆者所有の東プレ製キーボード「REALFORCE 89S-10th」でも同じように計測した。

【表2】テスト結果
設定・デバイス1回目2回目
VK600A:1mm/誤作動防止有効36.3ms38.4ms
VK600A:0.1mm/誤作動防止無効34.7ms34.4ms
REALFORCE 89S-10th48.9ms43.5ms

 筆者の手入力なので入力ごとのばらつきもあるのだが、1mmの設定時より0.1mmの設定の方が平均して3msほど速くなっている。細かいデータを見ると、0.1mmの方は20ms台が出ることも多く、一見して高速になっているのが分かる。

 加えてラピッドトリガー非搭載の「REALFORCE 89S-10th」との比較では、10msほど差が出ている。初期設定の1.0mmと比較しても明らかに優位で、本機のラピッドトリガーが正しく効果を発揮していると言えるだろう。

日本語配列でラピッドトリガーを試すには最適

キートップのフォントなど、デザインも独自性があって面白い

 本機はラピッドトリガー搭載の日本語配列キーボードとしては価格も安く、キータッチも独特ながら他社製品に劣るとは感じない。エレコムらしいコストパフォーマンスの良さが光る製品と言える。

 キー数が71の65%キーボードなので、一般用途として使うには少々不便だったり、慣れが必要な部分もある。あくまでゲーム用として、本機のキーで入力がまかなえるゲームをプレイするのであれば、かなり重宝するだろう。

 設定ツールの「EG Tool」は、まだ基本的な機能に限られており、物足りない部分が多い。たとえばゲーム用にキー感度を上げ、それ以外はキー感度を下げて使いたい場合に、プロフィールを切り替えるには「EG Tool」を開くしかない。これがショートカットキーとして設定できないのが惜しい。

 その点を加味したとしても、ラピッドトリガー搭載の日本メーカー製日本語キーボードというメリットは揺るがない。2万円強という価格が安いとは言わないが、とにかくラピッドトリガーを使ってみたいという人には最適な製品と言えるだろう。