やじうまミニレビュー

最大2,000MB/sになった外付けSSD「Samsung Portable SSD T9」

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Samsung Portable SSD T9 4TBモデル

 ITGマーケティングは、Samsung製ポータブルSSD新モデル「Portable SSD T9」を10月下旬に発売する。接続インターフェイスにUSB 3.2を採用することで、アクセス速度はリード、ライトとも最大2,000MB/sを実現。また高さ3mからの落下にも耐える優れた堅牢性を備える点も特徴となっている。今回、Portable SSD T9の4TBモデルをいち早く試用する機会を得たので、ハード面や速度面をチェックしていく。

 なお、価格はオープンプライスで、今回試用した4TBモデルの実売予想価格は5万7,980円。このほか、1TBモデルは1万8,480円、2TBモデルは3万1,480円。

全面ラバーコーティングで優れた堅牢性を実現

 Portable SSD T9は、優れた性能と使いやすさ、優れた耐久性を兼ね備える、Samsung製ポータブルSSD新モデルだ。主な仕様は表にまとめたとおりで、容量1TB、2TB、4TBと3モデルをラインナップする。パッケージには、接続ケーブルとしてUSB Type-C Type-CケーブルとUSB Type-C Type-Aケーブルが付属する。保証期間は5年。

【表1】Portable SSD T9の主な仕様
容量1TB2TB4TB
インターフェイスUSB 3.2 Gen2x2準拠USB Type-C
内蔵SSDPCIe/NVMe SSD
サイズ80×60×14mm
重量122g
シーケンシャルリード最大2,000MB/s
シーケンシャルライト最大1,950MB/s最大2,000MB/s
暗号化AES 256bitハードウェア暗号化対応
耐落下性能最大3m
信頼性性能対応温度:稼働時0~60℃、非稼働時-40~85℃
対応湿度:5~95%
耐衝撃:1,500G(3方向、0.5ms)
耐振動:20~2,000Hz、20G
互換性Windows 7以上、Mac OS X 10.10以上、Android 5.0以上
付属品USB Type-Cケーブル
USB Type-C - Type-Aケーブル
保証期間5年

 近年ポータブルSSDは小型化が進み、USBメモリ同等の小ささを実現する製品も数多く登場している。それに対しPortable SSD T9は、サイズが80×60×14mmと、これまでSamsungが発売してきたポータブルSSDとサイズ的には大きく変わっていない。重量は公称122g、実測では119.8gと公称よりもやや軽かった。

 実際にPortable SSD T9を手にしてみると、手のひらにすっぽり収まるサイズで、重量も特別重いわけではない。ただ、近年ポータブルSSDの小型、軽量化が進んでいることを考えると、やや大きく重いと感じそうだ。しかし、このサイズと重量には、しっかりとした理由がある。それは優れた堅牢性を実現するためだ。

本体正面。フットプリントは80×60mmと、そこそこのサイズ感だ
2.5インチSSDと比較すると、ひとまわり小さい程度といった感じだ
側面。高さは14mmだ
重量は実測で119.8gと公称よりやや軽かった
製品パッケージにはUSB Type-CケーブルとUSB Type-C Type-Aケーブルが付属する

【11時55分訂正】記事初出時、公称重量を112gとしておりましたが、122gの誤りでした。それに伴い表記も一部変更しました。お詫びして訂正します。

 Portable SSD T9の筐体は、素材にアルミニウム合金を採用するとともに、ほぼ全面をラバーコーティングで保護している。また、波打つような凹凸の形状となっており、これも強度を高める要因となっている。この、ラバーコーティングと凹凸ボディによって、Portable SSD T9では高さ3mからの落下試験に耐える落下耐性を実現している。

 それに加えPortable SSD T9では、稼働時で0~60℃、非稼働時で-40~85℃と幅広い温度環境への耐性、5~95%と幅広い湿度環境への耐性、最大1,500G(3方向、0.5ms)の耐衝撃性、20~2,000Hzで最大20Gの振動への耐性など、多岐にわたる優れた堅牢性も実現。

筐体素材はアルミニウム合金を採用し、ほぼ全面をラバーコーティング。波打つような凹凸デザインも採用し堅牢性を高めており、3mからの落下試験に耐える落下耐性をはじめ優れた堅牢性を実現

 近年、デジタルカメラを利用して、プロだけでなくアマチュアでも4Kや8Kといった高解像度での動画撮影を手軽に行なえるようになった。その反面、動画データの容量が飛躍的に増えており、撮影したデータをその場で転送したり、場合によってはデジタルカメラに直接ポータブルSSDを接続して動画撮影を行なうというように、大容量ポータブルSSDの需要も高まっている。

 特にプロ用途で利用するポータブルSSDでは、さまざまな環境で安定して動作したり、落下などのトラブルに遭遇しても保存データを失うリスクを低減する優れた堅牢性が求められるが、Portable SSD T9であればそういった要望にも確実に対応できそうだ。

 このほか、AES 256bit準拠のハードウェア暗号化機能も用意されているため、データ漏洩の危険性も低減可能だ。

 性能面は、内蔵SSDに高速なPCIe SSDを、接続インターフェイスにはUSB 3.2 Gen2x2を採用することで、リード速度は全モデルとも最大2,000MB/s、ライト速度は1,950~2,000MB/sと、ポータブルSSDとしてトップクラスの速度を実現している。

 また、低消費電力かつ低発熱という点も特徴の1つ。Portable SSD T9では、内蔵SSDに既存M.2 SSDを応用するのではなく、専用基板として設計。それによりアイドル時で0.67W、ピーク時でも7.3Wと低消費電力を実現できたのだという。これにより、デジタルカメラなどに直接接続して利用する場合でも、より長時間の撮影が可能になる。

 同時に発熱も低く抑えられているとのこと。競合製品と比べてもピーク時の温度が低くなっているそうで、この点でも安心して利用できそうだ。

接続インターフェイスにはUSB 3.2を採用し、アクセス速度はリード、ライトとも最大2,000MB/sを実現

申し分ない速度を確認、表面温度も熱くならない

 では簡単にパフォーマンスをチェックしていこう。まずはじめに、「CrystalDiskMark 8.0.4c」の結果だ。データサイズを1GiBと64GiB、設定を「NVMe SSD」にし、マザーボードのUSB 3.2 Type-Cポートに接続した場合と、USB 3.1 Type-Aポートに接続した場合それぞれでテストを行なった。テスト環境は下にまとめたとおりだ。

・テスト環境
マザーボード:ASUS TUF GAMING B650-PLUS WIFI
CPU:Ryzen 5 7600
メモリ:DDR5-5600 32GB
システム用ストレージ:Samsung SSD 950 PRO 256GB
OS:Windows 11 Pro 64bit

 結果を見ると、USB 3.2接続時のデータサイズ1GiBの場合には、シーケンシャルリード、ライトとも公称の2,000MB/sを超える速度が確認された。データサイズが64GiBの場合には、キャッシュが尽きた影響か、シーケンシャルライトが1,796MB/sに落ちているものの、それでも申し分ない速度と言える。

 それに対しUSB 3.1接続時には、シーケンシャルリード、ライトとも1,000MB/sをわずかに下回った。とはいえこれはインターフェイス速度のほぼ上限であり、全く不満はない。データサイズが64GiBでもライト速度の落ち込みが小さいが、これは速度が遅いためキャッシュを有効活用できている結果と考えられる。

CrystalDiskMark 8.0.4cの結果

USB 3.2接続時
データサイズ1GiB
データサイズ64GiB
USB 3.1接続時
データサイズ1GiB
データサイズ64GiB

 ところでPortable SSD T9では、NANDフラッシュメモリの一部をSLCキャッシュとして利用するTurbo Write技術を採用しており、その容量も1TBモデルで22GB、2TBモデルで88GB、4TBモデルでは180GBと比較的大きなサイズが確保される。そこで、HD Tune Pro 5.75を利用して250GBのデータを連続読み書きした場合の速度をチェックしてみたところ、リード、ライトともアクセス容量が175GBを超えたあたりで速度低下を確認した。

 また、速度が低下した状態でも、リードは1,250MB/s前後、ライトは1,000MB/s前後とそこそこ高速な速度が維持できている。これなら、大容量データを扱う場合でも大きな不満なく利用できそうだ。

HD Tune Pro 5.75の結果

アクセス容量が175GBを超えた付近でリード、ライトとも速度が低下しているが、速度低下後もまずまずの速さを維持しており、大容量データを利用する場合でも安心だ

 次に、実ファイルの転送時間をチェックしてみた。今回は、動画ファイル36ファイル、合計容量約203GBのデータをPCから転送し、その転送時間をストップウォッチで計測。3回計測の平均を出している。こちらもUSB 3.2 Type-C接続時とUSB 3.1 Type-A接続時の双方で検証した。

 結果は、USB 3.2 Type-C接続時で平均3分14秒、USB 3.1 Type-A接続時で平均5分13秒だった。

 200GB超のデータを転送する場合でも、この程度の時間で転送できるのは、なかなか魅力的と感じる。大容量データを頻繁に扱う場合に大いに役立ちそうだ。

動画ファイル36ファイル、合計容量約203GBのデータの転送時間

  • USB 3.2接続時:平均3分14秒
  • USB 3.1接続時:平均5分13秒

 最後に、温度をチェックしてみた。CrystalDiskMarkを実行中の表面温度をサーモグラフィーカメラでチェックしてみたところ、もっとも高温でも47℃前後と50℃を超えなかった。実際にその状態で本体を手にしてみても、持てないほど熱いと感じることはなかった。これは、実際に利用する場合でも大きな優位点となるはずだ。

ベンチマークテスト中の表面温度をサーモグラフィーカメラで計測してみたところ、最高で47.7℃と50℃を下回っていた

高速で堅牢性に優れるポータブルSSDを探している人にお勧め

 今回見てきたようにPortable SSD T9は、USB 3.2対応で最大2,000MB/sの高速アクセスが可能なだけでなく、3mからの落下にも耐える非常に優れた堅牢性、低消費電力、低発熱と、かなり魅力的な製品に仕上がっている。

 また、大容量SLCキャッシュによって高速アクセスを長時間維持でき、低消費電力・低発熱の特徴と合わせ、4K/8Kカメラに直接接続して記録媒体として利用する場合でも安定して利用できるだろう。

 価格は競合製品と比べて少々高いかもしれないが、価格に見合った魅力はしっかり備えている。そのため、とにかく高速なポータブルSSDが必要という人や、優れた堅牢性で安心して利用できるポータブルSSDを探している人にお勧めしたい。