やじうまミニレビュー

太くて長いケーブルとさらば!1万4,800円のHDMI無線化アダプタを試してみた

やじうまミニレビューは、1つ持っておくと便利なPC周りのグッズや、ちょっとしたガジェットなど幅広いジャンルの製品を試して紹介するコーナーです。
注目度の高いプリンストンのHDMI無線化アダプタ「EZCastPocket(ワイヤレスHDMI to HDMI)」

 プリンストンが2023年9月1日に発売した、HDMI信号を無線化するアダプタ「EZCastPocket」。直販サイトなどでは販売開始から早々に売り切れになり、再入荷は11月以降とアナウンスされるなど、かなりの人気を博しているようだ。メーカーから同製品をお借りすることができたので、どんな使い勝手なのかレビューしていきたい。

PC~モニター間のフルHD映像を無線伝送

 「EZCastPocket」は、PCなどのHDMI出力端子(またはUSB Type-Cポート)と、モニターのHDMI入力端子に接続することで、PCとモニターの間の映像信号を無線化して画面表示できるようにする製品。要するに、通常は長いケーブルを1本配線しなければならないPC~モニター間の配線を、無線化によって省けるというものだ。

パッケージ内容はトランスミッター(TX)とレシーバー(RX)、それぞれの電源用USBケーブル

 出力側機器(PCなど)にはトランスミッターを、入力側機器(モニター)にはレシーバーを接続する形で、出力側端子がHDMIのモデル(HDMI to HDMI、直販価格1万4,800円)と、USB Type-Cのモデル(USB-C to HDMI、同1万5,800円)の2種類ある。今回お借りしたのは前者だ。

 HDMI to HDMIはPCだけでなくゲーム機などにも使いやすい汎用性の高いモデルということになるが、出力側のトランスミッターと入力側のレシーバーのそれぞれで電力供給が必要になるため、通常のHDMIケーブルを省略できるという利点はやや限定的な意味合いになるかもしれない。それでも、ケーブルを長々と引き回すようなことがなくなるのはメリットだろう。

トランスミッター
レシーバー。側面にあるリセットボタンやペアリングボタンは通常使うことはない
電源入力端子はType-C形状
PC本体のUSBポートやUSB充電器などとつないで電力供給する

 USB-C to HDMIのモデルはトランスミッターがType-Cポート経由で(PCなどから)電力供給されることから、電源が必要になるのは入力側のレシーバーのみ。HDMI to HDMIと比べ価格は1,000円アップするものの、DP Altモード対応のType-Cポートから映像出力できるデバイスで使うときには差額以上の利便性を感じられそうだ。それ以外の仕様はHDMIモデルとUSB-Cモデルとで違いはない。

 基本スペックは、出力・受信解像度が最大でフルHD(1,920×1,080ドット/60p)、無線規格はIEEE 802.11n(5GHz帯)で、最大約10mの見通し距離を伝送できるとしている。最初からトランスミッターとレシーバーのペアリング設定がされているため、購入後の設定は一切不要。ただ接続するだけで使い始められる簡単さもうれしい。出力側と受信側を間違えないようにするところだけ気を付けたい。

実用度の高い低遅延表示、1階~2階の距離でも使用可

 「EZCastPocket」の一番分かりやすい用途としては、PC本体とモニターを離して使う、というものだろう。PCのインターフェイス類にアクセスすることが少ないのであれば、熱源や騒音源になりがちなPC本体から離れた場所で使えた方が都合がいいし、身の回りのスペースがPC本体で占有されない利点もある。PC本体を冷却効率のいい場所(エアコンの直下など)に置いて安定動作を狙う、なんて考え方もできそうだ。

小型PCとモバイルモニターとの接続を無線化。設定不要なので実にあっさり映像表示された

 小型PCやノートPCだと、本体の冷却ファンのノイズが耳障りに感じることも少なくないので、本体から離れた場所で作業できればノイズから解放された快適な作業環境を実現できるはず。デスクトップPCしか所有していないとしても、持ち運びのしやすいモバイルモニターに「EZCastPocket」を組み合わせれば、ノートPC的なスタイルで(電波が届く範囲の)好きな場所で仕事したりもできる。もちろん、こうしたパターンでは無線接続のキーボードやマウスをセットで使うのが前提となる。

無線のキーボードやマウスとセットで使うのが前提となるだろう

 で、実際にPCとモバイルモニターで「EZCastPocket」を使ってみたところでは、意外なほど遅延が少なく、十分に実用的。マウス操作によるカーソルの移動、画面スクロール、キーボード操作によるテキスト入力に違和感はない。Webブラウジングやオフィス文書の編集も普段と変わりなく作業できるし、動画再生にも問題は感じられなかった。

 YouTubeの通常の動画(30fps)や、60fpsの高フレームレート動画の再生もOK。YouTube Premiumユーザー向けの高ビットレートな1080p Premiumでの再生も本来のクオリティを保っているように見える。

YouTubeなど動画コンテンツの再生にも問題なし

 どれだけ離して使えるか、という点については、木造2階建ての筆者宅で、PC本体とモニターをそれぞれ1階と2階に置いて試してみた限りでは、問題なく映像表示できた(直線距離で10m以内)。1階隅から2階隅、といった電波を遮る壁が増えるパターンだと接続が確立しなかったり、不安定になったりもしたが、どちらかというとモニターのそばで同時に使用していた2.4GHzの無線マウスの方が不安定になるのが先、という感じだ。

ゲームでも使えるが、シューティング系では遅延が目立つ

 PCだけでなく、コンソールゲーム機でも「EZCastPocket」は活躍してくれるだろう。たとえばNintendo Switchのドックにセットしておけば、離れた場所で画面を映し出してゲームをプレイできるので、本体はリビングなどいつもの場所に置いたまま寝室で遊ぶ、なんてことも可能。これなら真夜中にゲームをやっていても怒られることはないはずだ(ゲームのしすぎを咎められるような年齢の人がこのアイテムを使うことはあまりないとは思うけれど……)。

 ただし、トランスミッター本体やケーブル類がNintendo Switchのドックのカバー内に収まらないので、やや不格好な外観になる(こっそり他の部屋でゲームしていても、本体を見れば何かやっているのがバレバレである)。ちなみにトランスミッターの電源自体はドックのUSBポートからの供給で間に合った。

Nintendo Switchのドックにセットしたところ
カバー内には収まらず、頑張ってもこんな感じ
もちろんちゃんとゲーム画面が表示され、遊べる

 実際のゲームプレイにおいては、ジャンルによって遅延などがさほど気にならない場合と、そうではない(実用的ではない)場合がある。たとえばアクション性があまり求められないRPGであれば全く問題ないが、レスポンスの速さが重要なシューティング系(TPSやFPSなど)のゲームでは操作に対する反応の遅延が顕著に感じられる。体感的には入力から0.1秒以上は遅れているようで、まともにエイムできない。

 宇宙探索RPGの「Starfield」をプレイしてみたところでは、戦闘シーンだとやや厳しいときもあるが、それ以外の動作面では軒並みストレスなくプレイできる。とはいえ、PCのデスクトップなどでは気にならなかった映像の劣化が目立つときはある。グラフィックが全体的にノイジーで、本来の美しい3DCGを100%堪能できるとまではいかないのが残念なところだろうか。それと、これはハードやソフトの相性や環境の問題かもしれないが、Starfieldのプレイ中には音声にもプチプチというノイズが入ることがあった。

Starfieldでは映像にノイズが目立ち、音声にもノイズが入ることがあった

普段のPC利用やサーバー管理にも活躍、国内で安心して使えるのもポイント

 接続するものがなくなるわけではなく、それなりに存在感のあるアダプタなので、ごく短距離のPC~モニター間を接続するケースではそれほどメリットは感じられないかもしれない。けれど、ある程度離れた機器間を接続するとなれば別だ。通常、10mもの距離をHDMIケーブルで引き回そうとすると、そこそこ太いケーブルが必要になるため扱いにくく、途中経路のちょっとした障害物すら煩わしい。そんな場面で「EZCastPocket」があると、手軽さ・便利さを強く実感できるはずだ。

 ゲーム用途だとおすすめしにくい部分があるものの、(解像度がフルHDまでとはいえ)Webブラウジングやビジネスアプリケーションがメイン用途であれば大いに活躍してくれる。あるいは普段モニターを接続しておく必要のないサーバーマシンの管理で、いちいち配線せずに、必要なときだけ「EZCastPocket」で画面表示させる、といった応用も便利そう。

 HDMIを無線化する製品は通販サイトで類似品が多数見つかる。が、「EZCastPocket」の場合は技術基準適合証明、いわゆる技適を取得しており、安心して日本国内で使える点もメリットだろう。安価なHDMI無線化アダプタの中には、総務省への届出なしに使用すると法律違反になるものもあるので注意してほしい。