やじうまミニレビュー
最新PCIe 4.0 SSD「WD_BLACK SN850X」を検証。ヒートシンクの有無で違いは出るか?
2022年8月29日 06:11
Western Digitalから、M.2 SSD新モデル「WD_BLACK SN850X NVMe SSD」が登場。ハイエンドSSD「WD_BLACK」シリーズの最上位モデルとして位置付けられており、リード最大7,300MB/s、ライト最大6,600MB/sの高速アクセスを実現する点が特徴となっている。同時に、ヒートシンクを装着した「WD_BLACK SN850X NVMe SSD with Heatsink」も登場となる。
WD_BLACK SN850X NVMe SSDは8月31日より、WD_BLACK SN850X NVMe SSD with Heatsinkは9月9日より発売予定だ。
実売予想価格は、WD_BLACK SN850X NVMe SSDの1TBが2万2,800円、2TBが4万3,800円、4TBが8万6,800円。WD_BLACK SN850X NVMe SSD with Heatsinkは、1TBが2万3,800円、2TBが4万4,800円。
高速アクセスでゲームプレイの快適度を大きく高める
「WD_BLACK SN850X NVMe SSD」(以下、SN850X)は、Western DigitalのハイエンドSSD「WD_BLACK」シリーズの最新かつ最上位モデルだ。
ゲーミングPCでの利用をターゲットとしており、従来モデルのWD_BLACK SN850からアクセス速度やレイテンシを改善しているという。
容量は、1TB、2TB、4TBをラインナップ。同時に、ヒートシンク装着モデル「WD_BLACK SN850X NVMe SSD with Heatsink」も登場。こちらは、ゲーミングPCはもちろん、PlayStation 5など家庭用ゲーム機の増設用としても利用可能となっている。WD_BLACK SN850X NVMe SSD with Heatsinkは、容量1TBと2TBをラインナップする。
主な仕様は、以下の表にまとめた通りだ。フォームファクタはM.2 2280で、接続インターフェイスはPCI Express 4.0 x4、プロトコルはNVMe 1.4に対応。SSDとしての仕様は、ヒートシンク装着モデルとの間に違いはない。
ただし、ヒートシンク装着モデルは容量が1TBと2TBの2モデルのみとなる。また、装着されるヒートシンクは、PlayStation 5に装着できるサイズに収まっており、PlayStation 5にも問題なく装着できる。
ところで、いずれもDRAMキャッシュメモリを搭載しているが、公式ではDRAMキャッシュ容量は非公開。今回試用した2TBモデルの実機で確認したところでは、容量16Gbit(2GB)のDDR4チップ「MT40A1G16RC-062E:B」を搭載していた。
【おわびと訂正】初出時にDRAMチップを4Gbitとしておりましたが、正しくは16Gbitです。おわびして訂正させていただきます。
アクセス速度は、シーケンシャルリードが最大7,300MB/s、シーケンシャルライトが最大6,600MB/s(1TBモデルは最大6,300MB/s)と、PCIe 4.0 SSDとしてトップクラスの速度を実現。また、ランダムアクセス速度も非常に高速となっている。
これにより、ゲームの起動が高速になるのはもちろん、データロード時間も短縮され、ゲームプレイ時のデータロードに起因する遅延が最小限に抑えられるため、プレイ時の快適度を大きく高めるという。
容量 | 1TB | 2TB | 4TB |
---|---|---|---|
フォームファクタ | M.2 2280 | ||
インターフェイス | PCI Express 4.0 x4 | ||
プロトコル | NVMe 1.4 | ||
NANDフラッシュメモリ | TLC 3D NAND(112層 BiCS5) | ||
コントローラ | WD独自コントローラ | ||
DRAMキャッシュ | 搭載(容量非公開) | ||
シーケンシャルリード | 7,300MB/s | ||
シーケンシャルライト | 6,300MB/s | 6,600MB/s | |
ランダムリード | 800,000IOPS | 1,200,000IOPS | |
ランダムライト | 1,100,000IOPS | ||
総書き込み容量 | 600TBW | 1,200TBW | 2,400TBW |
保証期間 | 5年 | ||
実売予想価格 | 2万2,800円 | 4万3,800円 | 8万6,800円 |
容量 | 1TB | 2TB |
---|---|---|
フォームファクタ | M.2 2280 | |
インターフェイス | PCI Express 4.0 x4 | |
プロトコル | NVMe 1.4 | |
NANDフラッシュメモリ | TLC 3D NAND(112層 BiCS5) | |
コントローラ | WD独自コントローラ | |
DRAMキャッシュ | 搭載(容量非公開) | |
シーケンシャルリード | 7,300MB/s | |
シーケンシャルライト | 6,300MB/s | 6,600MB/s |
ランダムリード | 800,000IOPS | 1,200,000IOPS |
ランダムライト | 1,100,000IOPS | |
総書き込み容量 | 600TBW | 1,200TBW |
保証期間 | 5年 | |
実売予想価格 | 2万3,800円 | 4万4,800円 |
ヒートシンク装着モデルでは、フルカラーLEDイルミネーションを搭載。PlayStation 5装着時には、このLEDは見えなくなってしまうものの、透明ケースを利用したゲーミングPCでは、映えるイルミネーションを実現可能。
イルミネーションの発色や発光パターンは、Western Digitalが配布しているオリジナルアプリ「Western Digital Dashboard」上で変更可能だ。
加えて、Razer Chroma RGBやASUS Aura Syncなど、主要サードパーティのRGBライティング制御に対応しているため、マザーボードやビデオカード、ケースなどのRGBイルミネーションと連携したライティングもできる。
「ゲームモード 2.0」に対応
SN850Xでは、「ゲームモード 2.0」に対応する点も大きな特徴となっている。従来のゲームモードを強化したもので、3つの機能が提供される。
まず1つは先読み機能。ゲームプレイ時のデータロードなどのディスクアクセスを予測し先読みを実現。これにより、ゲームプレイ中のロード時間が改善されるという。
2つ目が適応型サーマルマネジメント機能。温度の高い状態でも優れたスループットを維持しつつ、エネルギー効率を改善するアップグレードを実現しているという。これにより、これまでのように高温時に大きく速度を下げるのではなく、スループットと温度のバランスを取ることで、高温時でも比較的高いスループットが維持できるという。
最後に、書き込みよりも読み出しを優先する制御の実現。これにより、ゲーム中は読み出し制御が最優先されることでゲームプレイの遅延を最小限に抑えられるという。
このように、ゲームプレイの快適度を高めるゲームモード 2.0は、従来同様にオリジナルツールのWestern Digital Dashboardで設定する。加えてゲームモード 2.0は、ゲームソフトが起動すると自動的にオン、ゲームソフトが終了すると自動的にオフとなる「AUTOモード」も用意される。
あらかじめゲームソフトがインストールされているフォルダを指定しておけば、そのフォルダ内のゲームソフトが起動されると自動的にゲームモード 2.0がオンとなる。いちいちモードを切り替える必要がなくなるため、SN850X利用時にはゲームモード 2.0をAUTOモードで利用するのがお勧めだ。
シーケンシャルリードは公称に届かなかったが、十分高速な速度を確認
では、ベンチマークテストを利用して速度をチェックしていこう。利用したベンチマークソフトは、「CrystaDiskMark 8.0.4」と「ATTO Disk Benchmark V4.01.0f2」、「PCMark 10 Storage Full System Drive Benchmark」、「3DMark Storage Benchmark」の4種類。
テスト環境は以下にまとめた通りで、テスト時にはSSDにマザーボード付属のヒートシンクを装着し、ヒートシンクに空冷ファンのエアフローが届く状態で計測している。NVMeドライバはWindows 10の標準NVMeドライバを利用。
CPU : Core i5-11400
メモリ : DDR4-3200 32GB
システム用ストレージ : Samsung SSD 950 PRO 256GB
マザーボード : ASRock Z590 Steel Legend WiFi 6E
OS : Windows 11 Pro
CrystaDiskMark 8.0.4の結果
CrystalDiskMarkは、設定を「NVMe SSD」にして計測。結果を見ると、シーケンシャルリードは7,000MB/sをわずかに下回っているが、シーケンシャルライトは公称の6,600MB/sを上回っている。
また、ランダムアクセス速度についても、リード、ライトともに公称を上回る速度が得られている。シーケンシャルリードのみ公称に届かなかったものの、それでも速度は申し分なく、ハイエンドモデルらしい速度が発揮されていると言っていいだろう。
なお、Western Digitalによると、AMD環境ではシーケンシャルリードも公称同等の速度が計測されるそうだ。
ATTO Disk Benchmark V4.00.0f2の結果
ATTO Disk Benchmarkの結果は、リード、ライトともに公称をやや下回った。それでも、速度的には申し分ないものと言っていいだろう。
また、ヒートシンク装着モデルも同等の結果が得られており、このことからもSSD自体の差が全くないことが分かる。
PCMark10 Storage Full System Drive Benchmarkと
3DMark Storage Benchmarkの結果
次に、PCMark10 Storage Full System Drive Benchmarkと3DMark Storage Benchmarkの結果だ。こちらも現役SSDとしてトップクラスのスコアが得られている。このことから、ゲーミングPCはもちろん、とにかくストレージ速度が必要なクリエイター向けPCでも快適度を高めてくれるはずだ。
温度と速度の変化
最後に、SN850Xにヒートシンクを装着せず、エアフローも当たらない状況での発熱と速度の変化もチェックしてみた。温度やアクセス速度の推移は、ATTO Disk Benchmarkを実行しつつ、ハードウェア情報調査ツール「HWiNFO64」を利用して計測した。
SN850Xでは、S.M.A.R.T.での温度情報が1分以上の間隔でしか更新されないようで、正確な温度変化は計測できなかった。ただ、テストが進んで比較的高温になった状態でも、あまり大きな速度低下が見られないことが分かる。このあたりから、温度と速度の制御が、従来までのような、高温時に積極的に速度を下げるのではなく、温度と速度のバランスを保って制御していることが読み取れる。
もちろん、だからと言ってヒートシンク非装着やエアフローなしでの運用が可能ということではない。最大限の性能を引き出すには、当然ヒートシンクを装着し、エアフローも確保してしっかり冷却する必要があるが、熱への対策がしっかり考えられていることは間違いなさそうだ。
ゲーミングPC向けのハイエンドSSDとして魅力的な存在
今回、SN850Xを見てきたが、PCIe 4.0 SSDとして現役トップクラスの性能が発揮されることを十分に確認できた。また、価格的にも1TBが2万2,800円、2TBが4万3,800円、4TBが8万6,800円と特別高価というわけではなく、ヒートシンク装着モデルも1,000円上乗せになるだけ。そのため、コストパフォーマンスの点でも競争力のある製品と感じる。
すでに、一部SSDベンダーから、PCIe 5.0対応SSDの登場が予告されており、おそらく速度という点ではそちらの方が圧倒することになるだろう。とは言え、PCIe 5.0 SSDはまだ利用できる環境が限られる。
そういった意味でも、まだ現役ゲーミングPCの多くがPCIe 4.0ベースであり、SN850XはゲーミングPC向けのハイエンドSSDとして申し分ない魅力を備えている。そのため、ゲーミングPCの快適度を高める超高速SSDを探しているなら、十分検討すべき製品と言える。