やじうまミニレビュー
小型化しただけじゃない、進化した“握手マウス”、ロジクール「LIFT」
2022年5月19日 06:24
従来製品とは一線を画す縦型形状のマウスであるロジクール「MX Vertical」の登場から3年、その流れを受け継ぐ「LIFT M800」(以下、LIFT)が本日19日に発売する。まるで握手するかのように握って操作する独特なスタイルはそのままに、小さな手のユーザーにもフィットするようにした小型版だ。サイズだけでなく、ほかにも細かい点で変化しているところがあるので、MX Verticalとの違いを交えながら紹介しよう。
ボタン構成は引き継ぎつつ、細部の使い勝手が向上
LIFTは、BluetoothとUSBドングル(Logi Boltと呼ぶ独自通信技術を採用した2.4GHz無線)の2通りの接続方法に対応するワイヤレスマウス。左右クリックボタンと、上下回転兼ミドルボタンとしても使えるホイール、2つのサイドボタン、DPI(カーソル速度)変更ボタンを備える、比較的オーソドックスな機能をもつ製品だ。
従来モデルのMX Verticalと比較すると、各種ボタンの位置に変更はあるもののボタン構成そのものは変わらない。最大3台のデバイスとのペアリング設定を記憶し、底面のボタンで接続先を簡単に切り替えられるところも同様だ。
DPIの設定範囲も400~4,000dpiで変わらず。このDPIの細かな設定は後述の専用ソフトを使うことで容易に変更が可能になる。
ハードウェア面での大きな変更点は、MX Verticalがバッテリ内蔵型の充電式だったのに対し、LIFTでは単3形乾電池1本を使用するところが挙げられる。電池が切れても交換するだけで継続使用できるので、長時間ヘビーにパソコンを使い続ける人にはありがたい“改善”だ。バッテリ劣化の心配がないのもメリットだろう。
また、無線接続に使うUSBドングルをマウス内部に収納できるようになったため、持ち運び時にドングルを紛失するリスクが少なくなった(MX Verticalは収納不可)。性能は変えずに小型化し、使い勝手を高めたのがLIFTの機能面での特徴、というわけだ。
大きい手の人にもおすすめできる持ちやすさ。軽快さと静音性がアップ
そんなわけで改めて外観を見てみると、LIFTは一般的なマウスを斜めに起こしたようなユニークな形状で、流線的なシルエットに渦巻き風のラインが施された、何となくオウム貝を思い起こさせるデザイン。「縦型エルゴノミックマウス」と称していることもあり、握り込んだときに手の形に自然になじむフォルムになっている。
手のひらを下に向けて被せるのではなく、握手するときのように手のひらを横方向に向けた状態にして使うため、最初だけは若干の違和感があるものの、筆者はものの数分で慣れた。底面のソールが全周に渡って貼り付けられているせいか、マウスパッド上での滑りはそこまで軽くはないが、微細なポインティング操作もしやすいという意味ではちょうどいい抵抗感と思える。
サイズは、スペックシート上はLIFTが70×108×71mm(幅×奥行き×高さ)で、MX Vertical(79×120×78.5mm)からは3方向それぞれ10mm前後ずつ縮小している。写真上では「微妙に小さくなっているかな」くらいの見た目かもしれないが、実際に握って操作すると違いは明らかだ。
あくまでも筆者の個人的な印象としては、MX Verticalが「肉厚な手の人と握手する感じ」だったのが、LIFTでは「小柄な女性と握手している感じ」ほどの差。LIFTに持ち替えたとき、女性アイドルグループの握手会に参加したかのようなドキドキ感を一瞬味わってしまった。まあ、筆者は女性アイドルグループの握手会に参加したことはないので、思い違いをしている可能性は高いが。
ちなみに筆者の手は、手袋を選ぶときは常にXLサイズ以上なので、標準よりはやや大きめと思われる。MX Verticalは主にこうした大きな手の人にマッチする製品で、対してLIFTは小~中サイズの手にフィットするデザインとしているが、筆者の手の大きさでも、どちらかというとLIFTの方がより自然に使えて、疲れにくいように思えた。
MX Verticalの場合、手首から先、つまり手全体をマウスに乗せる感覚になり、手が完全に机から離れた(浮いた)状態になる。もともとMX Verticalは、手や腕の筋肉に不自然な緊張が生まれないようにデザインした、とされる製品だが、わずかながら手が持ち上がっているような体勢になることで、反対に一般的なマウスとは違う筋肉を使っている雰囲気があった。
ところが、LIFTだと手のひらにマウス全体が収まるうえ、余った小指の側面が机に接地する。このおかげか、MX Verticalで手を浮かせながら使っているときのようなちょっとした緊張感もなくなり、マウスにかかる手の重量が分散されることもあって、より楽に操作できる。重量は、乾電池を装着した状態の実測で129g(USBドングルは除く)と、MX Verticalの実測127gよりも重いが、実使用時の軽快さはLIFTが一段上だ。
そして静音性がかなり高まっているのもポイントだろう。左右クリック音はMX Verticalが「カチャカチャ」と比較的大きめだったのが、LIFTは「コツコツ」と響きが抑えられた音。ホイールを回転したときの音もほぼゼロで、わずかに動きが滑らかになっているようにも感じる。
サイドボタンはクリック音こそ変わらないが、ボタン自体がやや大きめになり、普段の親指のポジションからの距離が短くなったことから、とっさの操作がしやすい。静音性や操作性を追求したい人にとっても、LIFTは検討の価値がありそうだ。
アプリごとのカスタマイズがより便利になったユーティリティ「Logi Options+」
Windows/macOSの専用ユーティリティは、MX Vertical向けには「Logicool Options」が提供されていたが、LIFTを含む比較的新しいマウス製品からは「Logi Options+」(試用時はベータ版)に進化するようだ。Windows 10/11の場合、USBドングルを接続すると自動でソフトウェアの案内がポップアップし、すぐにダウンロードとインストールに移ることができる。Bluetooth接続の場合は公式Webサイトにアクセスしてダウンロードする。
この専用ユーティリティは、主にマウスの各種ボタンの役割をカスタマイズするためのもの。マウスの左右クリックを入れ替えるのはもちろん、サイドボタンの機能をWebブラウザの進む/戻るに割り当てたり、ウィンドウのサイズ変更やアプリケーション切り替えなどさまざまなアクションに設定したりすることもできる。特定のアプリケーションの使用時のみ、それらの割り当てを異なる設定にする、といったことも可能だ。
新しい「Logi Options+」は、そうした従来のLogicool Optionsとできることは大きくは変わらない。ただ、インストール時にメジャーなアプリケーションのプリセットが自動で追加され、アプリケーションごとに最適なマウス設定がすぐに使えるようになる、という工夫が盛り込まれている。
たとえばパソコンにPhotoshopがインストールされていれば、それ専用のプリセットも自動追加され、ミドルボタン(ホイール)を押しながらマウスを動かすとPhotoshopで開いている画像の上下/左右移動(パン)が可能になったりする。
また、Microsoft TeamsやZoomのプリセットもあり、サイドボタンが「ビデオの開始/停止」と「マイクのミュート/ミュート解除」に割り当てられる。他のアプリケーションには共通の設定が適用されたままで影響は与えないため、単純に個別のアプリケーションの使い勝手が高まるうれしい機能だ。
従来のLogicool Optionsでも同様のカスタマイズ機能はあったが、すべて手動で設定しなければならず、OSが備える機能や一般のアプリケーション共通で使えるアクションが割り当てられるだけだった。
Logi Options+ではそのほかに、特定アプリにのみ使える「アプリ固有」の設定項目も追加され、応用の幅が広がっている。先ほどのPhotoshopの例で言えば「パン」がそれにあたり、ほかにもブラシサイズ変更や画像の拡大縮小といった項目も用意されている。
なお、Logi Options+はベータ版から正式版になったタイミングで既存のLogicool Optionsが動いていた製品にも対応するとのこと。なので、ソフトウェア面から来るこうした利便性の高さについては、MX Verticalもいずれ同等レベルになるだろう。
手の大きさに関わらずおすすめ。ただし、右利き専用
LIFTは、MX Verticalがコンパクトになり、手の大きさに関わらず扱いやすくなっただけでなく、おそらくはMX Verticalで不満に感じる人もいただろうバッテリ駆動やUSBドングルの収納不可といった細かな使い勝手もあわせて改善を図ったアップグレード版と言える。マウスの操作スペースに余裕ができる、というほどコンパクトになったわけではないが、操作は軽快で、静音性を求める人にもぜひ触れてみてほしい製品だ。
ただ、幅広いユーザーにおすすめできる、と言いにくいところも1点だけある。それは、見ての通り右利きユーザー専用になっていることだ。ボタン設定をカスタマイズしたとしてもさすがにカバーしきれるものではない。
海外のメーカー直販サイトをチェックすると左利き用のモデルも用意されているが、国内では今のところラインアップにはないようだ。需要が少ないこともあるのだろうけれど、意欲的で実用性能も高いマウス製品であるだけに、あらゆる人に体験してもらえないのはもったいないかも、思ってしまった。