やじうまミニレビュー
「仕事用」なのに「ゲーミング」とはこれいかに。PAXTONの「仕事用ゲーミングチェア」を試す
2022年3月14日 07:40
PAXTONというメーカーから「仕事用ゲーミングチェア」という製品が誕生した。正直に告白すると、この製品名を初めて耳にしたとき、脳がちょっとバグった。ついにここまできたかと。
これまで一般名詞に「ゲーミング」という枕詞をつけることで「ハイパフォーマンス」をイメージさせてきた製品は数多あり、次はどんなものが「ゲーミング」になるのだろうと面白半分で期待していたのだが、一周回って今度は「仕事用」が枕詞になるという倒錯っぷり……。
本来相容れないはずの「仕事」と「ゲーミング」が組み合わさる不思議、それが本当に成り立つのかどうか興味深いところだ。価格は3月13日現在、1万9,800円(5,000円割引+5,000円クーポン適用で)とけっこうリーズナブル。これは試さずにいられない!
快適3点セットにオットマンまで付いたフル装備チェア
仕事場である筆者の自宅に届いたのは、実測で82×67×34cm(幅×奥行き×高さ)のまあまあ巨大な箱。ヤマト運輸の宅急便で言えば最大の200サイズに相当する荷物だ(場合によってはギリギリ180サイズに収まるかもしれない)。重量もおそらく20kg前後はあるので、腰を痛めないように気をつけつつ、ある程度広い作業スペースを確保できる部屋に持ち運んでセットアップに臨みたい。
パーツはバラバラの状態で届くため、使い始めるにはまず組み立てる必要がある。説明書を読みながら、付属の六角レンチで作業していくが、取り付けに迷うようなところはほとんどなく、だいたい30~40分もあれば組み上がるだろう。鋭利な部分はあまりないものの、怪我防止用として軍手も同梱されているのは親切だ。
冒頭にも書いた通り、1万9,800円(通常価格2万9,800円)という比較的安価な製品であるにも関わらず、椅子としてはほぼフル装備状態のハイバックタイプだ。アームレスト、ヘッドレスト、ランバーサポートという3点セットに加えて、前後の位置調整が可能なオットマンまで用意されている。前者の3点セットはある意味ゲーミングチェアとしては必須に近いもの、後者のオットマンは仕事用椅子という感じで、そういう意味でも「仕事用ゲーミング」的なスペックと言える。
座面の高さ調整は、床面から座面端の頂点まで、実測で44~56.5cmあたり。アームレストの高さは基本的には固定だが、リクライニングの角度によって変化し、座面から実測で20cm前後となる(最低高と最大高は数cmの幅がある)。リクライニングの角度は直立状態からおおよそ60度くらいまで倒せるようだ。アームレストが固定かつリクライニングが水平まで倒れない、といった制約のところで、コストパフォーマンスのバランスを取っているのかな、という感じ。
高機能ゲーミングチェアに匹敵するフィット感と使い勝手
しばらく仕事用に使ってみたところ、身長177cmの筆者に、このチェアは実にフィットする。アームレストの高さはちょうど良く、高さ調整の機能はなくても一切問題なし。適正身長は155~185cmと幅広いが、身長が低めの人はアームレストは高く感じるかもしれない。
分厚い座面はクッション性は高くなく、高反発気味な安定感のあるものだ。合成皮革のグリップ感もあって身体をしっかり支えてくれるため、長時間座っていても姿勢が崩れることはない。座面の奥行きが大きめに取られ、お尻から膝の手前まで、広い範囲で身体を支えられることとあわせて、疲労軽減につながっているように思える。
リクライニングは、直立状態だと感覚としては前かがみ気味になるので、(特にデスクトップ)パソコンを使うデスクワークだと少し倒して使うことになるだろう。調整したいときは、座面下の右側にあるレバーを上方向に引いてフリー状態にし、背もたれに体重をかけたり、抜いたりして調整する。このときの背もたれの動きはゆっくりなので、細かい角度調整がやりやすいように感じた。
リクライニングを軽く倒していくと、ヘッドレストとランバーサポートの存在をしっかり感じ、負担のかかりやすい首と腰のあたりを的確に支持してくれていることがわかる。過去にいくつか試したゲーミングチェアもそうだったが、これらヘッドレストやランバーサポートは、長時間デスクワークする人にとっては身体の痛みを防止するうえで不可欠と言っていいほど。ランバーサポートは反発力が高く、ぐっと体重を載せるような使い方でも姿勢をきっちり保持してくれる。
脚を伸ばせるオットマンのありがたさを知ってしまった!
そしてオットマン。実はオットマン付きの椅子を日常使いしたのは初めてなのだが、足を伸ばしてデスクワークすることの楽ちんさをついに知ってしまった! 脚の血流が妨げられないおかげか、1日の終わりでも脚のだるさみたいなものが減っているように感じるし、寒い日でも足元の冷えが少ない気がする、という副次的な効果もある。
座面の延長として使えるので、なんとなくあぐらに近い姿勢で座りたいときにも便利だ。もちろん、ちょっと休憩したいときはリクライニングを倒すことで、全身を伸ばした状態でリラックスできる。短時間のシエスタタイムにも最高の機能かも……。
細かい機能面について言うと、背もたれ部分がメッシュになっているのが個人的にうれしい部分。汗っかきな筆者としては、椅子に通気性があることはほとんど必須条件で、背もたれだけとはいえメッシュかそうでないかで快適性には大きな差が生まれてしまう。蒸れることで発生する可能性がある嫌なニオイを防げるのもメリットだ。
座面の方はメッシュではないので、お尻周りの蒸れから逃れられなさそうなのはちょっとつらいが、今のところは寒い~涼しい季節なので蒸れることはなく、評価しにくいところ。さらりとした合成皮革で、身体が沈みにくい固めの座面であることから、そこまで汗が気になることはないのでは、と期待している。
それとデザイン面、今回お借りしたのは3種類あるカラーバリエーションのうちのブラックで、これがブラック系のアイテムが多い仕事部屋の雰囲気にズバリマッチしてくれた。座面の両サイドやアームレスト、ヘッドレスト、ランバーサポートなど、随所にあるカーボン柄テイストのあしらいは、派手に「ゲーミング」を主張するほどのものではなく、シックでさりげなく、全体的な質感の高さにつながっている。
ゲーミングの見た目は好みではないが、その機能と性能+αは欲しいという人に
そこそこ値の張る仕事用椅子というと、いわゆる社長椅子的な重厚感のある野暮ったいものをイメージするものだが、それだと在宅勤務にはやや大げさだし、限られたスペースでの使い勝手にも課題がある。だからといって完全にゲーミングなチェアは、見た目から仕事には使いにくいと感じる人も多いはず。
そんな環境・人向けに、仕事用チェアの重厚感を残しつつ、ゲーミング的な機能性とスレンダーなシルエットを備え、さらにオットマンによる一段上の使い勝手・快適性を付加した「仕事用ゲーミングチェア」は、ちょうど良さそう。ネーミングこそ奇をてらった感はあるものの、実態としては至ってマジメに、快適装備をそつなくまとめた、無難に高機能で実用性十分な椅子という印象だった。