やじうまミニレビュー

リダンダントでATXな電源「FSP Twins PRO 700W」を試してみた

やじうまミニレビューは、1つ持っておくと便利なPC周りのグッズや、ちょっとしたガジェットなど幅広いジャンルの製品を試して紹介するコーナーです。

 FSPの「Twins PRO 700W」は、一般的なATX電源とサイズ的な互換性を保ちながら2つのモジュールを内蔵し、リダンダント(冗長)構成を実現した電源ユニットだ。実売価格は5万9,900円となっている。

 以前にSFXサイズで最大容量850Wを実現した電源「DAGGER PRO」をご紹介したのだが、Twins PROもまた、同社の小型化技術をふんだんに駆使していると言っても過言ではない製品。720W出力が可能なモジュール2基を、150×190×86mm(幅×奥行き×高さ)というサイズに押し込んだ。

 もちろん、190mmという奥行きに関して言えば、ATX電源の中ではかなり長い方に属する。主流は140mmであり、長くても180mm程度がほとんどだからだ。とは言え、現代的なATXケースはフロントベイを廃しているため、よほどコンパクトさにこだわったモデルでもない限り組み込めるだろう。

 一般的にリダンダント電源はサーバーや特殊なワークステーションで使われており、専用の電源としては珍しくない。それが自作と親和性の高いATXケースでも使え、好みのシステムでリダンダント電源が使え、一般的なリダンダント電源と同じホットスワップといった使い勝手を実現できる、というのがTwins PRO 700Wのトピックだ。

 もちろん、700Wという電源容量では、ピーク時200Wを超すCore i9-11900KのようなプロセッサやGeForce RTX 3070 Ti以上のTDP 300W級のハイエンドGPUと組み合わせた際にはやや心許ないが、メインストリーム構成なら十分カバーできるだろう。

 さて今回サンプルとして送られてきたTwins PRO 700Wだが、想定よりもずいぶんと大きいパッケージで届いたのでびっくりした。それもそのはず、モジュールがあらかじめ組み込まれた状態ではなく、個別のパッケージに入っていたからだ。故障したモジュールは単体で交換できるというメッセージなのだろう。

電源としては破格の大きさのダンボールで届いてびっくり。Mini-ITXシステム並みだ
モジュールと本体、電源ケーブルが全て別だったので致し方ない

 モジュールのサイズは実測で59×58×154mm(同、取っ手やファンなどを除く)。前面には端子と厚さ27mmの40mm角ファンがついている。ファンガードなどはないが、シャーシに組み込んでしまえば問題ない。背面は取っ手がついており、ツメでシャーシに留まるようになっている。挿し込む時はそのままレールに沿ってスライドし、取り外す時は親指でツメを押して残りの指で取っ手を引っ張ればよい。メンテナンス性は上々だ。なお、出力は720Wとなっている。

 一方シャーシの方からはケーブルが直で出ており、近年流行りのモジュラー式ではないが、これは奥行き削減のため致し方ないだろう。用意されているコネクタはメイン用ATX 24ピン、12V補助用4+4ピン×2、PCI Express用6+2ピン×4、ペリフェラル用4ピン×2、SATA用×6、FDD用4ピン×1。

 これ以外に、マザーボードのUSB 2.0ピンヘッダに接続するためのケーブルが用意されている(変換によりUSB Type-Aにも接続できる)。これを接続すると専用のユーティリティ「FSP Guardian」で、電圧の状況やファン回転数、温度、出力ワット数などが確認できるといった具合である。

本体とモジュール
レールに沿ってガシャンと取り付けるだけ
モジュール側はファンがむき出しとなっている
取っ手がついており、難なく取り外し可能
取り付けると爪で固定される。取り外す際はレバーを押し下げる

 実際にCore i5-10600+Z490GTNマザーボード、G.SkillのTrident Z Royal Eliteで簡易環境を組んでテストしてみた。動作音については、やはり小型ファンが採用されているためか、アイドル時でも4,500rpmに達し、一般的な電源よりもやや甲高い音が鳴る印象。特に電源を投入した直後にフル回転になり「サーバーの電源らしい音」が鳴る。もっとも、少し離れてケース内に入れてしまえば、少なくともアイドル時はものすごくうるさいという印象ではない。

 ケーブルは当然2系統繋げることになるが、片方でも繋げるとモジュール背面のLEDが光り始める。仮にもう片方が抜けている状態など、そのLEDが赤になるので、視覚的にもわかりやすい。

両方正しく接続し、問題がなければ後部のLEDが緑色に光る
故障やケーブルによる給電が行なわれていない際は赤に光る

 先述の通り、USBを接続すればユーティリティFSP Guardian上から状況をリアルタイムで監視できる。項目はファン回転速度のほかに、モジュールごとの温度や出力、電圧/電流量が確認できる。グラフ表示などはできず、あくまでも現在の状況を監視するだけなので、必要最低限の機能といったところだ。

 ここから片方のモジュールの電源ケーブルをいきなり抜くと、電源本体からけたたましいビープ音が鳴り、FSP Guardianでもモジュール状態がグリーンからレッドに変わることが確認できた。なお、本機には電源からケーブルを抜けにくくするためのタイが付属するため、実際は断電もしくはコンセント側からプラグが抜けた、あるいはモジュール自体の故障の際に聞くことになるだろう。

USBポートピンヘッダ接続用コネクタ。これをマザーボードと接続すれば監視できる
FSP Guardianの表示。こちらは問題なく動作している状況
電源ケーブルを抜くと……
接続されていない方のインジケータが赤になる

 なお、FSP Guardianから監視する限り、通常時は2モジュールとも同時に出力を行なっているようだ。ただし、片方が720W出力可能だからといって合計で1,440W出力できる……というわけではない。あくまでも冗長構成のために2基備わっていると捉えてほしい。

2つのモジュールで負荷分散はされるが、最大は700Wまで。故障の際はすぐに片方だけで動作するようになっている
FSP Guardianでは電気の価格なども設定でき、そこから料金を試算できる

 本製品はモジュール側のファンがむき出しとなっているため、ホコリが溜まってきた際のメンテナンスもサーバーの電源を入れたまま行なえる(ビープ音は多少我慢しなければならないが)。さすがに個人用やゲーミング用途には向かないとは思うのだが、SOHOや中小企業においてファイルサーバーや業務サーバーを自作している場合、少しでも電源トラブルによるリスクを軽減したいと思うなら、良い選択肢になるのではないだろうか。