やじうまミニレビュー

USB Type-Cケーブルなどの素性を一発チェックできる必携アイテム「USB CABLE CHECKER2」

やじうまミニレビューは、1つ持っておくと便利なPC周りのグッズや、ちょっとしたガジェットなど幅広いジャンルの製品を試して紹介するコーナーです。
ビット・トレード・ワン「USB CABLE CHECKER2」。複数のUSBポートを乗せた基板を透明アクリル板でサンドイッチした構造

 USB Type-Cという規格のややこしさについては、いまさら説明するまでもないだろう。なかでもケーブルについては、見た目はそっくりなのに機能がバラバラで外見では判別できないというデメリットが、コネクタに表裏がないというメリットを完全に相殺して、ユーザーにとって悩みのタネになっている。

 USB 3.2対応なのかそれともUSB 2.0対応なのか、DisplayPort Alternate Mode対応なのか否か、これらはパッケージから出した瞬間に、きれいさっぱりわからなくなる。手元にあるケーブルが2~3本程度であれば覚えておけるかもしれないが、今後USB Type-Cがさらに普及し、手持ちの本数が増えれば、さらなる混乱を巻き起こすのは必至だ。じつに罪作りな規格である。

 こうしたUSB Type-Cケーブルの判別に重宝するのが、今回紹介する「USB CABLE CHECKER2」だ。これはType-Cをはじめとする各種USBケーブルを差し込むことで、対応規格などを表示してくれる製品だ。今回は、PCおよびスマートフォンユーザーに役に立つこのアイテムについて、どのような用途に使えるのかを紹介する。

ケーブルの仕様をLEDとOLEDディスプレイを使って表示

 本製品には複数のUSBポートが搭載されている。本体の電源を入れ、USBケーブルの両端を差し込むことで、基板上のLEDおよびOLEDディスプレイにケーブルの仕様が表示される仕組みだ。電池はCR2032を使用する。

 搭載されているUSBポートは、USB Type-Cポートが2つと、USB Type-A、Mini-B、Micro-Bがそれぞれ1つずつ。あらゆるUSBポートを網羅しているわけではないが、普及率から考えて、現行のほとんどのUSBケーブルをチェックできるはずだ。

 各LEDの意味、およびOLEDディスプレイに表示されるメッセージとその具体的な意味は、メーカーの製品ページ、およびGitHub上のドキュメントに記されている。全メッセージが掲載されているわけではなく、また文言も実際のメッセージとは微妙に違っていて混乱するが、チェックを繰り返しているうちに、おおむね意味を把握できるようになる。

製品本体。基板を透明アクリル板でサンドイッチした構造で、端子はむき出しだ
パッケージ。ビット・トレード・ワンの電子工作品ブランドで販売されるが、組み立て不要の完成品だ
USB Type-Cが2つと、USB Type-A、Mini-B、Micro-Bをそれぞれ1つずつ搭載する
基板上のLED(中央左)およびOLEDディスプレイ(左上)でケーブルの仕様を表示する

たとえば本製品でこんなことができる

 本製品の詳しい機能紹介は前述のメーカーサイトをご覧いただくとして、ここでは実際に使ってみて筆者が便利だと感じた機能を紹介する。とくに記載がなければ、両端がUSB Type-C、いわゆるC-Cケーブルについて記述している。ほかにもA-Cケーブルなど、一般的に使われる略称で記述しているので読み替えていただきたい。

従来モデル(後述)はケーブルの仕様すべてをLEDで表示する仕様だったが、本製品ではLEDで表示されるのは結線だけで、それ以外の情報はすべてOLEDディスプレイに表示される

USB 3.2かUSB 2.0かを判別する

 基板中央のLED群は、「3.2」と「2.0」のグループに分かれており、USB 3.2準拠であれば両方のグループが、USB 2.0準拠であれば「2.0」のグループのみが点灯する。また断線していたり、設計不良でピン自体が結線されていない場合は、個々のLEDの点灯/消灯で見分けられる。

「3.2」、「2.0」のグループがともに全点灯しているので、USB 3.2準拠だとわかる
こちらは「2.0」のグループのみなので、USB 2.0準拠(USB 3.2非対応)のようだ

eMarkerの有無をチェックする

 USB 3.1以上のC-CケーブルにはeMarkerと呼ばれるチップが必須だ。eMarkerが検出されれば、OLEDディスプレイに「CC:DOWN1K/E-MARKED」と表示される。もしUSB 3.1対応をうたうC-Cケーブルでこれが表示されなければ、規格違反の疑いがある。なおUSB 2.0ではeMarkerは必須ではないので、表示されなくても問題はない。

「CC:DOWN1K/E-MARKED」の表示から、eMarkerを内蔵していることがわかる
こちらはeMarker非搭載のようだが、ケーブル自体がUSB 2.0であるため規格上の問題はない

DisplayPort Alternate Mode非対応を見抜く

 Type-Cケーブルを使って映像信号を流す、いわゆるDisplayPort Alternate Modeを利用するには、少なくともサイドバンド(LEDの「SBU1」、「SBU2」)が結線されている必要がある。もしここが点灯していなければ、ディスプレイとつないでも映像を表示できないと考えられる。

 またこのLEDが点灯していれば、ケーブルがDisplayPort Alternate Mode対応をうたっていなくても、映像信号を流せる場合がある(可能性があるだけで必ず使えるわけではない)。筆者所有のAmazon Basics製C-Cケーブル(AKL6LUC017-CS-R、現在は廃番)は、この検証を経てDisplayPort Alternate Modeで使えることが判明した。

DisplayPort Alternate Mode対応をうたうC-Cケーブル。LEDの「SBU1」、「SBU2」がともに点灯している
このAmazon BasicsのC-Cケーブルは製品ページにとくにDisplayPort Alternate Mode対応と書かれていないが、USB 3.2準拠、かつ「SBU1」、「SBU2」が点灯しているため、対応する可能性がある(その後、実際に使えることを確認)

A-Cケーブルが規格に準拠しているかを判定する

 A-Cケーブルは、56kΩの抵抗を内蔵することが必須とされる。OLEDディスプレイに「UP56K/SOURCE 0.5A」と表示されれば、56kΩの抵抗がきちんと内蔵されていると判断できる。もし内蔵されているのが10kΩや22kΩなど規格外の抵抗だと、それぞれ「UP10K/SOURCE 3.0A」、「UP22K/SOURCE 1.5A」と表示されるのですぐに見分けがつく。

「UP56K/SOURCE 0.5A」と表示されることから、56kΩの抵抗が内蔵されていることがわかる
内蔵抵抗が10kΩであることを示す「UP10K/SOURCE 3.0A」が表示されている。規格に則っていないA-Cケーブルであることがわかる

A-Micro-Bケーブルがデータ通信対応か否かを判別する

 市販のA-Micro-Bケーブルは、「充電+データ通信」と「充電専用」の2種類に分けられる。LEDの「2.0」のなかにある「VBUS」、「GND」だけしか点灯せず、「D-」、「D+」が消灯していれば、充電専用(データ通信には非対応)であることがわかる。

 つまりこのケーブルを使ってスマートフォンをPCにつないだ時に「エクスプローラーでスマートフォン内を参照できるか」、「参照できず充電だけが行なわれるか」を見分けられる。今後Micro-Bの需要が減り、手元に余った複数のA-Micro-Bケーブルを減らす時、どれを優先して残せばよいかの判定に役立つだろう。

「VBUS」、「GND」だけしか点灯していないため、充電専用ケーブルのようだ
「VBUS」、「D-」、「D+」、「GND」が全点灯している。こちらは充電のほかデータ通信にも対応するようだ

充電効率のよいUSBケーブルを探す

 本製品にケーブルを接続すると、OLEDディスプレイに抵抗値(GNDとVBUSの合計)が表示される。この数値が大きければ大きいほど充電効率が悪いケーブルであることを意味するので、低品質のケーブルを選別して廃棄する場合などに役立つ。ちなみに1,100mΩを超えると表示が「HIGH」になるのだが、こうしたケーブルはかなり絶望的だ。

50cm前後のA-Cケーブルは一般的に100~200mΩであることが多いが、このケーブルは200mΩオーバーとやや抵抗値が高め
これは百均で売られているリール巻タイプのA-Cケーブルだが、1,100mΩオーバーであることを示す「HIGH」が表示されている。リール巻ゆえケーブルが細いことが影響しているのだろう

いたって便利、精神衛生上もよい?

 USB Type-C関連のさまざまなチェッカーのうち、USBケーブルそのものをチェックできる製品は少なく、本製品はじつに貴重な存在だ。「誰にでも簡単に使える」とは言いにくいが、ドキュメントを見ながらある程度の数をチェックしていくうちに、それぞれの意味を理解できるようになり、知識レベルの向上にも役立つ。

 個人的に重宝しているのは、スマートフォンやタブレットに付属する、仕様が不明なUSB Type-Cケーブルの素性チェックだ。これらは添付元のデバイスで利用できるというだけで、メーカーが仕様を明らかにしていないこともしばしば。本製品ならばそれらの素性も一発で見破れる。

 実売価格は税別4,980円とそこそこするが、前述のように「DisplayPort Alternate Modeで使えないと思っていたケーブルがじつは使えて余計な出費を避けられた」といったラッキーが何度かあれば、元はすぐに取れる。またケーブルの仕様をいちいち覚えておかなくとも、必要な時にチェックすれば済むようになるので、精神衛生上もよい。

 ある意味Type-Cのダメさゆえにこの世に生を受けた製品だが、それだけにお役立ち度はピカイチで、カユいところに手が届く存在だ。生産が追いついていないのか、現時点では入荷待ちとなっているこの製品、仕様がはっきりせず特定環境でうまく動作しないUSBケーブルが身近に転がっている人には、見つけ次第ゲットすべき製品としておすすめしたい。

本製品は以前USB Type-Cケーブルの検証記事で紹介したLimePulse製品(写真右)の後継にあたる。従来はいわゆる同人ハードウェアだったが、今回ビット・トレード・ワンから正式に製品化されたようだ。Type-Cの表裏判定など一部機能が省略されているが、全体的にはほぼ上位互換となる

【10月28日訂正】記事初出時、編集のミスによりDisplayPort Alternate Modeを誤った表記で掲載しておりました。お詫びして訂正します