やじうまミニレビュー

安価な10.5型AMOLEDディスプレイ搭載タブレット「Alldocube X」を試す

やじうまミニレビューは、1つ持っておくと便利なPC周りのグッズや、ちょっとしたガジェットなど幅広いジャンルの製品を試して紹介するコーナーです。
Alldocube X

 中国・深センのAlldocubeは昨年(2018年)8月に、10.5型のAMOLEDディスプレイを搭載したAndroidタブレット「Alldocube X」をクラウドファンディングサイトのIndiegogoで出資を募ると発表。もともとは同年10月にも出荷予定だったが、Googleの認証や背面カバーの工作精度の問題で出荷が遅れ、2019年1月初旬にようやく出荷にこぎつけた。

 今回、Alldocubeより評価サンプルが送られてきたので、簡単な試用レポートをお届けしたい。なお、本製品は日本国内で無線関連の機能を合法的に使うための技適は取得していない。このため製品の試用は筆者が1月末に中国に訪れたさいに行なっている。クラウドファンディング終了後の現在は海外のECサイトで販売されており、価格は約300ドル前後と、スペック的には安価な部類に入る。

 今から約5年前、ソニーやASUSなどの大手を含む多くのメーカーからリリースされ、大きな盛り上がりを見せたAndroidタブレットだが、近年は大手メーカーが利益率重視の製品(つまり2in1)に注力しはじめた関係で、日本国内で目にすることはかなり少なくなった。唯一、頑張っていると言えるメーカーはファーウェイとAmazon(Google Playは使えないが)ぐらいだろう。

 その一方で、中国国内ではまだ需要があるようで、そのため深センの中小企業は低価格なタブレットを粛々と製造を続け、販売をしている。そのなかでもAlldocubeは、中国語の製品情報を見ればわかるとおり、タブレット製造一筋で、かなりの実績があるメーカーだと言える。

 今回は評価機のため、パッケージにはUSB ACアダプタとUSBケーブル、本体の3点しか入っておらず、この説明は省く。付属のACアダプタはMediaTek独自の急速充電技術「Pump Express」に対応したもので、Shenzhen ACT Industrial製の「APS-KI018WU-G」。出力は5Vに加え、7V/9V@2Aや12V@1.5Aにも対応している。

 本体が対応する急速充電はPump Expressのみのようで、5VのUSBは最大1.5A留まり(と言ってもUSBの規格よりは速いのだが)となる。Quick Charge 3.0のACアダプタでは0.5Aの電流でしか充電されず、USB PD 2.0対応のACアダプタに接続すると電圧超過で警告された。

付属のACアダプタとUSB Type-A→Type-Cケーブル
ACアダプタはめずらしくMediaTekのPump Express

 背面カバーは一体成型で継ぎ目がないが、ディスプレイ側のパネルとは若干の隙間が空いているのが気になった。大部分はサンドブラスト加工でマットな質感だが、エッジ部はキラリと反射する斜めのカットが入っており、雰囲気はなかなかよい。ちなみにディスプレイの縁の色はホワイトのみだが、これはSamsungがホワイトのものしか製造していないためである。視覚的にはやはりブラックが望ましかった。

 採用されているAMOLEDディスプレイは2,560×1,600ドット(WUXGA)のもので、287dpiという高い精細度を誇る。また、色域はNTSCカバー率105%、DCI-P3カバー率100%が謳われているだけあって、RGBのどの色も発色が非常に派手で鮮やか。高い解像度と相まって、目が覚めるような印象を与える。とくに動画コンテンツの視聴は、これまでにない体験だった。

 ちなみに10.5型AMOLEDを搭載したタブレットは本製品が2番め。初搭載のタブレットは今なきBungBungameの「KALOS2」だ。ディスプレイ側は共通のため、本体サイズも酷似しており、KALOS2の246.6×176×6.4mm(幅×奥行き×高さ)に対し、Alldocube Xは244×173×6.9mm(同)。Alldocube Xの幅と奥行きが2~3mmが縮小しているのは背面カバーが一体成型だから、厚みが増しているのは指紋センサーを搭載しているためだろう。

 本体を横にすると、上下の縁が広く、左右は狭い。両手で左右を掴んで横画面で使用するさいは、手のひらや親指が画面に触れてしまい、誤操作してしまうことが多かった。本体の持ち方を工夫するか、スタンドに立てかけて使ったほうが望ましいと感じた。

金属のユニボディでシームレスな印象を受ける
エッジはカットされており、光を強く反射する
左側面に音量ボタンと電源ボタンを備える
本体下部にはなにも備えていない
重量は実測488gと、公称値の500gより若干軽かった
10.5型AMOLEDディスプレイはKALOS2に次ぐ採用
とにかく発色が鮮やかで美しい

 本機がもう1つ特徴として挙げているのはサウンド面で、旭化成エレクトロニクスのD/Aコンバータ「AK4376A」を採用している。このチップは32bit/384kHzロスレス再生をサポートし、全高調波歪(THD+N)は-106dBとされている。実際にイヤフォン(KZ ZSR)を繋げてみたところ、余計な味付けがいっさいされておらず、低音から高音までそつなくフラットな印象。ただ、静かな環境では、何も再生していなくともわずかなクラックルノイズが確認できた。

 本機はカメラを上にする一般的な持ち方では、スピーカーユニットが上部にくる点がユニーク。スピーカーの音量は十分過ぎるほどなのだが、最小に絞ってもかなり音量が出るのが気になった。おそらくソフトウェアのチューニング不足かバグかだろうが、改善してほしいところである。

 本体側面の指紋センサーは細長いが反応はよく、サスペンド時からでもほぼ一瞬で復帰する。前面カメラと背面カメラは備わっているものの、画質は褒められるほどのものでなく、オマケとして割り切るべきだ。

本体上部にスピーカーを備えrうのはユニークだろう
右側面にはUSB Type-Cポートと3.5mmステレオミニジャック、指紋センサー

 採用されているプロセッサはMediaTekのMT8176で、Cortex-A72デュアルコア+Cortex-A53クアッドコア、最大動作クロックは2.1GHz。内蔵GPUはPowerVR GX6250で、600MHzで駆動する。仕様的には、Amazonの「Fire HD 10」(2017年モデル)に採用されているMT8173(Cortex-A72 2コア+Cortex-A53×2、1.8GHz)の上位モデルといって差し支えない。実際の使用感としても、Fire HD 10よりちょっと速い程度だ。

 Antutu Benchmark v7.1.4で計測したところ、107,148というスコアを記録した。性能的にはミドルレンジだが、GPUのスコアが低い。ハイエンド3Dゲームを走らせるにはやや力不足感は否めないが、Webブラウジングや動画視聴といった普段使いなら問題ないだろう。ちなみにメモリは4GB、ストレージは64GBと、これも普段使いのタブレットとしては合格点だ。ちなみにOSはほぼ素のままのAndroid 8.1となっており、操作に戸惑うことはなかった。

Antutu Benchmark v7.1.4の結果は10万点を超える
ほぼ素のAndroid 8.1となっており、戸惑うことはないだろう

 バッテリは最長8時間とされており、やや物足りない印象だ。試しに輝度50%で2時間強のオフラインビデオ再生したところ残量が50%となった。Webブラウジングや動画視聴でも、本体左側がほんのり暖かくなることから、SoCを含めて若干消費電力が高いことが伺える。とは言え、家に常時置いて使う分には不満はなさそうである。

 現時点では日本国内で正式販売されていないが、Alldocubeは日本への正式な進出を考えているようで、将来的に技適やPSEを取得することもありうる。日本でのタブレットのニーズは確実に存在するので、ぜひとも実現してもらいたい。