Windows 8カウントダウン

完成度が今ひとつのRelease Preview



 MicrosoftがWindows 8 Release Preview(RP)を公開した。2月末に公開されたConsumer Previewに続くもので、製品化前のプレリリースとしては最終になるという。次のマイルストーンはRelease to Manufacturing(RTM)となる。今回は、RPの概要について見ていくことにしよう。

●Windows 7からのアップグレードがもっともカンタン

 Windows 8のRPは、Microsoftのサイトで公開された。CPと同様に、数MBのインストーラをダウンロードしてインストールする方法と、ISOファイルを入手し、起動メディアを作成してのインストール方法が用意されている。

 CPをすでにインストールしている場合は、そこからのアップグレードインストールが可能だが、以前のWindows関連ファイルが、Windows.oldとして保存されるだけで、実質的にはクリーンインストールと変わらない。

 これは、Windows VistaやWindows XPへのアップグレードインストールでも似たようなもので、かろうじて、Windows 7だけが、インストール済みのプログラムやデバイスドライバ等の状態を引き継げる。逆の言い方をすれば、メーカー製のPCなどでは、クリーンインストールをするよりも、Windows 7を入れた状態でアップグレードする方が、あとでデバイスドライバ等を導入する手間が省ける分、手っ取り早いともいえる。ただし、タッチパッドのドライバなどが無効になり、有効にできないなど、ちょっとした不具合も散見される。

 また、今回も、アンインストールはサポートされない。Windowsを以前の状態に戻すには、バックアップを書き戻したり、メーカー製PCの場合は、リカバリーして工場出荷状態に戻すしかないことを心しておきたい。あくまでもプレリリース版であり、製品ではないことを、しっかりと認識した上で試すようにしてほしい。

 ちなみにRPのビルド番号は8400で、CPの8250からは150上がっている。

デスクトップ右下には新しいビルド番号8400が(わかりやすいようにタスクバーを移動しています)

●オンキヨーのスレートPCを試す

 そんなわけで、今回も何台かのPCにさっそくインストールしてみた。

 その中の1台は、せっかくだからタッチ対応のものにしてみようと、オンキヨーからお借りしている11.6型スレートPC「TW3A-A31C79H」に入れてみた。

 この製品は、Core i7-2677M(1.80GHz、ビデオ機能内蔵)搭載のスレートPCで、Intel HM65 Expressチップセット、1,366×768ドット表示/マルチタッチ(静電容量式)対応11.6型ワイド液晶というスペックだ。解像度が高いので、Metroスタイルのスナップにも対応できるのはうれしい。プロセッサの処理能力が高く、使っていてストレスを感じることもない。メモリは4GB、ストレージはSSD 128GBを持つ。

 重量は約1.09kgとそれなりの重さがあり、片手で持ってタッチ操作というのはけっこうつらい。また、USBポートが1個しかないので、インストールなどでUSBメモリや光学ドライブなどを接続すると、キーボードやマウスを外付けするのが難しくなるといった不自由がある。セットアップ時などは、名前などを入力する場面があったりすると、やはり、物理的にキーボードがあった方が便利なのだ。とはいえ、光学ドライブからのインストール時は、いったんファイルがコピーされてしまえば、キーボードやマウスのレシーバーとすげ替えてしまうこともできるので、致命的な欠点ではないし、実際に稼働し始めれば特に問題を感じることはなさそうだ。

 この製品のプリインストールOSは、Windows 7 Home Premium(SP1、32bit)だ。最初、Core i7だから、当然、64bit版だろうとタカをくくって光学ドライブからインストールにとりかかろうとして、エラーが出てはねられてしまった。その時点では32bit版のダウンロードをしていなかったので、ものは試しにと、インストーラー版を使ってのインストールを試みた。

 数MBのインストーラをダウンロードして実行すると、環境のチェックが行なわれ、問題の出そうな部分が指摘される。この機体では、タッチパネルがWindows 8に完全対応していないため、十分なパフォーマンスを発揮できない可能性がある旨が表示された。それでもかまわずにインストールを進めると、何事もなく完了、RPが稼働し始めた。

インストーラでWindows 8をインストールする際に、各種の互換性がチェックされる。Windows 7をアップグレードするときだけ、プログラムなどの環境を引き継げる

 この製品に限ったことではないが、照度センサー装備のスレートPCでは、周りの明るさに応じて画面輝度を自動的に変更することができるのだが、その機能がうまく働かないことが多いようだ。これは、PC設定の「全般」で、画面項目の「画面の明るさを自動的に調整する」をオフにしておくことで対処できる。コントロールパネルの画面の明るさ設定とはまったく異なる場所に設定があるので、最初はちょっと戸惑ってしまった。

 Windows 8の問題点は、Metroスタイルからの設定と、従来のコントロールパネルからの設定で、できることが大きく異なる点だ。どちらか片方でしかできないこともあれば、両方でできることもある。ここはもう少し整理しておくべきではないかと思った。

従来通りのコントロールパネルには、それぞれのアプレットが用意されている。頻繁に使うのでタスクバーにピン留めしておくと便利だ
Metroスタイル側のPC設定。こちらでしかできないこともある

●Flashは導入済み

 新しいOSをインストールすると、たいていやることは決まっていて、クリーンインストールの場合はAdobe ReaderやAdobe Flashを入れたり、Officeをインストールしたり、最小限の常用ユーティリティをインストールしたりする。

 今回も、いつもの調子で、Adobeのサイトを開き、Flashを入れようとしたら、このバージョンのIEには、すでにFlashが含まれている旨のメッセージが表示された。やらなければならないことが1つ少なくて済むということだ。

Flashを入れようとすると、すでにインストールされている旨のメッセージが表示される

 さて、気になるマルチタッチだが、Windows 8において、規定されたタッチインターフェイスには、次のようなものがある。

・プレス&ホールド(長押し)
・タップ(クリックのようなもの)
・スライド(ドラッグのようなもの)
・スワイプ(弾く感じ)
・ピンチとストレッチ(縮小、拡大)
・ターン(回転)
・エッジからのスライド(下から)
・エッジからのスライド(右から)

 スマートフォンでお馴染みの「フリック」という操作がない。実際、フリックは素早いスワイプと考えればいいのだろう。

 オンキヨーのスレートPCは、これらマルチタッチの機能については警告が出るほどの問題があるようには感じられなかった。ただ、頻繁に使うWindowsボタンが用意されていればよかったのにとも思う。Windows 8ロゴの取得要件でも、Windowsキーの装備が必須になっているようだ。

●新しさが感じられないRP

 RPを実際に入れてみて、CPからあまり代わり映えがしないという感想を持った。Microsoftがすでに発表しているように、Windows 8では、AeroGlassが廃止されることになっているが、そのあたりのGUIも以前のままだ。しつこいようだが、Wi-Fiアクセスポイントの接続優先順位を決めるUIも用意されていない。先に挙げたように、コントロールパネルとMetroスタイルUIのPC設定におけるチグハグさも気になるところだ。

 Microsoftでは、RTMに向けて、まだ変更を加える予定でいるのだそうで、実際に開発が完了した際には、このRPとは似ても似つかぬものになって登場することも想定できる。それではいったい何のためのRPなのかという疑問も残る。

 先日、アップデートがあったばかりのSkyDrive統合についても見送られていた。Liveのサービスサイトからユーティリティをダウンロードしてインストールすると、エクスプローラのお気に入りにフォルダが登録されるだけで、他のプラットフォームでの挙動と変わらない。だからといって、MetroスタイルのSkyDriveアプリが、同期したフォルダを参照するかというとそうはなっていない。ただ、Metroスタイルの「フォト」アプリには、SkyDriveをインストールした他のPCに格納されている写真を見るための機能は実装されている。ただし、うまく接続できる環境とできない環境があるようだ。

Metroスタイルのフォトアプリ。SkyDriveを入れた環境で許可されていれば、その写真データを参照できる

 以前に紹介したWindows to Goも試してみた。USBメモリにWindowsイメージを入れておき、どんなPCでも自分の環境を稼働させることができるというものだ。32GBのUSB 3.0メモリに入れて作成したが、何もしていないのに、残り容量がやけに少ないことに気がついた。調べてみると、ずいぶん大きなハイバーネート領域が予約されているようだ。このとき試したのは、32GBのメインメモリを持つPCだったので、必然的にハイバーネートファイルが大きくなっていたようだ。Windows to Goが休止状態に入れてうれしいことはあまりなさそうなので、コマンドプロンプトでpowercfgを使ってOFFにして様子を見ることにした。

 そんなわけで、Windows 8は、とにかく先がよく見えない状況だ。かろうじて目新しいとすれば、コンピューターのプロパティを開いたときに表示される新しいWindows ロゴがシンプルな新しいものになったところだろうか。

 Microsoftでは、歳末シーズンには各社からWindows 8 PCが発売されることになるだろうと表明している。そのためには、あと2カ月程度でRTMにこぎつける必要がある。残された時間はわずかだ。