■Windows 8カウントダウン■
Windows 8のコンシューマープレビュー(CP)が公開された。「Windows 8」は、まだコードネームということで、実際の名前がどうなるかは正式に発表されてはいないが、いよいよリリースまでのカウントダウンが本格的に始まったことになる。
このタイミングに伴い、Windows 8に関するさまざまな情報を提供するため、Windows 7のときと同様に、このコラムを連載することになった。どうか、ぜひ、ご愛読いただきたい。
●公開されたコンシューマープレビューインストール後のスタート画面。これがメトロのUIで、Windows 8の顔になる。 |
CPは、その名の通り、コンシューマー、つまり、エンドユーザーが誰でも自由にインストールして、次世代Windowsの機能を試してみることができるバージョンだ。2011年秋の開発者向けイベントBuildで公開されたものも、ダウンロードして試してみることはできたが、デベロッパープレビューということで、一般のユーザーが試してみることは推奨されていなかったし、英語版だけの提供だった。
Windows 7のときの連載スタートが2009年5月で、ほぼ半年間、月に2度の連載を続け、同年10月に最終回をお届けした。Windows 7の発売日は2009年10月22日で、リリースから2年半が経過している。
Windows 7を一般のユーザーが自由に試せるようになったのは、2009年5月のRC版(出荷候補版)だったので、今回のCP版は、それよりもちょっと早いタイミングだ。
Microsoftによれば、2月29日の公開初日だけで、100万件がダウンロードされたという。いかに多くの期待が集まっているかが想像できるというものだ。
CP版は、64bit版と32bit版が用意され、英語版や日本語版などを含め、5カ国語版が公開されている。
今回は、そのインストールについて紹介することにしたい。
●ISOイメージをダウンロードしてDVDを作っておこうWindows 8のコンシューマープレビュー版のページがすでにMicrosoftのサイトに用意されている。もちろん日本語に翻訳されたページだ。
このページ内の、「今すぐダウンロード」をクリックするとダウンロードページに遷移する。ここで、メールアドレスと自分の住んでいる地域を入力し、プライバシーポリシーに同意のチェックをつけるとダウンロードボタンが表示され、そのクリックでダウンロードが始まる。
環境に応じたファイルがダウンロードされる |
このダウンロードは一瞬で終わる。ファイルサイズがたった5MBしかないからだ。といっても、Windows 8がそんなに小さいわけではない。ここではセットアッププログラムであるWindws8-ConsumerPreview-setup.exeがダウンロードされるだけで、必要なバイナリは、セットアップ時にダウンロードされる仕組みだ。時間がなくてすべてダウンロードが完了しなかったとしても、デスクトップにDownload Windowsのショートカットが作成され、いつでも続きを再開することができる。
ただ、このセットアップ方法をとらなくても、複数台のPCにインストールする予定がある場合などには、ISOイメージをダウンロードしておくと便利だ。こちらは64bit版が約3.1GB、32bit版が2.3GBと、それなりのサイズがある。
いずれにしても、インストールをやり直したりすることもあるだろうから、ISOイメージをダウンロードし、DVDを作っておいた方がいいだろう。なお、セットアッププログラムを使った場合はプロダクトキーの入力は不要だが、DVDからのインストールの場合は入力が求められる。プロダクトキーは、ISOイメージのダウンロードページに記載されているので、チェックしておいてほしい。
●Windwos 7が動いていれば大丈夫インストールで求められるシステム要件としては、「Windows 7が動作するのと同じハードウェアで問題なく動作します」と、はっきり明記されている。
その詳細を記しておくと次のようになる。これだけだ。特に超えるのが難しいハードルではない。
・クロック周波数1GHz以上のプロセッサ
・メインメモリ1GB(32bit)または2GB(64bit)
・HDDの空き領域:16GB(32bit)または20GB(64bit)
・Microsoft DirectX 9 以上のグラフィックス
さらに、特定の機能を使用するための追加要件として次のような要件がある。
・タッチを使う場合は、マルチタッチに対応しているタブレットまたはディスプレイ
・Windows Storeにアクセスし、アプリをダウンロードして実行する場合は、アクティブなインターネット接続と1,024×768ドット以上の画面解像度
・アプリをスナップする場合は、1,366×768ドット以上の画面解像度
アプリのスナップというのは、Windows 8で採用されるメトロUIにおいて、複数のアプリをスクリーンに表示して使うケースだ。これについては機会を見て詳しく紹介するが、ほとんどすべてのWindows 7 PCでCPを試せるはずだ。推測にすぎないが、きっと、製品版も同様の要件となるに違いない。
●CPをWindows to Goを試す他のパーティションへのインストールをすると、起動可能なセットアップ用のUSBメモリ作成などができる。 |
CP版を試すには、Windows 7へのアップグレードインストール、他パーティションへのインストール、クリーンインストールなどの方法がある。アップグレードの場合は、設定や個人用ファイル、アプリなどを引き継ぐか、個人用ファイルだけを引き継ぐか、何も引き継がないかを選択することができる。
くれぐれも注意してほしいのは、いくらCPであるといっても、まだ製品になっていない評価版にすぎない点。日常的に使っているかけがえのないデータの入っているPCにインストールするのはお薦めできないし、まして、仕事に使っているPCに入れるのはやめておいたほうがいい。
そこで今回は、できるだけ既存のPC環境に影響を与えずに、Windows 8を試す方法について紹介しておきたい。
Windows 8では、Windows to Goと呼ばれる機能が提供される。これは、USBメモリやUSB HDD、SDカードなどにWindows 8をインストールしておき、それを使って起動すれば、どんなPCでも自分の環境を再現して使えるようにするというものだ。当然、現役で使っているWindows 7環境に影響を与えることはない。こうしたプレビュー版を試すにはもってこいの機能でもある。
Windows 7環境で、Windows to Goを作成するために用意するものをピックアップしてみよう。
・Windows 8のセットアップ用DVD
ISOイメージをダウンロードしてDVDを作成しておく。ただし、ISOイメージを展開し、その内容を取り出せる環境があるなら、DVDを作成する必要はない。必要なのは、その中のファイル1つだけだ。具体的には、ルートのsourcesフォルダ内にあるinstall.wimで、これはWindows Imaging Formatという技術を使ったインストールイメージファイルだ。これを取り出しておく。
・Windows 7用のWindows 自動インストールキット(AIK)
このページからISOイメージをダウンロードしてDVDを作成し、それを使ってインストールする。必要なのはプログラムファイル1つだけなのだがインストールしないと取り出せない。こちらは、\Program Files\Windows AIK\Tools\x86(またはamd64)にあるimagex.exeを取り出しておく。取り出したらAIKはアンインストールしてかまわない。
・できるだけ高速なUSBストレージ
運用時の作業領域などを考慮すると、32GB以上のものが望ましい。デバイスはHDD、SSD、USBメモリ、SDカードなど、何でもかまわない。ただし、そのデバイスを使って起動できるPCであること。たとえば、BIOSの起動設定で、内蔵スロットに装着したSDカードからの起動を指定できないPCもある。ただ、その場合も、カードリーダなどを使えば起動できる場合もある。
・Windows 7環境
Windows to Go デバイスの作成手順。すべてWindows 7環境で作業できる。 |
日常使っているものでいい。diskpartやbcdbootなどのユーティリティはWindows 7に標準で含まれている。
これらが用意できたら、作業のフォルダ、たとえば、\tmpなどを用意、そこに、取り出したinstall.wimとimagex.exeをコピーしておき、コマンドプロンプトを管理者権限で起動して、そのフォルダをカレントにする。
そして、USBストレージを接続してフォーマットしておこう。手順としては、ディスクパーティション管理ユーティリティdiskpartを起動して、下記の一連のコマンドを実行してインストールするパーティションを用意する。ディスク番号は、listされたディスクから選択して番号を入力するが、ここで別のドライブを指定したりすると、大変なことになるので、十分に注意してほしい。
C:\>tmp diskpart
DISKPART> list disk
DISKPART> select disk ディスク番号
DISKPART> clean
DISKPART> create partition primary
DISKPART> active
DISKPART> format fs=ntfs quick
DISKPART> exit
これで、NTFSフォーマットされたまっさらのストレージができる。ドライブ名が割り当てられていない場合は、スタートボタンをクリックし、「コンピュータ」を右クリック、ショートカットメニューから「管理」を実行し、記憶域の「ディスクの管理」で、作成したパーティションにドライブ名を割り当てる。パーティションを右クリックすればショートカットメニューに「ドライブ文字とパスの変更」が表示されるので、適当なドライブ名を割り当てよう。
ドライブとして認識されたら、imagexを使ってinstall.wimを、そのドライブに展開する。
そのためのコマンドラインは、
C:\tmp> imagex /apply install.wim 1 h:\
となる。hは、作成したパーティションのドライブ名だ。展開にはかなりの時間がかかる。手元の環境では、Class10のSDカードをUSB 2.0のカードリーダに装着した状態で165分かかった。これがもっとも遅く極端な例だが、USB 3.0のフラッシュメモリで23分、USB 3.0接続のSSDで18分を要した。このことからもわかるように、読み書き、特に、ランダムアクセスが高速であるデバイスが望ましい。
展開が完了したら、bcdbootを使ってシステムパーティションを設定する。コマンドラインは次のようになる。
C:\tmp> bcdboot h:\windows /s h:
ここまでの作業はすべて Windows 7環境でのものだ。これでWindows 8を起動可能なディスクが完成した。PCのBIOS設定で、そのデバイスからの起動を許可して、起動すると、Windows 8の初期設定が始まる。
なお、Windows 8は、UEFIブートもサポートしているが、Windows 7のbcdbootは、そのサポートがない。念のために、Windows 8が稼働し始めたら、次のようにして、システムパーティションを書き直しておこう。この時も、くれぐれもドライブ名を間違わないように注意してほしい。
C:\tmp> bcdboot h:\windows /s h: /f all
また、正常に動作していることを確認したら、できればそのUSBデバイスはBitlockerを使って暗号化しておこう。暗号化することで、パスワードで保護されるようになる。設定は、コントロールパネルのアプレット「BitLockerドライブ暗号化」で行なう。暗号化しておけば、紛失しても内容が漏洩することはないし、パスワードさえ入力すれば、他の環境での読み書きも可能だ。まさに持ち歩けるWindows 8ができあがる。
●動き出したはいいものの今回は、実際のWindows 7へのアップグレードインストールもやってみたし、いくつかの環境で完成したWindows 8 to goを起動してみたが、Microsoft のいうように、Windows 7が動く環境であれば、おおむね問題はなさそうだ。
Microsoft security essentialは、アンインストールしないとWindows 8 CPのセットアップができない。 |
Windows 8のセットアッププログラムは、アップグレードインストールを実行しようとすると、その環境で正しく動作するかどうかの互換性レポートが表示される。ほとんど問題はないのだが、一例としてMicrosoft Security Essentialが動かない。CPのインストールをするには、あらかじめアンインストールしておけという警告が表示される。
また、クリーンインストールの場合は、Intel HD Graphicsをうまく認識してくれないようだ。しかも、このデバイスのWindows 7用のインストーラはWindows 8で動いてくれない。ノートPCの多くで使われているGPUなので、ここはひとつ、Intelの早期対応を待ちたい。スライドパッドなども、タッチによるスクロールなどで問題が起こるが、Windows 7用のデバイスドライバを用意すれば使えるようになる。
現時点では、インストール直後に5つのWindows Upadateが見つかった。インストール直後は、Microsoft Officeがうまくインストールできないのだが、これらの更新を適用すれば、正常にインストールすることができるようになる。また、キーボードを英語と勘違いするケースにも遭遇したが、ドライバを入れ替えて解決できた。これらはすべてクリーンインストール時のトラブルであり、アップデートでは既存環境がほとんどそのまま保たれる。
また、個人的に困っている点としては、今の時点で、Wi-Fiの接続優先順位の設定をする方法を見つけられていないことだ。Windows 7であれば、コントロールパネルの「ネットワークと共有センター」の左側ペイン上部に、コマンドリンクとして、「ワイヤレスネットワークの管理」が用意されているが、Windows 8 CPにはそれが存在しないのだ。
ともあれ、CPは、おおむね快適に動いていて、すぐにでも実用に使えそうな気がするくらいではあるのだが、まだまだ奥深い部分がわからない。ちなみに、CPのバージョンは、6.2.8250で、デスクトップ右下には、Build 8250と表示される。現行のWindows 7は6.1.7601なので、0.1の進化だということがわかる。5.xのXPから6.0のVistaになり、7で、6.1、そして、今、8のCPが6.2ということは、バージョンの上ではほとんど進化がない
ということで、今回は、ここまでとする。次回は、さらにつっこんで、Windows 8 CPを見ていくことにしよう。