大原雄介の半導体業界こぼれ話
QualcommとArmの関係に改善の兆し。そしてMIPSによるRISC-V CPUの話
2026年1月27日 06:07
ArmがQualcommに配慮?
今年のCESの記事は山ほど上がっているわけだが。そのCES期間中、Armがちょっと驚くべき動きを見せた。Armの公式アカウントが、Qualcommのソリューションについて言及したのだ。
Autonomous machines are increasingly shaped by the need for real time AI that can sense, decide, and act within strict power, safety, and reliability constraints.
— Arm (@Arm)January 7, 2026
This week at#CES2026, Qualcomm introduced a full suite of robotics technologies - centered around the new…
AI defined vehicles are making real time AI a more central element of the car, where power-efficiency, safety, and reliability shape what's possible.
— Arm (@Arm)January 8, 2026
At#CES2026, Qualcomm highlighted how Snapdragon Digital Chassis- based on the Arm compute platform-and an expanded collaboration…
2024年12月の記事でも触れたが、QualcommとArmは訴訟合戦を繰り広げていた。なのでこの時期ArmとQualcommは本当に仲が悪かったわけだが、この記事にも書いたように2024年12月にデラウェア州連邦地方裁判所はQualcommがArmとのライセンスを遵守している、という判断を下している。ただこの時、ArmとNuviaの間のライセンス契約に関してまだ判決が出ていなかった。
ところが2025年10月にこのNuviaにまつわる裁判が結審し、Qualcommの完全勝利に終わった。Qualcommのリリースによれば、デラウェア州連邦地方裁判所は、Armによる、NuviaとArmの間のALA(Architecture License Agreement)に違反しているという主張が、陪審員の満場一致で却下された。また、裁判所はArmによる新たな裁判の請求も棄却しており、これでArmによる訴えは完全に敗訴した格好だ。
ちなみにこの裁判はArmによる訴えに関するものであり、Qualcommによる反訴は2026年3月に裁判が開かれることになっている。ただこのQualcommの反訴が仮に敗訴したとしても、QualcommがNuvia由来のコアを利用することには何の制限も掛からないわけで、そういう意味ではQualcommはArmに対して有利なポジションに就けたといえるだろう。なお、この件に関してArmからは何のリリースも出されていない。
こういう背景を前提に、先の投稿を見なおすと、非常に趣深いものがある。Qualcommは現地時間1月5日にDragonwing IQ10シリーズを発表し、これを利用した動作デモを会場で展示していた投稿もそうだし、スナップ写真まで公開している。また自動車向けにもSnapdragon Digital Chassisの展示を行なっている。この2つに関するQualcommのリリースをArmが投稿する、というのは、ArmからQualcommに対する関係改善に向けた第一歩という意思がヒシヒシと伝わってくるものである。
#CES2026is in its robotics era, but ours made physical#AIstand out in the smartest way.pic.twitter.com/zH09z4Uwuj
— Qualcomm (@Qualcomm)January 10, 2026
I made a new friend at#CES2026! Proud to collaborate with@VinMotionGlobalon the development of humanoid robots powered by our@QualcommDragonwing Robotics suite.pic.twitter.com/8AskqvTy1J
— Cristiano R. Amon (@cristianoamon)January 9, 2026
Cars? Smart. Cars powered by@SnapdragonDigital Chassis? Smartest.#CES2026pic.twitter.com/Tqf0cf9Qeq
— Qualcomm (@Qualcomm)January 9, 2026
ちなみに対するQualcommの方はそもそもArmの投稿に何の反応も示していない。上に述べたように、これからArmに対する裁判が始まるのだから当然ではあるが、逆にいえばそういう時期にArmがQualcommに歩み寄りを見せるということの意味合いを深読みしたくなってしまう。
ArmとQualcommが手を取り合って、というシーンが見られるまでにはまだ大分時間が掛かりそうである(そもそもそういう日が来るのか?という疑問もなくはないのだが)。
GlobalFoundriesのIPビジネス
1月5日にMIPSは「S8200」を発表した。こちらの記事でも簡単に触れられているのだが、要するにRISC-VのVector Extensionとは別に、2次元の行列演算(Matrix Extension)が可能なアクセラレータを追加したという話だ。
Intelでたとえるなら、AVX512(これがVector Extension)とは別にAMX(これがMatrix Extension)を搭載した格好だ。
実はRISC-V Internationalでも以前からMatrix Extensionの検討を行なっている。Matrix Extensionは2021年にT-Headが提案。2024年11月の時点でv0.5が完成。現状はv0.6になっているのだが、今回のMIPSの記述を見る限り、このMatrix Extensionの提案に沿ったものかどうか確認できないというか、なんか独自のインプリメントな公算が高い(断言はできないのだが)。
ま、この話は実は枕である。そんなMIPSというかその親会社のGlobalFoundriesが1月14日、こともあろうにSynopsysからARC Processor IP Businessを丸ごと買収することを発表した(GlobalFoundriesのリリース、MIPSのリリース、Synopsys)。
この買収でGlobalFoundriesは、Synopsysの持っていたARC-V CPU IPだけでなくARC-Classic/ARC VPX-DSP/ARC NPXなどの従来のARCコア、それとASIP(Application-Specific Instruction Set)プロセッサ向けのツール(ASIP Designer/ASIP Programmer)などのツール群も含んでいる。買収が完了した場合、ARC IPの資産と開発チームはMIPSと合流することになる、としている。
ARCは元々、ARC International PLCとして英国で生まれた。同社の母体は1992年にやはり英国で創業したArgonaut Gamesというゲームの開発会社である。そんなArgonaut Games、1990年代に任天堂と協業することになり、ファミコン向けのゲームの開発を行なっていたのだが、Super Nintendo Entertainment System、つまりスーパーファミコン向けにSuper FXチップの開発を任天堂と共同で行なうことになる。
Argonaut Games自身は1995年に、ゲームそのものの開発を行なうASL(Argonaut Games)と、それ以外のビジネスを行なうATL(Argonaut Technologies Limited)に分割されるのだが、Super FXチップの開発チームはATLに属することになった。そのATLが1997年にARC International PLCとして独立企業になったわけだ。2000年には、Tangent-A4というコアをMicroProcessor Forumで発表していたりする(図1)。
そんなARC Internationalだが、2009年にVirage Logicに買収される。同社はIP Providerとして2000年台後半から急速に成長した会社であり、ARC Internationalの買収後に今度はNXPのCMOS IP事業(CMOS I/OやAnalog/Mixed Signal、SoC infrastructure IP等)を買収するなどラインナップの充実を図っていたが、2010年にそのVirage LogicがSynopsysに買収され、自動的にARC InternationalもSynopsysに移っていたわけだ。
このARCコア、Synopsysから15年以上に渡って供給されてきただけに、顧客は多い。ARC VPX DSPはかなり広範なオーディオ機器に利用されているし、最近発表されたARC-VシリーズのRISC-VコアはInfineonの次期車載向けMCUに採用されることが確定している。
ちょっと補足しておくと、本来Infineonは2023年に創業した合弁会社であるQuintaurisの創業メンバーの1社でもあり、なので将来的にはQuintaurisの開発するRISC-Vコアを採用するはずである。なのだが、既に自動車メーカーのRISC-V MCUを利用しての開発はスタートしている。ARC-Vコアは既に存在しており、機能安全などの要件も満たしているうえ、仮想プラットフォーム上で動作するので、今すぐRISC-Vベースでの開発をメーカーがスタートできるというメリットがある。
このため次世代のRISC-VベースのAurixはARC-Vで実装し、Quintauris由来のコアはその次以降で実装ということにした模様だ。実際顧客からすれば同じRISC-Vだからこの移行はそう難しくない。
そもそもGlobalFoundriesがMIPSを買収した時にはその目的が謎で、苦し紛れに「MIPSにRISC-Vコアの開発以外にチップレット設計のサポートまで担わせたいのではないか?」とか書いたわけだが、ARC IPを全部買収とかいうところを見ると、IPプロバイダーとしてのビジネスを本腰を入れて立ち上げたいように見える。それを何でGlobalFoundriesがやるのか、という部分は相変わらず分からない(相乗効果が非常に薄く感じる)のだが、方向性そのものは間違いなさそうだ。
ところでMIPSとARCは一緒になる、としているわけだが、どちらのブランドを残すつもりなのだろう?既存の顧客ベースでいえばARCの方がMIPSより遥かに多いので、たとえばARC MIPS S8200とかになっても不思議ではないのだが、知名度からいえばMIPSが上で、MIPS ARC-Vとかになる可能性もある。
製品ラインナップ的にいえばMIPSはまだ製品数が多くない(M8500/I8500/P8700/S8200の4製品。旧MIPSアーキテクチャまで入れればMIPSの方が遥かに多いが、新規デザインはもうなさそうだ)のでARCに寄せる方向になりそうな気はするのだが。













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