■多和田新也のニューアイテム診断室■
12月15日に発表されたRadeon HD 6900シリーズ。発表時にシングルビデオカードでのベンチマークレポートをお届けしたが、これに加えて、今回は両製品のCrossFire環境におけるベンチマーク結果を紹介していきたい。
●テスト環境は踏襲、一部ドライバをアップデートすでに製品の詳細については紹介しているので、いきなりではあるがテスト環境の紹介から入りたい。環境は表に示したとおり。基本的には前回のシングルビデオカードのテストに、CrossFire環境を追加する格好である。テストに使用したビデオカードは写真1~5のとおりである。
ただし、Radeon HD 5870については、前回、公開されているCATALYST 10.11を用いてテストを行なった。今回、CrossFire環境をテストするにあたりドライバを統一するため、シングルビデオカード環境の再テストも実施し、Radeon HD 6900シリーズのレビュー用にAMDから配布されたドライバを用いている。
また、参考までにNVIDIAの最上位モデルであるGeForce GTX 580のシングルビデオカード環境における検証結果を併記した。この結果は今月上旬にテストしたGeForce GTX 570の記事から流用した数値である。
ビデオカード | Radeon HD 6970 (2GB) Radeon HD 6950 (2GB) Radeon HD 6870 (1GB) Radeon HD 5870 (1GB) | GeForce GTX 580 (1.5GB) |
グラフィックドライバ | 8.79.6.2-101206a-109984E | GeForce Driver 263.09β |
CPU | Core i7-860(Turbo Boost無効) | |
マザーボード | ASUSTeK P7P55D-E EVO(Intel P55 Express) | |
メモリ | DDR3-1333 2GB×2(9-9-9-24) | |
ストレージ | Seagete Barracuda 7200.12 (ST3500418AS) | |
電源 | KEIAN KT-1200GTS | |
OS | Windows 7 Ultimate x64 |
【写真1】Radeon HD 6970を搭載する、XFXの「HD-697A-CNFC」 | 【写真2】Radeon HD 6950を搭載する、XFXの「HD-695A-CNFC」 | 【写真3】Radeon HD 6870を搭載する、XFXの「HD-687A-ZNFC」 |
【写真4】Radeon HD 5870を搭載する、XFXの「HD-587A-ZNF9」と「HD-587X-ZNFC」 | 【写真5】GeForce GTX 580を搭載する、GALAXY Microsystemsの「GF PGTX 580/1536D5」 |
では、DirectX 11対応タイトルのベンチマーク結果から紹介していきたい。テストは「3DMark11」(グラフ1)、「Alien vs. Predator DirectX 11 Benchmark」(グラフ2)、「BattleForge」(グラフ3)、「Colin McRae: DiRT 2」(グラフ4)、「Lost Planet 2 Benchmark」(グラフ5)、「Stone Giant DirectX 11 Benchmark」(グラフ6)、「Tom Clancy's H.A.W.X 2 Benchmark」(グラフ7)、「Unigine Heaven Benchmark」(グラフ8)の結果である。
ハイエンド製品だけあって、CPUによる性能の頭打ちと見られるシーンも多い。そのため参考にすべきは主に高負荷条件でのテスト結果ということになる。全般に負荷が高めなDirectX 11対応タイトルということもあり、2枚によるスケーリング結果は大きいところで2倍程度の伸びを示す結果もある。一方で、DiRT2やH.A.W.X 2あたりは差が小さい。
Radeon HD 6970とRadeon HD 6950では、後者のほうが全般に伸びは大きめだ。これはCPUによるボトルネックの影響が小さいためだろう。ただ、タイトルによってはRadeon HD 6970でも2倍近い伸びを示すところがあるわけで、メインストリームのプラットフォームであっても、タイトル次第では高い効果を期待できるということになる。
また、Lost Planet 2やH.A.W.X.2のように、過去のテストでもNVIDIA製品が好結果を見せた結果においては、Radeon HD 6970のCrossFireでも追いつけない結果が目立つ。ただ、こうした特定のタイトルを除いては、CrossFire環境が強さを見せている。
ちなみに、Stone Giantについては、シングルビデオカード・CrossFire比が2倍を超えるという信じられない結果が出た。これはCrossFireによる伸びもさることながら、ドライバのチューニング不足等の理由によりシングルビデオカード時に期待どおりの性能が出ていないものと思われる。これはCrossFireのテストを行なったことで結果として見えてきたことになるが、シングルビデオカード環境において、このタイトルは今後さらなる伸びが期待できそうである。
続いて、DirectX 10/9世代のベンチマーク結果である。テストは「3DMark Vantage」(グラフ9、10)、「Crysis Warhead」(グラフ11)、「Far Cry 2」(グラフ12)、「Left 4 Dead 2」(グラフ13)、「Tom Clancy's H.A.W.X」(グラフ14)、「Unreal Tournament 3」(グラフ15)だ。
こちらはRadeon HD 6900シリーズにとっては軽負荷ということもあってか、よりCPUの影響が色濃い印象を受ける結果だ。もっとも性能が伸びたしたH.A.W.Xでは、Radeon HD 6970が1.75倍、Radeon HD 6950が1.85倍程度。次いでベンチマークソフトである3DMark Vantageが続くといった具合である。
Left 4 Dead 2のように極端に伸びが小さいタイトルを除けば、おおむね1.3~1.5倍程度の伸びとなっている。
なお参加までに、各テストにおける最大負荷条件の結果から、シングルビデオカード時の結果を「1」とした場合の相対値をグラフ化したものを紹介しておく(グラフ16)。
【グラフ16】Radeon HD 6970/6950におけるCrossFireによる性能変化(シングルカード=1) |
最後に消費電力の結果である(グラフ17)。こちらはおおむねシングルビデオカード時の結果を基に、ビデオカードが増えた分、消費電力も増した格好といえる。
Radeon HD 6970のCrossFireは550Wを超え、ほかの環境から飛び抜けている。ハイエンド環境のCrossFireということで、従来の最上位モデルであったRadeon HD 5870とは違った電源環境が要求されると考えて良いだろう。
それに比べるとRadeon HD 6950の電力は落ち着いており、こちらはRadeon HD 5870と同等程度。電源環境は据え置きでビデオカードのみを交換する、といったアップグレードが可能だ。
【グラフ17】各ビデオカード使用時のシステム消費電力 |
●ハイエンド製品らしさを見せるRadeon HD 6900のCrossFire
以上のとおりテスト結果を紹介してきた。Radeon HD 6900シリーズは、Radeon HD 5800シリーズを置き換える存在としてラインナップされる製品であるが、性能や消費電力を見ると、その製品ブランドの数字が示すとおり、より上位の製品であることを如実に見せつけた格好といえるだろう。
その意味では、Radeon HD 6870/6850のCrossFireが、コストパフォーマンスの面で上位モデルを脅かす面白い構成といえたが、Radeon HD 6970/6950のCrossFireはハイエンド環境をベースに、より高い性能を求めるユーザーに向けた、ある意味、よりニッチなニーズに応えるものといえるだろう。
そうしたユーザーにとっては、やはりRadeon HD 6970のCrossFireが魅力に映るであろう。一方、Radeon HD 6950のCrossFireは、電力面でRadeon HD 5870からの置き換えが可能という点で別の魅力を持っている。