米AMDは14日(現地時間)、これまで「Cayman」のコードネームで呼ばれてきたハイエンドGPU「Radeon HD 6900」シリーズを発表した。
Radeon HD 6000シリーズとしては、コードネーム「Northern Islands」こと「Radeon HD 6800」シリーズがすでに投入されている。これらの基本アーキテクチャが、それまでの「Radeon HD 5000」シリーズを踏襲していたのに対し、新製品は核となる基本的な部分の構造を見直した。
従来製品では「VLIW」(Very Long Instruction Word)と呼ばれるコアとなるプロセッサが、4つの単精度浮動小数点積和算ユニットと1つのスーパーファンクションユニットで構成されていた。これが、Radeon HD 6900シリーズでは、4つの単精度浮動小数点積和算ユニットのみの構成へ改められた。
従来のスーパーファンクションユニットによる処理は、3つか4つ全てのユニットを使うことになるものの、5wayに比べ4wayでは、面積当たりの総合性能が10%向上し、スケジューリングやレジスタ管理が簡素化された。
全体的な構造としては、VLIWからなるSIMDエンジンと、スレッドディスパッチプロセッサに加え、ラスタライザやテッセレータなどからなるセットアップエンジンも2セットに分かれ、デュアルコア化が進んだ形になった。
レンダーバックエンド(ROP)も、16bit整数演算性能が2倍に、32bit浮動小数点演算性能(単精度/倍精度とも)は2~4倍に高速化された。
テッセレータは6800シリーズの第7世代から、第8世代へと進化。5800シリーズの第6世代から2倍程度性能向上させた第7世代に対し、さらに性能を2~3倍向上。これにより、DirectX 11対応ゲームの性能が3割~7割程度向上するという。
また、非同期ディスパッチや、メモリの読み書きを行なう2基の双方向DMAエンジンの搭載、フロー制御の改善などにより、GPGPU性能も引き上げた。
電源管理周りも、電力制御プロセッサを内蔵することで、クロックサイクル毎に監視し、ブロック毎に動的にクロックを調整する「PowerTune」機能を実装。これにより、ユーザーは±20%の範囲でGPUへの供給電力を手動で調整できる。ゲームでは、しばしばピーク値よりも低いクロックで動作するので、この機能を活用することで、フレームレートを維持したまま、動的にクロックを調整し、消費電力を減らすことができる。
Radeon HD 6900シリーズの概要とブロックダイヤグラム | プロセッサは4wayのVLIWへの変更 | レンダーバックエンドも強化 |
テッセレータは第8世代になりさらに性能が伸びた | GPGPU周りも改善 | 動的にクロックサイクル毎にコアクロックを調整できる |
具体的な製品としては、Radeon HD 6970と同6950の2製品が用意される。前者の主な仕様は、コアクロックが880MHz、SP数が1,536基、テクスチャユニットが96基、ROP数が32基。メモリは5.5GHz駆動256bit接続のGDDR5を2GB搭載。ピーク性能は単精度が2.7TFLOPS、倍精度が675GFLOPS。消費電力は300W以下で、電源コネクタは8ピン+6ピン。米国でのオンライン推奨価格は369ドル。
後者の主な仕様は、コアクロックが800MHz、SP数が1,408基、テクスチャユニットが88基、ROP数が32基。メモリは5GHz駆動256bit接続のGDDR5を2GB搭載。ピーク性能は単精度が2.25TFLOPS、倍精度が563GFLOPS。消費電力は225W以下で、電源コネクタは6ピン×2。米国でのオンライン推奨価格は299ドル。
いずれも2スロット厚で、標準のディスプレイインターフェイスは、DVI×2(シングルリンク+デュアルリンク)、mini DisplayPort(1.2)×2、HDMI(1.4a)。
このほか、「Eyefinity」による最大6画面出力や、最大4枚までのCrossFireXに対応する。
なお、10月時点では、デュアルGPUとなる「Antilles」こと「Radeon HD 6990」も第4四半期中に投入予定だったが、こちらは現時点では発表されていない。そのため、同社資料では、Radeon HD 6970投入後も最速のカードはRadeon HD 5970となっている。
Radeon HD 6970とGeForce GTX 480の性能比較 | Radeon HD 6950とGeForce GTX 470の性能比較 |
CrossFireXでのスケーリングも改善 | GeForceシリーズとRadeonシリーズの製品価格帯の比較 |
(2010年 12月 15日)
[Reported by 若杉 紀彦]