瀬文茶のヒートシンクグラフィック

EVERCOOL「SILENT SHARK」

~メモリ冷却ギミックがユニークなサイドフローCPUクーラー

 今回はEVERCOOLの「SILENT SHARK」(型番:HPO-12025)を紹介する。購入金額は6,980円だった。

吸気側ファンを用いてメモリモジュールを冷却するギミックを搭載

 EVERCOOLの「SILENT SHARK」は、2基の120mmファンを備えるミッドシップレイアウト採用のサイドフローCPUクーラーだ。

 「SILENT SHARK」のヒートシンクは、6mm径ヒートパイプ6本と、CPUとの接地面に銅板を採用したベースユニット、1ユニットあたり45枚の放熱フィンで構成される放熱ユニットを2基で構成されている。スペック的にはハイエンドヒートシンクと肩を並べるものを持っている「SILENT SHARK」だが、ヒートパイプやベースユニットにメッキ処理などの表面処理は施されておらず、ハイエンドヒートシンク特有の高級感は持ち合わせていない。

 ヒートシンクだけの仕様で言えば、大して珍しくもないミッドシップレイアウトタイプのサイドフローCPUクーラーなのだが、「SILENT SHARK」最大の特徴はファンを搭載するマウンタにある。「SILENT SHARK」のファンマウンタは、吸気側に搭載するファンの角度を「0度」と「30度」の2段階に調整することができるのだ。このギミックを用いて「30度」の角度でファンを搭載すれば、「SILENT SHARK」のファンでメモリモジュールの冷却を行なうことができるのである。

 「SILENT SHARK」が標準で備えるファンは、いずれも120mm角25mm厚サイズのフレームを採用しているが、それぞれスペックが異なっている。メモリ冷却ギミックを備える吸気側に取り付けるファンは、1,400rpm±15%の固定回転ファンで、付属の抵抗ケーブルを用いることで1,000rpmで動作する。一方、ヒートシンク中心部に設置するファンは、PWM制御により800(±25%)~2,200(±10%)rpmの範囲で回転数を調整可能な他、付属の抵抗ケーブルを用いると1,300rpmの固定回転ファンとして動作する。

 いずれのファンも、前述のファンマウンタに取り付けて利用するが、どちらも専用品というわけではないため、市販の120mm角25mm厚フレーム採用ケースファンと交換することもできる。

「SILENT SHARK」本体(ファン搭載角度「0度」)
付属品一覧
ファン搭載角度「30度」設定時
ファンマウンタ
吸気側ファンの角度はマウンタの固定バーを差し替えることで変更する
左がヒートシンク中心部に収めるPWM制御対応ファン。右が吸気側に取り付ける固定回転ファン
メモリスロットとのクリアランス(ASUS MAXIMUS V GENE使用時)
拡張スロットとのクリアランス(ASUS MAXIMUS V GENE使用時)

 周辺パーツとの干渉に関しては、120mmファン向けのヒートシンクであるため、他の140mmファン向けサイドフローCPUクーラーに比べ、拡張スロットとのクリアランスは確保されている。今回テストに用いたASUS「MAXIMUS V GENE」は、CPUソケットと拡張スロットの距離が短いマザーボードだが、「SILENT SHARK」搭載時に拡張スロットとの干渉問題は発生しなかった。

 一方、メモリスロットとのクリアランスについては、最もCPUソケットに近いメモリスロットの上空に「SILENT SHARK」のヒートシンクが被ってしまった。ファンとメモリモジュールの干渉については、前述のギミックを利用することで回避可能だが、ヒートシンクは位置をずらすことができないため如何ともしがたい。なんとも残念な仕様である。

冷却性能テスト結果

 それでは、冷却性能テストの結果を紹介する。今回の検証では、「SILENT SHARK」の特徴であるファン角度調整機能について、デフォルトの0度設定時と、メモリの風があたるように調整した30度設定時の温度を測定した。なお、それぞれ、ファンの制御を行なわないフル回転動作時と、付属の抵抗ケーブルを使用した際の温度をそれぞれ取得している。

 冷却性能テストの結果を見ていくと、Core i7-2600Kの定格動作クロックである同じ3.4GHz設定時は58~61℃を記録し、CPU付属クーラーより24~27℃低い数値を記録した。また、発熱量が増すオーバークロック同時については、4.4GHz設定時に69~74℃、4.6GHz設定時は78~85℃を記録し、全ての条件でテスト完走に成功している。

 数値的には概ね優秀な結果だが、抵抗ケーブルを使用した状態でもファンの回転数が2基とも1,000rpmを超えていることと、ヒートシンクのスペックを考えれば順当な結果と言ったところだ

 また、吸気側のファンがヒートシンクから離れる格好となる「ファン角度:30度」時のスコアは、デフォルト状態である「ファン角度:0度」時に比べ若干温度が高くなっている。今回のテストでついた差は大きくとも2~3℃なので、この程度の差で収まるのであれば、メモリへの冷却が期待できる「ファン角度:30度」は十分使い物になりそうだ。

 動作音については「SILENT SHARK」という名に反して大き目だ。フル回転時はヒートシンク中心部に配置したファンが2,000回転以上で動作することもあって風切り音が大きく、抵抗ケーブルを利用した際もファンの軸音が気になった。ヒートシンク中心部のファンには抵抗ケーブルを使用せず、PWM制御で回転数を絞ればある程度の静音動作は期待できるが、静音動作にこだわるのであれば、標準ファンの交換も検討したい。

ユニークなギミックと確かな冷却性能を持つCPUクーラー

 吸気側ファンの角度を調整可能にすることで、CPUのみならずメモリへの冷却も賄おうという「SILENT SHARK」の設計は、なかなかユニークで面白い。また、このギミックをただの飾りではなく、十分実用的なものとするだけの冷却性能を持っている点もポイントだ。ユニークなギミックと十分な冷却性能を持った「SILENT SHARK」は、6,980円という価格が手頃に見えてくるCPUクーラーである。

 それだけに、メモリスロットに被ってしまうヒートシンク本体の設計が惜しいところだ。せっかくメモリ冷却用のギミックを備えているのだから、大型ヒートスプレッダを搭載したメモリモジュールへの配慮が欲しかったところである。

 残念ながら、大型のヒートスプレッダを備えたメモリとの組み合わせに注意が必要ではあるが、メモリファンの搭載が難しい片ラッチ式のメモリスロットを搭載したマザーボードや、エアフローでのメモリ冷却が期待できないPCケースを使っているのであれば、「SILENT SHARK」をチョイスしてみるのも面白そうだ。

EVERCOOL「SILENT SHARK」製品スペック
メーカーEVERCOOL
フロータイプサイドフロー
ヒートパイプ6mm径×6本
放熱フィン45枚×2ユニット
サイズ140×166×165mm (幅×奥行き×高さ)
重量1,180g
対応ファン120mm角25mmファン×1 (吸気側)
電源:3pin
回転数:1,400rpm±15%
ノイズ:26dBA(最大)
サイズ:120×120×25mm
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120mm角25mmファン×1 (ヒートシンク中心部)
電源:4pin
回転数:800(±25%)~2,200(±10%)rpm
ノイズ:16~38dBA
サイズ:120×120×25mm
対応ソケットIntel:LGA 775/1155/1156/1366/2011
AMD:Socket AM2系/AM3系、Socket FM1

(瀬文茶)