瀬文茶のヒートシンクグラフィック

Thermaltake「NiC C5」

~新CPUクーラー「NiC」シリーズの最上位

 今回はThermaltakeのサイドフロー型CPUクーラー「NiC C5」(型番:CLP0608)を紹介する。購入金額は8,980円だった。

120mmファン採用の薄型サイドフロー

 Thermaltakeの「NiC C5」は、TDP 230Wに対応するサイドフロー型CPUクーラーで、Thermaltakeの新CPUクーラーブランド「NiC」シリーズの最上位モデルである。ThermaltakeのNiCシリーズは、放熱ユニットの厚みを50mm以下に抑えたサイドフローCPUクーラーシリーズで、NiC C5を筆頭に4つのCPUクーラーがラインナップされている。

 NiC シリーズ製品のヒートシンクは、ヒートパイプの本数やベースユニットの仕様がそれぞれ異なっており、今回紹介するNiC C5は、5本の6mm形ヒートパイプと、ニッケルメッキが施された銅板を接地面に採用したベースユニット、52枚のアルミニウム製放熱フィンを備える放熱ユニットで構成されている。

 120mmファンに最適化されたオーソドックスなサイドフローレイアウトのヒートシンクで、形状に特筆すべき特徴はみられない。ヒートシンクの作りは良い方で、特に、ヒートパイプとベースユニットの接続部と、ベース面の鏡面仕上げは見事な出来だ。

NiC C5本体
Thermaltake NiCシリーズ。左からNiC F3、NiC F4、NiC C4、NiC C5。それぞれベースユニットの仕様やヒートパイプの本数が異なる

 NiC C5は、標準で2基の120mm角25mm厚ファンを搭載している。2基のファンは電源ケーブルを共有しており、3ピンファンコネクタ1本で2基のファンが動作する仕様だ。なお、電源ケーブルにはファンの回転数を制御するためのボリュームが用意されており、1,000~2,000rpmの範囲で回転数を制御できる。

 2基のファンは、ヒートシンクを覆う形状のブラケットを介してヒートシンクに固定する。ファンのフレームを抑えて固定するタイプのブラケットなので、ファンのフレームがブラケットの形状とマッチすれば、市販の120mmファンに交換することも可能だ。

準搭載の120mmファン
ファンコントロール用のボリューム
リテンションキット
メモリスロットとのクリアランス(ASUS MAXIMUS V GENE使用時)
拡張スロットとのクリアランス(ASUS MAXIMUS V GENE使用時)

 周辺パーツとの干渉具合については、ヒートシンクの厚みを50mmに抑えたことにより、メモリとのクリアランスは十分に確保されている。CPUとメモリスロットの距離が近いASUS MAXIMUS V GENEとの組み合わせでこの程度の余裕があれば、ほとんどのマザーボードでメモリスロットとの干渉問題は起こらないだろう。

 一方、最上段の拡張スロットとの間にはほとんど余裕がない。一応、拡張カードを挿すことは可能だが、カード裏面への実装パーツがあるカードを差した場合、NiC C5と干渉する可能性がある。CPUソケットと拡張スロットの距離が近いレイアウトのマザーボードを利用しているのであれば注意が必要だ。

冷却性能テスト結果

 それでは、冷却性能テストの結果を紹介する。今回のテストでは、標準ファン付属のボリュームコントローラを利用して、低速時(約1,080rpm)、中速時(約1,500rpm)、全開時(約2,140rpm)の3段階にファン速度を調整してテストを行った。

 検証結果を確認してみると、3.4GHz動作時のCPU温度は58~61℃を記録しており、CPU付属クーラーと比べて24~27℃低い温度となった。CPU付属クーラーとの比較としてはまずまずの結果と言ったところだろう。オーバークロック動作時の温度については、4.4GHz動作時に71~74℃、4.6GHz動作時は81~87℃をそれぞれ記録している。

 NiC C5の検証結果は、全体的にファンの回転数による温度の変化が少ない結果となっているのが特徴的だ。もっとも発熱量が大きい4.6GHz動作時こそ、低速時と全開時で6℃の差がついているが、その他の条件ではファン速度による温度差は最大で3℃に留まる。低速時でもファンの回転数が1,000rpmを超えていることから、ボリュームを絞り切った状態でも、放熱ユニットを十分冷却できる風量が得られているのだろう。

 ファンの動作音については、2基の120mm角ファンが2,000rpm以上で回転する全開時は風切り音が非常に大きい。1,500rpmまで絞っても動作音はそれなりに大きく、ケースに収めれば気にならなくなるレベルとは言い難い。ボリュームを絞り切った1,080rpm動作時は風切り音はかなり少なくなるが、ファンの軸音がやや気になった。静音性という面ではNiC C5の標準ファンはイマイチな印象だ。

メモリと干渉しないサイドフロー型CPUクーラーの新たな選択肢

 「NiC C5」は、サイドフロー型CPUクーラーの基本形をしっかり作り込んだヒートシンクを採用したCPUクーラーだ。冷却性能ではミッドシップレイアウトを採用する超大型サイドフローCPUクーラーには及ばないが、メモリスロットとの干渉を抑えた設計は魅力的な要素だ。最近増えつつあるメモリスロット干渉回避設計採用CPUクーラーの選択肢として、NiC C5やその他のNiC シリーズ製品を検討してみると良いだろう。

 その他、NiC C5を検証していて気になった点としては、ファンの回転数を調節するボリュームのケーブルが短く、ケースの外にボリュームを引き出して調整するというような使い方が出来ない点だ。このため、ボリュームでファンの回転数を変更するには、都度ケースを開けてボリュームを操作する必要がある。ファンの回転数を固定して使いたいユーザーにとっては問題無いのだろうが、負荷状況や室温などに応じてファンの回転数を調整したいユーザーにとっては、手間の掛かる仕様である。

 樹脂製パーツでヒートシンクを覆うというデザインも好みが分かれるところだが、NiC C5の購入にあたっては、ファン周りのスペックが自分の要求とマッチするのかが、競合製品との比較のポイントになりそうだ。

Thermaltake「NiC C5」(CLP0608)製品スペック
メーカーThermaltake
フロータイプサイドフロー
ヒートパイプ6mm径×5本
サイズ(ヒートシンクのみ)140×50×160mm(幅×奥行き×高さ)
重量811g
対応ファン120mm角25mm厚ファン ×2
電源:3ピン(ファン制御用ボリューム付属)
回転数:1,000~2,000rpm
最大風量:99.1CFM
ノイズ:20~39.9dB
サイズ:120×120×25mm
対応ソケットIntel:LGA 775/1150/1155/1156/1366/2011
AMD:Socket AM2系/AM3系、Socket FM1/FM2

(瀬文茶)