瀬文茶のヒートシンクグラフィック

Noctua「NH-L12」

~デュアルファン仕様のローハイト・トップフロー

 今回はNoctuaのトップフロー型CPUクーラー「NH-L12」を紹介する。購入金額は6,980円だった。

120mmファンと92mmファンのハイブリッド・デュアルファン仕様

 オーストリアの冷却パーツブランドであるNoctuaから、2012年3月に発売されたローハイト/トップフローCPUクーラーが、今回紹介する「NH-L12」である。120mmファンと92mmファンを混載したハイブリッドなデュアルファン構成を採用した、トップフロー型CPUクーラーとしては珍しいタイプの製品だ。

 NH-L12のヒートシンクは、4本の6mm径ヒートパイプと銅製プレート採用のベースユニット、60枚のアルミニウム製フィンからなる放熱ユニットで構成されている。Noctuaブランドの製品らしく、ヒートシンクは細部まで良く作り込まれており、ヒートパイプと接するベースユニットや放熱フィンはしっかりろう付けされている。また、ヒートパイプには光沢感のあるメッキ処理を施す一方で、放熱フィンには光沢を抑えた表面処理がなされており、落ち着きのある上品なヒートシンクに仕上がっている。

 標準で搭載する2基のファンのうち、ヒートシンク上部に取り付ける120mmファンが「NF-F12 PWM」、下部に取り付ける92mmファンが「NF-B9 PWM」だ。いずれもPWM制御に対応したファンであり、「NF-F12 PWM」は300~1,500rpm、「NF-B9 PWM」が300~1,600rpmの範囲で回転数を制御できる。また、各ファン用に静音化アダプタが同梱されており、これを使用することで最大回転数を「NF-F12 PWM」は1,200rpm、「NF-B9 PWM」は1,300rpmに制限することが可能だ。

 120mmファンを搭載するトップフロー型CPUクーラーであるが、メモリや拡張スロットとの干渉についてはある程度余裕がある。ここ最近、本連載で紹介したトップフロー型CPUクーラーのThermalrightの「AXP-100」やCoolerMasterの「風神ワイド」のような、放熱ユニットが大きく張り出すようなデザインは取っていないため、取り付け方向による周辺パーツとヒートシンクの位置関係の変化は少ない。なお、Noctuaは詳細な互換性リストを公開しているので、あらかじめ確認しておくとよいだろう。

 一方、Low Profileデザインを謳うNH-L12だが、NH-L12をLow Profile向けのCPUクーラーとして利用する場合、上部に搭載している120mmファンを取り外し、ヒートシンク下部の92mmファンのみで運用することになる。この場合、全高を66mmまで抑えることが可能となるが、当然冷却性能は低下することになる。Noctuaでは、NH-L12を92mmファンのみで利用した場合、IntelのTDP 130Wはケースのエアフロー次第で対応可能だが、AMDのTDP 125W CPUには非対応であるとしている。

冷却性能テスト結果

 それでは冷却性能テストの結果を紹介する。今回はNH-L12に120mmファンと92mmファンを搭載したデュアルファン構成で、PWM制御を無効にしたフル回転時と、PWM制御で20%に設定した際の温度のほか、静音化アダプタを利用して最大回転数を絞った際の温度を取得した。

 なお、グラフ中に記載してある回転数については、左側が120mmファン「NF-F12 PWM」、右側が92mmファン「NF-B9 PWM」のものとなっている。

【グラフ】テスト結果

 各条件の温度データを確認していくと、3.4GHz設定時はファンフル回転時と静音化アダプタ仕様時にそれぞれ59℃と61℃を記録し、CPU付属クーラーより24~26℃低い温度となっている。また、オーバークロック動作である4.4GHz設定時には73~76℃、4.6GHz設定時でも84~87℃を記録した。ローハイトCPUクーラーとしてはなかなか優秀な結果と言えるだろう。

 一方、PWM制御20%設定時はCPU付属クーラーより7℃高い92℃を記録しており、発熱の増す4.4GHz設定や4.6GHz設定では94℃を超えたため測定を中止している。PWM制御20%設定時は、120mmファンが300rpm、92mmファンが640rpmという極めて低速で動作しており、さすがにこの低速ファンではCore i7-2600Kがフルロード時に発する熱に対応することは厳しいようだ。

 動作音については、搭載ファンのフル回転時に120mmファンの風切り音の大きさが目立つ一方で、静音化アダプタを使うと120mmファンの回転数低下に伴って風切り音も大幅に減少する。PWM制御20%設定時になると、風切り音はほぼ気にならず、ファンの軸音やヒートシンクの共振も特に発生していないため、たいへん静かに動作していた。静音化アダプタとPWM制御を併用するれば、静音性とパフォーマンスのバランスが取りやすいだろう。

プレミアムクーラーメーカーらしい上質なヒートシンク

 NH-L12は、ThermalrightのAXP-100や、SilverStone「SST-NT06-PRO」のように、ヒートシンクサイズあたりの冷却性能が魅力となるCPUクーラーだ。コストパフォーマンスや、純粋な性能に関しては同価格帯の製品に劣ることの方が多いだろう。ヒートパイプの本数やヒートシンクサイズからすれば優秀な冷却性能も、純粋に性能面で見れば6,980円という価格が割高に感じられる。

 もっとも、NH-L12の魅力がヒートシンクサイズあたりの冷却性能にしか無いわけではない。丁寧に、そして上品に作りこまれたヒートシンク、詳細な互換性リスト、充実した付属品、完成度の高いリテンションキットなど、NH-L12にはプレミアムクーラーメーカーであるNoctuaならではのこだわりが凝縮されている。それらは、「CPUを冷却する」というCPUクーラー本来の目的からすれば過剰な要素なのかもしれないが、手にした際の満足感は、ほかのハイエンドCPUクーラーメーカーの製品でもなかなか味わえないものである。

 もし、ヒートシンクの美しさに心を惹かれたことがあるのなら、ぜひ手にして貰いたいヒートシンクの1つである。

Noctua「NH-L12」製品スペック
メーカーNoctua
フロータイプトップフロー型
ヒートパイプ6mm径×4本
放熱フィン60枚
サイズ(ヒートシンクのみ)128×150×66mm(幅×奥行き×高さ)
重量680g(ヒートシンクのみ:415g)
付属ファン1120mm角25mm厚ファン「NF-F12 PWM」 ×1
電源:4ピン (PWM制御対応)
回転数:300~1,500rpm(1,200rpm、静音化アダプタ使用時)
最大風量:93.4立方m/h(74.3立方m/h、静音化アダプタ使用時)
ノイズ:22.4dB(18.6dB、静音化アダプタ使用時)
サイズ:120×120×25mm
付属ファン292mm角25mm厚ファン「NF-B9 PWM」×1
電源:4ピン (PWM制御対応)
回転数:300~1,600rpm
(1,300rpm、静音化アダプタ使用時)
最大風量:64.3立方m/h(52.6立方m/h、静音化アダプタ使用時)
ノイズ:17.6dB(13.1dB、静音化アダプタ使用時)
サイズ:92×92×25mm
対応ソケットIntel:LGA 775/1155/1156/1366/2011
AMD:Socket AM2系/AM3系、Socket FM1/FM2

(瀬文茶)