瀬文茶のヒートシンクグラフィック

SilverStone「SST-NT06-PRO」
~ハイスペックなローハイトヒートシンク



 今回は、SilverStone製のトップフロー型CPUクーラー「SST-NT06-PRO」を紹介する。購入金額は6,480円だった。


●全高82mmのローハイト・トップフローCPUクーラー

 SST-NT06-PROは、SilverStoneから2008年6月に発売されたトップフロー型CPUクーラー「SST-NT06-E」の後継モデルであり、2006年4月に発売された「SST-NT06」から続くSilverStoneブランドのトップフロー型CPUクーラーの最新モデルとなる製品だ。

 前モデルのSST-NT06-Eは、冷却ファンの搭載も可能なトップフロー型ヒートシンクでありながら、SilverStone製のSmall Form Factorケース「Sugo Series」に組み込むことで、電源ユニットへの吸気(ケース外排気)を利用して冷却することができるように設計されていた。この設計はSST-NT06-PROでも踏襲されており、冷却ファンをヒートシンクの上部ではなく、下側に配置するという珍しいレイアウトを採用することによって、ヒートシンクの全高を前モデルと同じ82mmに抑えている。

 このローハイト設計のヒートシンクは、6本の6mm径ヒートパイプと52枚のアルミニウム製放熱フィン、銅製の設置面を持つベースユニットから構成される。各部は丁寧に作りこまれており、全体に施されためっき処理も相まって高級感のあるヒートシンクに仕上がっている。

 SST-NT06-PROには標準ファンとして、120mm角20mm厚のファンが同梱されている。このファンはPWM制御に対応しており、回転数を1,000~2,200rpmの範囲で調整することができる。前述の通り、SST-NT06-PROはこのファンを専用のファンクリップでヒートシンクの下部に取り付けるのだが、SilverStoneのWebサイトでは下方から吸い上げてヒートシンクに吹き付ける方向で取り付けられている。一般的なトップフロー型CPUクーラーとは真逆のエアフローとなる取り付けだが、電源ユニット下部の吸気ファンを利用して冷却を行なうというコンセプトに基づくものだろう。

 なお、SST-NT06-PROにはファンクリップが2セット同梱されており、リブのない120mm角ファン2基で放熱ユニットをサンドイッチする形でのデュアルファン運用が可能となっている。一般的なトップフロー型CPUクーラー同様、ファンをヒートシンク上部に搭載することも可能なので、運用する環境にあわせてファンの取り付け方向は自由に選択できる。

 メモリや拡張スロットなど、周辺パーツとの干渉に関しては、ヒートシンクをどの方向で取り付け方によって異なってくる。今回テスト環境にセットアップした取り付け方向では、ヒートシンク本体はメモリスロットに被らない代わりに、最上段の拡張スロット上空にファンクリップが若干被さる形となった。取り付け方向を180度変えればメモリスロットに被さるし、時計回りに90度変えれば拡張スロットには被らない。実際の環境では、何を優先するのかによって最適な方向を選択することになるだろう。


●冷却性能テスト結果

  それでは冷却性能テストの結果を紹介する。今回は付属ファンのPWM制御を無効にしたフル回転時と、PWM制御で20%に設定した際の温度をそれぞれ取得した。なお、ファンの取り付けは、SilverStoneのWebサイトに掲載されている写真に準じて、下方から吸い上げてヒートシンクに吹き付ける方向で取り付けている。

 結果をみてみると、3.4GHz動作時にはCPU付属クーラーより17~25℃低い温度を記録しており、CPU付属のクーラーとは一線を画す性能を持っていることを示している。一方、オーバークロック動作時に関しては、4.4GHz動作時に74~83℃と高めの温度を記録し、4.6GHz動作時はフル回転で85℃、約1,200rpmで動作する20%制御時はCPU温度が94℃を超えたためテスト中止となった。トップフロー型CPUクーラーとしてはまずまずの結果だが、サイズの割には優秀なパフォーマンスと言って良いだろう。

 動作音については、回転数が約2,300rpmにも達するフル回転時はかなり大きな風切り音が発生している。コンパクトな筐体に収めるCPUクーラーとしては厳しいレベルのノイズだ。一方、20%制御時の約1,200rpm動作時は風切り音も小さく、ファンの動作音はほとんど気にならなかった。付属ファンは調整次第で静音動作も可能なので、実際に運用するのであれば、PWM制御を上手く活用したいところである。

●ケースに合わせて選びたいクーラー

 今回、冷却性能テストで確認したSST-NT06-PROのパフォーマンスは、6,480円という価格から考えれば少なからず物足りなさを感じるものだ。純粋に冷却性能を求めて選ぶのであれば、SST-NT06-PROはそれほど魅力的な製品とは言えない。

 SST-NT06-PROの真価は、コストパフォーマンスではなく、サイズあたりのパフォーマンスだ。いくら冷却性能が優れていようとも、大型のサイドフロー型CPUクーラーをスリムケースやキューブケースに収めることはできない。そのような条件でこそ、SST-NT06-PROのサイズあたりの冷却性能の高さが活きてくるのである。

 SilverStone製のケースに最適化されていたSST-NT06-Eをベースにした製品であるため、やはりSilverStone製ケースと相性が良い設計がなされているが、デュアルファンでの運用も可能なSST-NT06-PROは、他メーカーのケースでも十分利用できるだけの汎用性を備えている。CPUクーラーの設置スペースが限られている環境なのであれば、SST-NT06-PROに価格以上の価値を見出すこともできそうだ。

SilverStone「SST-NT06-PRO」製品スペック
メーカーSilverStone
フロータイプトップフロー型
ヒートパイプ6mm径×6本
放熱フィン52枚
サイズ140mm×139mm×82mm(幅×奥行き×高さ)
重量700g (ファン搭載時)
付属ファン120mm角20mm厚ファン ×1
電源:4pin
回転数:1,000~2,200rpm
風量:33.623~73.969CFM
サイズ:120×120×20mm
対応ソケットIntel:LGA 775/1155/1156/1366/2011
AMD:Socket AM2系/AM3系、Socket FM1/FM2