西川和久の不定期コラム

東芝「dynabook T642」
~Windows 8を搭載した14型スタンダードノートPC



 東芝は19日、Windows 8を搭載した14型スタンダードノートPC「dynabook T642」を発表し、10月26日から出荷を開始する。事前に編集部から試作機が送られて来たので、試用レポートをお届けする。筆者にとっても初のWindows 8機だけに興味津々。なお、試作機と言うこともあり、ベンチマークテストは行なっていないほか、製品版は仕様が異なる可能性がある。予めご了承頂きたい。

●同社としては珍しい14型スタンダードノートPC

 従来同社のdaynabook Tシリーズは、T5xx/T7xx/T8xx系全てで15.6型の液晶パネルを搭載していた。他のシリーズも13.3型や10.1型などいずれも14型より小さく、唯一14.4型のR542は21:9のシアターサイズだった。過去のラインナップとしては不明だが、最近同社製品として14型は珍しいサイズだ。恐らくタッチパネルを採用する際、操作性を重視し14型にしたのだろう。dynabook T642の仕様は以下の通りだ。

【東芝「dynabook T642」の仕様】
CPUIntel Core i5-3317U(2コア/4スレッド、1.7GHz/TB 2.6GHz、キャッシュ3MB、TDP 17W)
チップセットIntel HM76 Express
メモリ4GB(2スロット/空き1)
HDD750GB
光学ドライブDVDスーパーマルチドライブ
OSWindows 8(64bit)
ディスプレイ静電式タッチパネル付き14型液晶ディスプレイ(光沢)、1,366×768ドット
グラフィックスCPU内蔵Intel HD Graphics 4000、HDMI出力、ミニD-Sub15ピン
ネットワークEthernet、IEEE 802.11a/b/g/n、Bluetooth V4.0
その他USB 3.0×3、ブリッジメディアスロット、音声入出力、100万画素Webカメラ
サイズ/重量約349×234×25.8~30.8mm(幅×奥行き×高さ)/約2.2kg
バッテリ駆動時間最大約5.5時間(交換可能)
価格13万円前後

 プロセッサはCore i5-3317U。2コア4スレッドでクロックは1.7GHz。Turbo Boost時2.6GHzまで上昇する。キャッシュは3MB、そしてTDPは17W。Ultrabookでよく使われている構成だ。チップセットはIntel HM76 Express。メモリは4GB、HDDは750GB、光学ドライブはDVDスーパーマルチドライブを搭載している。OSは64bit版のWindows 8。

 ディスプレイは、静電式タッチパネル付き14型液晶ディスプレイ(光沢あり)。解像度は1,366×768ドット。従って2つのWindowsストアアプリを同時表示する「スナップ機能」が利用できる。グラフィックスはプロセッサ内蔵Intel HD Graphics 4000。外部出力として、HDMIとミニD-Sub15ピンを装備している。

 ネットワークは、有線LANがEthernet、無線LANがIEEE 802.11a/b/g/n。そしてBluetooth V4.0にも対応。今時のノートPCとして有線LANがGigabit Ethernetに非対応なのは残念なところ。

 その他のインターフェイスは、USB 3.0×3、ブリッジメディアスロット、音声入出力、100万画素Webカメラ。USB 2.0は無いものの、USB 3.0が3ポートあれば問題無い。ステレオスピーカーは「Harman/Kardon」。

 本体サイズは約349×234×25.8~30.8mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約2.2kg。店頭予想価格は13万円前後。

天板はヘアライン仕上げのシルバー。手前(上)の少し凹んだ部分がアクセントになっている正面側面右側に「ブリッジメディアスロット」、その横に各種インジケータ裏面。着脱式のバッテリ。中央にパネルはあるが、試作品ということもあり開けていない
左側面にロックポート、Ethernet、USB 3.0×2、DVDスーパーマルチドライブキーボードはアイソレーションタイプで抗菌処理が施されている。スピーカーは「Harman/Kardon」右側面に電源入力、ミニD-Sub15ピン、HDMI出力、USB 3.0×1、音声入出力
キーピッチは実測で約19mm斜め後ろ。バッテリが着脱式のため後ろには何も無い。ボディラインが綺麗だACアダプタとバッテリ。バッテリはそれなりのサイズだが、ACアダプタは90×38×30mm(同)とかなり小さい

 天板も含め筐体はヘアライン仕上げのアルミ製、液晶パネルのフチと裏側はブラックと、美しくまとまっている。仕事でもホビーでもどちらにでも合うデザインだ。

 左側面はロックポート、Ethernet、USB 3.0×2、DVDスーパーマルチドライブ。右側面は電源入力、ミニD-Sub15ピン、HDMI出力、USB 3.0×1、音声入出力を配置。左側面にあるEthernetとUSB 3.0×2は、奥側にあるため、機器をつなげてもケーブルが邪魔にならない。

 14型の液晶パネルは十分明るく発色も良い。特に原色系が綺麗だ。視野角も上下/左右とも十分広く、このクラスとしてはワンランク上のクオリティ。静電式タッチパネルは、ギクシャクすること無く、指に吸い付く感じで操作性は抜群だ。

 キーボードはアイソレーションタイプで抗菌処理が施されている。これまでいろいろなノートPCの記事を書いてきたが抗菌処理されたものは初めて。ストロークは深めだが、軽いタッチで(好みもあるだろうが)入力しやすい。

 パームレストは筐体サイズ的に余裕があり十分広く、タッチパッドも約105×65mmと大型だ。2本指でスクロール/ページめくり、拡大/縮小に対応している。ボタンは分離しておらず、タッチパッドの手前が左右に傾くタイプとなる。

 発熱や振動、ノイズに関してはTDP 17Wのプロセッサを採用していることもあって、試用した範囲では全く感じず良好。サウンドは「Harman/Kardon」のスピーカーを搭載しているだけあって、抜けが良くクリア。最大音量も十分あり、音楽も動画も楽しめる。

 特筆すべきはACアダプタ。サイズは90×38×30mm(同)とかなり小さい。これもTDP 17Wの恩恵だと思われる。

●初心者向けにカスタマイズされた新しい環境

 OSは新しく生まれ変わった64bit版Windows 8。メモリが4GBでIntel HD Graphics 4000と言うこともあり、動き的にどうなのか心配していたが、試した範囲では特に問題無くスムーズに操作できた(動画参照)。

 HDDは同社製の750GB/2.5インチ/5,400rpm/キャッシュ8MBの「MQ01ABD075」。C:ドライブに約635GB、D:ドライブに50GB割り当てられ、2パーティション構成になっている。試作機のため出荷版とは異なる可能性があるものの590GBの空きだった。

 光学ドライブは「TSSTcorp CDDVDW TS-U633J」。Wi-Fiには「Atheros AR9485 Wireless Network Adapter」、Ethernetに「Qualcomm Atheros AR8152 PCI-E Fast Ethernet Controller」が使われていた。USB 3.0はチップセットネイティブだ。

 スタート画面は全部で3ページ。前半の約1.5ページ分がWindowsストアアプリ、残り半分がデスクトップアプリで構成されている。

スタート画面1。全てWindowsストアアプリスタート画面2。「ブックプレイスリーダー」以降はデスクトップアプリスタート画面3。「Microsoft Office 2010」、「Adobe Photoshop Elements 10」、「Adobe Premiere Elements 10」など大型アプリも入っている
出荷時のデスクトップ。試作機のため、製品版とは異なる可能性があるものの、初心者を意識した構成だデバイスドライバ/主要なデバイス。HDDは同社製の750GB/2.5インチ/5,400rpm/キャッシュ8MBの「MQ01ABD075」。光学ドライブは「TSSTcorp CDDVDW TS-U633J」。Wi-Fiには「Atheros AR9485 Wireless Network Adapter」、Ethernetに「Qualcomm Atheros AR8152 PCI-E Fast Ethernet Controller」HDDのパーティションは2パーティション構成。C:ドライブに約635GB、D:ドライブに50GB割り当てられている

【動画】非常にスムーズに作動しているのが分かる

 インストール済みのアプリはかなりの数があり、Windowsストアアプリとしては、「思い出フォトビューア」、「TOSHIBA Media Player」、「Toshiba Places」、「MediaBook EXPRESS/Reader」、「セキュリティ脅威マップ」、「楽天」、「YouCam」、「ホットペッパーグルメ」、「TSUTAYAレンタルランキング」、「宿探」、「NAVITIME」、「Fresh Paint」、「XBOX Taptiles」など。

 中でも、写真を自動で整理/閲覧できる「思い出フォトビューア」、電子アルバムを作成/めくって閲覧できる「MediaBook EXPRESS/Reader」、Webカメラの映像を加工できる「YouCam」、Resolution+に対応した「TOSHIBA Media Player」などが目新しい。

 余談になるが、10月10日頃、ニュース、フォト、Bing、リーダー、スポーツ、ファイナンス、メール/カレンダー/People/メッセージ、地図、SkyDriveなどの、Windows 8標準搭載Windowsストアアプリが一斉にアップデートされた。中でもPeopleは、RTMのレビュー時、最大50件までしかタイムラインを追えないと書いたが、この点が修正され、必要なだけ過去の情報を表示可能になった。個人的には大きな不満点だっただけに、嬉しいアップデートだ。

 アプリ画面を見ると、はじめの1ページ目はWindowsストアアプリ、残り約3ページはデスクトップアプリで構成されているのが分かる。まだまだデスクトップアプリも健在と言ったところか。

アプリ画面1アプリ画面2アプリ画面3
アプリ画面4思い出フォトビューアTOSHIBA Media Player
YouCamMediaBook EXPRESSToshiba Places

 デスクトップアプリとしては、「ブックプレイスリーダー」、「RZスイートexpress」、「動画で解決!操作ガイド」、「CyberLink MediaSync」、「おたすけナビ」、「動画で学ぶシリーズ」、「Microsoft Office 2010」、「Adobe Photoshop Elements 10」、「Adobe Premiere Elements 10」、「筆ぐるめ」、「デスクトップアプリメニュー」、「PC引越ナビ」など。全体的に初心者向けのものが多く含まれている。

 中でも興味深いのは「デスクトップアプリメニュー」だ。Windows 8はデスクトップ環境からスタートメニューが無くなり、その替わりとしてこのメニューを搭載している。Windows 3.0が出始めの頃、この手のメニューソフトが流行った時期があったが、Windows 8でまた流行るのだろうか。

デスクトップアプリメニューPC引越ナビおたすけナビ

 以上のように東芝「dynabook T642」は、14型のスタンダードノートPCだ。Core i5を中心にオーソドックスな構成でまとめられ、さまざまな用途に対応できる。ソフトウェアも初心者への配慮が十分なされて、デスクトップアプリはもちろん、同社ならではのWindowsストアアプリもインストールされ、簡単に楽しく操作出来るのが特徴的。

 ハードウェア的には唯一、有線LANがGigabit Ethernetでない点は残念だが、国産で初心者にも安心なWindows 8搭載ノートPCを探しているユーザーの候補になりえる1台だろう。