西川和久の不定期コラム

NECパーソナルコンピュータ「LaVie M(LM750/FS)」
~長時間駆動でモバイル基本性能を押さえたノートPC



 NECパーソナルコンピュータは9月12日、超低電圧版Core iプロセッサを搭載した13.3型2スピンドルノートPCを2機種を発表した。カタログスペック上、バッテリ駆動時間は何と12.8時間! 量産試作機が送られて来たので、試用レポートをお届けする。


●ベーシックな2スピンドルに超低電圧版CPU

 今回発表されたモデルは、Core i7-2637Mプロセッサ搭載機の上位モデル「LaVie M LM750/FS」と、下位モデルに相当するCore i3-2357M(1.3GHz)プロセッサ搭載「LaVie M LM550/FS」の2機種。オーソドックスな2スピンドルノートPCだ。

 プロセッサ以外の違いは、HDD 750GB対640GB、Blu-ray Discドライブ対DVDスーパーマルチドライブの程度で、多くの部分は共通となっている。今回届いたのは上位モデル。主な仕様は以下の通り。

【表】NEC「LaVie M(LM750/FS)」の仕様
CPUCore i7-2637M(2コア/4スレッド、
1.7GHz/Turbo Boost 2.8GHz、キャッシュ4MB)
チップセットIntel HM65 Express
メモリ4GB(2GB×2) PC3-10600 DDR3(最大8GB)/2スロット空0
HDD750GB(5,400rpm)
光学ドライブBlu-ray Discドライブ(e-move対応)
OSWindows 7 Home Premium(64bit)SP1
ディスプレイ13.3型液晶ディスプレイ(光沢)、1,366×769ドット
グラフィックスIntel HD Graphics 3000、HDMI、
ミニD-Sub15ピン、WiDi対応
ネットワークGigabit Ethernet、IEEE 802.11b/g/n
その他USB 3.0×2、USB 2.0×1(Powered USB)、
SDメモリカードスロット、マイク入力、ヘッドフォン出力、
Microsoft Office Home and Business 2010搭載
サイズ/重量330×233×30.5mm/約1.9kg
バッテリ駆動時間約12.8時間
店頭予想価格16万円前後

 CPUはIntel Core i7-2637Mプロセッサ。2コア4スレッドで、クロック1.7GHz。TurboBoost時には2.8GHzまで上昇する。キャッシュは4MB搭載。超低電圧版でTDPは最大17Wとなっている。

 チップセットはこのクラスのノートPCではお馴染みIntel HM65 Express。メモリは2GB×2の計4GB、空きスロットは無く、最大の8GBにするには2枚とも交換となる。Windowsは64bit版Windows 7 Home Premium SP1。

 HDDは5,400rpmの750GB、光学ドライブはBDドライブを搭載する。またこのBDドライブは「e-move」をサポートし、対応コンテンツをSDメモリカードなどへ転送できる。

 ディスプレイは13.3型光沢タイプの液晶パネルでHD解像度の1,366×769ドット。グラフィックスはCPU内蔵のIntel HD Graphics 3000だ。外部出力として、HDMI、ミニD-Sub15ピン、そしてWi-Fiを使って映像を伝送するWiDi 2.1に対応。

 ネットワークは、有線LANがGigabit Ethernet、無線LANがIEEE 802.11b/g/n。Bluetoothは非搭載。その他のインターフェイスは、USB 3.0×2、USB 2.0×1(Powered USB)、SDメモリカードスロット(SDHC/SDXC対応)、マイク入力、ヘッドフォン出力。今時のノートPCとしてWebカメラが無いのは少し珍しい程度で、USB 3.0も搭載し特に不満のない仕様と言えよう。

 サイズは330×233×30.5mm(幅×奥行き×高さ)、重量約1.9kg。13.3型の2スピンドルノートとしては、厚過ぎず、薄過ぎず、スタンダード的なボディとなっている。2kgを切っているので、持ち運ぶのもあまり苦にならないだろう。カラーバリエーションは「ブレイズレッド」、「フラッシュホワイト」、「コスモブラック」の3種類用意されている。

 店頭予想価格は16万円前後。下位モデルは13.5万円前後となる。若干高めだが、どちらもMicrosoft Office Home and Business 2010を標準搭載しているので、差額を考るとハードウェアだけであれば、然程高価ではない。

ボディカラーは「ブレイズレッド」。とても鮮やかな色だ正面。側面中央右側にメディアスロットと各種ステータスLEDがならぶ。Webカメラは非搭載下部。各パネルはネジ2本で止められ、簡単にHDDやメモリへアクセスできる
左側面。電源コネクタ、ミニD-Sub15ピン、HDMI、USB 2.0×1キーボードはテンキー付きのアイソレーションタイプ。パームレストはトップカバーと同じ材質が使われている右。ロックポート、Ethernet、USB 3.0×2、Blu-rayドライブ
キーピッチは実測で18mmACアダプタのコネクタはミッキータイプ。バッテリはこのクラスとしては標準的なサイズだ重量は実測で1,880g

 今回届いたのは「ブレイズレッド」。チェリーレッドを少し暗めにした感じで落ち着いた色だ。キーボード周囲やパームレストも同じ色。タッチパッドだけ同じ色だが質感がザラザラしており、その関係で少し発色が変わっている。液晶パネルのフチと、アイソレーションタイプキーボードのキーとキーの間はツヤありブラック、その他の部分はツヤなしブラックだ。他のカラーバリエーションも含め、この配色であれば飽きが来ないと思われる。

 裏側は小さいパネルを2つ開けると、それぞれ、メモリとHDDへ簡単にアクセス可能だ。後からSSD化や8GB化も安易に行なえるため、メンテナンス性は高い。

 キーボードは先に書いたように10キー付きのアイソレーションタイプ。キーピッチは約18mm。気持ち狭いがたわむことも無く落ち着いて操作できる。対してパームレストとタッチパッドの部分は、13.3型の液晶パネル搭載機としては少し狭い。キー入力のし易さを優先し手前の空きスペースが減った形となっている。とは言え、これだけあれば実際の操作で狭さを感じることは無かった。タッチパッドは段差があり、ボタンは物理的に2つあるタイプだ。若干硬めであるが、指が疲れるほどでもない。

 液晶パネルはグレア(光沢)タイプなので、映り込みはそれなりにある。発色は写真からも分かるように派手さの中に深みのある感じだ。視野角は上下左右ともほぼ同じで、大きく角度が付けば発色は変わるものの、通常の操作位置だとまず問題にならないだろう。

 熱やノイズ、振動に関しては、流石に超低電圧版のプロセッサを使っているだけあって、パワーの割りに低く抑えられている。ボディに耳を付けてやっと小さくノイズが聞こえる程度だ。

 全体的に無難にまとめられ特に不満な点は無い。万人受けしそうなモデルと言える。ただ1点だけ気になったのは、サウンドの最大出力がかなり小さいこと。カタログスペック上は1W+1Wのステレオ。Windows 7にサンプルで入っている曲をWindows Media Playerで聴くと「エッ?」っと思うほどパワーが無い。試作機の関係もあるかも知れないので、この辺りは是非店頭で確認して欲しい。

●バランスとれたパフォーマンス

 OSは64bit版Windows 7 Home Premium。SP1適応済で、IEも9になっている。左側にそれなりの数のショートカット、右端に「おすすめメニューNavi」を配置するデスクトップ。国産機っぽい雰囲気となっている。メインメモリはIntel HD Graphics 3000との共有だが、4GB搭載していることもあり、通常使用であれば大丈夫だ。

 HDDは5,400rpmの750GB、「MK7575GSX」が使われている。パーティションはC:ドライブ約618GB、D:ドライブ約65GBの2パーティション。初期起動時C:ドライブの空きは586GB。Blu-ray Discドライブは「BD-MLT UJ252」。Wi-FiとGigabit EthernetモジュールはIntel製が使われている。USB 3.0はルネサス エレクトロニクス製。その他特殊なデバイスは無く、Intel HM65 Express採用機としては一般的な構成となる。

 タスクトレイに常駐しているアプリケーションは、マルチタッチ/手書きでお助けパッド/USBマウス接続時の動作など独自のパッドコントロールが可能な「NX PAD」、「Intel HD Graphics」、「Intel My WiFi Technology」、「電源プラン」、「ウィルスバスター2011クラウド」となる。

起動時のデスクトップ。色合いが綺麗な壁紙が印象的。右側に見えるのは「おすすめメニューNavi」デバイスドライバ/主要なデバイス。HDDは750GB、5,400rpmの「MK7575GSX」。光学ドライブは「BD-MLT UJ252」。Gigabit EthernetとWi-FiモジュールはIntel製Windowsから見えるパーティションとしてはC:ドライブ約618GB、D:ドライブ約65GBの2パーティション

 プリインストールされているアプリケーションは大小さまざま。「Microsoft Office Home and Business 2010」は下位モデルも標準搭載。その他としては「ウィルスバスター2011クラウド」、「Corel Digital Studio for NEC」、「CyberLink Power DVD BD」、「デ辞蔵 PC 2.0」、[Roxio Creator LJ]、「筆ぐるめ Ver18」などを搭載する。

 ツール系は「ソフト&サポートナビゲーター」、「ECOモードの設定/ECOみえグラフ/ピークシフト設定ツール」、「ワンタッチスタートボタンの設定」、「再セットアップディスク作成ツール」、「Luiリモートスクリーン」「彩りの設定」。今年のトレンドである、ECO・省エネを中心にパワーアップされている。

ソフト&サポートナビゲーターECOモードの設定ECOみえグラフ
ピークシフト設定ツールe-move対応Pluginソフト&サポートナビゲーター/Luiリモートスクリーン
ワンタッチスタートボタンの設定再セットアップディスク作成ツール彩りの設定

 ベンチマークテストはWindows エクスペリエンス インデックスとCrystalMark、BBenchの結果を見たい。

 Windows エクスペリエンス インデックスは、総合 5.8。プロセッサ 6.9、メモリ 5.9、グラフィックス 5.8、ゲーム用グラフィックス 6.1、プライマリハードディスク 5.9。スコアからも分かるように、プロセッサが6.9と少し強力、他の部分は6.0前後でバランスが取れている。なかなか良いコンビネーションだ。

 CrystalMarkは、ALU 36156、FPU 37629、MEM 37213、HDD 10360、GDI 14222、D2D 2620、OGL 3248。Windows エクスペリエンス インデックス同様、CPUがCore i7プロセッサということもあり、Core i5より若干高めのスコア。他の部分はIntel HM65 Express+Intel HD Graphics 3000としては平均的な値。

 BBenchは、省電力モード、バックライト最小、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、Wi-Fi/ONでの結果だ。バッテリの残5%で19,485秒(5.4時間)。最大12.8時間の半分も行かなかった。テストを見ているといくつかのサイトで広告に結構長めの動画が使われており、それで短くなっている可能性もある。

 さすがにこの値は低過ぎるため、4回ほどECOモード、省電力モードを試したが結果は同じ。長くても6時間を少し切る程度だった。作動中の消費電力を調べると、動画が無く普通に動いている時は7.5~9W程度(Ybinfoを使用)。動画の広告が入ると一気に10W以上に跳ね上がる。いずれにしても試作機なのでまだ調整仕切れていないのだろう。今回の値は参考値と考えて欲しい。

Windows エクスペリエンス インデックスは総合 5.8。プロセッサ 6.9、メモリ 5.9、グラフィックス 5.8、ゲーム用グラフィックス 6.1、プライマリハードディスク 5.9CrystalMarkはALU 36156、FPU 37629、MEM 37213、HDD 10360、GDI 14222、D2D 2620、OGL 3248BBench。省電力モード、バックライト最小、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、WiFi/ONでの結果だ。バッテリの残5%で19,485秒(5.4時間)

 以上のようにNEC「LaVie M(LM750/FS)」は、超低電圧版Core i7プロセッサを搭載し、テストでは12時間に届かなかったものの、それでも6時間近く動き、発熱やノイズも低いレベルに抑えらた、オーソドックスな作りの2スピンドルノートPCだ。

 ベンチマークテストの結果を見てもバランスが良く、用途を問わず何にでも使える1台。国産で手厚いサポートも期待できる。Microsoft Office Home and Business 2010搭載機のノートPCを探しているユーザーにとって候補になりえるニューモデルと言えよう。