■西川和久の不定期コラム■
株式会社PFUから15日、ドキュメントスキャナScanSnapの新型モデル「ScanSnap S1100」が発表された。何と言っても最大の特徴は、手で持っている写真からわかるように、大きさが273×47.5×34mm(幅×奥行き×高さ)、重さ350gの小型ボディでカバンなどへ入れ楽々持ち運べること。さっそく試用レポートをお届けする。
今回は製品紹介が中心だが、別途、槻ノ木隆氏による性能評価も掲載される予定だ。
●驚くほどコンパクト
従来、ScanSnapのラインナップは、「S1500」と「S1300」の2機種(S1500はMac版としてS1500Mも用意されている)。前者は据置型の本格的なタイプ、後者はコンパクトで気軽に使えるタイプだ。どちらもADFを装備、両面同時読込にも対応している。ただ比較的コンパクトなS1300でもサイズは284×99×77mm(同)、重さは1.4kgと、決して持ち運べないボディではないものの、気楽にカバンへ入れて……と言うわけにも行かない。そこへ登場したのが、今回ご紹介する「S1100」だ。型番からもわかるように、S1300の下位モデルに相当する。
最大の特徴は冒頭に書いたように、273×47.5×34mm(同)、重さ350gの驚くべきコンパクトさ。A4に対応するため、幅がある程度広いのは仕方ないとして、奥行き47.5mm、高さ34mmは、比較的手の小さい筆者が握っても手が余る。このサイズは物が届き箱を開けた時ビックリしたほどだ。主な仕様は以下の通り。
【表1】主な仕様読取方式 | 手挿入、片面読み取り、2wayペーパーパス | |
読取モード | 片面、カラー/グレー/白黒/自動(カラー/グレー/白黒の自動認識) | |
光学系/センサー | セルフォックレンズ等倍光学系/カラーCIS×1 | |
光源 | RGB3色LED | |
読取速度(A4縦) | 自動解像度モード | 片面 7.5秒/枚 |
ノーマル | カラー/グレー150dpi、白黒300dpi相当:片面7.5秒/枚 | |
ファイン | カラー/グレー200dpi、白黒400dpi相当:片面7.5秒/枚 | |
スーパーファイン | カラー/グレー300dpi、白黒600dpi相当:片面7.5秒/枚 | |
エクセレント | カラー/グレー600dpi、白黒1,200dpi相当:片面35秒/枚 | |
読取範囲 | 標準モード | サイズ自動検出、A4、A5、A6、B5、B6、はがき、名刺、レター、リーガル、カスタムサイズ(最大216×360mm、最小25.4×25.4mm) |
A3キャリアシート使用時 | 上記に加え、A3、B4、11×17inch、写真(E/L/LL判) | |
長尺読取 | 可能(863mmまで) | |
インターフェイス | USB 2.0(コネクタMini-Bタイプ) | |
電源 | USBバス供給(消費電力2.5W以下/スリープ時1W以下) | |
サイズ/重量 | 273×47.5×34mm(同)/約350g | |
価格 | 17,800円/楽2ライブラリ パーソナル V5.0セットモデル 22,800円(PFUダイレクト価格) |
細かい仕様などは表をご覧頂くとして、上位2モデルとの一番の違いは、「ADF無し/両面同時読込無し」となることだろうか。この機能の有無がユーザーにとって判断基準となる。例えば筆者のように、たまに請求書などをPDF化しメールへ添付、名刺と言っても1回のスキャンでせいぜい数枚程度のケースが多い場合はS1100で十分。一度に数多くの名刺や資料をADFで自動的に読取りPDF化したい、自炊用途なので両面同時読込も必要となれば、上位モデルとなる。
読取速度は、エクセレント以外はA4で片面7.5秒/枚=片面8枚/分と、S1300の「スーパーファイン:カラー/グレー300dpi、白黒600dpi相当、両面・片面 2枚/分」と比較しても数倍速い。ただし、ADFを搭載していないので、複数枚を一度にスキャンする場合は、原稿を毎回手差しになるため、その分、全体的な作業速度は遅くなることもあるだろう。
ADFが無い部分を補う機能として「連送給紙機能」を搭載している。これは一度[Scan/Stop]ボタンを押して、もう一度[Scan/Stop]ボタンを押すまでの間、読取った原稿の排出後、連続して原稿を読み込ませることができるものだ。原稿毎に毎回[Scan/Stop]ボタンを押さなくてもよいため、複数枚を一度に処理する時の効率が上がる。
読取は、2wayペーパーパス。1つは「Uターンパス」、もう1つは「ストレートパス」となる。下の写真からもわかるように、前者は、パネルを2カ所開き、正面からスキャンを開始して、U字に原稿が上へ出てくる仕掛け。ちょうどプリンタの背面給紙と反対のイメージだ。この場合のメリットは、後ろ側に空間が必要なく、省スペースでの運用ができる。対して後者は裏に原稿がそのまま出てくるため、ある程度の空間は必要となるものの、A3キャリアシートやプラスチックカードなど厚みのある媒体も読み取り可能だ。ストレートパスで最大863mmの長尺原稿を読取るには、[Scan/Stop]ボタンを3秒長押しすればよい。
一般的にはA4や名刺、ハガキなどを読取るケースが多いと思うので、Uターンパスで省スペース。それ以外の場合は、少し後ろにも空間がある場所へ移動してストレートパスといった使い方になるだろう。いずれにしてもこのサイズ/重量であれば、どこへ移動するのも全く苦にならない。
インターフェイスはUSB 2.0(コネクタMini-Bタイプ)のみ。電源もUSBからのみの供給となる。S1300のようにACアダプタは付属せず、本体側に電源コネクタもない。ボディが小型と言うこともあり、気軽に持ち運び、出先でノートPCのUSBバスパワーのみで使えるのが魅力的だ。
オプションのSnapScan S1100ケース |
オプションは、「SnapScan S1100ケース」(2,980円)、「SnapScan A3キャリアシート」(2,625円)、「楽2ライブラリ パーソナルV5.0」(オープン価格)。そしてApple製品と調和しやすい「ホワイトモデル」もAppleストアやPFUダイレクトで限定販売されている。
本体の構造は、写真からもわかるように、いたってシンプル。Uターンパスで使う場合はパネルを2カ所開き、ストレートパスの場合は、フロント側のパネル1つだけ開いて運用する。後は、本体の[Scan/Stop]ボタンを押すか、パソコン側でスキャンを開始すればOKだ。
また、各パネルや本体の強度はペラペラした感じもなく、簡単に壊れそうな雰囲気は無い。カバンに入れて持ち運んでも、何かの拍子に壊れるという心配はなさそうだ。
スキャン時の音は、動画を掲載したので参考にして欲しいが、特別静かでもないが、特別うるさいわけでもない。標準的な作動音だと思われる。
●セットアップ
対応するOSは、Windows 7 64/32bit、Vista 64/32bit、XP 32bit。Mac OS Xは、v.10.6、v10.5、v10.4(ただしEvernote for Macは非対応)となる。また、Windows環境とMac環境で対応しているアプリケーションに結構差がある。具体的には表を参考にして欲しい。使い方にもよるだろうが、Mac環境の方が弱いのは気になるところだ。少なくとも「ScanSnap Organizer」のMac版は欲しいところか。
【表2】WindowsとMacのソフトの違いWindows | Mac | |
ドライバ | ScanSnap Manager | ScanSnap Manager |
PDF/JPEG整理・閲覧 | ScanSnap Organizer | - |
名刺管理 | 名刺ファイリングOCR | CardMinder |
OCR | ABBYY FineReader | - |
ECM連携 | Scan to Microsoft SharePoint | - |
家計簿 | やさしき家計簿 エントリー | - |
Evernote | Evernote for Windows | Evernote for Mac |
今回は64bit版のWindows 7でチェックした。インストールは非常に簡単で、基本ソフトの「ScanSnap Manager」、「ScanSnap Organizer」、「名刺ファイリングOCR」、「ABBYY FineReader」が対象となる。「やさしき家計簿 エントリー」、「Evernote」、「Scan to Microsoft SharePoint」は必要に応じて選択する。
セットアップ自体は画面キャプチャからわかるように非常に簡単で、全てウィザード形式、[はい]や[次へ]をクリックすればよい。またドライバをインストールする時、ScanSnap S1100本体をPCのUSBポートへ接続する必要は無い。
●基本ツール
スキャナの基本操作は「ScanSnap Manager」で行なう。本体の[Scan/Stop]ボタンを押すか、タスクトレイ上のアイコンをクリックして起動することになる。デフォルトの設定では、読取った後に起動するアプリケーションは「ScanSnap Organizer」、保存先はマイドキュメントのScanSnapフォルダ、画質ノーマル、カラー自動判別、ファイル形式PDF、原稿サイズ自動検出、圧縮率3:標準になっているので、必要に応じて変更すればいい。また、簡易表示モードではプリセットで「おすすめ」、「コンパクト」、「きれい」などが設定済みだ。
実際のスキャンの様子を動画で掲載したが、先に書いた「連送給紙機能」で、いったんスキャンが始まると、表→裏、もしくは何枚もの原稿を連続読取などができ、スキャン速度もかなり速い。ADF/両面同時読込無しのドキュメントスキャナとしては、十分以上の性能で、加えてこのコンパクトさはとても魅力的と言えよう。
一点気になるとすれば、Uターンパスの場合、A4など大きい原稿は、一旦上に紙が出るものの、最後は手前にパタリと倒れてしまう。1枚だけのスキャンであれば問題無いが、連続してスキャンする時は、都度スキャン済みの原稿を避けて新しい原稿をセットしなければならないため少し手間かも知れない。
ScanSnap Manager/簡易表示モード | ScanSnap Manager/読取中のパネル | ScanSnap Manager/読取完了 |
ScanSnap Manager/アプリ選択 | ScanSnap Manager/保存先 | ScanSnap Manager/読取モード |
ScanSnap Manager/ファイル形式 | ScanSnap Manager/原稿 | ScanSnap Manager/ファイルサイズ |
200dpi/ファインでスキャンした結果 | 300dpi/スーパーファインでスキャンした結果 | 600dpi/エクセレントでスキャンした結果 |
【動画】「連送給紙機能」で連続して原稿を読取れる |
「ScanSnap Organizer」は、ScanSnapでスキャンしたデータを管理するツールで、かなり前からScanSnapシリーズで使われている。今回、機能強化としては、「Evernote」や「Googleドキュメント」へ保存など、クラウドツールと連携できるようになり、「オフィス機能」タグへボタンが配置された。これらはPCだけなく、iPhoneやiPad、Androidなどにも対応していので出先でちょっと見たい時などに便利だ。
「名刺ファイリングOCR」は、名前の通り、名刺を読取り、自動的に名前や会社名などを判断、テキスト化できる。SnanSnapとしては定番のアプリケーションで、これを目当てにScanSnapを購入、名刺管理している身近な友人も多い。
「やさしき家計簿 エントリー」は、家計簿ソフトだ。面白いのはレシートを読取り、OCRでテキスト化して管理できること。テキスト化できるのは、「日付」、「店舗」、「品名」、「価格」。費目/内訳はレシート上には無い情報なのでプルダウンメニューから選択する。用途にもよるだろうが、機能はそれなりに本格的なもので、もっと気楽に扱える“お小遣い帳”的なモードも欲しいところかも知れない。
ScanSnap Organizer | 名刺ファイリングOCR | やさしき家計簿 エントリー |
●楽2ライブラリ パーソナルV5.0
「楽2ライブラリ パーソナルV5.0」はオプションか、「楽2ライブラリ パーソナル V5.0セットモデル」を購入することによって利用できるドキュメント管理アプリケーションだ。電子キャビネットの中に電子バインダを置き、ペーパーレス化を実現できる。
軽く内容を紹介すると、バインダでは、インデックスや付箋、マーカーでのデータ整理、バインダ検索/全文検索にも対応している。扱えるデータはScanSnapで読取ったデータに加え、Microsoft OfficeのWord/Excel/PowerPointも管理可能だ。もちろん色などデザインも変更できる。面白いのは、ページをめくるとき、アニメーションでパラパラめくりできること。最近の電子書籍で流行のエフェクトだ。
中でも「年賀はがきバインダ」は特殊なバインダで、差出人、お年玉番号をOCR認識し、キーワード登録したり、“お年玉番号当選チェック”で該当する年賀状に付箋紙が貼られ、簡単に当選をチェックすることが可能となる。
楽2ライブラリ パーソナルV5.0/ユーザーズガイド | 年賀ハガキ機能でお年玉番号を管理できる | 読取ったカタログで1冊バインドを追加 |
以上のように「SnapScan S1100」は、片面/ADF無しとしては非常にコンパクトでスキャン速度も速く、付属アプリケーションも充実しているドキュメントスキャナだ。価格が17,800円というのも魅力的。
ノートPCと一緒に持ち運び出先でドキュメントスキャンしたい場合や、筆者のように普段大量にスキャンしないものの、たまの名刺整理や書類整理で無いとやはり不便。1台欲しいと思っているユーザーにお勧めの逸品と言えよう。