■西川和久の不定期コラム■
ASUSTeK「NX90Jq」 |
ASUSTeK Computerは10月14日、今冬モデルとして9機種16モデルを一斉に発表した。「マルチメディア」、「クラウド」、「エコロジー」の3つのカテゴリに分類され、マルチメディアは5機種。その中でもハイエンド、かつBang & Olufsen(以下B&O)と協業したノートPC「NXj90Jq」が届いたのでご紹介したい。
●ハイエンドのマルチメディアノートPCスペックも凄いのだが、「NX90Jq」の最大の特徴は、意匠設計をB&OのプロダクトデザイナーであるDavid Lewis氏が担当、音質面でも同社と協業していることだ。このB&Oは、オーディオ好きであれば必ず知っているブランドで、デザインや音質に定評がある(TVや電話機なども作っている)。興味のある人は、Bang & Olufsenで検索すれば製品写真が数多く出てくるのでご覧頂きたい。そのB&Oとコラボして出来上がったのがこのノートPCだ。主な仕様は以下の通り。
CPU | Core i7-740QM(4コア/8スレッド、1.73GHz/Turbo Boost 2.93GHz、キャッシュ6MB) |
チップセット | Intel HM55 Express |
メモリ | 4GB/DDR3-1333、3スロット空き1、最大12GB |
HDD | 500GB(5,400rpm)×2 |
光学ドライブ | Blu-ray Discドライブ |
OS | Windows 7 Home Premium(64bit版) |
ディスプレイ | 18.4型ワイドTFTカラー液晶(LEDバックライト)、1,920×1,080ドット |
GPU | GeForce GT 335M(1GB)、ミニD-Sub15ピン×1、HDMI出力×1 |
ネットワーク | Gigabit Ethernet、IEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 2.1+EDR |
その他 | USB 3.0×2、USB 2.0×2(1つはeSATAと併用)、メディアスロット、Webカメラ、内蔵マイク、ヘッドフォン出力、マイク入力、ヘッドフォン出力/マイク入力 |
サイズ/重量 | 530×283×30~45mm(幅×奥行き×高さ)/約4.4kg |
バッテリ駆動時間 | 約2.8時間 |
価格 | 209,800円 |
CPUはCore i7-740QM。4コア/8スレッドで通常1.73GHz、Turbo Boost時2.93GHzとなる。L3キャッシュは6MB。チップセットはIntel HM55 Express。メモリは標準4GBで最大12GBだ。GPUは72SPのGeForce GT 335M(1GB)を搭載している。ビデオメモリとメインメモリを共有しないので、4GBのメモリ空間をCPUがフルに使える。OSは64bit版のWindows 7 Home Premium。
液晶パネルは、18.4型のLEDバックライト式、解像度はフルHDの1,920×1,080ドットとなる。外部出力はミニD-Sub15ピン×1、HDMI出力×1。このサイズならHDMI入力も欲しいところか。
HDDは、同社のHPには1TBとだけ書いてあるが、実際は5,400rpmの500GBを2台搭載している。RAIDなどではなく、普通にOSからHDDが2台見える構成だ。光学ドライブはBlu-ray Discコンボドライブだ。
ネットワークは、有線LANはGigabit Ethernet、無線LANはIEEE 802.11b/g/n。Bluetoothは最新の3.0ではなく2.1+EDRとなっている。最近の同社製品は、Atomを搭載した安価なモデルでも3.0を搭載しているので、この点は少し残念な部分だ。
その他のインターフェイスは、USB 3.0×2、USB 2.0×2、メディアスロット、Webカメラ、内蔵マイク、ヘッドフォン出力、マイク入力、ヘッドフォン出力/マイク入力。USB2.0ポートの1つはeSATAと併用だ。本体のHDDが容量不足になった場合に、USB 3.0でもeSATAでも高速なHDDをつなぐことができる。
本体サイズは530×283×30~45mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約4.4kgと、かなり大きく、そして重い。バッテリ駆動時間は約2.8時間であるものの、屋内で少し移動的な扱い方だと思うので、特に問題にはならないだろう。ただし、バッテリは内部固定で外すことができない。
ステレオスピーカーは、11Wのパワーアンプ、直径32mmの円形スピーカー、108ccのチェンバーによる広い反響スペースなどのハードウェアで構成され、ソフトウェア面では、ノイズを排除したクリアなコーデックと、インテリジェントなイコライジングテクノロジーといった組み合わせから原音をリアルに再現する。同社ではこれらを総称して「ASUS SonicMaster」と呼んでいる。
なお、本体右側、電源入力の奥にあるアンテナコネクタは、海外用で、国内向け製品版では塞がっている。
編集部から「NX90Jq」を送ったと連絡があり、翌日届いたのだが、箱は大きく、ズッシリ重い。はじめは違うものが届いたと思ってしまった。そして取り出してみると鏡面仕上げのアルミニウム天板。このインパクトはなかなか衝撃的だ。ボディもノートPCと言うよりは、オールインワンPCにキーボードが付いたと表現した方が分かりやすいかも知れない。
外観はうまくRを使い、鏡面仕上げのアルミニウムとつや消しブラックのコンビネーションが美しい。これまで見たこともない雰囲気だ。加えて液晶パネルの両サイドにはキーボードの幅の外側にスピーカーが付いている斬新なレイアウト。B&Oのプロダクトデザイナーが担当しただけのことはある。
18.4型の液晶パネルはグレア(光沢)タイプで、十分に明るく色も鮮やか。視野角もノートPCの割には少し広めだ。コンテンツを複数人で鑑賞しても問題無い。
キーピッチは約20mm。軽いタッチで入力しやすい。また、一般的なファンクションキーの一段上にイジェクト、再生や音量など、専用のホットキーを配置している。タッチパッドは一般的な、パームレスト中央にあるのではなく、キーボードの左右に2つある。中央にある方が便利と言う意見もあるだろうが、実際使ってみるとあまり違和感無く操作できる。筆者の場合は、右側ばかりを使い、左側は一切触らなかった。
操作した範囲では熱やノイズ、振動などは感じず、静かなマシンだ。ただパームレストの部分は全て鏡面仕上げのアルミニウムなので、冬場などは冷たく感じることもあるだろう。
さて、同社のHPで「ノートPCでありながら、Bang & Olufsen製品と同品質の音響再生が可能と認定を受けました」と書かれている肝心の音質は、これまで触ったPCの中で一番かも知れない。
並べて一斉に比較したわけではないが、とにかく呆れるほど音がいい。返却日がある関係で、早く原稿を書かなければならないのに、結局届いた日は、1日音楽を聞いていた(笑)。いわゆるハイファイな音質では無く、音が妙に生っぽく艶っぽいのだ。直径32mmのフルレンジと言うこともあり、重低音などは望めないが、定位が良く、音が前に出てくる。こればかりは文字で書けないので、機会があればぜひ店頭などで視聴して欲しい。
●デスクトップPCも驚きのハイパフォーマンスフルHD1,920×1,080ドットのデスクトップは広く、動画を見るにしても、写真を見るにしても、ネットやテキスト系の事務処理を行なうのも快適。またCPUもGPUも性能が高いので、動画再生はもちろん、エンコードも楽々こなす。デザインと音が良いとの理由で眺めているだけではもったない環境だ。
HDDは5,400rpmの500GBが2台で、計1TBの容量。Western Digital WD5000BEVT(500GB、5,400rpm、キャッシュ8MB)が使われている。パーティションは少し変則的で、ディスク0はC:ドライブ約116GB、F:ドライブ約329GB。ディスク1はD:ドライブ約232GBとG:ドライブ約232GBの4パーティション構成だ。ディスク1は特に何も入っていないので、再フォーマットして500GB全てを1パーティションにしてもいいだろう。Blu-ray DiscドライブはHL-DT-ST BDDVDRW CA21Nを搭載している。
プリインストールアプリケーションは、同社のツール系は、リカバリDVD作成ソフト「ASUS AI Recovery」、高速起動OS「ASUS Express Gate Cloud」、PC自動更新ソフト「ASUS Live Update」、省電力ソフト「ASUS Power4Gear Hybrid」、音質調整ソフト「ASUS SonicMaster」、画質向上ソフト「ASUS Splendid」、総合エンターテインメントソフト「ASUS Video Magic」、Webストレージサービス「ASUS WebStorage」。
特に抜群の音質を司っているASUS SonicMasterの存在は重要だ。好みの音質に調整すると更に音楽を聴くのが楽しくなる。サラウンドは音場が左右に広がり、低音をブーストしてもイコライザで無理無理持ち上げたような不自然な感じはない。パネル中の「Adaptive Volume」は、スピーカーの特性(高域から低域)に入力ソースを合わすらしく、結果的に音圧が上がる。
他社製のアプリケーションは、「CyberLink Power2Go」、「i-フィルター5.0 30日間対応版」、「ウイルスバスター 2010 60日間無料体験版」など。
ASUS SonicMaster | GeForce GT 335M/システム情報 | Blu-ray Disc Suite |
ベンチマークテストは、Windows エクスペリエンス インデックス、CrystalMark、そしてBBenchの結果を見たい。
まずWindows エクスペリエンス インデックスの総合は5.9。内訳は、プロセッサ7.1、メモリ5.9、グラフィックス6.5、ゲーム用グラフィックス6.5、プライマリハードディスク5.9。さすがにCore i7-740QMとGeForce GT 335Mは、かなりハイパフォーマンス。普及クラスのデスクトップPCと比較しても遜色ない。もちろんいつもチェックで使っているYouTubeの1080p動画は、全く問題無くフルスクリーンで30fpsの再生ができた。
CrystalMarkは、総合141,021、ALU 33,463、FPU 32,245、MEM 31,201、HDD 9,165、GDI 9,462、D2D 6,195、OGL 19,290。こちらもどれをとっても桁違いに速い。唯一HDDが5,400rpmと言うこともあり普通の値だ。バランス的にプライマリ・ドライブはSSDが欲しいところか。
BBenchは、Power4Gear Battery Saving、バックライト/OFF、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、Wi-Fi/ON、Bluetooth/OFFでのBBenchの結果だ。バッテリの残5%で7,111秒(1.9時間)だった。仕様の最大約2.8時間には届かなかったが、サイズや重量を考えると、室内でのちょとした移動程度だと思われるので、特に問題は無いだろう。
以上のように「NX90Jq」は、Core i7-740QMとGeForce GT 335Mでハイパフォーマンスはもちろんのこと、18.4型のフルHD液晶ディスプレイに美しいB&Oのデザイン、そして音質が最大の魅力となる。価格は209,800円。同クラスのノートPCと比較して数万円程度高いだけで特別高価と言うわけではない。人とは違うものが欲しく、質を追求したい人にお勧めしたい逸品だ。