西川和久の不定期コラム
Googleの最新モバイルOS「Android 4.3」
~制限付きプロフィールなどに対応した最新版
(2013/8/1 00:00)
日本時間の7月25日未明からNexus 4、旧7、10用Android 4.3のローリングアウトが開始された。早速Nexus 7(2012)へインストールしたので、何処が変わったのかなどレポートをお届けしたい。
ファクトリーイメージからのインストール
即日アップデート可能なiOSとは違い、Androidの最新版はローリングアウト(順次配信)と呼ばれる方式で配信されるため、配布開始日にアップデートできるとは限らず、多くの場合は数日以上待たなければならない。
今回の4.3も4日間待ったものの落ちて来ず、仕方なくファクトリーイメージを使ってインストールした。この場合、使用環境が引き継がれるローリングアウトとは異なり、名前の通り全てリセットされ工場出荷状態に戻ってしまうのが難点だ。
とは言え、筆者のNexus 7はデータは全てクラウド側にある。アプリさえ再インストールすれば済む状態だったこともあり気にせず実行した(初期セットアップ時の復元機能で使用していたアプリは自動的にダウンロードされる。ただしホーム画面のウィジェットや壁紙などのレイアウトまでは戻らない)。
ファクトリーイメージはここにあり、Wi-Fi版のNexus 7(2012)は「Factory Images "nakasi" for Nexus 7 (Wi-Fi)の4.3 (JWR66V)」を使う。4.1.2や4.2.2のイメージもあるので、何か旧バージョンで検証しなければならない時も便利だ。
tgzを解凍すると、
bootloader-grouper-4.23.img
flash-all.bat
flash-all.sh
flash-base.sh
image-nakasi-jwr66v.zip
この5つのファイルが現れる。flash-all.batはWindows環境用、flash-all.shはMac OS XなどUnix系の環境用だ。スクリプトの中には
fastboot oem unlock
fastboot erase boot
fastboot erase cache
fastboot erase recovery
fastboot erase system
fastboot erase userdata
fastboot flash bootloader bootloader-grouper-4.23.img
fastboot reboot-bootloader
sleep 10
fastboot -w update image-nakasi-jwr66v.zip
このような記述がある。Nexus 7へUSBで接続し、Android SDKに含まれるfastbootコマンドを使ってファームウェアなどを書き換えている。この時注意する点として、PC側のUSBポートにはできるだけほかのデバイスを接続しないことである。
Nexus 7本体は、設定/タブレット情報/ビルド番号を数回タップして開発者オプションを表示させ(デフォルトでは非表示になっている)、USBデバックにチェックを入れ一旦電源OFF。[ボリューム-]+[電源ボタン]同時押しでBootloaderを起動、先のスクリプトを実行すれば数分で処理が完了する。
再起動すると、新品で購入したごとく、初期セットアップ画面となる。以降画面キャプチャを掲載するので参考にして欲しい。ここに関しては4.1や4.2から特に変わったところはなさそうだ。
初期起動時のホーム画面は1画面目、2画面目と5画面目は何もなく、3画面目(センター)に「マイライブラリ」、4画面目に「あなたへのおすすめ」のウィジェットが並ぶ。この点についても以前のバージョンと同じで変化が見られない。なお、筆者は日頃の行ないが悪いのか、電子書籍には“セクシー系”のものが表示されたのでモザイク処理を加えてある(笑)。
1点違うのは、ホーム画面のGoogleフォルダ、そしてアプリ画面に「Google Keep」アプリが加わったことだ。既にアプリ自体は公開済みなので利用者も多いと思うが、テキスト、音、写真などをペタペタ貼れるメモ帳のようなアプリ。ウィジェットにも対応しており、ホーム画面からも気楽にメモすることができる。実態は、drive.google.com/keepに保存されるので、PCからのアクセスも容易だ。Evernoteに似ているものの、こちらの方がよりライトな感じだろうか。
そのほか細かい点としては、「トーク」から「ハングアウト」へ名前/アイコン変更、そして「Google設定」が増えている。このGoogle設定は、Google+ログインのアプリ/Google+/Playゲーム/位置情報/検索/広告のカスタマイズができる。
ちなみに、少し前に「今ある99%のAndroidに共通のセキュリティホール」が発見され話題になっていたが、Android 4.2.2を搭載したNexus 7(2012)は、「Bluebox Security Scanner」を使って確認したところ確かにセキュリティホールが存在していた。しかし4.3へアップデートしたところ修正されていることが確認できた。
ただこのセキュリティホールは、Androidのバージョンには関係無く修正可能で、実際NTTドコモの「Xperia A」では現バージョン(4.1.2)でも修正されている。4.3になれば自動的に塞がるものの、各メーカーでそれ以下のバージョンでも、すぐに対応して欲しい部分だ。
目に見える機能追加は少ない
Android 4.2ではマルチユーザーに対応したが、4.3では加えて「制限付きプロフィール」に対応した。この機能を使い、使用するアプリを制限できる。Windows Phone 8のキッズコーナーとほぼ同じで、子供などに端末を渡す場合、保護者(管理者)によってペアレンタルコントロールが可能となる。
使用方法はマルチユーザーの時と似ており、設定/ユーザーで「+ユーザーまたはプロフィールを追加」をタップ、制限付きプロフィールを選択すればよい。この時、所有者が画面ロックの設定をしていない場合、設定するよう警告を表示する。確かに画面ロックしていなければ所有者のホーム画面へアクセスできるので、制限付きプロフィールを作る意味がない。
後は使用可能なアプリを個別にオン/オフするだけだ。デフォルトではGoogle系のアプリのみがオンになっている。
設定が終わりロック画面へ戻ると、所有者と制限付きプロフィールのアイコンが追加されている。後者でログインすると、設定したアプリのみ使える環境となっているのが分かる。またこの時、ストレージは別のパーティションで管理され、PCからUSB経由で接続した場合も、そのパーティションにしかアクセスできない。
一点Android 4.3リリース後話題になったのが、「アプリケーション毎に特定パーミッションをオン/オフできる」隠し機能だ。もともと4.3で付加された機能なのか、新機能の制限付きプロフィールで必要になったのかは不明であるが、現在設定からアクセスできず、「Permission Manager」アプリを使う必要がある。
例えば「LINE」のアプリは、位置情報/連絡先の読み取り、SMS・MMSの受信、電話の発信、設定の変更、カメラ、音声の録音のパーミッションを使用するが、このアプリで連絡先の読み取りをオフにすることができる。
プライバシーの問題など、いろいろ気になる人には嬉しい機能だ。ただ無闇にオフにするとアプリが正常に作動しなくなったり、隠し機能なだけに正常に動くとも限らない。自己責任で試して欲しい。
そのほか、Android 4.3で追加された機能として、3Dゲームなど用の「OpenGL ES 3.0対応」、省電力化やGoogle GlassなどBluetooth Smart製品のホスト端末になる「Bluetooth Smart対応」、Nexus 7(2013)などの対応端末で利用可能な「バーチャルサラウンドサウンド」、Wi-Fiネットワークに接続せずに位置情報を提供できる「Wi-Fi scan-onlyモード」、電話をかけるとき数字や文字をタップするとそれにマッチする連絡先の候補が表示される「オートコンプリート機能」などが挙げられる。
いずれも該当機種やアプリがないと体感できないものばかりで、Android 4.0から4.1、4.1から4.2へなった時ほど変化はなく、筆者のように急いでファクトリーイメージからインストールせず、ローリングアウトを待つのが良さそうだ。
ただ、複数のニュースソースによると、Android 4.3は、全てのNexusでTrimに対応し、フラッシュメモリのアクセス速度が改善されるとのことである。筆者の環境では実際、Android 4.2を搭載したNexus 7(2012)は、アプリをインストールした後ホーム画面へ戻ると、ウィジェットなどの再描画が目に見えて分かるほど遅かったが、4.3にしてからこの現象はなくなった。また、アプリを使っていると引っかかりのようなものを感じていたが、スムーズに動くようになった。今回4.3になって一番嬉しい改善ポイントかも知れない。バッテリ駆動時間や作動速度に関しては特に変化は無さそうだ。
最後に余談になるが、同時に発表されたNexus 7(2013)について一言。ルックスも良くなり、解像度は1,920×1,200ドット(WUXGA)/323ppi、メモリ2GB、プロセッサはパワーアップ、バーチャルサラウンドサウンド、Qi充電対応で、Wi-Fiモデルが約290gと魅力的なデバイスに仕上がっている。16GBモデルが229ドルと、現時点でのコストパフォーマンスは非常に高い。
ただ、個人的に現在使用している「Xperia A」とCPUが同等で、解像度が上がった分相対的に性能が下がりそうなので、今回はパスすることになりそうだ。
以上のようにAndroid 4.3は、制限付きプロフィール、OpenGL ES 3.0、Bluetooth Smart、Wi-Fi scan-onlyモードなどに対応したAndroidの新バージョンだ。
ただ対応機器を持っていない場合、実際目に見える部分での変化はほとんどなく、4.0から4.1、4.1から4.2へのアップデートを、まずはメーカーが着実に行なって欲しいところである。