西川和久の不定期コラム
Microsoft「Windows 8.1プレビュー」
~大小さまざまな磨きをかけ、新しいWindowsの完成形となるか
(2013/7/2 00:00)
米Microsoftは日本時間の6月27日未明、Windows 8の次バージョンとなる、Windows 8.1のプレビュー版をサイトで一般公開した。Windows 8からどのような変化があるのか非常に興味のあるところ。早速仮想PCへインストールし、その違いなど画面キャプチャを中心に試用レポートをお届けする。
インストール
今回公開されたWindows 8.1プレビュー版のインストール方法は、既存OSからのオンラインアップグレードと、ISOファイルを使用する2種類用意されている。前者の場合、Windows 8(RT含む)からのアップグレードは、Windows設定/個人用ファイル/ほとんどのアプリの環境を維持できるが、それ以外のOS、そしてISOファイルからの場合は維持できない(Windows 7は個人用ファイルのみ維持)。
対応している言語は、日本語のほか、アラビア語、英語(米国)、中国語(簡体字)、中国語(繁体字)、フランス語、ドイツ語、韓国語、ポルトガル語(ブラジル)、ロシア語、スペイン語、スウェーデン語、トルコ語となる。日本語版ISOファイルのサイズは、32bit版で2.8GB、64bit版で3.8GBだ。
アンインストールは、Windows 8の場合、「PC のリフレッシュを使って戻すことができる場合がある。」と同社のサイトに書かれているものの、Windows 7やそれ以前のOSは、既存のOSを再インストールしなければならない。Windows RTに関しては、アンインストールできず、正式にWindows RT 8.1がリリースされたとき改めてアップグレード可能になる。ほとんど片道切符状態なので、従来OSからのアップグレードは検証環境に留めた方がいいだろう。システム要件は以下の通り。なお、今回はx86版Windows 8.1のみを検証としている。
CPU | 1GHz以上 |
---|---|
メモリ | 1GB(32bit)または2GB(64bit) |
HDDの空き領域 | 16GB(32bit)または20GB(64bit)※Windows RT 8.1プレビューをインストールするには、Windows RTを既に実行している製品で10GBの空き領域が必要 |
グラフィックカード | WDDMドライバ搭載のDirectX 9グラフィックスデバイス |
※Lenovo ThinkPad Tablet 2、ASUS VivoTab TF810C、Samsung ATIV Smart PC、HP ElitePad 900、HP ENVY x2、Fujitsu ARROWS Tabなど、Atom(Clover Tail)搭載機は非対応
インストール時の画面キャプチャが容易に撮れることもあり、Mac OS X上のParallels Desktopで仮想PCを作成、そこにISO(32bit)版をインストールした。システムは、2CPU(2.5GHz)/2GB/32GB。Windows 8インストールウィザードを使った関係で、マシン名やアカウントの設定部分が自動化され、画面キャプチャは撮れていない。予めご了承頂きたい。
インストール自体は非常に簡単。ISOファイルをマウントし、仮想PCを起動、3回リブートして、ログイン画面が表示された。所有時間は30分ほどだろうか。おそらくリアルなPCでも新規インストールの場合は同程度だろう。ただし、アップグレード時は、環境を引き継ぐ処理が入るので、もう少し時間がかかると思われる。
初期起動時のスタート画面のタイルにあるもので、ニュースなど下向き矢印のあるアプリは、このISOファイルには含まれず、別途ダウンロードする形になっている。なおMicrosoft IDでログインすると、既に作動しているWindows 8のアプリなどが自動的にインストールされ、素のWindows 8.1の状態が維持できないので、ローカルアカウントでログインして画面写真を撮っている。
実際操作した感じは、Windows 8をベースにしていることもあり、最低限の仮想PC環境でも動作はかなりスムーズ。起動や終了、そして各アプリの動作も速くそして軽い。これまでいろいろなプレビュー版を試用して来たが、完成度はかなり高く、常用しても問題なさそうなレベルに仕上がっている。
Windows 8に大小さまざまなチューニング
まずスタート画面を見て気付くのは、タイルのサイズが「中/広い」から「大/中/小/広い」と4段階に変わったことだ。ちょうどWindows Phoneが7.5から7.8もしくは8へなった時と同じ感じだ(大はない)。
より多くの情報をライブタイルで表示可能になる大に関しては、アプリ側の新たな対応が必要だが、その他のサイズに関しては、Windows 8ストアアプリでも対応できる。小はライブタイル非対応だったり、使用頻度が低いアプリに設定するのが有効だろう。
設定方法は、アプリを選択状態にすれば、下に「スタート画面からピン留めを外す/アンインストール/サイズ変更/ライブタイルをオフにする」が表示されるのでここから行なう。またグループ化しているタイルに「グループ名」を付けられるようになった。うまく活用して、スタート画面をスッキリ整理したいところだ。
「パーソナル設定」では、背景に設定できる色数が増えた上、デスクトップに使っている壁紙をスタート画面にも表示できるようになった。これだけでも随分雰囲気が変わるから面白いものだ。
アプリ画面の表示方法も変わった。Windows 8では、スタート画面でプロパティ/全てのアプリを表示か、チャーム/検索する必要があったが、Windows 8.1では、スタート画面にある下矢印をタップするか、画面を下から上にスワイプすることによって表示され、1アクション減った。
並びも名前順/インストール日順/使用頻度順/カテゴリ順で変更可能だ。さらにこの画面キャプチャにはないが、新規インストールしたアプリ名の下に「NEW」(マゼンタ色)の文字が追加され、一目で分かるようになっている。
デスクトップ画面には、噂のスタートボタンが一見復活したように見えるが、これはWindowsボタン。つまりクリックするとスタートメニューではなく、スタート画面を表示する。とは言え、Windows 8では、物理的なWindowsボタンを押すなり、チャームを表示したり、画面左下へカーソルを移動したりなど、事前に方法を知らないとスタート画面に戻れなかっただけに、ボタンが1つ増えただけでスムーズにスタート画面へ戻ることができるのは、初心者にとって良い配慮と言えるだろう。
またこれを右クリックすると、従来Windowsキー+Xで表示していたメニューが表示され、ここからコントロールパネルを呼び出したり、シャットダウンも可能になっている。
タスクバーのプロパティは「タスクバーとナビゲーションのプロパティ」となり、「ナビゲーション」のタブには、「サインイン時にスタート画面ではなくデスクトップに移動する」、「スタート画面への移動時にアプリビューを自動的に表示する」などが追加された。
前者は、サインイン時にスタート画面をスキップし、直接デスクトップ画面から起動できるオプション。後者は、Windowsボタンを押したとき、スタート画面ではなく、アプリ画面を表示するオプションだ。これによってだいぶWindows 7に近い操作が可能となる。スタート画面をスキップしたいと言う要望がかなりあったのだろう。ただこの機能によってデスクトップでの利用が増え、Windowsストアアプリが減速しないか少し心配でもある。
Windows 8でもSkyDriveに対応していたが、Windows 8.1ではシステムレベルで統合。SkyDriveフォルダが独立してExplorerの左側に表示、PC設定で管理できるなど、より使いやすくなっている。
Internet Explorerは11になり、WebGLや、HTML5の動画再生、複数のデバイス間で設定/リンク/タブなどを同期、GPUの積極的活用、Windowsストアアプリ版はタッチ操作の改善など機能強化されている。ベンチマークテストしたわけではないが、レンダリングも速くなったように見える。
追加/変更のあった標準アプリ
アプリ画面をみると、追加されたWindowsストアアプリは、「アラーム」、「サウンドレコーダー」、「スキャン」、「電卓」、「リーディングリスト」、「フード&レシピ」、「ヘルスケア&フィットネス」。リーディングリストはいわゆる“後で読む”の機能だ。
なくなったのは「メッセージング」。もともとPeople/カレンダー/メール/メッセージングと4-in-1のアプリだったのが、People/カレンダー/メールの3-in-1のアプリになった。Windows Live MessengerとFacebookメッセージに対応したものだったが、Windows Live MessengerはSkypeへ、Facebookメッセージは公式Facebookアプリをリリース予定などの事情で削除されたものと思われる。
またフォトアプリは仕様が変更され、FacebookとSkyDriveの写真に非対応となった。この点は正式版で復活するのかどうかは不明。Facebookの写真表示は意外と便利だっただけに残念だ。
Windowsストアは、大幅にUIが変わり、カテゴリ毎にアイコンとアプリ名だけ並んでいた方式を止め、人気急上昇中/新着アプリ/人気トップ(有料)/人気トップ(無料)に分類、説明文(概要)が表示されるなどスッキリ見やすくなった。従来のカテゴリはプロパティで一覧表示する。また、アプリの自動更新にも対応。随分使いやすく、そして探しやすくなったので、この部分だけでもWindows 8で先行対応して欲しいくらいだ。
チャームからの検索は、ローカルリソースだけでなく、ネットにも対応した。試しに「atom z2760」で検索すると画面キャプチャのように、ネット上の記事のサムネールと概要などが表示される。Windows 8では、キーワードを入力しただけでは探し出せず、Internet Explorerを選択するとBingで検索した一覧が普通に並ぶだけだ。どちらが便利なのかは一目瞭然。
Windows 8では、スナップと呼ばれる、Windowsストアアプリを画面分割して2つ同時に表示できる機能があった。ただし、画面サイズの幅が1,366ドット以上必要な上、それ以上の解像度でもスナップしたアプリの幅は320ドットに固定だった。
しかしWindows 8.1ではこの制限がなくなり、中央で分離など、ある程度比率を自由に分割することができる。1,280×800ドット(ThinkPad X201iの解像度)で試しても問題なく分割された。少し古めのノートPCは、低解像度のためスナップできなかったが、これで救われることになる。
従来のアプリは320ドットか1,024ドット以上かを見るだけで良かったが、この方式では、逐一表示可能な幅を知らなければならないので、アプリ側の対応が必要だ。またMicrosoftの関係者は基調講演で4画面分割までしていたが、解像度をフルHDにしてみたりいろいろ試したものの、2画面分割しかできなかった。
この週末、長時間Windows 8.1プレビューを触っていた。比較のためWindows 8に戻ってを操作すると既に使いにくいと感じる。整理され背景も綺麗なスタート画面、探しやすいWindowsストア、見やすい検索結果、性能の上がったIE11……などなど。もうWindows 8へは戻れない。今のところ不安定な部分もないので、メインのノートPCへもインストールしようか検討しているほどだ。
いずれにしても昔からWindowsはx.0からx.1へのバージョンアップの時に飛躍している。どうやら今回も積み残し部分を一掃し、例外なくそうなりそうな雰囲気だ。
細かい設定が可能になったPC設定
Windows 8は、以前筆者が記事でも「何か設定しようとするとすぐにデスクトップのコントロールパネルへ飛ばされる」と指摘した。これは大幅に改良され、ほとんどPC設定だけで済むようになった。インストール以降の数日間、まだコントロールパネルへは1回も飛ばされていない。全項目画面キャプチャしたので参考にして欲しい。
一番の違いは、ネットワークとSkyDriveの追加、PCとデバイスでディスプレイなど、これまでデスクトップ環境のコントロールパネルで対応していたデバイスの設定などが可能になったことだろうか。国内ではあまり需要はないかも知れないが、時刻と言語/地域と言語で、言語パックを必要に応じてダウンロードし簡単に適応できるもの便利だろう。
設定のトップでは、ロック画面/アカウントの画像/ピクチャパスワードに加え、最近操作した項目が表示されている。
PCとデバイスのロック画面は、プレビュー、背景、スライドショー、ロック画面に表示するアプリやカメラを設定。ディスプレイは、本来コントロールパネルを操作していた部分でマルチディスプレイにも対応し、識別、検出、解像度、向き、その他オプションなどが設定できる。デバイスは、ネットワーク設定の変更、プリンター、他のデバイス、従量制課金接続でのダウンロード、既存の保存場所を、マウスとタッチパッドは、それぞれの詳細、コーナーとエッジは、アプリ切り替え、コーナーのナビゲーションを、電源とスリープは、画面、スリープを設定。自動再生は、オン/オフ、リムーバブルドライブ、メモリカードの自動再生の既存の選択する。そしてPC情報がある。
アカウント配下のお使いのアカウントでは、アカウントの画像、アカウントの画像を作成、サインイン オプションは、パスワード、ピクチャパスワード、PIN、パスワードのポリシーを設定。また、Microsoft IDでログインしている場合は、加えてその他のアカウントでユーザーの追加が可能になっている。
SkyDriveは、先に書いたように、Windows 8.1にシステムレベルで統合された。容量は現在の使用状況と容量の追加購入、ファイルは、ドキュメントで既定でSkyDriveへ保存、カメラロールフォルダー、従量制課金接続でのアップロード、ダウンロードなどを設定できる。同期は他のPC、パーソナル設定、アプリの設定などの同期設定を行なう。
検索とアプリの検索は、検索履歴、オンライン検索にBingを使う、検索エクスペリエンス、セーフティサーチ。共有は、共有できるアプリのオン/オフ。通知は、通知する状態、非通知の時間帯設定、通知可能なアプリの設定。アプリの設定は、ディスク容量から不要なアプリを選択しアンインストール。既定は、各オブジェクトに対するアプリ設定など。
プライバシーの全般は、個人情報、SmartScreenフィルターによるWebコンテンツのURL確認、テキスト候補の表示、Webサイトでの地域に適したコンテンツ表示の制御、位置情報、Webカメラ、マイクのオン/オフと、使用可能なアプリ設定、その他デバイスには、アクセス制御可能なデバイスが表示される。
ネットワークは、有線、無線による接続、VPN、プロキシやホームグループ、社内の設定など、従来ネットワークと共有センターに含まれているものも設定できる。
時刻と言語は、日付と時刻/日付と時刻の形式。地域と言語は、国または地域/言語の設定が可能で、言語に関してはその言語で入力できるキーボードや言語パックによるシステムの多言語化にも対応している。
簡単操作のナレーターは、画面上の項目の読み上げ、音声、読み上げの音声、カーソルとキー、拡大鏡は、画面上の項目の拡大オン/オフ、追跡のオン/オフ、ハイコントラストは、テーマの選択、テキスト、ハイパーリンク、淡色表示のテキスト、選択されたテキスト、ボタンテキスト、背景の設定が行なえる。
キーボードは、スクリーンキーボード、便利なキーなどのオン/オフ。マウスは、ポインターサイズ、ポインターの色、マウスキー機能の設定。その他のオプションは、Windowsでアニメーションを再生、Windowsの背景表示、通知表示の長さ、カーソルの太さが設定可能だ。
保守と管理は、Windows Update、ファイル履歴、PCの起動をカスタマイズとなる。
従来のコントロールパネルにはまだ多くの項目が含まれるものの、Windows 8.1で対応した部分があれば、通常使用時はこのPC設定だけで事が足りると思われる。当初から気になっていた部分でもあり、大幅に改善され嬉しい限りだ。
ただ、IMEの例えばMS-IMEをATOK配列に変更などは、まだコントロールパネルに残ったままだ。時刻と言語/地域と言語のキーボードにこれらの設定を配置して欲しいところ。
以上のようにWindows 8.1プレビュー版は、PC設定の大幅な改善、4つのサイズに対応するライブタイルやカスタマイズの幅を拡大、標準Windowsストアアプリの追加、Windowsストアの調整、レンダリングが高速なIE11の搭載、デスクトップ環境の改善……など、Windows 8をベースにし、大小さまざまな修正そして追加を行なっている。プレビュー版にも関わらず作動もかなり安定しているのが印象的だ。今からリリースが待ち遠しい。