西川和久の不定期コラム
Microsoft「Windows 8.1」
~Windows 8をさらに使いやすくチューンナップ!
(2013/10/23 06:00)
米Microsoftは、日本時間の10月17日20時から、Windows 8.1へのアップデートプログラムをWindowsストアで公開した。RTMは8月27日(現地時間)であり、約2カ月遅れての一般公開となる。早速3台のPCへインストールしたので、8や8.1プレビュー版との違いや使用感などをまとめてみた。
Windows 8.1へアップデートするには
今回は新規インストールではなく、Windows 8からのアップデートなので、既にWindows 8もしくはWindows RTが動いているPCを用意した。Windows 8からWindows 8.1へのアップデートは無料だ。ただし、Windows RTに関しては、当初公開されていたものの、不都合が発覚し、10月21日時点で、一旦非公開となってしまった。
不具合とは、アップデート最中のリブートで「Boot Configuration Dataが失われた」と言うメッセージが出てどうにもならなくなるエラーらしく、これに遭遇すると結構深刻だ。運良く手持ちのSurfaceはアップデートを完了し、機嫌良く動いている。
アップデートの手順は、Windowsストアへストアアプリでアクセスすると、下に掲載した画面になり[ダウンロード]をクリックすると、ダウンロード開始、完了するとリブートする。17日当初の20時頃はアクセスが集中したのか、ストアすら開かず、開いても異様にダウンロード時間がかかっていたものの、現在は落ち着いているようだ。
アップデートには小1時間はかかる。しかし入力箇所も少なく、非常に簡単なプロセスになっている。これなら初心者でも安心して扱えるだろう。リブートは3回(実機でのインストールなのでインストール中の画面キャプチャは撮れていない)。
最終段階で、Microsoft IDに登録しているメールアドレスへセキュリティーコードを送信する手順がある。届いたメールに書かれている“お客様のコード”を入力してしばらくするとスタート画面が現れる。
なお、アプリ画面は普段使いの実機を使っている関係で、標準アプリではないものが含まれ、その部分は黒塗りしている。予めご了承頂きたい。
初期起動直後のホーム画面は、Windows 8.1プレビュー版と比較して、若干並びが変わったり、ライブタイルの背景色やサイズが変わったり、デスクトップの壁紙も変更されている。
標準アプリでWindows 8から無くなったのはメッセージジング。元々このアプリは、People/カレンダー/メール/メッセージングと4-in-1のアプリだったが、People/カレンダー/メールの3-in-1のアプリになった格好だ。替わりにSkypeが新たに追加されたのでメッセージングは無くなったのだろう。
Skype以外に追加されたアプリは「アラーム」、「サウンドレコーダー」、「スキャン」、「電卓」、「リーディングリスト」(後で読む)、「フード&レシピ」、「ヘルスケア&フィットネス」。
プレビュー版では「ヘルスケア&フィットネス」と「フード&レシピ」の内容はほとんど英語だったが、リリース版では日本語でかつ国内に合う内容に変更されている。特にフード&レシピは情報提供元がAllrecipesに変わった。
初期起動直後のWindows Updateは計8本。内4つはIMEやDefenderのデータ更新、3つはプログラム、1つはCamera Codec Packの更新となる。
なお新規インストールに関しては、Windows 8.1が13,800円、同Proが25,800円。Windows 8.1からWindows 8.1 Pro with Media Centerにアップグレードが行なえるWindows 8.1 Pro Packが、プロダクトキーのみ同梱で12,800円となっている(全てオープンプライスで、参考価格)。
Windows 8やWindows 8.1プレビュー版とどこが同じでどこが違うのか
Windows 8.1プレビュー版がリリースされてから、ほぼ2カ月でRTMになっているため、大枠の内容はほとんど変わっていない。変更内容は細かい手直しとバグ修正程度だと思われる。試用期間が短いため、見逃していたり、間違っていたりした部分があればお許し願いたい。
見やすく探しやすくなったストア、任意の幅で4画面までに対応したスナップイン、ホーム画面を上にスワイプしてアプリ画面を表示する機能や、ライブタイルのサイズを大/ワイド/中/小に設定できるのは同じだ。
「タイルを縮小して表示/はい or いいえ」は、プレビュー版も含めWindows 8.1からの機能だ。スタート画面に表示しているライブタイルを縮小表示し、同じ画面解像度でもより多くのライブタイルを並べることができる。
デスクトップのWindowsボタンやタスクバー/ナビゲーションで、ホーム画面に戻らずアプリ画面を表示し、起動時ホーム画面をスキップしてデスクトップを表示する、Windows 7のような操作方法は、プレビュー版からそのまま引き継がれている。これによってデスクトップアプリをメインに使うユーザーもWindows 8と比べ使いやすくなった。
Windows 8からあるアプリで内容が結構変わったのはPeopleとメール。Peopleはプロパティ(右クリックか画面の上もしくは下からスワイプ)に、ストアアプリ同様、ホーム/自分/最新情報/全ての連絡先の項目を表示するようになった。この項目は、メインの情報に合わせ、ある幅までは横並びで、ある幅未満になると縦並びになる。また、例えばFacebookとTwitterのアカウントが混在した場合、8のPeopleは結構時系列が前後していたが、8.1のPeopleは上手く並び、閲覧メインなら使えそうな雰囲気だ。
メールは、システムカラーがブルーになり、左側の表示がよりシンプルに見やすくなった。筆者は日頃、GmailのWeb版を使っているが、これならこちらでもいいかなと思う出来栄えだ。ただ、たまにほかのメールクライアントでは問題無くても、相手の名前が文字化けしているケースがある。このアプリも幅に応じてうまく表示内容を変え、スナップインしても使いやすいよう、工夫されている。
またスナップインはWindows 8では画面解像度が、1,366×768ドット未満だと非対応になっていたため、1,280×800ドットのThinkPad X201iでは使えなかった機能だ。しかし、Windows 8.1からは、この制限が外され利用可能になった。今後登場予定の7型前後のパネルを搭載したタブレットも同じ解像度が多く、それを見越した対応なのだろう。
ただし、解像度の問題か、ThinkPad X201iのグラフィックスの問題かは不明だが、「タイルを縮小して表示」の項目は表示されなかった。
この8.1になって自由に幅が調整できるスナップイン。アプリ側の対応によって、例えばTwitterアプリは8の仕様のままで、もともと想定していた一定の幅になるまでは周囲がブランクになってしまうが、Facebookアプリは、8.1のアップデートとほぼ同時に公開されただけあって、幅に応じて表示する内容を変え、うまい対応をしている。
他のタブレット系のOSの標準には無い機能だが、複数アプリを1画面で扱えると、作業効率は大幅にアップする。Windows 8.1の魅力と言えよう。
Windows 8.1プレビュー版には無く、新たに追加されたのは、「Skype」と「ヘルプ+使い方」。Skypeに関しては先に書いた通りだが、ヘルプ+使い方は「なるほど!」と思わせる新アプリだ。
Windows 8搭載のPCを試用すると、多くのメーカーは独自で同種のアプリをプリインストールしていた。もともとWindows 7(もしくはそれ以前)からWindows 8への変化は大きく、情報が1カ所にまとまっていないと操作するだけでも大変。何らかのチュートリアルが必要となる。それをWindows 8.1ではMicrosoft自身がまとめた格好となる。
アプリ自体はWindowsストアアプリの特性をうまく使い、文章や写真・動画を要所要所で使い分け、非常に分かりやすい内容に構成されている。ユーザーはもちろん、PCを供給するメーカーにとっても欲しかったアプリではないだろうか。
Windows 8.1プレビュー版を紹介した記事では、PC設定の全パネルの画面キャプチャを掲載したが、さすがに数が多過ぎたため、今回は、リリース版で変わった部分のみを対象にしたい。
PC設定/SkyDrive、ファイルの保存/カメラロール/同期の設定/従量制課金接続と、容量/ファイル/同期の設定から内容が変更になった。カメラロールは、プレビュー版では、ファイルの中に入っていたが、それが独立した形となる。SkyDriveはデスクトップとも統合され、扱いやすくなった。
ただし、SkyDriveのフォルダへファイルをコピーするとデフォルトは「オフラインで使用する」となり、他のSkyDriveが動作する環境へは公開されない。共有したい場合は、プロパティで「オンラインでのみ使用する」へ変更すればOK。SkyDrive下にあるフォルダも同様だ。
表記だけ変わったのは、PC設定/PCとデバイス/画面の操作。ここはプレビュー版では「コーナーとエッジ」になっていた。
短期間の試用中、気になった点をいくつかピックアップしてみたい。まずフォトとPeopleの写真が、古い順から並んでおり非常に見にくい。ソートオプションも無く仕様としては問題があるように思う。
次にIMEの挙動が変わった。Windows 8ではシステム起動時、全角入力になっていたのが、英数半角入力になった。個人的には起動する度に入力した後「あっ、そうだった……。」と思っていただけに嬉しい改善点だ。
ただ、デスクトップアプリとWindowsストアアプリでキーバインドの動作が違うケースがある。具体的には、筆者の場合、全角と半角英数混在の文章が多いため、Microsoft IMEをATOKキーアサインで使っている。
こうすると[変換]キー一発で、全角と直接入力モード(つまり半角英数)がトグルで切り替るからだ(Windows 8も8.1もデフォルトでこの「直接入力モードを使用しない」がチェック状態なので、一旦Microsoft IMEを選択し、チェックを外さなければならない)。この状態で先に書いた切替え方法がデスクトップ上では使用可能になる。
しかし、Windowsストアアプリで[変換]キーを押すと、モードがトグルせず、直前まで入力し確定した文字を再変換してしまう。デスクトップ上かWindowsストアアプリ上かで、動きが違うのは非常に使いにくい(と言うより使えない)。レアケースかも知れないがこのチグハグな仕様は何とかして欲しいところだ。
そして最後は「通知センター」と「バックグラウンド動作の制御」に該当する機能が無いことだろう。
日頃、OS XやiOS、Androidを使っていると、通知センターは見落とした通知を確認するのに役に立つ。しかしWindows 8.1ではこの機能が無いため、一旦通知を見過ごしてしまうともう見ることはできない。
また8.1になりアプリの自動更新が可能になったが、更新後、1度起動するまでは、アプリ画面に[New]の文字を表示しているので確認が可能だ。しかしスタート画面に登録しているアプリだと、多くのケースでNewの文字を確認する前にアプリを起動してしまうので、結局気付かずじまいとなる。
バックグラウンド動作の制御は、ライブタイルを更新するアプリはこれに該当する。他のOSには無いWindows 8.1売りの部分だ。ただこの手のアプリを少しインストールすると、すぐに「アプリが多すぎます」のメッセージを表示する。このパターンだと、Digital Live Tile Clock、Facebook、Twitter、Skype、アラーム、カレンダー、メール。後半4つは標準アプリだ。「アプリを削除してください。」は結構乱暴な対応方法だと思う。メッセージが出る数をもう少し増やした上で、PC設定で簡単にオン/オフする機能が欲しいところか。
最後は少し粗探しになってしまったが、Windows 8.1は、ある意味Windows 8の完成形だ。いろいろな部分を手直しし、ずいぶん使いやすくなったように思う。デスクトップ環境へのアクセスも容易になり、これならWindows 7からのアップグレードも進むのではないだろうか。特にWindows 8へ留まる理由も思い浮かばず、全Windows 8ユーザーへお勧めしたいアップデートと言えよう。