西川和久の不定期コラム

eMachines「EZ1800-N34D/F」
~20型1,600×900ドット液晶を搭載した一体型PC



 日本エイサー株式会社は7月21日、eMachinesブランドのオールインワン型デスクトップPCを発表、同月27日から発売開始した。ほぼ1カ月後の先日、実機が送られてきた。これまで筆者はeMachinesブランドのPCを触ったことが無いので興味津々。試用レポートをお届けする。


●Core i3を搭載し1,600×900ドットのオールインワン

 CPUは第2世代のIntel Core i3-2100プロセッサを搭載。2コア/4スレッドでクロックは3.1GHz。ただし下位モデルなので、Turbo Boostには対応していない。キャッシュは3MB。チップセットはIntel H61 Expressだ。オールインワンPCは、モバイルアーキテクチャのIntel HM65 Expressなどを使ったものが多いものの、この「EZ1800-N34D/F」は、CPUとチップセットからも分かるように、デスクトップアーキテクチャで構成されている。

 メモリは4GB搭載。チップセットの仕様上は4GB×2の最大8GBなのだが、本体裏のメモリがあると思われるパネルのネジを外してもパネルが開かず(無理にこじ開けると割れそうだったので止めた)2スロットか1スロットかの確認はできていない。後半のベンチマークテストの結果を見ると、4GB×1の計4GBとなっているようだ。HDDは3.5インチ7,200rpmの500GBを搭載、光学ドライブはDVDスーパーマルチドライブとなる。

【表】eMachines「EZ1800-N34D/F」の仕様
CPUIntel Core i3-2100(2コア/4スレッド、3.1GHz、キャッシュ 3MB)
チップセットIntel H61 Express
メモリ4GB
HDD500GB(7,200rpm)/3.5インチ
OSWindows 7 Home Premium(64bit)
ディスプレイ20型液晶ディスプレイ(非光沢)、1,600×900ドット
グラフィックスIntel HD Graphics 2000、ミニD-Sub15ピン
ネットワークGigabit Ethernet、IEEE 802.11b/g/n
光学ドライブDVDスーパーマルチドライブ
その他USB 2.0×6(左側面×2、下側面×4)、
マルチカードリーダ、音声入出力、192万画素Webカメラ、PS/2ポート×2
付属品PS/2キーボード、PS/2マウス、ACアダプタ、Office Personal 2010
サイズ/重量500×62×345mm(幅×奥行き×高さ)/約5.6kg
店頭予想価格7万円前後

 グラフィックスはCPU内蔵のIntel HD Graphics 2000。モバイルアーキテクチャであればもれなく3000となるが、デスクトップアーキテクチャ用のCPUは、K型番のオーバークロック対応モデル以外2000となる。ディスクリートGPUが無いため「Intel Quick Sync Video」は有効だ。

 外部出力はミニD-Sub15ピンのみ。液晶パネルは20型のノングレア(非光沢)で解像度は1,600×900ドット。このクラスでノングレアパネルは結構珍しく、解像度もHD以上、フルHD未満。ドットピッチの関係から考えると、文字が大き過ぎず小さ過ぎずで見やすい。

 ネットワークは有線LANがGigabit Ethernet、無線LANがIEEE 802.11b/g/n。安価なPCはGigabit Ethernet非対応なものが多い中、しっかり対応しているのはポイントが高い。一方、Bluetoothは非搭載だ。

 その他のインターフェイスは、USB 2.0×6、マルチカードリーダ、音声入出力、Webカメラ、PS/2ポート×2。BluetoothやUSB 3.0、eSATAは無いものの、必要最低限は揃っている。今時PS/2ポートが2つ、キーボードとマウス用にあるのは珍しいところ。付属のキーボードとマウスもPS/2インターフェイスとなる。

 サイズは500×62×345mm(幅×奥行き×高さ)、重量約5.6kg。20型のパネルサイズを考えると、プラスアルファの大きさにまとまっており意外とコンパクト。さほど重くもなく、置き場所を選ばず、必要であれば持ち運びも容易だ。

 店頭予想価格は7万円前後。「Office Personal 2010」がプリインストールされているので、差額からハードウェアだけの値段を考えると、スペックの割にはコストパフォーマンスが高いモデルと言えよう。

本体正面。中央下グリーンに光るのがパワースイッチ。スタンバイ時にはオレンジ色に変わる。スピーカーはパワースイッチの下、メッシュの部分に埋め込まれている左側面。上から液晶パネルの輝度ON/OFFスイッチ、USB 2.0×2、音声入出力、マルチカードリーダ、ミニD-Sub15ピン右側面。DVDスーパーマルチドライブのみで他には何も無い
背面。VESAマウント対応だ。右側の小さいパネルが本文に書いたメモリがあると思われる場所。ただしネジを外しても開かなかった後ろ/右下側面にコネクタが集中。左から電源コネクタ、PS/2×2、USB 2.0×4、Gigabit Ethernet、オーディオ出力付属品。PS/2インターフェイスのテンキー付きフルキーボードとマウス。電源はACアダプタ式でコネクタはミッキータイプだ

 ボディは液晶パネル周辺とリアの多くが光沢ブラック、左右にある足に相当する部分周辺が非光沢ブラックと、同じ黒でも使い分けられている。非常にシンプルでどこにでもなじむデザインだ。ただし光沢部分は指紋が目立ち、加えて全体的に高級感はあまり無いのが残念なところ。裏にはVESAマウント用のネジ穴がある。

 液晶パネルは、(目視だが)発色は割りと正確にsRGBを再現している。光沢パネルほど色に派手さは無いものの、コントラストや輝度も高く、色乗りも良い。視野角は上下より左右が若干狭く、角度が付くと黄色っぽくなって行く。仕事で使うにしても趣味で使うにしても、特別色にこだわらない限り問題にはならないクオリティだ。

 コネクタ類は、左側面(輝度ON/OFFスイッチ、USB 2.0×2、音声入出力、マルチカードリーダー、ミニD-Sub15ピン)と、下側面(PS/2×2、USB 2.0×4、Ethernet、オーディオ出力)と2カ所にうまく分けられている。

 これによって、常時接続するものは下側面、使うときだけ接続するものは左側面と使い分けができる上、正面から見た場合、極力ケーブルなどが見立たなくなる。ただしマルチディスプレイにする時は常時接続になるため、できればミニD-Sub15ピンは下側面に欲しかった。

 振動やノイズ、発熱に関しては、試用した範囲では許容範囲内(負荷をかけない状態)。ほぼ静音で、ボディに耳を付けるとファンの音が低く聞こえる程度。これなら静かな室内で使っても大丈夫だろう。

 サウンドに関しては素の状態で聞くと、ボディサイズの割りにパワー不足でかつ低音不足。クオリティもあまり高くない。「RealTek HDマネージャ」で少し調整すると、音量や音質、低域が少し向上する感じだ。

 付属のキーボードとマウスは、写真からも分かるように、あくまでも付属品のレベルだ。ただし、キータッチやマウスのクリック感などは、それほど悪くなく、そのまま使っても十分使用に耐えられる。

 全体的には低価格に抑えるため、どうしても質感などがチープになりがちなのは残念だが、限られたコストの中でうまくまとめれらているように思える。

 気になる点があるとすれば、電源スイッチのイルミネーションが明る過ぎることと、もう1点、同社のWebに出荷から1カ月以上経っても何も情報が載っていないことだ(ノートPCが2モデル、液晶モニタ1モデル、デスクトップPCに関してはゼロ)。流石にこれでは何も分からず、記事を書くどころか、購入する際の事前のチェックもできない。早いタイミングでのWebサイトの充実をお願いしたい。

●うまくまとまった不満の無い環境

 OSは64bit版のWindows 7 Home Premium。SP1が導入済でInternet Explorerも9になっている。HDDはオールインワンとしては珍しく3.5インチの「ST3500413AS」。500GB/7,200rpm/キャッシュ 16MBでSATA 6Gbpsにも対応している。ただしチップセットのIntel H61 ExpressがSATA 3Gbpsまでなので、フルパワーは発揮できない。初期起動時、C:ドライブのみの1パーティションで約448GBが割り当てられ425GBの空き。

 光学ドライブは「HL-DT-ST DVDRAM GT34N」、ネットワーク関連は「Ralink 802.11n Wireless LAN Card」と「RealTek PCIe GBE Family Controller」。そのほか特に特殊なものはなく、Intel H61 Expressとしては一般的な構成だ。

 タスクトレイに常駐しているアプリケーションは、「Intel HD Graphics」、「RealTek HDマネージャ」、「CyberLink YouCam」、「Norton Internet Security」、「Hotkey Utility」。OS起動直後メモリ使用量は1GBを切っており、メモリ4GBもあればそれなりに余裕がある。

起動時のデスクトップ。左側にショートカットが少しとシンプルなデスクトップ。1,600×900ドットあるのでHD解像度より余裕があるデバイスドライバ/主要なデバイス。HDDは「ST3500413AS」。3.5インチ/7200rpm/SATA 6Gbps/キャッシュ16MBの500GB。光学ドライブは「HL-DT-ST DVDRAM GT34N」。マルチカードリーダはUSB接続だC:ドライブのみの1パーティション。約448GBが割り当てられている

 プリインストールされているソフトウェアは、「CyberLink PowerDVD 10」、「CyberLink YouCam」、「Norton Internet Security」、「Norton Online Backup」、「Skype」、「Nero 10 Essentials」、そして同社やIntelのツールなど。

 「Office Personal 2010」に関しては、インストールイメージがHDD内にあるものの、未セットアップ状態で、起動するとプロダクトキーの入力を要求する。キーは同梱されているマニュアルにあるのでそれを見ながら打ち込むことになる。

 そのほかのソフトウェアはあれこれ入っておらず、割とあっさりした構成で、筆者的には好みと言えよう。

eMachines Welcome CentereMachines Recovery ManagementeMachines Updater
eMachines Hotkey UtilityNorton Internet SecurityOffice Personal 2010

 ベンチマークテストはWindows エクスペリエンス インデックスとCrystalMarkの結果を見たい。

 Windows エクスペリエンス インデックスは、総合 4.6、プロセッサ 7.1、メモリ 5.9、グラフィックス 5.2、ゲーム用グラフィックス 4.6、プライマリハードディスク 5.9。

 プロセッサがCore i3とは言え、常にクロックが3.1GHzあるので、7.1とそれなりの速度だ。メモリはパネルが開かなかったので確認していないが、このスコアだとシングルチャネル作動だと思われる。ゲーム用グラフィックスが4台だが、ほかは5以上であり、普段使いなら十分なパフォーマンスだ。

 CrystalMarkは、ALU 44757、FPU 46247、MEM 42591、HDD 14494、GDI 16186、D2D 1562、OGL 2983。グラフィックス関係はIntel HD Grapics 2000の平均値。CPUは結構優秀で加えてHDDが意外と速い。この関係もあり、実際に使った感じはサクサクとした作動だった。

 いずれにしても試用している範囲では、特にどこかが遅いとは感じず、逆に小気味よく動き、ストレスを感じない環境。バリバリの3D系ゲームでもしない限り十分な性能を備えている。

Windows エクスペリエンス インデックスは総合 4.6、プロセッサ 7.1、メモリ 5.9、グラフィックス 5.2、ゲーム用グラフィックス 4.6、プライマリハードディスク 5.9CrystalMarkは、ALU 44757、FPU 46247、MEM 42591、HDD 14494、GDI 16186、D2D 1562、OGL 2983

 以上のようにeMachines「EZ1800-N34D/F」は、20型の1,600×900ドットのパネルを搭載し、HD解像度よりもワンランク上の快適なデスクトップ、加えてノングレア(非光沢)なので、映り込みなども全く気にならない。コストダウンの影響か質感がイマイチなのは残念だが、そのほかの部分に関しても無難にまとまったオールインワン型デスクトップPCだ。

 Office Personal 2010が必要でないユーザーは割高になってしまうが、必要なユーザーであれば、ソフトウェア込みでのこの価格はなかなかコストパフォーマンスが高く、魅力的な1台と言えよう。