■西川和久の不定期コラム■
日本HP「Pavilion Notebook PC dv7夏モデル」
6月17日、日本ヒューレット・パッカードは、「HP Pavilion Notebook PC」の夏モデル第2弾として17.3型液晶搭載の「dv7」を発表、18日から発売開始となった。最大の特徴は、このパネルサイズに関わらず最小構成時は10万円前後からと安価なことだ。実機が届いたのでレポートをお届けする。
「dv7」は、すでに発表されているdv6同様、デザインの変更、64bit版Windows、最大メモリ8GBなど、今風のスペックに仕上がっている。販売は同社の「HP directplus」による直販のみで、最小構成のCore i5-450M(2コア/2.40GHz/TB2.66GHz/キャッシュ3MB)、2GBメモリ(2GB×1)、320GB HDD(7,200rpm)、ATI Mobility Radeon HD 5650、DVDスーパーマルチドライブ、IEEE 802.11b/g/n無線LAN、17.3型1,600×900ドット(ワイドHD+)液晶で103,110円(税込)。17.3型液晶パネル搭載ノートPCとしては結構安価だ。
今回届いたのはBTOでも最高の組み合わせで、Intel Core i7-840QM(4コア/1.86GHz、TurboBoost3.20GHz/キャッシュ8MB)、8GBメモリ(4GB×2)、160GB SSD+500GB HDD(7,200rpm)などの構成になっていた。主な仕様は以下の通り。
Pavilion Notebook PC dv7夏モデル仕様 | |
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CPU | Intel Core i7-840QM(4コア/1.86GHz、TB3.20GHz/キャッシュ8MB) |
チップセット | Intel HM55 Express |
メモリ | 8GB/DDR3-SDRAM/2スロット空き0、最大8GB |
HDD | 160GB SSD+500GB HDD(7,200rpm) |
OS | Windows 7 Professional(64bit) |
ディスプレイ | 17.3型「17.3インチワイドHD+ ウルトラクリアビュー・ディスプレイ」、1,600×900ドット |
GPU | ATI Mobility Radeon HD 5650、アナログRGB出力、HDMI |
ネットワーク | Ethernet(10BASE-T/100BASE-TX/1000BASE-T)、IEEE802.11b/g/n、Bluetooth 2.1+EDR |
その他 | USB 2.0×4(内1つはeSATAと共用)、5in1メディアスロット、Webカメラ、指紋センサー、マイク入力、ヘッドフォン・ラインアウト×2、内蔵マイク、ALTEC LANSINGステレオスピーカー、HP Triple Bass Reflex Subwoofer |
サイズ/重量 | 420×278×32~39.5mm(幅×奥行き×高さ)/約3.05kg |
バッテリ駆動時間 | 約5時間 |
価格 | 200,760円(税込/HP Directplus調べ) |
主な構成は先に書いた通り。CPUはCore i5-450M、Core i7-840QMに加え、Core i7-720QM(4コア/1.6GHz、TB2.8GHz/キャッシュ6MB)の選択もできる。メモリは2スロット。2GB×1/2GB、2GB×2/4GB、4GB×2/8GBの組み合わせも可能だ。
Intel HM55 Expressを使った一般的なノートPCとの一番の違いは、内蔵のIntel HD Graphicsではなく、ATI Mobility Radeon HD 5650を標準搭載していること。後半のベンチマークテストを見れば分かるように、明らかに数ランクアップ、他のデバイスとのバランスも良くなる。BTOの最小構成でも変わらないのはポイントが高い。出力はHDMIとアナログRGBの2ポートに対応する。
次にSSD+HDDのハイブリットは、プライマリディスクがSSDなのでシステム全体のパフォーマンスが大幅に向上する。ドライブはIntel SSDSA2M160G2とST9500420AS(500GB/7,200rpm/16MB)を使用。BTOの組み合わせとしては、この他に320GB、500GB+500GBも選ぶことができる。どちらも7,200rpmの高速モデルだ。ただし、Intel HM55 ExpressはRAID非対応なので500GB×2の時、RAID構成には出来ない。
ネットワークは、有線LANがGigabit Ethernet、無線LANがIEEE 802.11b/g/n。Bluetooth 2.1+EDRはBTOでオプションとなる。オプティカルドライブはBlu-ray DiscドライブかDVDスーパーマルチドライブの選択ができる。
インターフェイスは、USB 2.0×4、5in1メディアリーダー、指紋センサー、Webカメラ、ステレオスピーカーに加え「HP Triple Bass Reflex Subwoofer」を搭載。低音のボリューム感がアップする。USB 2.0の4つのポートの内1つはeSATAとの併用だ。外部にHDDを増設する時、USB 2.0より転送が速く快適に使用できる。
そして1,600×900ドットの「17.3インチワイドHD+ ウルトラクリアビュー・ディスプレイ」は、ノートPCとしてはかなり大きい液晶パネルだ。持ち運び用として考えると大き過ぎるものの、デスクトップPCの替わりとしては、これだけのサイズと解像度はなかなか有効だろう。
OSは、64bit版のWindows 7 Home PremiumとWindows 7 Professional、そしてMicrosoft Office Personal 2010もしくはMicrosoft Office Home and Business 2010のプリインストールも可能だ。64bitなので3GB以上のメモリも無駄にならない。
ボディでまず目を引くのが、ヘアライン加工されたアルミニウム製パネルと「nagisa」デザインだろう。ヘアライン加工はソリッドな雰囲気になりがちだが、nagisaのラインが入ることにより、少し優しい感じとなる。色はシルバーで少し赤味かかっているように見える。液晶パネルの周囲はブラックで全体的にシャープ感を醸し出す。またこのデザインはパームレストにも施されイメージを統一。安っぽい感じは微塵も無い。
17.3インチワイドHD+ ウルトラクリアビュー・ディスプレイは、光沢タイプで、ここのところ明るく派手な発色のオールインワンPCばかり見ていたので、少し暗くそして地味に思えるものの、ノートPCとしては標準的なレベルだ。視野角は上下左右共広くはないが、実用上十分確保されている。
キーボードはアイソレーションタイプのテンキー付。面積が大きい割には中央を強く押してもたわむことも無くキータッチは良い。またボディのサイズで余裕がある分、ファンクションキーなどもゆったりしており、加えてテンキーは若干離れて配置され、ミスタッチを防いでいる。どちらもキーピッチは19mmあり、快適に入力可能だ。
マルチタッチに対応したタッチパッドとパームレストは十分な面積を確保。非常に使い易い。ただちょっと気になるのはパームレスト左側の下から少し振動を感じること。ボディに余裕があるのでもう少し振動対策を施して欲しいところか。
ACアダプタはCore i7プロセッサを搭載した場合、120Wタイプ。Core i5プロセッサだと90Wタイプとなる。前者は長辺が15cmもあり、ノートPC用としては巨大だが、ボディも大きく、基本的に移動は室内のみと考えられるので、特に問題にはならないだろう。
ALTEC LANSINGステレオスピーカーは、写真から分かるように非常に小さいのが前面に付いている。裏にある「HP Triple Bass Reflex Subwoofer」で低域を補っているので、このような設計になっていると思われるが、さすがに少し中抜け感がある。音量に関しては、ニアフィールドで聴く限り十分な出力を確保している。
●高いレベルでバランスの良い環境OSは64bit版のWindows 7 Professional、そしてメモリを8GBも搭載しているので、余裕でWindowsが動いている。さらにCドライブはSSD、そしてGPUはATI Mobility Radeon HD 5650、17.3型1,600×900ドットの液晶パネルが加わり、体感的にはデスクトップPCと同等だ。これならBTOで最小構成になるCore i5-450Mにしてもメモリを2GB×2の計4GBにさえすれば、ほぼ同じ快適感を得られるだろう。もやはデスクトップPCいらずの環境と言える。
SSDとHDDは、どちらもCドライブとDドライブのワンパーティションとなっている。SSDが実質130GBなので、約465GBあるDドライブをデータ用として使えばちょうど良い。
プリインストールのアプリケーションは、「ノートン・インターネットセキュリティ2010(60日間試用版)」、「Corel PaintShop PhotoPro X3(OEM版)」、「Corel Video Studio X3(OEM版)」、「HP MediaSmart」、「Cyberlink DVD Suite」、「BEATS Audio」など、主にマルティメディア系。デスクトップもアイコンがごみ箱以外は1つと、割とあっさりしている。いろいろ入っている国産メーカーとは対照的だ。
最後の「BEATS Audio」は、音楽プロデューサーDr. Dreのエンジニアスタッフが制作に関った音楽ソフト。余談になるが、ヒップホップ、ロック、R&Bなどに適した「Monster Beats Tour by Dr. Dre インイヤーヘッドフォン」が販売されている。筆者は試したことが無いが、レビューを読むと好評のようだ。
ATI Catalyst Control Center | HP Beats Audio | Synaptics ClickPad V7.4 |
ベンチマークテストは、Windows エクスペリエンス インデックス、CrystalMark、そしてBBenchの結果を見たい。
まずWindows エクスペリエンス インデックスの総合は6.7。内訳は、プロセッサ7.2、メモリ7.4、グラフィックス6.7、ゲーム用グラフィックス6.7、プライマリハードディスク7.6。さすがにCore i7-840QM、ATI Mobility Radeon HD 5650、SSDの組み合わせは抜群のパフォーマンス。全体的なバランスも良い。デスクトップPCでもこの値を出すのは結構ハイエンドとなる。
CrystalMarkは、ALU 33,821(26,313)、FPU 33,066(26,216)、MEM 33,249(21,792)、HDD 27,147(7,857)、GDI 8,401(9,353)、D2D 2,577(1,288)、OGL 20,616(1,788)。カッコ内は筆者が所有するThinkPad X201i(Core i3-M330/2GB)の値だ。CPU関連はクロック比並みの違いだが、HDDとOGLに関しては桁違いに速い。Intelの内蔵グラフィックスはいつもその時代としては少し遅めで、高価なCPUを搭載しても全体的なバランスを崩してしまうので、この選択は賢明だろう。
BBenchは、省エネモード、バックライト/OFF、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、WiFi/ON、Bluetooth/OFFでの結果だ。バッテリの残6%で6,752秒(1.8時間)だった。スペック上は約5時間なのでこのテストとしては短め(通常カタログスペックの半分程度)だが、本機の用途を考えると問題になることは無いと思われる。
今回届いた「dv7」は、BTOでほぼ最高構成だったため高価だが、CPUをCore i5、そしてメモリを減らし、HDD、スーパーマルチドライブにすれば、一気に半分近い価格と、17.3型液晶パネル、ATI Mobility Radeon HD 5650を搭載したノートPCとしては、かなりお買い得となる。デスクトップPCの代わりになるノートPCを探しているユーザーにはぴったりの1台と言えよう。