西川和久の不定期コラム

23型フルHD液晶パネル搭載オールインワンPC!
レノボ「ThinkCentre M90z」



 23型フルHD液晶パネルを搭載した企業向けオールインワンデスクトップPCがレノボから6月10日発売開始となった。Windows 7ダウングレード権を使ったWindows XP Professionalモデルやタッチパネル仕様などもあり、ビジネス用途としていろいろなシーンに対応可能だ。早速使用レポートをお届けしたい。


●ビジネス用途のオールインワンPC

 「ThinkCentre M90z」は、19型「ThinkCentre A70z」の上位モデルに相当する。一番の違いは液晶パネルのサイズが23型となり、解像度は1,440×900ドットから1,920×1,080ドットのフルHDへ、そしてCPUとチップセットが、Core 2系/G41といった一世代古いアーキテクチャから、Core i系/Intel Q57 Expressと、最新のアークテクチャに変わったことだ。

 同社のダイレクトショップではBTOでCPU、Webカメラの有無、マルチタッチ、スタンドの種類、PS/2ポートの有無、メモリ、DisplayPort→DVI-D変換アダプタ、HDD、カードリーダ、Express Card/54スロットの有無、Bluetooth、キーボード・マウスの有無、環境光センサーなど、さまざまな選択が可能だ。ただし、OSは32bit版のみとなる。今回届いたマシンの仕様は以下の通り。

・ThinkCentre M90zの仕様
OS:Windows Professonal(32bit)
CPU:Intel Core i5-650 vPro(3.2GHz/Turbo Boost時最大3.46GHz、4MB L3キャッシュ)
チップセット:Intel Q57 Express
メモリ:2GB(2GB×1使用/2スロット、空き1)
HDD:320GB(7,200rpm)
液晶パネル:23型フルHD TFT液晶、1,920×1,080ドット、DisplayPort出力、ミニD-sub15ピン入力
グラフィックス:Intel HD Graphics
光学ドライブ:DVDスーパーマルチドライブ
ネットワーク:Gigabit Ethernet、IEEE 802.11 b/g/n、Bluetooth V2.1+EDR
インタフェース:USB 2.0×6(側面×2、背面×4)マイク入力/ヘッドホン出力、PS/2キーボード/マウスポート、シリアルポート、メディアリーダー、内蔵スピーカー (2W×2)、Webカメラ、Mini PCIe×1(空0)
サイズ/重量:560×443×109mm(幅×高さ×奥行き)/重量約10.7kg
価格:185,220円/キャンペーン価格72,240円(ダイレクトショップ調べ。ただしOSはWindows 7 Home Premium)

 CPUはvProに対応したCore i5-650。クロック3.2GHz、Turbo Boost時3.46GHz、L3キャッシュは4MBだ。vProとは、主に企業内で使用されるPCの運用管理を支援するのに適したハードウェアを備えていることを意味し、例えばCPU・チップセットの中に特定のコードを埋め込み、1台1台の認識をハードウェアレベルで可能にしたり、本体の電源とは別に電源供給を受け作動するなどの仕掛けが入っている。

 チップセットはセキュリティなどに対応したIntel Q57 Express。メモリスロットは2つあり最大8GBだが、今回は2GB×1/空き1つとなっている。グラフィックスはお馴染み内蔵のIntel HD Graphicsだ。23型フルHDパネルを搭載し、解像度は1,920×1,080ドット。またDisplayPort出力と、ミニD-sub15ピン入力を備えている。現在、DisplayPortに対応したディスプレイはまだ少ないが、変換ケーブルを使うことによってDVI-DもOK。マルチディスプレイ化も容易だ。またミニD-sub15ピン入力もあるので、他の機器の映像をThinkCentre M90zで表示することもできる。

 さらにマルチタッチ、Webカメラ無しの選択がBTOでは可能。スタンドは、液晶パネルが机の高さになるフォトフレームタイプと、スタンドタイプがある。届いたマシンはマルチタッチ無し/Webカメラあり/スタンドタイプだった。Webカメラは物理的に写らなくするよう、前にシャッターが付いている。

 ネットワークは、有線LANはGigabit Ethernet、無線LANはIEEE 802.11b/g/n。そしてオプションでBluetooth V2.1+EDRにも対応している。そして今時PS/2やシリアルポートがあるのは珍しいが、古いマシンからの乗り換えを考慮してのことだろう。

 またBTO以外にもSKUがあり、「0870A1J」は、Core i5-650(3.20GHz)、メモリ2GB、HDD 320GB、Intel Q57 Expressチップセット、DVDスーパーマルチドライブ、1,920×1,080ドット/フルHD23型タッチパネル液晶、Windows 7 Professionalを搭載。価格は163,800円。

 タッチパネルを省き、Windows 7 Professionalのダウングレード権を使ったWindows XP Professionalプリインストールの「3429A8J」は155,400円。またこれからCPUをvPro非対応のCore i3-530(2.83GHz)に変更した「3429A9J」は147,000円となっている。

 OSはビジネスモデルということもあり、互換性を重視しているのだろうか。どの組合せでも32bit版のみとなっている。従って2GB×2の計4GBにすると1GBが無駄になるため、2GB+1GBの計3GBのメモリ構成にも対応している。

前面。非常にスッキリしたデザインだ。パネルの下にはステレオスピーカー、右側に電源スイッチなどが並ぶ背面。主要コネクタは全て背面に配置されているので、パネルの両サイドからケーブルが飛び出て見えるようなことにはならない背面(コネクタ部/右)。Gigabit Ethernet、USB 2.0×4、DisplayPort出力、ミニD-Sub15ピン入力。液晶パネルへの入力があるのは便利だ
背面(コネクタ部/左)。PS/2キーボードとマウスコネクタ、シリアルポート、電源コネクタ右側面。DVDスーパーマルチドライブ、メディアリーダ、USB 2.0×1、音声入出力、USB 2.0×1。左側には何も無いキーボードとマウスはUSB接続。DisplayPort→DVI-D変換ケーブルは市販で3千円ほどするのでBTOの方が安い(+1,050円)
Webカメラはシャッター付き。この状態は分かりやすいよう、わざと半端な位置にしている。閉じると赤丸となるメンテナンスフリーのパネル。本体下両サイドにあるバーを外側へスライドしつつ上に持ち上げると、リアパネルが外れる左側にメモリスロット、そしてmini PCIeにIntel WiFi Link 1000 BGNが見える

 箱から取り出した第一印象は、ここのところ家庭用のオールインワンPCを続けて触っていただけに地味な印象を受ける。どう見てもTVではなく真っ黒なPCだ。ただ普段見えない裏側にかなり派手な赤色が使われ、同社っぽい雰囲気を醸し出している。電源ONにするとWindows 7 Lenovo Enhanced Experienceに対応しているだけあって起動も速い。

 液晶パネルは非光沢で眼にやさしい。色温度は結構高めだ。視野角は上下左右あまり広い方ではなく、正面からがベストポジションとなる。ただこれは悪いことでは無く、ビジネス用途を考えた場合、周囲から画面が見づらく、作業内容が分かりづらい特性となる。

 エンタープライズモデル用となっているスタンドは、本題を乗せたまま約倍の高さまで、傾きは-5度から+25度まで調節可能だ。

 本機最大の特徴はオールインワンPCとしては珍しく、ドライバーレスでリアパネルが外せることだろう。左右下にあるレバーを外側に引きつつ、上に持ち上げるとパカっと分離する。写真からも分かるように、メモリやHDDなど、全てのパーツを触れるのでメンテナンス性はかなり高い。ただし、外すのは簡単だが、戻すのはちょっとしたコツが必要で、慣れないと、なかなかうまくパネルが入らなかったりする。

 ACアダプタが無く、電源を内蔵しているのである程度熱は持つものの、ほんのり暖かくなる範囲だ。ノイズや振動もサイズが大きい分、うまく処理できている様で、通常操作では全く気にならなかった。

 液晶モニタの下左右にあるステレオスピーカーは、正直なところ音質も音量もイマイチだ。ただし家庭用ではなく、ビジネス用なので、目くじら立てるほどでは無いだろう。

 付属するキーボードとマウスは、特にマウスは若干プラスチッキーだが、ボタンが非常に軽く、長時間使用しても指が疲れない様になっている。キーボードは、たわむことなく、キータッチも良好。高級感こそ無いものの、実用性重視の構造だ。

●フルHD解像度で快適な作業環境

 フルHDの液晶パネルは、いろいろなウィンドウを開いてもデスクトップが広く快適に作業できる。23型なので文字サイズもちょうど良い。筆者は普段ThinkPadを使っているので、それがそのままデスクトップPCになった感じだ。画面中央少し右上に見える「SimpleTap」は、もともとタッチパネル用のものであるが、音量、スリープ、ロック、Webカメラなどを操作できる。

 HDDはWD3200AAJS(320GB/7,200rpm/8MB)を搭載。C:ドライブに約287GBが割当てられている。無線LANは、Intel WiFi Link 1000 BGN。BTOで選択できるBluetoothは、USB経由でBroadcom BCM2070が使われている。セキュリティーデバイスは、TPM(Trusted Platform Module)1.2。ただし、指紋センサーは無い。これだけボディが大きいので、本体側に欲しいところか。

デスクトップは同社お馴染みの壁紙。解像度1,920×1,080ドットなので広々使えるデバイスマネージャ/主要デバイス。HDDはWD3200AAJS(320GB/7,200rpm/8MB)を搭載。Wi-FiはIntel WiFi Link 1000 BGN、BluetoothはUSB接続のようだドライブは3パーティションで構成。C:ドライブは約287GB

 プリインストールされているアプリケーションは、「Lenovo ThinkVantage Toolbox」、「ThinkVantage MessageCenter Plus」、「ThinkVantage System Update」、「ThinkVantage Rescue and Recovery」、「ThinkVantage Power Manager」といった同社お馴染みのツール系、そして他社製としては「Corel Burn Now Lenovo Edition」、「Corel DVD Movie Factory Lenovo Edition」、「Norton Internet Security 2009 (30日間評価版)」、「i-Filter」となる。

 加えてThinkVantage Client Security Solutionを搭載し、内蔵しているTPM(Trusted Platform Module)と連携、暗号化キーの管理が行なえる。企業用としてセキュリティーも万全だ。

SimpleTapLenovo Mouse SuiteLenovo ThinkVantage Toolbox

 ベンチマークはWindows エクスペリエンス インデックスとCrystalMarkの結果を見たい。

 Windows エクスペリエンス インデックスは総合4.3。内訳はプロセッサ6.9、メモリ5.5、グラフィックス4.3、ゲーム用グラフィックス5.2、プライマリハードディスク5.9。一番遅いのはグラフィックスだが、おおよそ全体的にバランスが取れている。メモリ2GB×1と、シングルチャンネルアクセスになっているので、2GB×2でデュアルチャンネルアクセスにすると、32bit OSなので1GBは無駄になるものの、更にバランスは良くなるだろう。

 CrystalMarkは、CPUクロックが3.2GHz、Turbo Boost時最大3.46GHzと言うこともあり、スコアは結構いい。HDDは7,200rpmモデルなので1万を超えている。ビジネス用としては十分な性能だ。

 GPUを使わないFlash Player 10でYouTube 1080pの動画を再生したところ、コマ落ちも無く非常にスムーズに再生された。この時、CPU使用率は14%前後。今後、一般的な仕事でもHDやフルHDの動画を扱うことが増えると思われるが、全く問題無い。

Windows エクスペリエンス インデックスは総合4.3。プロセッサ6.9、メモリ5.5、グラフィックス4.3、ゲーム用グラフィックス5.2、プライマリハードディスク5.9CrystalMark。CPUクロックが3.2GHz、TB時最大3.46GHzなので全体的にスコアはいい1080p再生時のCPU使用率。GPUを使わないFlash Player 10でもCPU使用率は14%前後だ

 以上のように、23型フルHD液晶パネルをベースにオールインワン化された「ThinkCentre M90z」は、ビジネス用としてバランス良く作られ、リアパネル全体がドライバー無しで外れメンテナンスも容易だ。ただ個人的には日本の一般的な事務机を考えると、A70zの19型より少し大きく、一回り小さい21型も欲しいところか。いずれにしてもそろそろ古くなったWindows XP搭載PCをリプレイスしたい企業にとって、候補となりえる1台だろう。