■西川和久の不定期コラム■
6月8日にNECの2010年夏モデルが一斉に発表された。基本的には4月発売モデルのマイナーチェンジ版となるが、今回ご紹介する「LaVie M (LM550/B)」は、プラットフォームがCalpellaへと変更された。その量産試作機が届いたので早速ご紹介したい。
●Core i3-330UM(超低電圧版)搭載LM550/Bの最大の特徴は、5月25日に発表されたばかりのCore i3-330UMを搭載していることだ。32nmプロセスで製造され、2コア/4スレッド、1.2GHz、L3キャッシュ3MB、TDP 18Wの超低電圧版となる。従ってグラフィックスは、メインメモリ共有タイプのIntel HD グラフィックス。Turbo Boostは無いが、超低電圧版なので長時間のバッテリ駆動が期待できる。チップセットはIntel HM55 Expressを採用する。
本製品のポジショニングとしては「ネットブックでは物足らないユーザーに適した低価格モバイル」と言うことになるだろうか。そのほか、主な仕様は以下の通り。
CPU | Core i3-330UM(2Core/1.2GHz/cache 3MB/超低電圧版) |
チップセット | Intel HM55 Express |
メモリ | 2GB/DDR3-SDRAM/2スロット空き1、最大8GB |
HDD | 320GB(5,400rpm) |
OS | Windows 7 Home Premium(64bit) |
ディスプレイ | 13.3型ワイド低反射TFTカラー液晶、1,366×768ドット |
GPU | Intel HD Graphics、ミニD-Sub15ピン、HDMI |
ネットワーク | Gigabit Ethernet、IEEE 802.11a/b/g/n、モバイルWiMAX |
その他 | USB 2.0×3(内1つパワーオフUSB充電機能付き)、USB 2.0(USB Duet専用)×1、SDカードスロット、オーディオ入出力 |
サイズ/重量 | 330×220×27.0~30.5mm(幅×奥行き×高さ)/約1.79kg |
バッテリ駆動時間 | 約10.5時間(Lバッテリ標準) |
ダイレクト価格 | 106,155円 |
メモリスロットは2つで2GB×1を実装し、空きが1つ。従って2GBを増設すると4GBにできる。スペック上は4GB×2で最大8GBまでの対応だ。OSは64bit版のWindows 7 Home Premium。メモリを3GB以上を搭載してもフルに活用できる。HDDは5,400rpmの320GBを搭載。1スピンドルマシンとなっている。
ディスプレイは13.3型ワイド低反射TFTカラー液晶で、解像度は1,366×768ドットだ。出力としてミニD-Sub15ピンとHDMIを備え、プロジェクタへも液晶ディスプレイにも対応が可能だ。
ネットワークは、有線LANはGigabit Ethernet、無線LANはIEEE 802.11nに加え、WiMAXにも対応している。Bluetoothは非搭載であるが、WiMAXが標準搭載と言うのはポイントが高い。
ちょっと面白いのがUSBの構成だ。まず普通に使えるUSB 2.0が3ポート。内1つは、PCの電源がOFFの時も通電している「パワーオフUSB充電機能付き」となっている。これによって本体の電源を落としている時でも携帯電話などを充電できる。ここ数年でUSB経由で充電する機器が大幅に増えているので、この機能の有無は購入時の判断材料になるだろう。もう1つMini-B 5ピンのUSB 2.0ポートがある。これは後述する「USB Duet」専用だ。
ボディカラーは「グロスホワイト」、「グロスブラック」、「グロスレッド」の3種類のカラーバリエーション。今回届いたのはグロスレッドだった。
ダイレクトショップでは、64bit版のWindows 7 Home PremiumかProfessonal、メモリ 2GBまたは4GB、HDDは320GB/500GB/500GB(7200rpm)/320GB+SSD 62GB/500GB+SSD 62GB/500GB(7200rpm)+62GB、バッテリMサイズもしくはLサイズ、その他周辺機などの構成を選択できる。バッテリは現在Lサイズが標準となっている。
なお、LaVie Mは、Intel Celeron SU2300(1.2GHz/cache 1MB)、Intel GS45 Expressチップセットを搭載した下位モデルの「LM370」と「LM350」もラインナップされている。仕様から分かるうぴに2009年型の構成だ。
ボディカラーのグロスレッドは、派手過ぎるわけでもなく、地味過ぎるわけでもなく少し渋めで絶妙な発色だ。天板、液晶パネルの周囲、キーボードの周囲がこの色で統一されている。メタリック感もあるので若干指紋跡は目立つものの、気になるほどでは無い。各サイドそして底面はマットブラック、またキートップも少し明るめの黒の全体的にツートンカラーでまとめられている。
本体サイズは330×220×27.0~30.5mm(幅×奥行き×高さ)、重量は実測で1,779g。13.3型と言うこともあり、少し重いのかなと思ったが、持ち上げて見るとあまり重さを感じない。厚みも3cmほどなのでカバンに入れても邪魔にならない範囲だろう。
13.3型ワイド低反射TFTカラー液晶は光沢タイプだ。発色は鮮やかでコントラストも高く、写真や動画などを表示すると非常に映える。視野角は上下より左右の方が若干広い感じがする。LEDバックライトは最大だとかなり明るい。室内では半分程度で調度良い雰囲気だ。
キーボードの配列などは一般的。キーピッチ19mm、キーストローク3mmを確保しているのでフルキーボードに近い感覚で入力できる。ただ中央を強く押すと若干たわむのと、質感がプラスチッキーなのが気になった。もう少し高級感が欲しいところか。他のボタンとしては電源スイッチだけで、シンプルな印象を受ける。
タッチパッドは、キーボードの大きさを確保している分、筐体サイズの割には少し小さめだが、操作性には問題は無い。ボタンはバー1本のシーソータイプであるものの左右同時に押すこともできる(中央から左右に少し折れ曲がる)。クリック感があり、比較的柔らかめなので指に変な力が入らず快適だ。また標準設定では、左右同時に押すと「手書きでお助けパッド」が起動し、読めない漢字などをパッド上に手書きすると文字認識し、候補などを表示する便利な機能も持っている。
発熱や振動、ノイズに関しては超低電圧版CPUと言うこともあり、ここに書き入れることを忘れてしまうほど感じない。若干HDDの振動がある程度でなかなか優秀だ。
音は斜め下に向いてスピーカが付いているので、机など反射するものが下にあるとバランスが取れる。最大音量はもう少し欲しい感じもするが、近場で聞く分には十分だろう。中域を中心とした音質は、このクラスのノートPCとしては標準的だが、音声などが聞き易い。
●Core i3-330UMの実力は?起動直後のデスクトップは、プリインストールされているアプリケーションが多いだけに賑やかだ。特にQA系アプリケーションの多いのが印象的だ。初心者に優しい同社ならではと言えよう。タスクバーには「ソフト&サポートナビゲーター」が予めセットされている。
HDDはWD3200BEVT(320GB、5,400rpm、バッファ8MB)が使われ、メインとなるパーティションは1つ。また後述する共有用のS:ドライブに4GB割当てられている。そしてこのドライブへ外部からアクセスするためにPLX NET2282を搭載しているのが分かる。
無線LANはIntel Centrino Advanced-N 6250AGN。WiMAXはIntel Centrino WiMAX 6250だ。その他は、Intel HM55 Expressチップセット搭載のノートPCとしては標準的な構成と言える。
起動時のデスクトップ。かなり多くのアイコンがデスクトップに並んでいるのが分かる | 主要なデバイス。WiMAX内蔵。HDDはWD3200BEVTが使われている | HDDのパーテーション。OSとしてはC:、D:、S:ドライブと3パーティションになっているが、実質C:ドライブの約265GBとなる |
プリインストールのアプリケーションは、「おすすめメニューガジェット」、「テレビNaviガジェット」、「ソフト&サポートナビゲーター」、「サポートナビゲーター」、「ウイルスバスター2010(使用期間限定版)」、「CyberSupport for NEC」、「バックアップ・ユーティリティ」、「FlyFolder」、「再セットアップディスク作成ツール」、「Roxio Creator LJ」、「時事通信社・医学・健康コンテンツ・家庭の医学・血液サラサラ健康事典」、「デ辞蔵PC 漢字字典付き」、「パソらく設定」、「ワンタッチスタートボタンの設定」、「パワーオフUSB充電の設定」、「バッテリ・リフレッシュ&診断ツール」、「彩りの設定」、「USB Duet」、「らくらく無線スタートEX」など、事典なども、かなり豊富だ。
中でも仕掛け的に面白いのは「USB Duet」だろうか。HDDのパーテーションの画面キャプチャからも分かる様に、S:ドライブとして4GB/FAT32のパーテーションが割当てられており、USB Duet専用ポートへ他のPCを接続することにより、外付けHDDに見える。これによって双方でのファイルのやり取りが容易になるわけだ。
もちろんネットワークなどを使えば共有はできるが、主に個人で管理する1台目と2台目のPC間でデータのやり取りにはUSBメモリ並みに初心者でも簡単に扱えるだろう。
ソフト&サポートナビゲーター | ソフト&サポートナビゲーター/検索結果 | USB Duet |
ベンチマークテストは、Windows エクスペリエンス インデックス、CrystalMark、そしてBBenchの結果を見たい。
まずWindows エクスペリエンス インデックスの総合は3.4。内訳は、プロセッサ4.2、メモリ5.0、グラフィックス3.4、ゲーム用グラフィックス3.6、プライマリハードディスク5.4。CPUクロックが1.2GHzなので全体的にスコアは低めとなっている。
CrystalMarkは、ALU 15,090(26,313)、FPU 14,835(26,216)、MEM 12,066(17,338/21,792)、HDD 7,638(7,857)、GDI 5,471(9,353)、D2D 766(1,288)、OGL 1,081(1,788)。カッコ内は筆者が所有するThinkPad X201i(Core i3-M330/2GB)の値だ。MEMだけ2Gと4GBの値を掲載した。Core i3-M330のCPUクロックは2.13GHzなので、CPU関連は調度クロック比に相当する落ち込みになっているのが分かる。
いずれにしても、メモリスロットが1つ空いて入るので、2GB足し、計4GBでデュアルチャンネルアクセスにすればもう少しスコアは向上するだろう。
BBenchは、ECOモード、バックライト/OFF、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、Wi-Fi/ONでの結果だ。バッテリの残5%で18,792秒(5.2時間)だった。もう少し行けるかと思ったが意外と短かった。それでも5時間は越えているので外出がメインでも結構使えそうだ。
以上のようにLaVie M(LM550/BS6R)は、超低電圧版新CPU i3-330UMを搭載し、バッテリ駆動時間も5時間越え。更に標準でWiMAXを内蔵しているのも嬉しポイントだ。パフォーマンスはCPUクロック並みではあるものの、13.3型ワイド液晶タイプを常に持ち運びたい人にとっては十分検討に値する逸品と言えよう。