西川和久の不定期コラム

Ryzen 9のミニPC「UM890 Pro」に、GeForce RTX 4060 Tiをつなげてみた

 MINISFORUMは、7月30日よりRyzen 9 8945HSを搭載したミニPC「UM890 Pro」を販売中だ。ベアボーン、メモリ32GB+SSD 1TB+Windows 11、64GB+1TB+Windows 11の3モデルある中、真ん中のモデルが編集部より送られてきたので試用レポートをお届けしたい。後半ではOCuLinkでGeForce RTX 4060 Ti(16GB)を接続し、テストも行なってみた。

Ryzen 9 8945HSを搭載しOCuLink対応の強力なミニPC!

 RyzenでOCuLinkと言えば去年11月にご紹介した。Ryzen 7 7840HS搭載の「MINISFORUM UM780 XTX」を思い出す。虎のエッチングパネルがあったり、少し遊び心もあり、この時、OCuLinkを初めて使った。以降、筆者手元の機材はUSB4からOCuLinkへ置き換わったのはご存知の通り。

 今回ご紹介する「UM890 Pro」はこのUM780 XTXいろいろ似ているが、プロセッサはRyzen 7 7840HS。「UM890 Pro」はRyzen 9 8945HSなのでさらに高性能化が期待できる。主な仕様は以下の通り。

MINISFORUM「UM890 Pro」の仕様
プロセッサRyzen 9 8945HS(8コア16スレッド、クロック4GHz~5.2GHz、キャッシュ:L2 8MB/L3 16MB、TDP 45W/cTDP 35~45W)
メモリ0/32GB/64GB(DDR5-5600×2/SO-DIMM最大各48GBまで)
ストレージM.2 2280 PCIe 4.0 SSD 0/1TB(1つ空き/OCuLink兼)
OSWindows 11 Pro(23H2)
グラフィックスRadeon 780M(12コア)/DisplayPort 1.4、HDMI 2.1、Type-C(USB4)
ネットワーク2.5Gigabit Ethernet×2、Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.3
インターフェイスUSB4×2(1基は本体への100W給電対応)、USB 3.1×4、3.5mmジャック、OCuLink×1
サイズ/重量127×130×66.6mm(幅×奥行き×高さ)、(実測)704g
価格8万2,380円(ベアボーン)、11万1,980円(32GB+1TB)、12万6,390円(64GB+1TB)

 プロセッサはZen 4アーキテクチャのRyzen 9 8945HS。8コア/16スレッド、クロック4GHz~5.2GHz、キャッシュ容量はL2が8MB/L3が16MB、TDPは45W、cTDPは35~45Wとこのクラスとしては強力なSKUだ。

 メモリはモデルによって異なり、0/32GB/64GB。SO-DIMM DDR5-5600対応スロットを2基備え、最大各48GBまで拡張可能。ストレージはM.2 2280 PCIe 4.0 SSDで、なしか容量1TBを選択可能。M.2は2スロットあり、1つ未使用。当然もう1基SSDが増設可能だが、OCuLinkを使う時は片方を潰すので増設はできない。せめてSATA SSDが1基内蔵したいところか。

 OSはWindows 11 Pro。23H2だったのでこの範囲でWindows Updateを適応し評価した。しかし少し前にご紹介したIntel Core Ultra搭載モデルはWindows 11 Home。この差は何なのだろう?

 グラフィックスはプロセッサ内蔵Radeon 780M(12コア)。外部出力用にDisplayPort 1.4、HDMI 2.1、USB4を装備している。

 ネットワークは2.5Gigabit Ethernet×2、Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.3。そのほかのインターフェイスは、USB4×2(1基は本体への100W給電対応)、USB 3.1×4、3.5mmジャック、OCuLink×1。先に書いたようにOCuLinkを使う時は付属のM.2/OCuLinkアダプタをつけるためSSDの増設はできなくなる。

 サイズ127×130×66.6mm(幅×奥行き×高さ)、重量(実測)704g。価格は8万2,380円(ベアボーン)、11万1,980円(32GB+1TB)、12万6,390円(64GB+1TB)。手持ちのパーツがあるなら消耗品の10万円を切ることができる。いずれにしてもこの構成でこの価格はコストパフォーマンスが高いと言えよう。

前面。3.5mmジャック、USB4、USB 3.1×2、電源ボタン
背面はUSB 3.1×2、DisplayPort、USB4、OCuLink、HDMI、2.5Gigabit Ethernet×2、電源入力
裏面とiPhone 13 Pro。4隅にゴム足と中央上下にVESAマウンタ用ネジ穴。同社のミニPCとしては大きい方だろうか
付属品。ACアダプタ(サイズ約80×80×30mm/重量278g/出力は19V/6.32A)、HDMIケーブル、VESAマウンタ、M.2/OCuLinkアダプタ
BIOS / Menu。起動時[DEL]キーで表示
BIOS / Setup
重量は実測で704g
いつものキーボード付きモバイルモニターへ接続。USB4があるのでType-Cケーブル1本で接続可能

 筐体は同社お馴染みのブラックベース。iPhone 13 Proとの比較写真からも分かるように少し大きめだ。やはりハイエンドCPU系になると放熱などいろいろな関係でこのサイズになるのは仕方ないところか。とは言え十分コンパクトでACアダプタと合わせても1kgを切る。

 前面に3.5mmジャック、USB4、USB 3.1×2、電源ボタン。背面にUSB 3.1×2、DisplayPort、USB4、OCuLink、HDMI、2.5Gigabit Ethernet×2、電源入力を配置。裏面は4隅にゴム足と中央上下にVESAマウンタ用ネジ穴。

 付属品はACアダプタ(サイズ約80×80×30mm/重量278g/出力は19V/6.32A)、HDMIケーブル、VESAマウンタ、M.2/OCuLinkアダプタ。初期導入時、OCuLinkは機能しないので要注意。USB4があるのでいつものキーボード付きモバイルモニターはType-Cケーブル1本でOKだ。

 BIOSは起動時[DEL]キー。ただしいったんメニューが出て、[Setup]でBIOSへ入るかたち。内部へのアクセスは、天板が磁石で吸着しているだけなのでそれを外す。内部はさらにもう1枚パネルがあり、4隅のネジを外せばM.2スロットとSO-DIMMスロットにアクセスできる。この時、ファン用のケーブルを外す必要がある。メモリはCrucial製を使用。

天板が磁石で吸着しているだけなのでそれを外す。内部にもう1枚パネルがあり、4隅のネジを外せばM.2スロットとSO-DIMMスロットにアクセスできる。この時、ファン用のケーブルを外す必要がある
SO-DIMM×2、SSD装着済みのM.2 2280と空きのM.2 2280が見える。メモリはCrucial製を使用

 ノイズは使用した範囲で気にならなかった。発熱も高密度ブレードファンを組み合わせた「Cold Wave 2.2」冷却機構、メモリ向けのスタック式ヒートシンク、SSD向けの6cmファン付きアクティブヒートシンク……など、いろいろ工夫されており、ベンチマークテスト中など高負荷時でもリアのスリットから気持ち暖かい空気が出る程度。まったく問題ないレベルだ。この辺りはさすがと言ったところ。

ミニPCとしては文句なしのパフォーマンス!

 初期起動時、プリインストールされたアプリなどはなくWindows 11 Pro標準。CPU/GPU/SSDが高い次元でマッチしているので、ミニPCとしては何をしても快適そのもの。

 SSDはM.2 2280 PCIe 4.0 1TBの「KINGSTON OM8PGP41024Q-Q0」。データシートは見当たらなかったものの、「MINISFORUM UM780 XTX」搭載1TBと同じものだった。CrystalDiskMarkによるとシーケンシャルリード4,700MB/s、シーケンシャルライト3,900MB/s。C:ドライブのみの1パーティションで約952GBが割り当てられ空き915GB。BitLockerで暗号化されている。

 2.5Gigabit Ethernetは「Realtek Gaming 2.5GbE」×2、Wi-Fiは「RZ616 Wi-Fi 6E 160MHz」、BluetoothもRZ616だ。GPUは、AMD Software: Adrenalin Editionによると標準設定でクロックは2,800MHzとなっている。

初期起動時のデスクトップ。Windows 11 Pro 23H2標準
デバイスマネージャー/主要なデバイス。SSDはM.2 2280 PCIe 4.0 1TBの「KINGSTON OM8PGP41024Q-Q0」。2.5Gigabit EthernetはRealtek Gaming 2.5GbE×2、Wi-FiはRZ616 Wi-Fi 6E 160MHz、BluetoothもRZ616
C:ドライブのみの1パーティションで約952GBが割り当てられている。BitLockerで暗号化
AMD Software: Adrenalin Edition

 ベンチマークテストは、PCMark 10、3DMark、Cinebench R23、CrystalDiskMarkを使用した。Ryzen 7 7840HS搭載「MINISFORUM UM780 XTX」と比較した場合、もっと違いがあるかと思ったが、CPUもGPUも気持ち速い程度だった。

 Ryzen 9と聞くだけで強うそうなイメージがあるものの(笑)、スペック比較だとCinebenchがクロック分だけ+α、GPUはクロックが2,700MHz対2,800MHzのRadeon 780M(12コア)なので、当然と言えば当然の結果だろうか。

PCMark 10
3DMark
Cinebench R23
CrystalDiskMark 8.0.5
[Read]
  SEQ    1MiB (Q=  8, T= 1):  4789.899 MB/s [   4568.0 IOPS] <  1749.79 us>
  SEQ    1MiB (Q=  1, T= 1):  2268.737 MB/s [   2163.6 IOPS] <   461.98 us>
  RND    4KiB (Q= 32, T= 1):   478.883 MB/s [ 116914.8 IOPS] <   265.00 us>
  RND    4KiB (Q=  1, T= 1):    64.901 MB/s [  15845.0 IOPS] <    63.03 us>

[Write]
  SEQ    1MiB (Q=  8, T= 1):  3907.364 MB/s [   3726.4 IOPS] <  2141.63 us>
  SEQ    1MiB (Q=  1, T= 1):  3623.159 MB/s [   3455.3 IOPS] <   289.14 us>
  RND    4KiB (Q= 32, T= 1):   473.296 MB/s [ 115550.8 IOPS] <   272.05 us>
  RND    4KiB (Q=  1, T= 1):   174.120 MB/s [  42509.8 IOPS] <    23.43 us>

OCuLinkでGeForce RTX 4060 Ti(16GB)を接続してみた

 筆者のような生成AIマニア(笑)以外の普通の人の場合、外部GPUにいきなり30万円近いGeForce RTX 4090投入はまぁありえないだろう。個人も企業もいいところ、予算5万円以上7万円以下ではないだろうか?

 そしてゲーミング用途ではなく、AI用途の場合、VRAM容量が命。16GBは欲しい。価格.comで探すと、Palit Microsystemsのドスパラ限定モデル「NE6406T019T1-1061J」だけが7万円を切る6万9,800円で売られており、先日の電源ユニットと(訳あって)同時に購入した。

M.2スロットにOCuLinkアダプタ接続
OCuLink経由でRTX 4060 Ti(16GB)を接続

 詳細は省略するが、いつもの512×768:神里綾華ベンチマークの結果は ざっくり

  • GeForce RTX 4090 (24GB) 約10秒
  • GeForce RTX 3090 (24GB) 約20秒
  • GeForce RTX 4060 Ti (16GB) 約30秒

 となった。価格差を考えると、なかなか良い線ではないだろうか?VRAMに関しては16GB以上となるとGeForce RTX 4090/3090の24GBしか選択肢はなく、速度面/VRAM容量面どちらもバランスが取れているGPUかと思う。

 もうワンランク下げると、GeForce RTX 3060 12GBもあるのだが、さすがに今更感があり、これからAI関連を初める人にはGeForce RTX 4060 Ti 16GBをお勧めしたい。


 以上のようにMINISFORUM「UM890 Pro」は、Ryzen 9 8945HSを搭載したパワフルなミニPCだ。2.5Gigabit Ethernet×2、USB4×2、そしてOCuLink対応と拡張性も申し分ない。ベアボーンが選べるのも手持ちのパーツがある人にはポイントが高い。

 追加のM.2 SSDとOCuLinkが排他である以外、特に欠点らしい欠点もない。今からRyzen 9を搭載したハイパフォーマンスなミニPCがほしいユーザーに、お勧めしたい製品の1つと言えよう。