西川和久の不定期コラム

最強に近いコンパクトPCがRadeon RX 6600M搭載でパワーアップ!「MINISFORUM EliteMini HX90G」

EliteMini HX90

 MINISFORUMは9月20日、「EliteMini HX90」をベースにRadeon RX 6600Mを加えた「EliteMini HX90G」を発表、予約販売を開始した。出荷は11月中旬を予定しているが、一足早く実機を触る機会に恵まれたので、試用レポートをお届けしたい。

コンパクトな筐体に+Radeon RX 6600Mでさらにパワーアップ!

 筆者の記事ではないが、9月の頭に本機の“Gなし”モデル、つまりiGPUモデルの「EliteMini HX90」を見かけた時、コンパクトな割に強そうだな! という印象を持った。記事の表現も“もはや最強に近い”とされており、そのパフォーマンスぶりが見て取れる。

 そして今回発表、手元に届いたEliteMini HX90Gは、iGPUでも最強に近いのに、それにdGPU=Radeon RX 6600M(GDDR6 8GB)を追加。これは凄そうだと期待しつつの試用記となった。構成的にはEliteMini HX90+Radeon RX 6600Mなのだが、熱や消費電力の関係から筐体、そしてACアダプタなど、まったく別物になっている。主な仕様は以下の通り。

MINISFORUM「EliteMini HX90G」の仕様
プロセッサRyzen 9 5900HX(8コア16スレッド/3.3~4.6GHz/キャッシュ L2 4MB, L3 16MB/TDP 45+W/cTDP 35-54W)
メモリ16GB(8GB×2) / SO-DIMM(DDR4-3200)×2 / 最大64GB
ストレージ512GB(M.2 2280 PCIe SSD) + M.2 2280 PCIe SSDオプション
OSWindows 11 Pro(21H2)
グラフィックスRadeon Graphics(8コア)、Radeon RX 6600M(GDDR6 8GB)/HDMI 2.0×2、DisplayPort×2
ネットワーク2.5G Gigabit Ethernet、Wi-Fi 6、Bluetooth 5.0
インターフェイスUSB 3.2 Gen 2×3、USB 3.1×1、USB Type-C×1、音声入出力
サイズ69.3×205×203mm(幅×奥行き×高さ)
価格15万3,980円(メモリ16GB+SSD 512GB)

 プロセッサはZen 3アーキテクチャのRyzen 9 5900HX。8コア16スレッド、クロックは3.3GHzから最大4.6GHz。キャッシュ L2 4MB/ L3 16MB。TDPは45+W、cTDPは35-54W。モバイル用だが、Intel同様、後ろにHが付くのはハイパフォーマンスのSKUとなる。

 メモリはSO-DIMMスロットが2つ。DDR4-3200の8GB×2の計16GB。ストレージはM.2 2280 PCIe SSDの512GB。M.2スロットは2つあり、もう1つ増設可能。OSはWindows 11 Pro(21H2)。22H2へのアップデート案内は来ていたが、21H2の範囲でアップデートし、評価している。

 グラフィックスはプロセッサ内蔵のAMD Radeon Graphics(8コア)と、新たにRadeon RX 6600M(GDDR6 8GB)追加。プロセッサだけでも強めなのに、dGPUを加えることにより、さらに強力になった。外部出力用にHDMI 2.0×2とDisplayPort×2を備えている。もちろん4つ同時に4K出力が可能だ。

 ネットワークは、2.5G Gigabit Ethernet、Wi-Fi 6、Bluetooth 5.0。そのほかのインターフェイスは、USB 3.2 Gen 2×3、USB 3.1×1、USB Type-C×1、音声入出力。サイズ69.3×205×203mm(幅×奥行き×高さ)。

 価格はベアボーンキットが13万1,880円、今回評価した16GB+512GBモデルが15万3,980円、32GB+512GBモデルが16万3,390円、64GB+512GBモデルが18万1,990円。構成を考えると安すぎず、高すぎず……っと言った感じか。執筆時点では20%オフなので欲しい人は予約するとお買い得だ。

前面はUSB Type-A、音声入出力、USB Type-C、電源ボタン
背面は2.5Gigabit Ethernet、USB Type-A×3、DisplayPort×2、HDMI×2、電源入力
右側面は同社のロゴのみ
左側面を開けたところ。ゴム足を剥がすとネジがあるので外すと内部にアクセスできる。ただしもう1枚プレートを外す必要がある
ACアダプタのサイズ約175×80×30mm(幅×奥行き×高さ)、重量650g、出力19V/13.8A(262.2W)
付属品は電源ケーブル、HDMIケーブル、足用の金具やネジ
重量は実測で1,412g
足の取付け。小さい方を本体に取付、その後、V字の足を付ける
BIOS / Main。起動時[DEL]キーで表示
BIOS / Advanced
内部の金属パネルを外したところ。手前にSO-DIMMスロット×2、その脇にM.2 SSD(黒いヒートシンクがある方)、右上あたりにもう1つのM.2スロット
いつものキーボード付きモバイルモニターへ接続した時のサイズ感。何度か扱っている同社のNUCタイプよりは大きいものの、それでもコンパクト

 筐体はコンパクトだが写真からも分かるように、同社のNUCタイプより大きいサイズだ。色はブラック。ただし足以外、金属部分はなく、プラスティックと炭素繊維複合材料(側面の蜂の巣部分)などを使用している関係上、あまり高級感はない。重量は実測で1,412g。写真は縦位置にしたが、基本横置きか、足を付けての縦置きとなる。

 前面にUSB Type-A、音声入出力、USB Type-C、電源ボタン。背面に2.5Gigabit Ethernet、USB Type-A×3、DisplayPort×2、HDMI×2、電源入力を配置。前面のType-Cは映像出力未対応で、いつものキーボード付きモバイルモニターへはUSBとHDMIのケーブル2本が必要だった。

 付属のACアダプタはサイズ約175×80×30mm(幅×奥行き×高さ)、重量650g、出力19.0V/13.8A(262.2W)と、サイズ/重量そしてパワーもある。EliteMini HX90では120WのACアダプタだったので、倍以上に増えている。付属品は、加えて電源ケーブル、HDMIケーブル、足用の金具やネジ。BIOSは起動時[DEL]キーで表示する。

 分かってしまえば簡単なのだが、内部へのアクセスは少し複雑で、(縦位置時)左サイドに長細いゴム足が2つ。剥がすと下にネジが2本ありこれを外す。その後、パネルは背面側の爪に引っかかっている部分を先に外し、前面側を後ろにずらす感じとなる。

 これで一応内部にアクセスできるのだが、写真のようにもう1枚、金属プレートがパーツを覆っている。さらにネジ4本を外すと、SO-DIMMスロット×2と、その脇にあるヒートシンク付きのM.2 SSD、そしてその後ろにあるM.2スロットが現れる。SSDの増設は後者を使うことになる。

 発熱に関しては、それほど熱くならず生暖かい感じ。ファンは鳴るには鳴るが、低い音なので、耳を近づけると気になるレベル。エアーは(縦位置時)上から結構出るが、どちらも構成の割にそれほどでもない……と言ったところ。熱処理に関しては、CPUとGPUの両方に液体金属熱伝導剤、7本のヒートパイプ、デュアルファンなど、それなりに工夫がこらされており、負荷をかけない限り煩くはない。

ミニPCとしては最強とも言えるパフォーマンス!

 初期起動時、デスクトップやアプリケーションはWindows 11標準のまま。特にプリインストールのアプリなどはない。言うまでもなくRyzen 9 5900HX/RX 6600M/16GB/SSDなので非常に快適に作動する。

 ストレージはM.2 2280 PCIe SSD 512GBの「ESO512GYLCT-EP3-2L」。これは以前、Mac miniっぽい同社の「TH80」に搭載していたものと同じだ。ネットで検索しても情報はなく、CrystalDiskMarkではシーケンシャルリード約2,300MB/s、シーケンシャルライト約2,000MB/s程度は出ている。C:ドライブのみの1パーティションで約474GBが割り当てられ空き442GB。

 2.5G Gigabit Ethernetは「Intel Ethernet Controller I225-V」、Wi-FiとBluetoothは「RZ608」だった。

起動時のデスクトップ。Windows 11標準
デバイスマネージャ/主要なデバイス。ストレージはM.2 2280 PCIe SSD 512GBの「ESO512GYLCT-EP3-2L」。2.5G Gigabit EthernetはIntel Ethernet Controller I225-V、Wi-FiとBluetoothはRZ608
ストレージのパーティション。C:ドライブのみの1パーティションで約474GBが割り当てられている
AMD Software

 ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、CINEBENCH R23、CrystalDiskMark、そしてゲーム系を一本、ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマークを使用した。また3DMark/Time Spyは、dGPUに加えiGPUも測定。

 各ベンチマークテストのスコアは全体的に高く、3DMark/Time SpyではdGPU vs iGPU/8,156 vs 1,626と、約5倍の差が付いている。さすがにこれだけ違うと、3DMark系だけでなく、PCMark系のスコアにもそれなりに影響する。

 ファイナルファンタジーのベンチマークテストは今回初めて使ったが、測定中の画面は非常に滑らか。筆者は過去データを持っていないので、編集担当に確認するとさすがのスコアということだった。

ベンチマーク結果
PCMark 10 v2.1.2574
PCMark 10 Score7,631
Essentials11,070
App Start-up Score15,213
Video Conferencing Score9,290
Web Browsing Score9,599
Productivity9,827
Spreadsheets Score11,776
Writing Score8,202
Digital Content Creation11,084
Photo Editing Score18,440
Rendering and Visualization Score13,536
Video Editting Score5,456
PCMark 8 v2.8.704
Home Accelarated 3.05,319
Creative Accelarated 3.06,172
Work Accelarated 2.05,693
Storage5,066
3DMark v2.24.7509
Time Spy8,156
Time Spy(iGPU)1,626
Fire Strike Ultra5,274
Fire Strike Extreme10,033
Fire Strike20,829
Sky Diver50,151
Cloud Gate61,025
Ice Storm Extreme225,253
Ice Storm236,310
Cinebench R23
CPU13,573(4位)
CPU(Single Core)1,497(2位)
CrystalDiskMark 6.0.0
Q32T1 シーケンシャルリード2320.233 MB/s
Q32T1 シーケンシャルライト1953.037 MB/s
4K Q8T8 ランダムリード596.485 MB/s
4K Q8T8 ランダムライト1141.970 MB/s
4K Q32T1 ランダムリード585.864 MB/s
4K Q32T1 ランダムライト474.065 MB/s
4K Q1T1 ランダムリード46.240 MB/s
4K Q1T1 ランダムライト170.128 MB/s
ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク グラフィック設定のプリセット: 高品質(デスクトップPC)
スコア16647
平均フレームレート119.4961
最低フレームレート54
評価非常に快適
ローディングタイム:シーン#11.894sec
ローディングタイム:シーン#22.494sec
ローディングタイム:シーン#34.044sec
ローディングタイム:シーン#41.881sec
ローディングタイム:シーン#51.006sec
ローディングタイム:合計11.319sec

 以上のようにMINISFORUM「EliteMini HX90G」は、Ryzen 9 5900HX+Radeon RX 6600Mをコンパクトな筐体に収めたデスクトップPCだ。dGPUなしでも最強に近かったのに、Radeon RX 6600M搭載でベンチマークテストの結果から分かるように爆速のミニPCとなった。価格も13万1,880円(ベアボーン)からと構成を考えれば手頃。今なら20%オフで予約できる。

 特に欠点らしいものもなく、このサイズ感と爆速に興味を持った人に是非使って欲しい1台だ。