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必見!コンパクトなゲーミングPCの作り方。小さくてもRTX 3060が積めるとっておきの構成
2022年11月9日 06:11
eスポーツの盛り上がり、コロナでの巣ごもり需要、いつまで経っても手に入りにくいPS5などなど、さまざまな状況が絡み合って“ゲーミングPC”の注目度が上がっている。Call of Duty: Modern Warfare 2など2022年末発売のビックタイトルが登場する今は、ゲーミングPCを自作するのにナイスなタイミングだ。しかし、悩ましいのが設置スペース。高性能なゲーミングPCは欲しいが、ごついデスクトップPCを部屋に置きたくないという人もいるだろう。
ただ、あまりに小型なゲーミングPCを目指すとサイズの問題からパーツの選択肢が狭まり、組み立ての難易度も大きくアップしてしまう。そこで、ここでは小型ながらも組み立てやすく、見た目にもこだわりながら、価格も高くなりすぎないという、なんともワガママな要望に可能な限り答えるゲーミングPC自作プランを考えていきたい。
(1) 小型ゲーミングPCを構成するパーツ
(2) 一部のケーブル以外はラクラク組み立て
(3) CPUとGPUの温度をチェック
(4) ゲームはどこまでフレームレートが出る?
(5) CPUとビデオカードを変更してみる
(6) 小さめゲーミングPCを求めるならピッタリのプラン
小型ゲーミングPCを構成するパーツ
まずは基本方針をまとめよう。小型ゲーミングPCを目指すので、当然PCケースやマザーボードはMini-ITXサイズから選ぶことになる。Mini-ITXは、170×170mm(幅×奥行き)と定められたマザーボードの規格。ATX規格の305×244mmに比べるとかなり小さく、小型PC自作の強い味方と言える。
ビデオカードはゲーミングPCの心臓部と言えるだけに、高価になりすぎないのが目標とは言え、一番予算を割きたいところ。そのため、ミドルレンジから選ぶことにする。
PCケースは、小型なMini-ITX規格ながらもパーツを組み込みやすい構造、ある程度の拡張性を確保、見た目にもオシャレというものからチョイスしたい。そして、その条件を満たせるプランとして考えたのが以下の構成だ。
メーカー名・製品名 | 実売価格 | |
---|---|---|
CPU | Core i3-12100F (4コア8スレッド) | 1万6,000円前後 |
マザーボード | ASRock B660M-ITX/ac (Intel B660、Mini-ITX) | 2万3,000円前後 |
メモリ | Micron Crucial CT2K8G4DFRA32A (DDR4-3200 8GB×2) | 6,500円前後 |
ビデオカード | Gainward GeForce RTX 3060 Ghost (GeForce RTX 3060) | 5万4,000円前後 |
ストレージ | Western Digital WD Green SN350 NVMe SSD WDS200T3G0C (PCI Express 3.0 x4、2TB) | 2万3,000円前後 |
CPUクーラー | CPU付属 | - |
PCケース | darkFlash DLH21 (Mini-ITX) | 1万1,000円前後 |
電源ユニット | Cooler Master V SFX Gold 650W (650W、80PLUS Gold) | 1万9,000円前後 |
合計 | 15万2,500円前後 |
CPUは、第12世代の「Core i3-12100F」を選択した。GPUを内蔵していない「F」型番ということもあり、4コア8スレッドで1万6,000円前後と手頃な価格だ。4コアだと物足りないように思えるが、ミドルレンジのビデオカードと組み合わせてゲームをプレイするなら十分な性能がある。
というのも、ミドルレンジのビデオカードでは、CPU性能がゲームのフレームレートに影響する前に、ビデオカード側の性能限界に到達してしまうケースが多いからだ。Core i5-12400Fに変えた場合のベンチマーク結果もあとに掲載しているが、結果がほとんど変わらないことからも明らかだ。ただ、CGレンダリングやエンコードなどCPUパワーの影響が大きい処理では、コア数が多いCPUのほうがもちろん有利になる。
マザーボードは、Core i3-12100Fに対応するMini-ITXサイズで価格も手頃なASRockの「ASRock B660M-ITX/ac」を選んだ。シンプルな作りだが、無線LANやPCケースのフロント用USB Type-Cコネクタ、アドレサブルRGB LED端子を用意するなど、現在求められる機能を一通り備えているのがポイントだ。M.2スロットにヒートシンクがないのが惜しいくらいだろう。
ゲーミングPCで重要となるビデオカードは、NVIDIAのミドルレンジGPU「GeForce RTX 3060」を搭載するGainwardの「GeForce RTX 3060 Ghost」を選んだ。RTX 3060として平均的な価格、2ファン仕様で2スロット厚と冷却性能と取り回しやすさのバランスがよいのが選択理由だ。
RTX 3060であれば、フルHD(1,920×1,080ドット)なら高フレームレートが出せて、WQHD(2,560×1,440ドット)までは重量級と呼ばれる描画負荷の高いゲームも遊べるパワーがある。その実力は後述するベンチマークで確認してほしい。
小型ゲーミングPCとして、最大のポイントになるのがPCケースだろう。現在Mini-ITX対応のPCケースは数多く存在するが、今回はdarkFlashの「DLH21」を選択した。
それほど小型ではないが、カード長32cm、2スロット厚までのビデオカードを搭載でき、側面、天面とほとんどのパネルを取り外しが可能とパーツを組み込みやすいのが特徴。インテリアっぽいキューブ型のデザインもナイスだ。
土台の部分にLEDが内蔵されているので、ゲーミングPCっぽい演出も楽しめる。2.5/3.5インチのドライブベイもあり、大容量ストレージを搭載できる拡張性があるのもポイントだ。
そのほか、メモリはDDR4-3200の8GB×2枚のセットで合計16GBとゲームをプレイするのに十分な容量を確保。
SSDはゲーム1本で100GBを超えることも珍しくなくなった現状を考えてWestern Digitalの「WD Green SN350」から2TBモデルを選択。コスパを重視したエントリークラスのNVMe SSDで、公称のシーケンシャルリードで3,200MB/sと速度はそこそこだが、その分発熱が小さく、M.2スロットにヒートシンクを備えていないマザーボードと組み合わせるにはちょうどよいと言える。
電源は、PCケースがSFX対応なので、Cooler Masterの「V SFX Gold 650W」をチョイスした。RTX 3060の推奨電源は550W以上なので、余裕を見て660W出力を選んでいる。
一部のケーブル以外はラクラク組み立て
パーツが決まれば次は組み立てとなるが、PCケースのDLH21はほとんどのパネルを外せるので、小型ながらパーツは組み込みやすい。
マザーボードにCPU、CPUクーラー、メモリ、SSDを装着してPCケースに固定。電源ユニットをPCケースに取り付け、電源やUSB、スイッチ類など各種ケーブルをマザーボードに接続し、最後はビデオカードを取り付ければOKだ。一度でも自作を経験したことがあれば、組み立てで困るところはほとんどないだろう。
組み上がったところで、あとはOSインストールと各種ドライバの導入を済ませれば使うための準備は完了だ。
CPUとGPUの温度をチェック
次は性能チェックといこう。まずは定番のPCの基本性能を測る「PCMark 10」、3D性能を測る「3DMark」、ストレージの速度を測る「CrystalDiskMark」を実行しよう。
比較対象がないので分かりにくいが、スペック通りの性能が出ていると言ってよい。Mini-ITXケースにリテールのCPUクーラー、それでPCケースのファンは天面に9cm角ファンが1基だけ。しかも、NVMe SSDにはヒートシンクなしでむき出しの状態で運用と冷却面で不安に感じる部分はあるだろう。
そこでOS起動10分後をアイドル時、3DMarkのStreet Test(Time Spy)を10分間実行したときを高負荷時として、CPUとGPUの温度をモニタリングアプリの「HWiNFO Pro」でチェックしてみた。
高負荷時でもCPUは69℃、GPUは75.9℃まったく心配のいらない温度だ。PCケースのDLH21はパネルがメッシュ構造で空気が通りやすく、今回の構成ならエアフローは十分確保されていると言える。その分、静音性は高くはないが……。
SSDに関してもOS起動10分後、CrystalDiskMarkを3回連続実行した時の温度を「HWiNFO Pro」でチェックしてみた。
CrystalDiskMark3回目でも最大64℃までしか上がっていない。データ転送速度も1回目、2回目、3回目とも誤差レベルしか変わっておらず、ヒートシンクがない状態でも問題なく運用できている。エントリークラスのNVMe SSDは速度はそれほど高くは分、温度も上がりにくいという点では使い勝手がよい。
ゲームはどこまでフレームレートが出る?
次は実ゲームを試そう。タイトルとテスト条件は以下の通りだ。Marvel's Spider-Man Remasteredとサイバーパンク2077に関してはレイトレーシングを無効/有効にした状態それぞれを試している。
レインボーシックス シージは4Kでも平均97fpsと十分快適にプレイできるフレームレートが出ている。フルHDなら平均319fpsと高リフレッシュレートのゲーミングモニターの性能を十分引き出せるだけのフレームレートだ。Apex Legendsは多少重くなるが、それでも4Kでほぼ平均60fpsを達成。フルHD(1,920×1,080ドット)、WQHD(2,560×1,440ドット)なら高いフレームレートを出している、
エルデンリングは最大60fpsまでしか出ないゲームだ。そのためフルHDなら、ほぼ最大fpsで動作できると言える。WQHDでも平均55.3fpsと十分プレイできるレベルだ。4Kだと平均34.3fpsとさすがに厳しくなる。
Marvel's Spider-Man Remasteredは美麗なグラフィックのアクションゲームだが、レイトレーシングを使わなければ、最高画質設定でもWQHDで平均95.8fpsと余裕で快適に遊べるだけのフレームレートを出せる。4Kでも平均51.4fpsとプレイは可能だが、このゲームはすばやい移動などでフレームレートが10~20fpsほどガクッと落ちる場面があるので、最高画質で遊びたいならWQHDまでがよいだろう。
また、レイトレーシングを有効にしても描画負荷を軽減するアップスケーラーのDLSSと組み合わせれば、WQHDで平均76.5fpsと快適に遊べるフレームレートを出せる。レイトレーシングも楽しめるだけのパワーが十分あると言ってよいだろう。RTXシリーズはDLSSが使えるのが大きな強みと言える。
サイバーパンク2077は2020年発売ながら、いまだにもっとも描画負荷の高いゲームと言われるほど。そのため画質設定が最上位の「ウルトラ」ではフルHDでようやく平均60fps以上に到達できる。
レイトレーシングを有効にすると、DLSSを活用しても平均57.14fpsとギリギリ平均60fpsに届かない。いかに重いゲームか分かる。今回のスペックではフルHDで遊ぶのがよいだろう。WQHDでプレイしたいなら、画質設定をワンランク下げる必要がある。
CPUとビデオカードを変更してみる
ここからは、パーツを買えた場合、どう性能が変わるか試していきたい。CPUをワンランク上のCore i5-12400F(6コア12スレッド)、GPUをワンランク下のGeForce RTX 3050を搭載したGainwardの「GeForce RTX 3050 Pegasus」に変更した場合の性能をチェックする。
メーカー名・製品名 | 実売価格 | |
---|---|---|
CPU | Core i5-12400F (6コア12スレッド) | 2万7,000円前後 |
マザーボード | ASRock B660M-ITX/ac (Intel B660、Mini-ITX) | 2万3,000円前後 |
メモリ | Micron Crucial CT2K8G4DFRA32A (DDR4-3200 8GB×2) | 6,500円前後 |
ビデオカード | Gainward GeForce RTX 3050 Pegasus (GeForce RTX 3050) | 4万3,000円前後 |
ストレージ | Western Digital WD Green SN350 NVMe SSD WDS200T3G0C (PCI Express 3.0 x4、2TB) | 2万3,000円前後 |
CPUクーラー | Thermaltake TOUGHAIR 110 (トップフロー、12cm角) | 5,000円前後 |
PCケース | darkFlash DLH21 (Mini-ITX) | 1万1,000円前後 |
電源ユニット | Cooler Master V SFX Gold 650W (650W、80PLUS Gold) | 1万9,000円前後 |
合計 | 15万5,500円前後 |
今回のプランであるCore i3-12100FとGeForce RTX 3060のほか、CPUをCore i5-12400Fに変えた場合、ビデオカードをGeForce RTX 3050に変えた場合、CPUとGPUの組み合わせをCore i5-12400FとGeForce RTX 3050に変更した場合の合計4パターンのベンチマーク結果を掲載する。タイトルはレインボーシックス シージとApex Legendsとサイバーパンク2077でテスト条件は上記と同じだ。
ビデオカードをGeForce RTX 3050に変更するとフレームレートはおおむね40%下がる。ビデオメモリの搭載量、CUDAコア数、メモリバス幅のすべてがRTX 3060のほうが上なので仕方がない部分ではある。ゲーミングPCとしてはRTX 3060を選びたいところだ。
そして注目がCPUを変えてもフレームレートにほぼ差がないこと。基本的なCPUパワーはもちろん6コア12スレッドのCore i5-12400Fのほうが上だが、ゲームにおいては前述した通り、CPU性能の差が出る前にビデオカードの性能限界にぶつかってしまうことが多い。もちろん、ハイエンドクラスのビデオカードを使う場合は性能を引き出すためにCPU性能も重要になるが、ミドルレンジではCore i3-12100Fで十分と言える。
参考までにCore i3-12400FとCore i5-12400FのCinebench R23の結果も掲載しておこう。CPUパワーの差は歴然だ。CGレンダリングや動画編集などCPUパワーが必要な用途でもPCを使おうと考えてるなら、上位のCPUを選ぶのはアリだ。
もう1つ、今回のプランではCPUクーラーはCPU付属のいわゆるリテールクーラーを使用しているが、これを交換した場合、温度や騒音がどう変わるのか試してみたい。PCケースのDLH21は、対応CPUクーラーは高さ134mmまでと大型の空冷クーラーは取り付けできない。
そこでチョイスしたのがThermaltakeのTOUGHAIR 110だ。高さ114mmとコンパクトながら、直径6mmのヒートパイプを4本備え、ヒートシンクもそこそこ大型とリテールクーラーよりは確実に冷えるはず。スペック上の動作音は23.6dBと非常に低く、静音性の向上も期待したいところだ。
温度と騒音はどう変化するだろうか。OS起動10分後をアイドル時、3DMarkのStreet Test(Time Spy)を10分間実行したときを高負荷時としてCPUの温度をモニタリングアプリの「HWiNFO Pro」、動作音をPCケースの前面から15cm離れた位置に騒音計を設置して計測した。
冷却力に関しては、さすがにTOUGHAIR 110のほうが上だ。アイドルで2℃、高負荷時でも9℃も温度が下がった。冷却力の強化にはCPUクーラーの交換は有効と言える、一方で動作音については、このケースは前面側にビデオカードがある構造なので、CPUクーラーを変更しても騒音に変化はなかった。
CPUクーラー自体の動作音は小さくなっている印象だが、ビデオカードは同じなので動作音が変わらないのは当然とは言える。ほぼ前面メッシュにケースなので、冷却性はよいが静音仕様ではない。しかしゲーミングPCなので、ヘッドフォンをしながらゲームをしていれば気にならないだろう。
小さめゲーミングPCを求めるならピッタリのプラン
今回のプランはMini-ITXケースとしては、それほど小さくはないが、それでもATXやmicroATXに比べればコンパクト。組み立ての難易度もそれほど高くはなく、自作PCの初心者でも挑戦しやすいプランになっていると思う。
IntelのCPUは第13世代Coreシリーズ、NVIDIAのGPUもRTX 40シリーズが登場しているが、どちらも上位モデルしか出ていない。ミドルレンジでは第12世代Coreシリーズ、RTX 30シリーズがまだまだ現役だ。小さめのゲーミングPCが欲しいと考えているなら参考になるのではないだろうか。