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サイズを超えた高性能を実現する小型PC「MINISFORUM Neptune HX99G」をテスト

MINISFORUM Neptune HX99G

 「Neptune HX99G」は、2.9Lサイズのコンパクトな筐体にRyzen 9 6900HXとRadeon RX 6600Mを搭載した、MINISFORUMの新作ミニPCだ。

 今回は、Neptune HX99Gの「16GBメモリ + 512GB SSD」モデルをテストする機会が得られたので、ミニPC用途で人気の高いデスクトップ向けAPU「Ryzen 7 5700G」との比較を通して、MINISFORUMの新作ミニPCの実力を確認してみよう。

高性能なCPU/GPUを搭載する縦置き対応ミニPC

 MINISFORUMのNeptune HX99Gは、2022年発売の従来モデル「HX90G」の筐体デザインを継承しつつ、CPUをZen 3+ベースの8コア/16スレッドAPU「Ryzen 9 6900HX」にアップグレードしたミニPCだ。

 Neptune HX99Gは、OSインストール済みの完成品PCのほか、メモリやSSD非搭載のベアボーンキットが用意されており、直販サイトでの販売価格はベアボーンキットが15万2,800円で、完成品PCでもっとも安価な16GBメモリ+512GB SSDモデルが17万9,800円。なお、記事執筆時点ではセール価格が適用されており、それぞれ11万6,980円と13万6,980円で販売されている。

【表1】Neptune HX99Gのスペック
OSWindows 11 Pro
CPURyzen 9 6900HX (8コア/16スレッド)
GPURadeon RX 6600M
メモリ16GB/32GB/64GB DDR5-4800
ストレージ256GB/512GB/1TB NVMe SSD (PCIe 4.0 x4)
無線機能Wi-Fi 6、Bluetooth 5.2
インターフェイス(前面)USB 3.2 Gen 1(Type-C)、USB 3.2 Gen 1(Type-A)、音声入出力
インターフェイス(背面)USB 3.2 Gen 2(Type-A×3基)、USB4(Type-C×2基)、HDMI 2.0(2基)、2.5GbE、電源入力
電源262W ACアダプタ
筐体サイズ(本体のみ)69.3×205×203mm
8コア/16スレッドCPUとRadeon RX 680Mを備えるAPU「Ryzen 9 6900HX」
RDNA 2ベースのモバイルGPU「Radeon RX 6600M」を搭載している

 Neptune HX99Gが採用する筐体のサイズは69.3×205×203mmの2.9Lサイズで、本体底面のゴム足を用いる横置きのほか、付属の専用スタンドを用いることで縦置きでの設置にも対応している。

 全面パネルインターフェイスには、電源スイッチやCMOSクリア用のリセットスイッチ、音声入出力のほか、USB 3.2 Gen 2対応のType-AポートとType-Cポートを各1基ずつ搭載。背面パネルには、8K/60Hz出力対応のUSB4を2基と、4K/60Hz出力対応のHDMI 2.0を2基、USB 3.2 Gen 2(Type-A)×3基、2.5GbE、電源入力端子を備えている。なお、付属のACアダプタは最大262Wの出力が可能な大容量品で、本体サイズも突起部を除いて約176×81×32mm(実測)と大型だ。

横置きで設置したNeptune HX99G
専用のスタンドで縦置きで設置したNeptune HX99G
本体前面。電源スイッチやリセットスイッチ、音声入出力のほか、USB 3.2 Gen 1対応のUSB Type-AとUSB Type-Cを1基ずつ搭載
本体背面。インターフェイスは、8K60Hz対応のUSB4(2基)、4K60Hz対応のHDMI 2.0(2基)、USB 3.2 Gen 2(3基)、2.5GbE、電源入出力
本体右側面(縦置き時)。中心部から広範囲に通気口が設けられており、横置き時には天面となる
本体左側面(縦置き時)。右側面と似たデザインのパネルだが通気口は設けられていない。また、横置き時には底面になるため、滑り止めのゴム足が配置されている
本体天面(縦置き時)。開口部の広い通気口が設けられており、横置き時は右側面となる
本体底面(縦置き時)。天面同様に通気口が設けられているほか、縦置きスタンドを固定するためのネジ穴が配置されている
付属のACアダプタ。262.2Wの出力が可能な大容量品だ
ACアダプタと本体と並べたところ。かなり大型のACアダプタを採用していることが分かる

 ベアボーンキットも用意されているNeptune HX99Gは、筐体の底面パネルとそのブラケットを取り外すことで内部にアクセスできる。底面パネルはスナップフィットとゴム足の下に隠されたネジで固定されているので、先にねじを取り外したあと、筐体と底面パネルを接合しているスナップフィットのツメを外す必要がある。

 底面パネルと、内部でパネルを保持しているブラケットを取り外すと、メモリスロットとM.2スロットにアクセスできる。DDR5 SODIMMに対応する2本のメモリスロットは最大64GB(32GB×2)に対応しており、2本のM.2スロットはM.2 2280サイズのPCIe 4.0対応SSDを搭載できる。

 今回の機材は16GBメモリ + 512GB SSDモデルなので、DDR5-4800動作の8GBメモリ×2枚と、512GBのM.2 SSDが最初から取り付けられている。

底面パネルを取り外したところ。内部には底面パネルを保持する金属製ブラケットがあるのでこれも取り外す
筐体内部。メモリスロットとSSD用のM.2スロットにアクセスできる
DDR5 SO-DIMMに対応したメモリスロットを2基搭載。最大で64GB(32GB×2)までのメモリを搭載可能
1本目のM.2スロット。M.2 2280サイズのSSDに対応しており、今回の機材では512GBのNVMe SSDが搭載されている
2本目のM.2スロット。こちらもM.2 2280サイズのSSDを搭載可能で、今回の機材では未使用となっていた

サイズを超えた高性能を実現するNeptune HX99G。小型PCの自作で人気のAPU「Ryzen 7 5700G」とパフォーマンスを比較

 ここからは、ベンチマークテストでNeptune HX99Gのパフォーマンスをチェックする。実施したベンチマークテストは、「Cinebench R23」、「Blender Benchmark」、「3DMark」、「PCMark 10」、「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」。

 Neptune HX99Gの比較機材には、8コア/16スレッドCPUとGPUコア「Radeon Graphics」を備えるAPU「Ryzen 7 5700G」を搭載したAMD X570環境を用意した。高性能なCPUと優秀な内蔵GPUの組み合わせによって、小型PCの自作でも人気の高いAPUとの比較を通して、Neptune HX99Gが実現するパフォーマンスを確認してみよう。

【表2】テスト条件
機材Neptune HX99G比較機材(Ryzen 7 5700G環境)
CPURyzen 9 6900HX (8コア/16スレッド)Ryzen 7 5700G (8コア/16スレッド)
マザーボードASUS TUF GAMING X570-PRO WIFI II
CPU電力/電流リミットPPT=54W、TDC=65A、EDC=140APPT=88W、TDC=65A、EDC=95A
CPU温度リミットTjMAX=100℃TjMAX=95℃
メモリ16GB DDR5-4800 (8GB×2)32GB DDR4-3200 (16GB×2)
dGPURadeon RX 6600M
iGPURadeon RX 680MRadeon Graphics
GPUドライバAdrenaline 22.11.2 (31.0.12029.10015)Adrenaline 22.11.2 (31.0.12029.10015)
Resizable BAR無効非対応
システム用SSD512GB NVMe SSD (PCIe 4.0 x4)CORSAIR MP600 1TB (PCIe 3.0 x4)
電源262W ACアダプタ1,200W電源 (80PLUS Platinum)
OSWindows 11 Pro 22H2 (build 22621.1105、VBS無効)Windows 11 Pro 22H2 (build 22621.1105、VBS無効)
電源プランバランスバランス
Zen 3ベースの8コア16スレッドCPUを備えるAPU「Ryzen 7 5700G」
Ryzen 7 5700GにはVegaベースの内蔵GPU「Radeon Graphics」が統合されている

Cinebench R23

 CPUの3DCGレンダリング性能を計測するCinebench R23では、CPUのマルチスレッド性能を計測するMulti Coreと、シングルスレッド性能を計測するSingle Coreを実行した。

 Neptune HX99GはMulti Coreで13,223、Single Coreで1,596を記録。Multi CoreではRyzen 7 5700Gを約5%下回ったが、Single Coreでは逆に8%上回っている。

【グラフ01】Cinebench R23 (R23.200)「Multi Core」
【グラフ02】Cinebench R23 (R23.200)「Single Core」

Blender Benchmark

 Blenderの公式ベンチマークソフトである「Blender Benchmark」では、CPUとGPUでそれぞれテストを実行した。

 CPUのマルチスレッド性能が問われるCPUテストでは、Neptune HX99GがRyzen 7 5700Gを2~3%という僅差で下回った。

【グラフ03】Blender Benchmark v3.1.0 (Blender v3.4.0)「CPU」

 GPUテストでは、Ryzen 7 5700Gの内蔵GPUであるRadeon Graphicsがテストを実行できなかったため、Neptune HX99GのRadeon RX 6600Mの結果のみでグラフを作成している。

 そのRadeon RX 6600Mが記録したパフォーマンスは、8コア16スレッドCPUを備えるRyzen 9 6900HXの4~5倍程度という圧倒的なものだ。Neptune HX99Gに搭載されたRadeon RX 6600Mが、クリエイティブシーンでも役立つものであることが確認できる結果だ。

【グラフ04】Blender Benchmark v3.1.0 (Blender v3.4.0)「GPU」

3DMark「CPU Profile」

 CPUの性能をスレッド数ごとに確認する3DMarkのCPU Profileでは、Neptune HX99GがRyzen 7 5700Gを2~4%上回った。

 Cinebench R23やBlender Benchmarkではマルチスレッド性能でRyzen 7 5700Gにやや遅れをとっていたNeptune HX99GのRyzen 9 6900HXがここで逆転したのは、もともと僅差であったことに加え、内蔵GPUに電力を配分した分だけRyzen 7 5700GのCPUがパワーダウンしたためであると考えられる。

【グラフ05】3DMark v2.25.8056「CPU Profile」

PCMark 10

 PCMark 10 Extendedの総合スコアは、9,282を記録したNeptune HX99Gが、5,535だったRyzen 7 5700G環境を68%も上回っている。

 CPU性能が重要なEssentialsやProductivityでは僅差の結果となっているが、GPU性能が影響するDigital Content CreationやGamingでは、Radeon RX 6600Mを搭載するNeptune HX99GがRyzen 7 5700G環境を圧倒しており、総合スコアの大差がGPU性能の差によって生じていることが伺える。

【グラフ06】PCMark 10 Extended (v2.1.2574)

3DMark

 3DMarkではCPU Profile以外にも、ゲーミング性能を計測する「Speed Way」、「Port Royal」、「Time Spy」、「Fire Strike」、「Wild Life」を実行した。

 なお、DirectX 12 Ultimate対応が必要なSpeed Wayと、DXR(DirectX Raytracing)対応が必要なPort Royalは、Ryzen 7 5700Gの内蔵GPUで実行できなかったため、Neptune HX99Gのスコアのみを掲載している。

 両環境でスコアが取得できているテストについては、いずれもNeptune HX99GがRyzen 7 5700G環境の5倍以上という圧倒的なスコアを記録している。実装面積や冷却面での制約が厳しいミニPCでありながら、外付けGPUであるRadeon RX 6600Mを搭載することで驚異的なGPU性能を実現していることが、Neptune HX99Gの強みであると分かる結果だ。

【グラフ07】3DMark v2.25.8056「Speed Way」
【グラフ08】3DMark v2.25.8056「Port Royal」
【グラフ09】3DMark v2.25.8056「Time Spy」
【グラフ10】3DMark v2.25.8056「Fire Strike」
【グラフ11】3DMark v2.25.8056「Wild Life」

ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク

 ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマークでは、描画品質を「最高品質」に設定して、フルHD~4Kまでの画面解像度でベンチマークテストを実行した。

 Neptune HX99Gは、フルHDで「15,984 (114.8fps)」、WQHDで「11,679 (80.5fps)」、4Kで「5,294 (36.2fps)」を記録。Ryzen 7 5700G環境を343~436%上回り、WQHDまでなら平均60fps以上が狙えるパフォーマンスを発揮した。

【グラフ12】ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク「スコア」
【グラフ13】ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク「平均フレームレート」

実際のゲームでも通用するゲーミング性能を発揮するNeptune HX99G

 ここからは、実際のゲームにおけるパフォーマンスを検証する。

 テストしたゲームは「エルデンリング」、「オーバーウォッチ 2」、「フォートナイト」、「モンスターハンターライズ:サンブレイク」の4本だ。

エルデンリング

 エルデンリングでは、グラフィックプリセットを「最高」に設定して、フルHD~4Kで平均フレームレートを計測した。上限フレームレートは60fps。

 Neptune HX99Gが記録した平均フレームレートは、フルHDで60.0fps、WQHDで53.6fps、4Kで30.7fps。Ryzen 7 5700Gを165~369%も上回っており、フルHDでは上限である60fpsを維持、WQHDでも十分にプレイ可能なパフォーマンスを発揮していた。

【グラフ14】オーバーウォッチ 2 (v2.1.2.0.107360)

モンスターハンターライズ:サンブレイク

 モンスターハンターライズ:サンブレイクでは、グラフィックプリセットを「高」に設定して、フルHD~4Kで平均フレームレートを計測した。

 Neptune HX99Gが記録した平均フレームレートは、フルHDで127.5fps、WQHDで90.7fps、4Kで44.0fps。比較環境のRyzen 7 5700Gを463~505%も上回っている。フルHDやWQHDでは60fpsを超える滑らかな映像でゲームを楽しむことが可能で、30fpsを基準とするのであれば4Kの高画質設定でもプレイできなくもないパフォーマンスだ。

【グラフ15】モンスターハンターライズ:サンブレイク (v13.0.0.1)

オーバーウォッチ 2

 オーバーウォッチ 2では、グラフィックプリセットを最高の「エピック」に設定して、フルHD~4Kで平均フレームレートを計測した。テスト時の上限フレームレートは600fps

 Neptune HX99Gが記録した平均フレームレートは、フルHDで214.6fps、WQHDで86.2fps、4Kで46.8fpsで、比較環境のRyzen 7 5700Gを476~489%上回った。

 平均フレームレートが60fpsを割り込む4Kはグラフィック品質を見直したいところだが、WQHD以下であれば最高画質設定でも60fpsを超えるフレームレートが期待でき、フルHDにすればかなりのハイフレームレートでオーバーウォッチ 2を楽しめる。

【グラフ16】オーバーウォッチ 2 (v2.2.1.0.108097)

フォートナイト

 フォートナイトでは、グラフィックプリセット「最高」をベースにNaniteとLumenを無効に設定して、フルHD~4Kで平均フレームレートを計測した。テスト時のグラフィックスAPIはDirectX 12。

 Neptune HX99Gが記録した平均フレームレートは、フルHDで108.6fps、WQHDで71.1fps、4Kで35.0fpsで、比較環境のRyzen 7 5700Gを320~357%上回った。

【グラフ17】フォートナイト (v23.20)

ミニPC筐体で本格的なゲーミング性能が得られるNeptune HX99G

 Neptune HX99Gが搭載するRyzen 9 6900HXとRadeon RX 6600Mは、それぞれ優れたCPU性能とGPU性能を提供しており、約2.9Lサイズというコンパクトな見た目から受ける印象より遥かにパワフルなPCだ。WQHD以下の画面解像度であれば高画質と滑らかなフレームレートの両立が可能なゲーミング性能も備えており、ゲーミングPCとしても十分以上に通用する実力を備えている。

 ゲームやクリエイティブで通用する性能を備えながらも高い省スペース性を実現したNeptune HX99Gは、大型のデスクトップPCを設置する場所の確保が難しいゲーマーやクリエイターに最適なPCの1つだ。コンパクトでパワフルなPCを探しているなら、Neptune HX99Gはぜひともチェックすべき1台である。