西川和久の不定期コラム

コンパクトな筐体にCore i5-11320H、2.5GbE×2を搭載したPC「MINISFORUM EliteMini TH50」

製品写真

 MINISFORUMは第11世代Core i5-11320Hを搭載した小型PC「MINISFORUM TH50」を3月10日から販売予定だ。以前Core i5-1135G7を搭載した「TL50」を試用しているだけに、その差に興味津々。一足先に試す機会に恵まれたのでレポートをお届けしたい。

「TH50」と「TL50」の違いは!?

 去年の6月に「TL50」の試用レポートを掲載している。搭載しているプロセッサは第11世代 Core i5-1135G7。cTDP-down 12W、up 28WでノートPCなどによく使われているSKUだ。

 これでも十分強力なのだが、今回ご紹介する「EliteMini TH50」に搭載しているプロセッサはCore i5-11320H。SKUにHが付くタイプで最大TDP 35W。つまり、前者よりもハイパワーで上位の位置付けとなる。その差がどの程度なのか後半のベンチマークテストで検証してみたい。主な仕様は以下の通り。

MINISFORUM「EliteMini TH50」の仕様
プロセッサCore i5-11320H(4コア8スレッド/2.5(TDP-down)~4.5GHz/キャッシュ 8MB/TDP-down 28W/TDP-up 35W)
メモリ16GB(オンボード/LPDDR4)
ストレージなし / M.2 2280 256GB / 512GB PCIe 3.0 SSD
OSWindows 10 Pro(64bit)
グラフィックスIntel Iris Xe Graphics/HDMI 2.0、DisplayPort、Thunderbolt 4
ネットワーク2.5Gigabit Ethernet×2、Wi-Fi 6、Bluetooth 5.2
インターフェイスThunderbolt 4、USB 2.0 Type-A×2、USB 3.1(Gen2) Type-A×4、音声入出力
その他拡張ストレージ: 2.5インチ×2 SATA SSD/HDD、VESAマウンタ
サイズ/重量149.6×149.6×55.5mm(幅×奥行き×高さ)/約820g
価格6万700円(ベアボーン/税込)から

 プロセッサは第11世代Tiger LakeのCore i5-11320H。4コア8スレッドでクロックは2.5(TDP-down)から最大4.5GHz。Core i5-1135G7が2.4GHz(TDP-up)から最大4.2GHzなので、本機の方が少し高クロックとなる。キャッシュは8MB、TDP-down 28W/TDP-up 35W。クロックが上がった分、TDP-up/downも上がっている。

 ストレージはなし、M.2 2280 PCIe 3.0 SSDの256GBもしくは512GB。OSはストレージ搭載モデルのみ64bit版Windows 10 Proとなっている。ビルド21H1だったので、その範囲でのUpdateを適応、評価した。もちろんWindows 11へのアップデートも可能だ。

 メモリはオンボードのLPDDR4で16GB。グラフィックスはプロセッサ内蔵Intel Iris Xe Graphics。外部出力用にHDMI 2.0、DisplayPort、Thunderbolt 4を備えている。最大出力解像度はそれぞれ、HDMI:4K@60Hz、DisplayPort:4K@60Hz、Thunderbolt 4:8K@60Hz。

 ネットワークは、2.5Gigabit Ethernet×2、Wi-Fi 6、Bluetooth 5.2。Gigabit Ethernetは2つとも2.5G対応でインテル製だ。全部入りの上に、2.5Gigabit Ethernet×2は、用途によってなかなか魅力的だと思われる。

 そのほかのインターフェイスは、Thunderbolt 4、USB 2.0 Type-A×2、USB 3.1(Gen2) Type-A×4、音声入出力。SDカードスロットはない。また拡張ストレージとして2.5インチ×2 SATA SSD/HDDを内蔵可能。VESAマウンタも付属する。この辺りはTL50と同じとなる。

 サイズは149.6×149.6×55.5mm(幅×奥行き×高さ)、重量約820g。TL50とサイズは同じだが重量が増えている。価格はストレージなしのベアボーンで6万700円。メモリ16GBは搭載済み、2.5Gigabit Ethernet×2と言うこともあり妥当なところではないだろうか。

前面。左から電源ボタン、音声入出力、USB 3.1(Gen2)Type-A×2、Thunderbolt 4
背面。左からUSB 2.0 Type-A×2、USB 3.1(Gen2)Type-A×2、2.5Gigabit Ethernet×2、DisplayPort、HDMI、ロックポート、電源入力(Type-C)
下。四隅にゴム足とVESAマウンタ用の凹み
内部と裏パネル。本体後ろにある白いコネクタ2つがSATA。裏パネルは付属のマウンタを使って2.5インチSSD/HDD 2台収納可能
付属品。ACアダプタ(サイズ69×67×30mm、重量210g、出力、19V/3.42A/64.98W)、電源ケーブル、ストレージマウンタ、VESAマウンタ、HDMIケーブル
iPhone 13 Pro Maxとの比較。IntelのNUCほどではないものの結構コンパクトだ
重量。実測で757g。仕様よりも少し軽い
BIOS / Main
BIOS / Boot
キーボード付きモバイルディスプレイとケーブル1本@Thunderbolt 4で接続可能

 筐体のサイズは149.6×149.6×55.5mm(幅×奥行き×高さ)とTL50と同じ。ただし後者が濃いグレーに対して本機は薄いグレーが主体となっている。重量は実測で757gと仕様より若干軽め。ACアダプタが210gと、合わせても1kgを切るため、要所要所にディスプレイとHIDがあれば、持ち歩くこと可能だ。大きさもiPhone 13 Proとの比較写真からも分かるように、Intel NUCほどではないもののコンパクトだ。

 前面は、左から電源ボタン、音声入出力、USB 3.1(Gen2)Type-A×2、Thunderbolt 4。背面は、左からUSB 2.0 Type-A×2、USB 3.1(Gen2)Type-A×2、2.5Gigabit Ethernet×2、DisplayPort、HDMI、ロックポート、電源入力(Type-C)を配置。SDカードロットがないのは惜しいところか。裏は四隅にゴム足とVESAマウンタ用の凹みがある。ネジ4本を外せば簡単に内部にアクセス可能だ。

 内部はプロセッサやメモリは見えず、M.2 SSDとSATA用の白いコネクタが2つ。付属のケーブルを使ってSSDなどへ接続、マウンタを使ってパネルの裏に2.5インチSSD/HDDを2台固定することができる。

 付属品は、ACアダプタ(サイズ69×67×30mm、重量210g、出力、19V/3.42A/64.98W)、電源ケーブル、ストレージマウンタ、VESAマウンタ、HDMIケーブル。DisplayPortケーブル、Type-C/Type-Cケーブルは付属しない。

 BIOSは起動時[Del]キーを押すと表示。Main/Securty/Boot/Save & Exitと一般的なものだ。

 本機はThunderbolt 4が前面パネルにあるため、以前ご紹介したキーボード付きモバイルディスプレイにType-C/Type-C一本でディスプレイ、キーボード、タッチパッドが機能し、なかなか使い勝手も良い。今回の評価はこの環境で行なった。

 ノイズや発熱は、ベンチマークテストなど負荷をかけた時、本体に耳を近づけるとファンの音がするが、少し離れれば気にならないレベル。発熱は、ほんのり暖かくなる程度でほとんどない感じだ。

 同社はこの手のPCを数多く出しており、完成度は結構高い。Windowsマシンはもちろん、2.5Gigabit Ethernet×2、M.2 SSDと2.5インチのストレージ2つ。サーバー的な用途でもなかなか面白そうなマシンと言えよう。

MINISFORUM「TL50」比較して全般的に少し高いスコア

 初期起動時、スタート画面はフルHDで1画面。特に追加されたグループなどはない。デスクトップもWindows標準のままだ。個人的にはこちらの方がスッキリしていて好印象。操作性はCore i5-11320H/16GB/高速なSSDと言うこともあり快適そのもの。

 ストレージはM.2 2280 PCIe 3.0 SSDの512GBの「KINGSTON OM8PDP3512B」。ここによると、仕様的にはM.2 PCIe Gen.3 NVMe 1.3となる。C:ドライブのみの1パーティションで約475GBが割り当てられ空き440GB。

 GbEはIntel Ethernet Controller I225-V×2、Wi-FiがMediaTek RZ608 Wi-Fi 6E、BluetoothもMediaTek RZ608となっている。

スタート画面(タブレットモード)。フルHDで1画面。特に追加されたグループなどはない
起動時のデスクトップはWindows標準
デバイスマネージャ/主要なデバイス。ストレージはM.2 2280 PCIe 3.0 SSDの512GBの「KINGSTON OM8PDP3512B」、GebはIntel Ethernet Controller I225-V×2、Wi-FiとBluetoothはMediaTek RZ608
ストレージのパーティション。C:ドライブのみの1パーティションで約475GBが割り当てられている

 ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、Cinebench R23、CrystalDiskMarkを使用した。参考までに前にご紹介したMINISFORUM「TL50」のスコアも掲載している。

 ご覧のように全般的に本機の方が高いスコアだ。特にDigital Content Creation系はそれなりの差がついている。またCrystalDiskMarkの結果を見ると、搭載しているSSDも本機の方が高速だ。クロックが2.5(TDP-down)から最大4.5GHzと、Core i5-1135G7の2.4GHz(TDP-up)から最大4.2GHzの差分性能アップと言ったところだろう。

TH50TL50(参考スコア)
PCMark 10 v2.1.2532PCMark 10 v2.1.2508
PCMark 10 Score4,9984,602
Essentials9,5109,190
App Start-up Score12,61711,700
Video Conferencing Score7,8437,721
Web Browsing Score8,6928,592
Productivity6,5736,245
Spreadsheets Score6,0405,622
Writing Score7,1556,938
Digital Content Creation5,4234,609
Photo Editing Score9,3316,739
Rendering and Visualization Score3,1752,916
Video Editting Score5,3864,983
PCMark 8 v2.8.704
Home Accelarated 3.04,4184,228
Creative Accelarated 3.04,9184,690
Work Accelarated 2.03,1153,004
Storage5,0614,973
3DMark v2.18.7185
Time Spy1,8231,532
Fire Strike Ultra1,2041,111
Fire Strike Extreme2,2362,096
Fire Strike4,5654,260
Sky Diver14,86413,533
Cloud Gate20,29419,261
Ice Storm Extreme74,56976,892
Ice Storm92,43591,058
Cinebench R23
CPU6,0065,498(9位)
CPU(Single Core)1,3571,363(3位)
CrystalDiskMark 6.0.0
Q32T1 シーケンシャルリード2,543.722 MB/s1,986.016 MB/s
Q32T1 シーケンシャルライト1,204.635 MB/s962.886 MB/s
4K Q8T8 ランダムリード859.163 MB/s306.388 MB/s
4K Q8T8 ランダムライト1,066.522 MB/s969.992 MB/s
4K Q32T1 ランダムリード706.631 MB/s298.721 MB/s
4K Q32T1 ランダムライト486.511 MB/s702.968 MB/s
4K Q1T1 ランダムリード62.135 MB/s49.044 MB/s
4K Q1T1 ランダムライト298.887 MB/s274.707 MB/s

 以上のようにMINISFORUM「EliteMini TH50」は、第11世代Tiger LakeのCore i5-11320H、メモリ16GB、ストレージ512GBを搭載し、サイズ149.6×149.6×55.5mm(幅×奥行き×高さ)のコンパクトなデスクトップPCだ。

 2.5Gigabit Ethernetを2つ、本体内に2.5インチSSD/HDDが2台内蔵可能と言った特徴を持つ。反面、メモリがオンボードで16GB固定という点が、用途によってはウィークポイントとなるだろうか。SDカードスロットがないのも残念。

 試用した範囲では特に気になることもなく、Tiger Lake-Hを満喫できるPCに仕上がっている。Core i5-1135G7よりも少しハイパワーなマシンを探しているユーザーに使って欲しい1台だ。