西川和久の不定期コラム

Ryzen 7とRadeon RX 5600M搭載のゲーミングノート「Dell G5 15スペシャルエディション」

 デルは5月22日、「ALIENWARE」および「Dell G」の15.6型/17.3型ゲーミングノートパソコン、4製品を発表した。少し時間が経ってしまったが、今回はそのなかから、「G5 15スペシャルエディション」の試用レポートをお届けしたい。

Ryzen 7 4800HとRadeon RX 5600Mに144Hz駆動のフルHDパネルを搭載

 「Dell G5 15」シリーズは、144Hz駆動の15.6型フルHD液晶ディスプレイを搭載したゲーミングノートPCだ。プロセッサの種類で、第10世代Core i搭載「Dell G5 15」と、第3世代Ryzen搭載「Dell G5 15スペシャルエディション」の2機種を用意している。

 それぞれ搭載しているdGPUも異なり、前者はGeForce GTX 1650 Tiから、後者はRadeon RX 5600M。ここまで違うと、共通しているのは筐体と144Hz駆動のパネル程度で中身は別製品と思った方がいいだろう。

 「Dell G5 15スペシャルエディション」は、Ryzen 5/7/9、ストレージ 512GB/1TB、メモリ8/16GBの選択が可能で、今回手元に届いたのはRyzen 7/16GB/512GBを搭載したモデルだ。おもな仕様は以下のとおり。

Dell「G5 15スペシャルエディション」の仕様
プロセッサRyzen 7 4800H(8コア16スレッド/2.9GHz~4.2GHz/L3 キャッシュ 8MB/TDP 45W)
メモリ16GB(8GB×2)/DDR4-3200MHz
ストレージM.2 NVMe SSD 512GB
OSWindows 10 Home(64bit)
ディスプレイ15.6型フルHD(1,980×1,080ドット)、非光沢、タッチ非対応、144Hz駆動
グラフィックスRadeon Graphics、Radeon RX 5600M/HDMI 2.0、Mini DisplayPort
ネットワークGigabit Ethernet、Wi-Fi 6対応、Bluetooth 5.1
インターフェイスUSB Type-C(DP Alt Modeのみ)、USB 3.0、USB 2.0、SDカードリーダ、Webカメラ、音声入出力
バッテリ容量51Wh
サイズ/重量365.5×254×21.6mm(幅×奥行き×高さ)/約2.5kg
価格16万6,980円(税別/送料込)

 プロセッサは第3世代Ryzen 7 4800H。8コア16スレッドでクロックは2.9GHzから最大4.2GHz。L2キャッシュ4MB/L3キャッシュ8MB、TDPは45W。メモリはDDR4-3200MHzの16GB(8GB×2)、ストレージはM.2 NVMe SSD 512GB。OSは64bit版Windows 10 Homeを搭載する。確認したところBuildは2004。最近このバージョンを搭載したモデルが増えてきているようだ。

 グラフィックスはプロセッサ内蔵のRadeon Graphics(コア7)と、Radeon RX 5600M。内蔵のiGPUでもそこそこ速いと定評のある第3世代Ryzenだが、dGPUを追加し、ゲーミング用として強化したかたちになっている。外部出力用にHDMI 2.0、Mini DisplayPortとUSB Type-C(DP Alt Modeのみ)を装備する。

 ディスプレイは非光沢のフルHD(1,980×1,080ドット)。タッチには非対応。144Hz駆動で画面表示の滑らかさが売りになっている。今年(2020年)はゲーミング向けでは、スマートフォンも含め高リフレッシュレートが流行りのようだ。

 ネットワークはGigabit Ethernet、Wi-Fi 6対応、Bluetooth 5.1。その他のインターフェイスは、USB Type-C(DP Alt Modeのみ)、USB 3.0、USB 2.0、SDカードリーダ、Webカメラ、音声入出力。

 サイズ365.5×254×21.6mm(幅×奥行き×高さ)、重量約2.5kg。51Whのバッテリを内蔵し、今回の構成で価格は16万6,980円(税別/送料込)。参考までにベーシックモデル(Ryzen 5 4600H/8GB/512GB)で14万4,980円(税別/送料込)、最大構成(Ryzen 9 4900H/16GB/1TB)で19万2,980円(税別/送料込)となる。内容を考慮すると妥当なところだろう。

前面。パネル中央上にWebカメラ。それほど狭額縁ではない
トップカバーはシルバー。後ろ側面左右に放熱用のスリット
左側面。電源入力、Mini DisplayPort、HDMI、USB 3.0、Gigabit Ethernet、Type-C。パネルの傾きはこれが最大
右側面。ロックポート、USB 2.0、USB 3.0、音声入出力、SDカードスロット
キーボードはテンキー付きのアイソレーションタイプ。タッチパッドは1枚プレート式
キーピッチは実測で約19mm
キーボードバックライト。オフ/2段階のバックライト搭載
裏。四隅にゴム足、手前左右のスリットにスピーカー。ヒンジ中央に小さくG5のロゴ
横から。それなりに厚みがある。若干手前に傾いているのがわかる
付属のACアダプタは約195×100×25mm(幅×奥行き×高さ)、重量767gとかなり大きめ。出力19.5V/12.31A

 筐体はトップカバーがシルバー、裏がグレー、ほかはブラック。ゲーミングPCと聞くと派手なイメージがあるものの、本機はどちらかといえば地味だ。またプラスティック素材が多く使われ、価格の割に高級感もさほどない。ただ同じコストならプロセッサなどパーツに比重を置いたと考えることもできる。15.6型で重量約2.5kgは重い方だろう。

 前面はパネル中央上に(仕様になかったが)Webカメラ。ご覧のようにそれほど狭額縁ではない。左側面に電源入力、Mini DisplayPort、HDMI、USB 3.0、Gigabit Ethernet、Type-C。右側面にロックポート、USB 2.0、USB 3.0、音声入出力、SDカードスロットを配置。裏は四隅にゴム足、手前左右のスリットにスピーカー。後ろのゴム足が若干高く、気持ちキーボード面が傾いている。ヒンジ中央に小さくG5のロゴ。付属のACアダプタは約195×100×205mm(幅×奥行き×高さ)、重量767gとかなり大きめ。出力19.5V/12.31A。

 15.6型のディスプレイは非光沢で長時間ゲームをしても目が疲れにくい。最大輝度は十分だが少し低めか。発色、コントラスト、視野角、色域はクラス相当と言ったところ。流石に144Hz駆動となると、目に見えて滑らかに表示しているのがわかる。少し気になったのは全面が真っ黒の時、左右下のフチ辺りに少しムラが出ていたこと。

 i1 Display Proを使い特性を測ったところ、最大輝度289cd/平方m。写真の鑑賞/編集で最適とされる標準の明るさ120cd/平方mは、最大から-3が140cd/平方m、-4が104cd/平方mとなったので前者で計測。黒色輝度は0.116cd/平方m。(目視できるかは別問題で)黒が浮く。リニアリティは、R、G、B個別で見ると直線的だが、各色揃っていない。輝度と同時に色温度を6500Kに補正しているが、補正前だとかなり青いっぽい感じだった。

測定結果1/白色点と黒色輝度
測定結果2/R・G・Bのリニアリティ

 キーボードは2段階のバックライト、そしてテンキーつきだ。ストロークは少し深めで打鍵感は柔らかい感じ。実測でキーピッチ19mmを確保。フットプリントに余裕があるため歪な並びもない。タッチパッドは1枚プレート式。パームレストも含め、十分な面積が確保され扱いやすい。なおオプションで英語4ゾーンRGBバックライトキーボードも選択できる。こちらであれば地味な感じも払拭できそうだ。

 ノイズや振動は試用した範囲では気にならないレベルだった。発熱はベンチマークテストなど負荷をかけると、キーボード上のスペース(特に右側)が熱を持つものの、パームレストまでは降りて来ないため大丈夫だ。

 サウンドは、スピーカーが左右側面、斜め下に向かってついているので、間接音と直接音が耳に届き、机など下の素材にはそれほど影響は受けない。パワーがあり、幅があるのでステレオ感も十分。(ノートパソコンとしてだが)低音もそこそこ出る。3DMarkのデモもなかなかいい感じだった。本機だけでも十分楽しめるだろう。

3DMarkはCore i7-10750H+GeForce RTX 2070 with Max-Q Designとほぼ互角のパフォーマンス

 初期起動時、スタート画面(タブレットモード)は1画面。Dellグループがプリインストールとなる。デスクトップは壁紙の変更のみとシンプルだ。構成が構成なだけに何をしても快適なのはいうまでもないだろう。

 ストレージはM.2 NVMe SSD 512GBの「PM991 NVMe Samsung」。仕様によるとSeq. Read 2,200MB/s、Seq. Write 1,200MB/s。CrystalDiskMarkのスコアもほぼそのまま出ている。C:ドライブのみの1パーティションで約460.89GB割り当てられ空き414GB。

 Gigabit EthernetはRealtek製、Wi-FiはKiller Control Centerで帯域コントロールの出来るKiller製、BluetoothはIntel製だ。Radeon Softwareによると、Radeon RX 5600MのメモリはGDDR6/6,128MB。

スタート画面(タブレットモード)。1画面。Dellグループがプリインストール
起動時のデスクトップ。壁紙の変更のみとシンプル
ストレージはM.2 NVMe SSD 512GBの「PM991 NVMe Samsung」。Gigabit EthernetはRealtek製、Wi-FiはKiller製、BluetoothはIntel製
ストレージのパーティション。C:ドライブのみの1パーティションで約460.89GBが割り当てられている
Radeon Software。Radeon RX 5600MのメモリはGDDR6/6,128MB(“表示内容を増やす”で確認)

 おもなプリインストールソフトウェアは、「Alienware Commad Center」、「Radeon Software」、「Dell Customer Connect」、「Dell Didital Delivery」、「Dell Mobile Connect」、「Dell Power Manager」、「Dell Update」、「Killer Control Center」、「マカフィーリブセーフ」、「My Dell」など。

 Alienware Commad Centerは、いわゆるゲーム向けのシステムチューンツールだが、積極的にクロックアップするような項目はなく、おもに、ファン、電源、サウンドの管理となっている。

Alienware Commad Center / Home
Alienware Commad Center / サーマルプロファイル
Alienware Commad Center / 電源管理
Alienware Commad Center / オーディオプロファイル
Killer Control Center
My Dell

 ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、CINEBENCH R20、CrystalDiskMark、PCMark 10/BATTERY/Modern Office。

 各スコアなかなかの値をたたき出している。ゲーミングノートパソコンとしてありがちな、第10世代CoreとRTX系と比較してどの程度のパフォーマンスかを調べるため、以前掲載したASUS「ROG Zephyrus M15 GU502」(Core i7-10750H+GeForce RTX 2070 with Max-Q Design)の3DMarkのスコアを併記した。ご覧のようのほぼ互角のスコアとなっているのが分かる。Ryzen 7 4800H+Radeon RX 5600Mのコンビネーションは、結構な性能と思っていいだろう。

 PCMark 10/BATTERY/Modern Officeは5時間19分(キーボードバックライトOFF。明るさ、バッテリモードなどはシステム標準)。ゲーミングノートPCも含め、最近のマシンとしては短い方となる。

PCMark 10 v2.1.2506
PCMark 10 Score5,513
Essentials9,009
App Start-up Score9,586
Video Conferencing Score8,982
Web Browsing Score8,495
Productivity6,457
Spreadsheets Score7,533
Writing Score5,536
Digital Content Creation7,819
Photo Editing Score13,193
Rendering and Visualization Score8,819
Video Editting Score4,109
PCMark 8 v2.8.704
Home Accelarated 3.04,989
Creative Accelarated 3.06,036
Work Accelarated 2.05,699
Storage5,034
3DMark
本機Core i7-10750H/GeForce RTX 2070 Max-Q(参考)
Time Spy6,2366,339
Fire Strike Ultra4,6584,099
Fire Strike Extreme8,1927,799
Fire Strike14,72514,802
Sky Diver32,21126,668
Cloud Gate35,60038,437
Ice Storm Extreme76,55463,292
Ice Storm75,65645,141
CINEBENCH R20
CPU4,213 pts(4位)
CPU(Single Core)478 pts(1位)
CrystalDiskMark 6.0.0
Q32T1 シーケンシャルリード2284.495 MB/s
Q32T1 シーケンシャルライト1218.188 MB/s
4K Q8T8 ランダムリード941.857 MB/s
4K Q8T8 ランダムライト956.844 MB/s
4K Q32T1 ランダムリード479.587 MB/s
4K Q32T1 ランダムライト418.876 MB/s
4K Q1T1 ランダムリード40.862 MB/s
4K Q1T1 ランダムライト90.573 MB/s

 以上のようにG5 15スペシャルエディションは、Ryzen 7 4800H、Radeon RX 5600M、メモリ16GB、ストレージSSD 512GB、そして144Hz駆動のフルHDパネルを搭載したゲーミングノートPCだ。

 ベンチマークテストの結果からもわかるように、第10世代Core i7+GeForce RTX 2070 with Max-Q Designと比較しても同レベルのパフォーマンスをたたき出す。予算に応じてRyzen 5/7/9、メモリ/ストレージ容量を選べるのも魅力的。

 筐体にもう少し高級感やゲーミングPCならではの派手さが欲しい点以外、仕様上、とくに気になる部分もなく、RyzenベースのゲーミングノートPCを探しているユーザーにお勧めしたい1台と言えよう。