西川和久の不定期コラム
約2万円のドンキ製14.1型ノートを検証。旧機種からメモリ倍増で一皮むけた使い勝手
2018年12月15日 11:00
ドン・キホーテは12月4日に、安価な14.1型ノートPC「MUGAストイックPC 2」を発表し、7日より販売を開始した。名前からもわかるように昨年からのモデルチェンジ版だ。編集部から実機が送られて来たので試用レポートをお届けしたい。
ドンキから3年連続登場の激安PC
ことのはじまりは、2016年11月に“市場最安値水準”を謳う約2万円の2in1を同社が投入したことからだ(ドンキ、“市場最安値水準”を謳う約2万円のWindows 10搭載10.1型2in1参照)。おもなスペックは、10.1型IPS式液晶で1,280×800ドット、Atom x5-Z8300、メモリ2GB、ストレージeMMC 32GB。当時はCherry Trail世代のプロセッサを搭載した安価なPCが5万円程度で出ていたが、この価格は群を抜いて安くかなり衝撃的だった。
第2弾は2017年11月で、今度は14.1型IPS式フルHD液晶(1,920×1,080ドット)のノートPCだ(ドンキ、税別19,800円で約1.2kgの軽量14.1型フルHDノート)。CPUは2016年モデルより気持ちパワーアップしたAtom x5-Z8350、メモリはこれまた2GBと少なく、microSDカードの対応も64GBまで。初代ほどのインパクトはなかったものの、約2万円で14.1型IPS式フルHDノートというのは、なかなか気合が入っている。
そして第3弾となる2018年版が、今回ご紹介する「MUGAストイックPC 2」だ。外観など基本的な部分はほとんど前世代のMUGAストイックPCと同じだが、メモリとmicroSD最大対応容量が倍増されている。おもな仕様は以下のとおり。
【表1】ドン・キホーテ「MUGAストイックPC 2」の仕様 | |
---|---|
プロセッサ | Atom x5-Z8350(4コア4スレッド/1.44~1.92GHz/キャッシュ2MB/SDP 2W) |
メモリ | LPDDR3 4GB |
ストレージ | eMMC 32GB |
OS | Windows 10 Home(64bit) |
ディスプレイ | 14.1型IPS式フルHD液晶(1,920×1,080ドット)、非光沢、タッチ非対応 |
グラフィックス | Intel HD Graphics |
ネットワーク | IEEE 802.11b/g/n無線LAN、Bluetooth 4.0 |
インターフェイス | USB 3.0、USB 2.0、Mini HDMI、30万画素Webカメラ、microSDカードスロット(最大128GB)、音声入出力 |
その他 | Kingsoft WPS Office付属 |
バッテリ駆動時間 | 約7時間(9,800mAh 3.8Vリチウムポリマー) |
本体サイズ | 約329×219×20mm(幅×奥行き×高さ) |
重量 | 約1.2kg |
税別価格 | 19,800円 |
プロセッサはCherry Trail世代の Atom x5-Z8350。4コア/4スレッドでクロックは1.44GHzから最大1.92GHz。キャッシュは2MB、SDPは2W。一時期はよく見たSKUだがさすがに最近は、Braswellを経てGemini Lake世代に置き換わっている。2018年ももう終わりを迎えるなか、「まだあるのか!?」と思わずにはいられないめずらしい存在と言える。
メモリはLPDDR3 4GB。PCMark 10のSystem Informationによると4GB×1の構成だ。昨年バージョンと最大の違いが2GBから4GBへとメモリを倍増したこととなる。今さら書くまでもないが、4GBあればとりあえずWindowsは普通に動く。
ストレージは32GBのeMMC。ここは変わらず。Windows Updateなどのファイルをまめに掃除しないと厳しい状態となりそうだ。eMMCなので遅いのは仕方ないとして、せめて64GBはほしかったところか。OSは64bit版のWindows 10 Homeを搭載している。
グラフィックスはプロセッサ内蔵Intel HD Graphics。外部出力用にMini HDMIを装備。ディスプレイは14.1型IPS式のフルHD液晶(1,920×1,080ドット)。非光沢でタッチには非対応。本機は低価格製品ながら、このパネルの搭載は非常に評価できる。写真の映りなど、後半で述べているとおり、価格を考えると十二分の品質だ。安価なモデルでTNパネルを使っている他社にはぜひ見習ってほしい部分と言えよう。
ネットワーク機能は、IEEE 802.11b/g/n対応無線LAN、Bluetooth 4.0。有線LANポートはない。そのほかのインターフェイスは、USB 2.0、USB 3.0、30万画素Webカメラ、microSDカードスロット(最大128GB)、音声入出力。
microSDカードの最大対応容量が64GBから128GBになったのも新モデルの特徴だ。メインのストレージが少ない分、こちらへデータを逃すことになるため、64GBか128GBかは意外と大きい差かもしれない。
本体サイズは約329×219×20mm(幅×奥行き×高さ)、重量約1.2kg。9,800mAhのリチウムポリマーバッテリを内蔵し、駆動時間は約7時間。オフィス向けソフトとしてKingsoft WPS Officeが付属しており、税別価格は19,800円となっている。
プロセッサパワーとストレージ容量は今時のものとしては貧相とはいえ、サイズ、重量、IPSパネルを考慮すると、モバイル用途での強みも持っている。したがって、使い方次第で評価は分かれると思われる。
筐体はパネル周り以外はオールシルバー。天板はロゴすらなくシンプル。重量は実測で1,254g、厚み20mmということもありそこそこスリムで価格からイメージするチープ感もさほどない。写真からもわかるようにデザインはスッキリしており、場所を選ばずに使えそうだ。
前面は、上中央にWebカメラ。正面と側面は鋭角でステータスLEDなどはない。左側面に電源入力、USB 3.0、Mini HDMI。右側面に音声入出力、USB 2.0、microSDカードリーダを配置。裏は手前左右のスリットにスピーカー。ゴム足は4つだが高さは同じでキーボード面は傾かず机とは水平となる。付属のACアダプタは、サイズが約50×45×22mm(幅×奥行き×高さ)、重量81gとかなりコンパクトだ。出力は5V/3A。
ディスプレイは非光沢の14.1型IPS液晶。同じIPS式でも10万円前後のノートPCと比較するのはさすがに無理があるものの、約2万円でこれだけのパネルなら十分。明るさ、コントラスト、発色、視野角すべて問題なし。輝度0%でも暗い室内であれば操作可能な明るさだ。
キーボードは10キーなしのアイソレーション式。キーピッチは主要キーで約19mm。普通に押しても中央がたわむのは残念だが、固めのクリック感で取り立てて悪い印象はない。左上にステータスLED、右上に電源ボタンがある。タッチパッドは1枚プレート型。パームレストも含め面積が確保されているのでスムーズに扱える。2016年モデルのときにあった反応が鈍い件も問題なし。
ノイズや振動は試用した範囲では皆無。発熱はベンチマークテストなど負荷をかけると、キーボード左上が少し熱を持つ程度で、手前など直接さわる部分は冷たいままだ。
サウンドはとりあえず鳴る程度かなと、あまり期待していなかったが、これが予想を超えて鳴りっぷりがいい。仕様上は1W×2とあるが、パワーもあり、薄型ノートっぽいシャリシャリした感じも少ない。パネルが綺麗でこれだけ音も出ると、本機だけでYouTubeなどは十分楽しめる。もともとこのような用途を狙っていたのかもしれない。
さて、価格を考えるとまずまずのドン・キホーテ「MUGAストイックPC 2」。もっとも気になるのはキーボードのレイアウトだろう。ここは昨年となにも変わっていない。スペースバーの右側に「ろ」および「む」キーがあり、この特異な配置が“変態キーボード”と言われる所以だ。
ただその分、[Enter]キー周辺の一般的にキーピッチがせまくなりがちなキーは、きちんと同じピッチが確保されている。考えてみればローマ字入力の場合、「ろ」と「む」キーはまず使わない(プログラミング用途を除く)。逆にその分、ほかが普通のキーのピッチを保っているので入力しやすく、これはこれで悪くないという考え方もある。
とはいえ、「無変換」、「変換」、「カタカナ/ひらがな」が左側のFnキーとのコンビネーションになっているので、これらのキーを使っている人は困るだろう。このキー配列が許容できるかどうかで評価は大きく分かれそうだ。
2018年登場モデルとしては性能は期待できない
OSは64bit版のWindows 10 Home。初回起動時のスタート画面(タブレットモード)は1画面。とくに追加されたグループやアプリなどはない。デスクトップは壁紙そのまま、WPS Officeのショートカットが左側に並んでいる。
CPUがAtom、メモリが4GB、ストレージがeMMCということもあり、Windowsの起動、アプリの起動、シャットダウン、どれをとっても2018年登場のモデルとしてはかなり遅い。Webブラウザなどは一度起動してしまえばそれなりに動くが、それでも描画に若干時間がかかるので快適とは言いにくい。参考までにGoogle Octane 2.0@Edgeのスコアは4,537。2017年年末から約1年。周りがずいぶん進化してしまったため、相対的に遅く感じるのは仕方ないところか。
ストレージは32GB eMMCの「SLD32G(メーカー不明)」。C:ドライブのみの1パーティションで約28GBが割り当てられ空きが15.2GBと、かなりギリギリ。Wi-FiとBluetoothはRealtek製だ。
プリインストールされているソフトウェアは、「Kingsoft WPS Office」のみ。ストレージ容量も少ないので必要最小限と言ったところ。
ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、CINEBENCH R15、CrystalDiskMark、BBenchを実行した。結果は以下のとおり。
【表2】MUGAストイックPC 2のベンチマーク結果 | |
---|---|
PCMark 10 v1.0.1457 | |
PCMark 10 Score | 827 |
Essentials | 2,407 |
App Start-up Score | 1,962 |
Video Conferencing Score | 3,108 |
Web Browsing Score | 2,289 |
Productivity | 1,111 |
Spreadsheets Score | 996 |
Writing Score | 1,241 |
Digital Content Creation | 575 |
Photo Editing Score | 720 |
Rendering and Visualization Score | 330 |
Video Editting Score | 801 |
PCMark 8 v2.8.704 | |
Home Accelarated 3.0 | 1,239 |
Creative Accelarated 3.0 | 1,352 |
Work Accelarated 2.0 | 1,042 |
Storage | n/a |
3DMark v2.4.4264 | |
Time Spy | n/a |
Fire Strike Ultra | n/a |
Fire Strike Extreme | n/a |
Fire Strike | 142 |
Sky Diver | 703 |
Cloud Gate | 1,335 |
Ice Storm Extreme | 10,673 |
Ice Storm | 15,506 |
CINEBENCH R15 | |
OpenGL | 8.95 fps |
CPU | 93 cb |
CPU(Single Core) | 28 cb |
CrystalDiskMark 6.0.0 | |
Q32T1 シーケンシャルリード | 124.9966 MB/s |
Q32T1 シーケンシャルライト | 66.053 MB/s |
4K Q8T8 ランダムリード | 20.724 MB/s |
4K Q8T8 ランダムライト | 11.907 MB/s |
4K Q32T1 ランダムリード | 23.992 MB/s |
4K Q32T1 ランダムライト | 13.055 MB/s |
4K Q1T1 ランダムリード | 13.028 MB/s |
4K Q1T1 ランダムライト | 9.840 MB/s |
BBench(ディスプレイの明るさ0%、電源モード:バッテリ節約機能) | |
バッテリ残量2%まで | 11時間57分37秒(仕様上約7時間) |
ここ最近のPCと比較すると、やはり低性能さは否めない。とにかくベンチマークテストのプログラム自体のインストール、ベンチマークテストの実行時間、なにを取っても時間がかかる。CINEBENCHのCPU(Single Core)などは、止まっているのかと思うほどだった。
ただ、バッテリ駆動時間は残2%で11時間57分37秒と仕様上の約7時間を大幅に上回っている。バックライト最小でも暗めの室内であれば見える明るさなので、ほぼ同程度は動くと思われる。これだけ動けば十分だろう。
もし来年(2019年)に第4弾が出るのであれば、さすがに今回の構成はアーキテクチャ的に古く、完全なるリニューアルをしているはずだ。どんな内容になるのか今から楽しみだったりする(笑)。できればIPS式液晶はそのまま、ストレージはeMMCでもいいので64GB化し、キーボードの配列も一般的なものに変えてほしいところか。
以上のようにドン・キホーテ「MUGAストイックPC 2」は、プロセッサにAtom x5-Z8350を搭載した14.1型IPS式フルHD液晶のノートPCだ。昨年のモデルと比較してメモリが倍増の4GBと、Windowsマシンとしては普通に使える性能になった。反面、ストレージはeMMCで変わらず32GB、そしてキーボードレイアウトもそのまま。ベンチマークテストの結果もかなり遅い。
しかし約2万円でこのパネル、筐体、重量なら、用途によって十分に役に立つだろう。とくに価格を考慮するとパネルが綺麗でサウンドもそれなり、Web中心でライトに、そして安くあげたいユーザーにとって、一度はさわってみる価値のあるマシンと言える。