西川和久の不定期コラム

Ryzen/GTX 1050搭載で約13万円の15.6型ノート「ASUS X570ZD」

X570ZD

 ASUSは10月3日、Ryzen MobileとGTX 1050を搭載する15.6型ノートPC「X570ZD」を発表した。ここでは、Ryzen 5搭載モデルの試用レポートをお届けしたい。

Ryzen 5 2500U、GeForce GTX 1050、M.2 SSD+HDD搭載の高性能ノートPC

 今回紹介するX570ZDは、Ryzen 7 2700UまたはRyzen 5 2500Uを搭載する15.6型ノートPCで、9月に発表されたTDP 45Wのモバイル向け「Ryzen 7 2800H」や「Ryzen 5 2600H」を搭載したノートPCではない。(AMD、TDP 45Wのモバイル向け「Ryzen 7 2800H」と「Ryzen 5 2600H」参照)。

 プロセッサの仕様的に後者のほうが高性能なのは間違いないものの、TDPが45Wと、昨今ノートPCの多くがTDP 15Wのプロセッサを採用していることを考えると、同レベルの筐体へまとめるのは難しく、TDP 15Wの前者のほうがこれまでどおりで作りやすい。

 その代わり、プロセッサ内蔵の「Radeon Vega 8 Graphics」だけでなく、ディスクリートGPUとしてPascalアーキテクチャの「GeForce GTX 1050」も搭載している。CUDAコア640、2GB GDDR5、メモリクロック7Gbps、ブーストクロック1,455MHzと、ノートPCに搭載するディスクリートGPUとしてはそれなりの性能だ。

 前述のとおり、XD570ZDには2種類のRyzenを搭載するモデルが用意されているが、手元に届いたのはRyzen 5 2500Uの下位モデルだ。おもな仕様は下表のようになっている。

【表】
ASUS「X570ZD」の仕様
プロセッサRyzen 5 2500U(4コア8スレッド/2GHz~3.6GHz/キャッシュ4MB/TDP 15W)
メモリDDR4-2400 8GB
ストレージSSD 256GB+HDD 1TB
OSWindows 10 Home
ディスプレイ15.6型フルHD(1,920×1,080ドット)、非光沢、タッチ非対応
グラフィックスRadeon Vega 8 Graphics、GeForce GTX 1050(メモリ2GB)
ネットワークGigabit Ethernet、IEEE 802.11ac対応
インターフェイスUSB 3.0×2(1基はType-C)、USB 2.0×2、HDMI、Bluetooth 4.1、30万画素Webカメラ、microSDXCスロット、指紋認証センサー(Windows Hello対応)、音声入出力
バッテリ駆動時間約6.4時間
サイズ/重量374.6×256×21.9mm(幅×奥行き×高さ)/約1.99kg
税別価格119,500円(税込129,060円)

 プロセッサのRyzen 5 2500Uは、4コア/8スレッドでクロックは2GHzから最大3.6GHz。キャッシュは4MBでTDPは15W。メモリはDDR4-2400の8GB。ストレージはSSD 256GBとHDD 1TBの2台構成となっている。OSは64bit版のWindows 10 Home。

 グラフィックス機能は先に書いたとおり、プロセッサ内蔵Radeon Vega 8 GraphicsとGeForce GTX 1050(メモリ2GB)。状態に応じてシームレスに切り替わる。外部出力用にHDMIを搭載。ディスプレイは非光沢の15.6型フルHD(1,920×1,080ドット)。タッチ操作には非対応だ。

 ネットワーク機能は、Gigabit Ethernet、IEEE 802.11ac無線LAN。そのほかのインターフェイスは、USB 3.0×2(1基はType-C)、USB 2.0×2、Bluetooth 4.1、30万画素Webカメラ、microSDXCスロット、指紋認証センサー、音声入出力。

 サイズは374.6×256×21.9mm(幅×奥行き×高さ)、重量約1.99kg。バッテリ駆動時間は約6.4時間。税別価格は119,500円。

 なお、上位モデルの構成は、Ryzen 7 2700U(4コア8スレッド/2.2GHz~3.8GHz/キャッシュ4MB/TDP 15W)、メモリ16GB、ほかは同じで税別価格は147,500円だ。

パネル中央上に30万画素Webカメラ。パネルは非光沢
ヘアラインは左右が斜め、中央は水平と、少し変わったデザインになっている。バッテリは内蔵式で着脱できない
ロックポート、USB 2.0×2、音声入出力。パネルはこの角度が最大
電源入力、Gigabit Ethernet、USB 3.0、HDMI、USB 3.0 Type-C、microSDXCスロット
裏面は手前左右のゴム足の横のメッシュがスピーカーがある。メモリなどにアクセスできる小パネルなどはない
キーボードはバックライト搭載10キー付きの日本語配列。タッチパッドはボタンのない1枚プレート型。右上に指紋認証センサーがある
キーピッチは実測で約19mm
キーボードのバックライトは4段階調整できる
ACアダプタのサイズは約160×75×250mm(同)、重量441gと大きく重い。出力は19V/6.32A
15.6型のわりには薄めの筐体。ロゴも含めグリーンがアクセントカラーになっている

 筐体は基本非金属で高級感はないものの、ブラックを主体としたカラーリングにグリーンのアクセント、天板は左右が斜めに中央が水平にと凝ったヘアラインなど、うまく工夫されてよい雰囲気を出している。15.6型で重量約2kgということもあり、持ち上げるとズッシリ重いが、用途的に屋内移動が主と思われるので、とくに問題ではないだろう。

 前面はパネル中央上に30万画素Webカメラ。左側面にロックポート、USB 2.0×2、音声入出力。右側面に電源入力、Gigabit Ethernet、USB 3.0、HDMI、USB 3.0 Type-C、microSDXCスロットを配置。裏は手前左右のゴム足の横のメッシュがスピーカー。メモリなどにアクセスできる小パネルなどはない。バッテリは内蔵式で着脱はできない。

 付属のACアダプタは約160×75×250mm(幅×奥行き×高さ)、重量441gと大きく重い。出力は19V/6.32A。

 15.6型のディスプレイは、非光沢で見やすく、明るさ、発色、コントラスト、視野角すべて良好だ。非光沢パネルの場合、原色系が地味になる傾向があるものの、本機は写真からもわかるように、原色系も派手に表示される。

 キーボードは、10キー付のアイソレーションタイプだ。主要キーのキーピッチは実測で約19mm。15.6型とフットプリントもあるため、とくにいびつな並びやピッチがせまくなっているキーもない。打鍵感は少しストロークが深めでクリック感があり、しっかり押せるタイプだ。

 加えて、4段階に調整できるバックライトも搭載。比較的暗い場所でも容易にタイピングできる。写真からもわかるように、キーボード面は机などとほぼ平行だ。できれば少し手前に傾いてほしいものの、この筐体では仕方ないところか。

 タッチパッドは物理的なボタンがない1枚プレート型だ。右上にWindows Hello対応の指紋認証センサーがある。パームレストも含め十分な面積が確保され扱いやすい。

 振動やノイズは試用した範囲では十分許容範囲に収まっていた。発熱はベンチマークテストなど負荷をかけると、キーボード上のメッシュの部分が若干熱を持つ。とはいえ、十分放熱できているのか、さほど温度も上がらず好印象だ。

 サウンドは、比較的低音も出るピラミッドバランスなのだが、抜けがイマイチで、パワーも不足。もう一歩がんばってほしいところ。

PCMark 8/10ではIntel Core i5-8250Uとほぼ同等の性能に加えdGPUで+α

 初回起動時のスタート画面(タブレットモード)は1画面。2つあるASUSグループがプリインストールされている。デスクトップは壁紙の変更とEdgeへのショートカット1つとシンプルだ。

 ストレージはC:ドライブがM.2 SSD 256GBのSanDisk「SD9SN8W256G」、D:ドライブがHDD 1TB/5,400rpm/128MBのSeagate「ST1000LM035」。ともに1パーティションで、C:ドライブは約237.92GBが割り当てられ空き206GB、D:ドライブは約931.51GBが割り当てられすべて空きとなっている。

 グラフィックス機能はデバイスマネージャーにRadeon Vega 8 Graphicsと、GeForce GTX 1050がともに見え、Optimus Technologyで状況に応じてシームレスに切り替わる(もしくはNVIDIAコントロールパネルを使いどちらか一方へ固定も可能)。Gigabit Ethernet、Wi-Fi、BluetoothはすべてRealtek製だ。

スタート画面(タブレットモード)。1画面。2つあるASUSグループがプリインストール
起動時のデスクトップ。壁紙の変更とEdgeへのショートカット1つ
デバイスマネージャー/主要なデバイス。M.2 SSD 256GBのSanDisk「SD9SN8W256G」、HDD 1TB/5,400rpm/128MBのSeagate「ST1000LM035」。Gigabit Ethernet、Wi-Fi、BluetoothはすべてRealtek製
ストレージのパーティション。C:ドライブは約237.92GB、D:ドライブは約931.51GBが割り当てられている
NVIDIAコントロールパネル

 プリインストールされているソフトウェアは、「マカフィーリブセーフ」、「i-フィルター6.0」、「ASUS Sync」や「Splendid」など同社おなじみのツール系、そしてNVIDIAなどのシステム系となる。

 ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、CINEBENCH R15、CrystalDiskMark、BBenchを実行した。

 また3DMarkに関してはNVIDIAコントロールパネルで自動切り替えではなく(ほかのテストは自動)、明示的にRadeon Vega 8 GraphicsとGeForce GTX 1050を切り替え、両方のスコアを掲載した。どの程度差があるのか目安となるだろう。

 結果は以下のとおり。

【表】X570ZDのベンチマーク結果
PCMark 10 v1.0.1457
PCMark 10 Score3,146
Essentials6,042
App Start-up Score5,795
Video Conferencing Score6,281
Web Browsing Score6,061
Productivity4,350
Spreadsheets Score5,768
Writing Score3,281
Digital Content Creation3,215
Photo Editing Score3,752
Rendering and Visualization Score3,580
Video Editting Score2,476
PCMark 8 v2.8.704
Home Accelarated 3.03,363
Creative Accelarated 3.04,042
Work Accelarated 2.04,196
Storage4,822
3DMark v2.4.4264
Radeon Vega 8 GraphicsGeForce GTX 1050
Time Spy4911,767
Fire Strike Ultra328539
Fire Strike Extreme6552,635
Fire Strike1,3945,312
Sky Diver5,38814,747
Cloud Gate7,50414,973
Ice Storm Extreme49,61352,961
Ice Storm61,69354,239
CINEBENCH R15
OpenGL61.05 fps
CPU639 cb
CPU(Single Core)136 cb
CrystalDiskMark 6.0.0
Q32T1 シーケンシャルリード421.135 MB/s
Q32T1 シーケンシャルライト476.336 MB/s
4K Q8T8 ランダムリード240.212 MB/s
4K Q8T8 ランダムライト207.162 MB/s
4K Q32T1 ランダムリード220.881 MB/s
4K Q32T1 ランダムライト194.842 MB/s
4K Q1T1 ランダムリード28.836 MB/s
4K Q1T1 ランダムライト69.298 MB/s
BBench(ディスプレイの明るさ0%、電源モード:バッテリー節約機能)
バッテリ残量5%まで6時間42分48秒(仕様上約6.4時間)

 前回 Core i5-8250U搭載ノートPCをご紹介しているが(FRONTIER「NSMシリーズ」参照)、PCMark 10、PCMark 8、CINEBENCH R15のCPUは多少おうとつはあるもののよく似たスコアだ。3DMarkとCINEBENCHのOpenGLはiGPUですら本機が勝っている。そう言った意味からコストパフォーマンスは高い。

 内蔵GPUとディスクリートGPUの差は高性能GPUが必要となるテストほど差が大きく、逆になんでも動作するIce Stormは逆転されているのがおもしろいところ。

 バッテリ残量5%まで6時間42分48秒。仕様上約6.4時間なので同じだった。ただ輝度0%は暗いので実際はもう少し短くなると思われるが、もともと15.6型で約2kgなので、屋内の移動が主。この程度の時間動けば問題にはならないだろう。


 以上のようにASUS「X570ZD」は、Ryzen 5 2500UとGeForce GTX 1050、メモリ8GB、M.2 SSD 256GB+HDD 1TBを搭載した15.6型フルHDノートPCだ。各種ベンチマークテストの結果からもわかるように十分以上の性能で、重いゲーム以外であれば、ストレスなく運用できる。

 ディスクリートGPU搭載で付属のACアダプタが大きく重いのは仕方ない部分であるが、それ以外、仕様上とくに気になるところもなく、おもに屋内使用で、10万円程度の高性能&大容量ノートPCを探しているユーザーにおすすめしたい1台と言えよう。