西川和久の不定期コラム
Gemini Lake世代のCeleronを搭載した「NEC VersaPro タイプVU」
~15秒の充電で約90分利用できるペンが付属
2018年8月31日 16:29
NECは7月25日、Apollo Lake世代のCeleronからGemini Lake世代のCeleronへ世代交代した「VersaPro タイプVU」を発表、8月7日より出荷を開始した。編集部から実機が送られて来たので、試用レポートをお届けしたい。
順当に世代交代した2in1
前モデルに相当する「VersaPro タイプVT」は2017年末にリリース。Apollo Lake世代のCeleron N3450/N3350を搭載し、メモリはLPDDR3の4GB、ストレージはeMMCだった。たまたま筆者がレビューしているので、興味のある方は文末のリンクを参照していただきたい。
対して今回ご紹介する「VersaPro タイプVU」は、Gemini Lake世代のN4100を搭載、前モデルは2コア2スレッド、本モデルは4コア4スレッドと、プロセッサの処理能力自体も向上。ニュース記事(NEC、3大キャリアのLTEに対応する10.1型着脱式2in1)によると「SYSmark 2014のOverall Ratingで47%性能が向上」とのこと。メモリは容量的に同じだがLPDDR4となり性能が向上している。
細かい変更点としては、映像出力がMicro HDMIからHDMIへ、キーボードドックのポート数を減らし軽量化、ドックは専用コネクタからUSB Type-Cへ……など使い勝手が良くなっている。スーパーキャパシタ採用のアクティブペンは従来とおり付属。15秒の充電で約50分から約90分へと駆動時間が伸びた。
これらを見るかぎり、順当な後継モデルと言えそうだが、従来のタイプVTはキーボードドックにGigabit Ethernet端子があり、別売りの拡張クレードルが用意されるなど、若干仕様が異なることから、こちらも併売される。おもな仕様は以下のとおり。
NEC「VersaPro タイプVU」の仕様 | |
---|---|
プロセッサ | Celeron N4100(4コア4スレッド/1.1~2.4GHz/キャッシュ4MB/TDP 6W) |
メモリ | LPDDR4 4GB(オンボード) |
ストレージ | eMMC 128GB |
OS | Windows 10 Pro(64bit) |
ディスプレイ | 10.1型IPS式1,920×1,200ドット、光沢あり、10点タッチ/デジタイザーペン対応 |
グラフィックス | Intel UHD Graphics 600/HDMI、USB 3.0 Type-C(最大3,840×2,160) |
ネットワーク | IEEE 802.11ac対応、Bluetooth 4.1 |
Nano SIMカードスロット(オプション) | LTE-CA:バンド1+18/バンド1+19/バンド1+21/バンド3+19 LTE:バンド1(2.0GHz)/バンド3(1.7GHz)/バンド18(800MHz)/バンド19(800MHz)/バンド21(1.5GHz) 3G:バンド1(2.0GHz)/バンド6(800MHz)/バンド19(800MHz) ※タイプVTはソフトバンクに非対応だったが、タイプVUはNTTドコモに対応済みで、auとソフトバンクについても対応可能で動作評価中 |
センサー | 指紋センサー、加速度センサー、近接センサー、ジャイロセンサー、デジタルコンパス、GPS(LTE搭載モデルのみ) |
インターフェイス(本体) | USB 3.0、USB 3.0 Type-C(Power Delivery対応)、microSDカードスロット、音声出力、192万画素前面カメラ、500万画素背面カメラ |
インターフェイス(キーボードドック) | USB 2.0×2 |
インターフェイス(ドック「PC-VP-TS35」) | DisplayPort×2、ミニD-Sub15ピン、USB 3.0×3、USB 2.0×2、Gigabit Ethernet、USB Type-C、音声入出力 |
バッテリ駆動時間 | 最大13.3時間 |
サイズ/重量 | 262×179×10.6mm(幅×奥行き×高さ)/約653g(本体)、約536g(キーボードドック) |
税別価格 | 107,000円から(ドック「PC-VP-TS35」は3万円) |
まず本体側から。プロセッサは先に書いたとおり、Gemini Lake世代のN4100。4コア4スレッドでクロックは1.10GHzから最大2.40GHz。キャッシュは4MB、TDPは6W。コア数だけ見ると、Apollo Lake世代のPentiumに匹敵する。メモリはオンボードのLPDDR4 4GB。ストレージはeMMCの128GB(64GBモデルもある)だ。OSは64bit版のWindows 10 Proを搭載している。
グラフィックスはプロセッサ内蔵Intel UHD Graphics 600。外出力用としてHDMIを装備する。加えてUSB 3.0 Type-Cからも出力可能だ。どちらも最大3,840×2,160ドットまで。ディスプレイは、光沢ありの10.1型IPS式1,920×1,200ドット。10点タッチおよびデジタイザーペン対応、スーパーキャパシタ搭載のアクティブペンが付属する。
ネットワークは、IEEE 802.11ac対応、Bluetooth 4.1。オプションでNano SIMも内蔵できる。対応バンドなどは表をご覧いただきたい。前モデルではNTTドコモのみだったが、本機はソフトバンクとauにも対応するSIMロックフリー機だ。
インターフェイスは、USB 3.0、USB 3.0 Type-C(Power Delivery対応)、Nano SIM(オプション)/microSDカードスロット、音声出力、192万画素前面カメラ、500万画素背面カメラ。センサーは、指紋センサー、加速度センサー、近接センサー、ジャイロセンサー、デジタルコンパス。GPSはLTE搭載モデルのみの対応となる。
サイズは262×179×10.6mm(幅×奥行き×高さ)、重量約653g(本体)。税別価格はキーボードドック、アクティブペン込みで107,000円から。
キーボードドックはサイズ262×186×6.6~20.2mm(同)、重量約536g。インターフェイスはUSB 2.0×2。前モデルよりポートの数は減ってしまったが、その分、重量は約649gから約536gへと軽くなった。
今回一緒に届いてないものの、ドック「PC-VP-TS35」はオプション。税別価格は3万円。本体との接続がUSB Type-Cと、前モデルの専用コネクタから変わっている。インターフェイスは、DisplayPort×2、ミニD-Sub15ピン、USB 3.0×3、USB 2.0×2、Gigabit Ethernet、USB Type-C、音声入出力と豊富だ。
筐体はパネルのフチとキートップの黒以外はメタリックで質感も良い。重量653gと軽めだが厚みが10.6mmあるので、持ったとき少しガッチリした印象を受ける。資料によると「耐150kgfクラス」の頑強設計&76cm落下テストを実施しているとのこと。安心して持ち運び可能だ。
前面はパネル中央上に92万画素前面カメラ、右側の指紋センサーはWindows Hello対応。背面は、中央上に500万画素背面カメラ、右上にペン収納/充電スペースがある。前面/背面のカメラは同社の顔認証ソフトウェア「NeoFace Monitor」に対応している。
左側面にロックポートとLスピーカー。下側面にキーボードドック用コネクタ。右側面に音量±ボタン、USB 3.0、音声入出力、Nano SIM(奥)/microSDカードスロット(手前)、HDMI、充電用を兼ねるUSB 3.0 Type-C、Rスピーカー。上側面に電源ボタンを配置。各インターフェイスは右側面に集中している。付属のType-C出力ACアダプタは、サイズ約90×39×28mm(同)、重量172g、出力20V/2.25A, 15V/3A, 9V/2A, 5V/2A。
10.1型のディスプレイは、明るさ、発色、コントラスト、視野角、タッチの反応などすべて良好。また指紋が付きにくいAF(Anti-Finger Print)コーティングが施されている。
付属のアクティブペンは、スムーズな反応。ただ一般的なボールペンなどと比較しても細めなので、少し書きにくい気がしないでもない。構造上、本体収納時、自動的に充電されるため、いざと言うときにバッテリ切れが発生せず、安心して使うことがでいる。
発熱はベンチマークテストなど負荷をかけると裏NECのロゴの上辺りが結構熱を持つ。サウンドは、10.1型の横幅にステレオスピーカーがあるので、ステレオ感はそれなりにあるものの、パワーがない。ただ基本的にビジネス用なので、これが問題になることもないだろう。
キーボードドックは、テンキーなしのアイソレーションタイプ85キーで、タッチパッドは1枚プレート型だ。仕様上、キーピッチ18.5mm、キーストローク1.8mm、またたわまないので、結構しっかり入力できる。
サイズがサイズなだけに、右側の一部、キーピッチが狭くなっているものの許容範囲だ。タッチパッドもフットプリントの割に面積があり扱いやすい。
パネルの傾きは、このタイプはあまり倒れないものが多いが、本機は扉の写真よりさらに傾き、角度面での不満はない。
本体と合体時、1kgを若干超えるが、あまりキーボード部分が軽いと、本体側が後ろに倒れてしまうので、キックスタンドなど支えるものがないこのタイプの2in1として仕方ないところか。
BBenchでなんとバッテリ駆動14時間!
OSは64bit版のWindows 10 Pro。初期起動時のスタート画面(タブレットモード)は1画面。NECグループにある2つのタイルがプリインストールとなる。デスクトップは壁紙の変更などもなくWindows 10標準のままだ。
4コア4スレッドでクロック1.10GHz~2.40GHz、メモリ4GBと言うこともあり、爆速ではないものの普通に操作できる。非力なものが多い10型クラスのタブレット(2in1)としては、悪くない。
ストレージはeMMC 128GBのSanDisk「DF4128」。C:ドライブのみの1パーティションで約115GB割り当てられ空き95.6GB。本機は基本ビジネス用なのでBitLockerが適応されているかと思ったが、届いた実機は普通のフォーマットだった(オプション対応)。Wi-FiとBluetoothはRealtek製だ。
プリインストールのアプリケーションは、「型番・製造番号表示ユーティリティ」、「バッテリ診断ツール」、「Realtek Audio Console」。型番・製造番号表示ユーティリティが業務用らしい。
SIMの設定に関してはWindows準拠だ。手持ちのNano SIM/OCNモバイルONEで試したところ問題なく接続できた。
ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、CINEBENCH R15、CrystalDiskMark、BBench。結果は以下のとおり。
【表】ベンチマーク結果 | |
---|---|
PCMark 10 v1.0.1457 | |
PCMark 10 Score | 1,508 |
Essentials | 3,921 |
App Start-up Score | 4,317 |
Video Conferencing Score | 4,401 |
Web Browsing Score | 3,173 |
Productivity | 2,649 |
Spreadsheets Score | 3,086 |
Writing Score | 2,275 |
Digital Content Creation | 898 |
Photo Editing Score | 987 |
Rendering and Visualization Score | 591 |
Video Editting Score | 1,245 |
PCMark 8 v2.8.704 | |
Home Accelarated 3.0 | 1,871 |
Creative Accelarated 3.0 | 2,134 |
Work Accelarated 2.0 | 2,872 |
Storage | 4,374 |
3DMark v2.4.4264 | |
Time Spy | n/a |
Fire Strike Ultra | n/a |
Fire Strike Extreme | n/a |
Fire Strike | 428 |
Sky Diver | 1,379 |
Cloud Gate | 3,212 |
Ice Storm Extreme | 14,598 |
Ice Storm | 26,199 |
CINEBENCH R15 | |
OpenGL | 14.45 fps |
CPU | 197 cb |
CPU(Single Core) | 58 cb |
CrystalDiskMark 6.0.0 | |
Q32T1 シーケンシャルリード | 171.749 MB/s |
Q32T1 シーケンシャルライト | 112.150 MB/s |
4K Q8T8 ランダムリード | 29.725 MB/s |
4K Q8T8 ランダムライト | 15.628 MB/s |
4K Q32T1 ランダムリード | 32.163 MB/s |
4K Q32T1 ランダムライト | 16.031 MB/s |
4K Q1T1 ランダムリード | 8.542 MB/s |
4K Q1T1 ランダムライト | 13.957 MB/s |
BBench(ディスプレイの明るさ0%、電源モード:バッテリー節約機能) | |
バッテリ残量5%まで | 14時間01分39秒 |
性能はGemini Lake世代とは言えCeleronでストレージがeMMCなので、スコア的にはクラス相応。ただ先に書いたように、普通に操作する分にはそれほど悪くない。参考までにGoogle Octane 2.0/Edgeは約12K。Surface Goが約11Kなのでほぼ同じ値となる。
バッテリ駆動時間は最大13.3時間だったが何と14時間を超えた。また輝度0%でも暗めの室内なら十分使える明るさなので、実務レベルでも12時間は行けそうだ。この手のモバイルデバイスとしては申し分のない性能と言えよう。
以上のようにNEC「VersaPro タイプVU」は、Gemini Lake世代のCeleron N4100、メモリ4GB、ストレージeMMC 128GB、10.1型IPS式1,920×1,200ドットのパネルを採用、アクティブペンにも対応した2in1だ。バッテリ駆動14時間は、この手のデバイスとしてうれしいところ。オプションであるが、USB Type-Cを使ったドックは豊富なポートで拡張性もあり、SIMロックフリーで3キャリア対応もポイントが高い。
キーボードドックと合体時に1kgを少し超えるのは残念だが、それ以外、仕様上とくに気になる部分もなく、国産で小型の2in1を探しているユーザー/企業にお勧めできる1台だ。