西川和久の不定期コラム

Gemini Lake世代のCeleronを搭載した「NEC VersaPro タイプVU」

~15秒の充電で約90分利用できるペンが付属

VersaPro タイプVU

 NECは7月25日、Apollo Lake世代のCeleronからGemini Lake世代のCeleronへ世代交代した「VersaPro タイプVU」を発表、8月7日より出荷を開始した。編集部から実機が送られて来たので、試用レポートをお届けしたい。

順当に世代交代した2in1

 前モデルに相当する「VersaPro タイプVT」は2017年末にリリース。Apollo Lake世代のCeleron N3450/N3350を搭載し、メモリはLPDDR3の4GB、ストレージはeMMCだった。たまたま筆者がレビューしているので、興味のある方は文末のリンクを参照していただきたい。

 対して今回ご紹介する「VersaPro タイプVU」は、Gemini Lake世代のN4100を搭載、前モデルは2コア2スレッド、本モデルは4コア4スレッドと、プロセッサの処理能力自体も向上。ニュース記事(NEC、3大キャリアのLTEに対応する10.1型着脱式2in1)によると「SYSmark 2014のOverall Ratingで47%性能が向上」とのこと。メモリは容量的に同じだがLPDDR4となり性能が向上している。

 細かい変更点としては、映像出力がMicro HDMIからHDMIへ、キーボードドックのポート数を減らし軽量化、ドックは専用コネクタからUSB Type-Cへ……など使い勝手が良くなっている。スーパーキャパシタ採用のアクティブペンは従来とおり付属。15秒の充電で約50分から約90分へと駆動時間が伸びた。

 これらを見るかぎり、順当な後継モデルと言えそうだが、従来のタイプVTはキーボードドックにGigabit Ethernet端子があり、別売りの拡張クレードルが用意されるなど、若干仕様が異なることから、こちらも併売される。おもな仕様は以下のとおり。

NEC「VersaPro タイプVU」の仕様
プロセッサCeleron N4100(4コア4スレッド/1.1~2.4GHz/キャッシュ4MB/TDP 6W)
メモリLPDDR4 4GB(オンボード)
ストレージeMMC 128GB
OSWindows 10 Pro(64bit)
ディスプレイ10.1型IPS式1,920×1,200ドット、光沢あり、10点タッチ/デジタイザーペン対応
グラフィックスIntel UHD Graphics 600/HDMI、USB 3.0 Type-C(最大3,840×2,160)
ネットワークIEEE 802.11ac対応、Bluetooth 4.1
Nano SIMカードスロット(オプション)LTE-CA:バンド1+18/バンド1+19/バンド1+21/バンド3+19
LTE:バンド1(2.0GHz)/バンド3(1.7GHz)/バンド18(800MHz)/バンド19(800MHz)/バンド21(1.5GHz)
3G:バンド1(2.0GHz)/バンド6(800MHz)/バンド19(800MHz)
※タイプVTはソフトバンクに非対応だったが、タイプVUはNTTドコモに対応済みで、auとソフトバンクについても対応可能で動作評価中
センサー指紋センサー、加速度センサー、近接センサー、ジャイロセンサー、デジタルコンパス、GPS(LTE搭載モデルのみ)
インターフェイス(本体)USB 3.0、USB 3.0 Type-C(Power Delivery対応)、microSDカードスロット、音声出力、192万画素前面カメラ、500万画素背面カメラ
インターフェイス(キーボードドック)USB 2.0×2
インターフェイス(ドック「PC-VP-TS35」)DisplayPort×2、ミニD-Sub15ピン、USB 3.0×3、USB 2.0×2、Gigabit Ethernet、USB Type-C、音声入出力
バッテリ駆動時間最大13.3時間
サイズ/重量262×179×10.6mm(幅×奥行き×高さ)/約653g(本体)、約536g(キーボードドック)
税別価格107,000円から(ドック「PC-VP-TS35」は3万円)

 まず本体側から。プロセッサは先に書いたとおり、Gemini Lake世代のN4100。4コア4スレッドでクロックは1.10GHzから最大2.40GHz。キャッシュは4MB、TDPは6W。コア数だけ見ると、Apollo Lake世代のPentiumに匹敵する。メモリはオンボードのLPDDR4 4GB。ストレージはeMMCの128GB(64GBモデルもある)だ。OSは64bit版のWindows 10 Proを搭載している。

 グラフィックスはプロセッサ内蔵Intel UHD Graphics 600。外出力用としてHDMIを装備する。加えてUSB 3.0 Type-Cからも出力可能だ。どちらも最大3,840×2,160ドットまで。ディスプレイは、光沢ありの10.1型IPS式1,920×1,200ドット。10点タッチおよびデジタイザーペン対応、スーパーキャパシタ搭載のアクティブペンが付属する。

 ネットワークは、IEEE 802.11ac対応、Bluetooth 4.1。オプションでNano SIMも内蔵できる。対応バンドなどは表をご覧いただきたい。前モデルではNTTドコモのみだったが、本機はソフトバンクとauにも対応するSIMロックフリー機だ。

 インターフェイスは、USB 3.0、USB 3.0 Type-C(Power Delivery対応)、Nano SIM(オプション)/microSDカードスロット、音声出力、192万画素前面カメラ、500万画素背面カメラ。センサーは、指紋センサー、加速度センサー、近接センサー、ジャイロセンサー、デジタルコンパス。GPSはLTE搭載モデルのみの対応となる。

 サイズは262×179×10.6mm(幅×奥行き×高さ)、重量約653g(本体)。税別価格はキーボードドック、アクティブペン込みで107,000円から。

前面。パネル中央上に92万画素前面カメラ、右側に指紋センサー
背面。中央上に500万画素背面カメラ、右上にペン収納/充電スペース
左/下側面。左側面にロックポートとLスピーカー。下側面にキーボードドック用コネクタ
右側面に音量±ボタン、USB 3.0、音声入出力、Nano SIM(奥)/microSDカードスロット(手前)、HDMI、USB 3.0 Type-C、Rスピーカー。上側面に電源ボタン
重量(本体)は実測で671g
付属のACアダプタなど。Type-C出力のACアダプタはサイズ約90×39×28mm(幅×奥行き×高さ)、重量172g、出力20V/2.25A, 15V/3A, 9V/2A, 5V/2A、マウス、USB接続Ethernetアダプタ、再セットアップ用USBメモリ

 キーボードドックはサイズ262×186×6.6~20.2mm(同)、重量約536g。インターフェイスはUSB 2.0×2。前モデルよりポートの数は減ってしまったが、その分、重量は約649gから約536gへと軽くなった。

 今回一緒に届いてないものの、ドック「PC-VP-TS35」はオプション。税別価格は3万円。本体との接続がUSB Type-Cと、前モデルの専用コネクタから変わっている。インターフェイスは、DisplayPort×2、ミニD-Sub15ピン、USB 3.0×3、USB 2.0×2、Gigabit Ethernet、USB Type-C、音声入出力と豊富だ。

キーボードドックはテンキーなしのアイソレーションタイプ85キー。タッチパッドは1枚プレート型。上部に本体接続用のコネクタ
キーピッチは実測で約18.5mm。仕様上のキーストローク1.8mm
閉じたところ。結構厚みがあるのは仕方ないところ
合体時斜め後ろから。キーボード側面、逆側の同じ位置にもう1つUSB 2.0がある
重量(キーボードドック)は実測で539g
アクティブペン使用中。ペンが細いので若干使いにくいものの、反応自体はスムーズ。ペンの上側に充電用の電極がある

 筐体はパネルのフチとキートップの黒以外はメタリックで質感も良い。重量653gと軽めだが厚みが10.6mmあるので、持ったとき少しガッチリした印象を受ける。資料によると「耐150kgfクラス」の頑強設計&76cm落下テストを実施しているとのこと。安心して持ち運び可能だ。

 前面はパネル中央上に92万画素前面カメラ、右側の指紋センサーはWindows Hello対応。背面は、中央上に500万画素背面カメラ、右上にペン収納/充電スペースがある。前面/背面のカメラは同社の顔認証ソフトウェア「NeoFace Monitor」に対応している。

 左側面にロックポートとLスピーカー。下側面にキーボードドック用コネクタ。右側面に音量±ボタン、USB 3.0、音声入出力、Nano SIM(奥)/microSDカードスロット(手前)、HDMI、充電用を兼ねるUSB 3.0 Type-C、Rスピーカー。上側面に電源ボタンを配置。各インターフェイスは右側面に集中している。付属のType-C出力ACアダプタは、サイズ約90×39×28mm(同)、重量172g、出力20V/2.25A, 15V/3A, 9V/2A, 5V/2A。

 10.1型のディスプレイは、明るさ、発色、コントラスト、視野角、タッチの反応などすべて良好。また指紋が付きにくいAF(Anti-Finger Print)コーティングが施されている。

 付属のアクティブペンは、スムーズな反応。ただ一般的なボールペンなどと比較しても細めなので、少し書きにくい気がしないでもない。構造上、本体収納時、自動的に充電されるため、いざと言うときにバッテリ切れが発生せず、安心して使うことがでいる。

 発熱はベンチマークテストなど負荷をかけると裏NECのロゴの上辺りが結構熱を持つ。サウンドは、10.1型の横幅にステレオスピーカーがあるので、ステレオ感はそれなりにあるものの、パワーがない。ただ基本的にビジネス用なので、これが問題になることもないだろう。

 キーボードドックは、テンキーなしのアイソレーションタイプ85キーで、タッチパッドは1枚プレート型だ。仕様上、キーピッチ18.5mm、キーストローク1.8mm、またたわまないので、結構しっかり入力できる。

 サイズがサイズなだけに、右側の一部、キーピッチが狭くなっているものの許容範囲だ。タッチパッドもフットプリントの割に面積があり扱いやすい。

 パネルの傾きは、このタイプはあまり倒れないものが多いが、本機は扉の写真よりさらに傾き、角度面での不満はない。

 本体と合体時、1kgを若干超えるが、あまりキーボード部分が軽いと、本体側が後ろに倒れてしまうので、キックスタンドなど支えるものがないこのタイプの2in1として仕方ないところか。

BBenchでなんとバッテリ駆動14時間!

 OSは64bit版のWindows 10 Pro。初期起動時のスタート画面(タブレットモード)は1画面。NECグループにある2つのタイルがプリインストールとなる。デスクトップは壁紙の変更などもなくWindows 10標準のままだ。

 4コア4スレッドでクロック1.10GHz~2.40GHz、メモリ4GBと言うこともあり、爆速ではないものの普通に操作できる。非力なものが多い10型クラスのタブレット(2in1)としては、悪くない。

 ストレージはeMMC 128GBのSanDisk「DF4128」。C:ドライブのみの1パーティションで約115GB割り当てられ空き95.6GB。本機は基本ビジネス用なのでBitLockerが適応されているかと思ったが、届いた実機は普通のフォーマットだった(オプション対応)。Wi-FiとBluetoothはRealtek製だ。

スタート画面(タブレットモード)。NECグループにある2つのタイルがプリインストール
起動時のデスクトップ。壁紙の変更などもなくWindows 10標準のまま
デバイスマネージャー/主要なデバイス。ストレージはeMMC 128GBのSanDisk「DF4128」。Wi-FiとBluetoothはRealtek製
ストレージのパーティション。C:ドライブのみの1パーティションで約115GBが割り当てられている

 プリインストールのアプリケーションは、「型番・製造番号表示ユーティリティ」、「バッテリ診断ツール」、「Realtek Audio Console」。型番・製造番号表示ユーティリティが業務用らしい。

 SIMの設定に関してはWindows準拠だ。手持ちのNano SIM/OCNモバイルONEで試したところ問題なく接続できた。

型番・製造番号表示ユーティリティ
バッテリ診断ツール
Realtek Audio Console
Windows標準のSIM設定

 ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、CINEBENCH R15、CrystalDiskMark、BBench。結果は以下のとおり。

【表】ベンチマーク結果
PCMark 10 v1.0.1457
PCMark 10 Score1,508
Essentials3,921
App Start-up Score4,317
Video Conferencing Score4,401
Web Browsing Score3,173
Productivity2,649
Spreadsheets Score3,086
Writing Score2,275
Digital Content Creation898
Photo Editing Score987
Rendering and Visualization Score591
Video Editting Score1,245
PCMark 8 v2.8.704
Home Accelarated 3.01,871
Creative Accelarated 3.02,134
Work Accelarated 2.02,872
Storage4,374
3DMark v2.4.4264
Time Spyn/a
Fire Strike Ultran/a
Fire Strike Extremen/a
Fire Strike428
Sky Diver1,379
Cloud Gate3,212
Ice Storm Extreme14,598
Ice Storm26,199
CINEBENCH R15
OpenGL14.45 fps
CPU197 cb
CPU(Single Core)58 cb
CrystalDiskMark 6.0.0
Q32T1 シーケンシャルリード171.749 MB/s
Q32T1 シーケンシャルライト112.150 MB/s
4K Q8T8 ランダムリード29.725 MB/s
4K Q8T8 ランダムライト15.628 MB/s
4K Q32T1 ランダムリード32.163 MB/s
4K Q32T1 ランダムライト16.031 MB/s
4K Q1T1 ランダムリード8.542 MB/s
4K Q1T1 ランダムライト13.957 MB/s
BBench(ディスプレイの明るさ0%、電源モード:バッテリー節約機能)
バッテリ残量5%まで14時間01分39秒

 性能はGemini Lake世代とは言えCeleronでストレージがeMMCなので、スコア的にはクラス相応。ただ先に書いたように、普通に操作する分にはそれほど悪くない。参考までにGoogle Octane 2.0/Edgeは約12K。Surface Goが約11Kなのでほぼ同じ値となる。

 バッテリ駆動時間は最大13.3時間だったが何と14時間を超えた。また輝度0%でも暗めの室内なら十分使える明るさなので、実務レベルでも12時間は行けそうだ。この手のモバイルデバイスとしては申し分のない性能と言えよう。

 以上のようにNEC「VersaPro タイプVU」は、Gemini Lake世代のCeleron N4100、メモリ4GB、ストレージeMMC 128GB、10.1型IPS式1,920×1,200ドットのパネルを採用、アクティブペンにも対応した2in1だ。バッテリ駆動14時間は、この手のデバイスとしてうれしいところ。オプションであるが、USB Type-Cを使ったドックは豊富なポートで拡張性もあり、SIMロックフリーで3キャリア対応もポイントが高い。

 キーボードドックと合体時に1kgを少し超えるのは残念だが、それ以外、仕様上とくに気になる部分もなく、国産で小型の2in1を探しているユーザー/企業にお勧めできる1台だ。