西川和久の不定期コラム

Celeron N3350搭載の10.1型2in1、NEC「VersaPro タイプVT」

~15秒充電で約50分使用可能なデジタイザペン付属

製品写真

 NECは11月6日、2016年に発表した「VersaPro タイプVT」の進化版を発表し、同月16日から販売を開始した。編集部から実機が送られてきたので、試用レポートをお届けしたい。

2016年モデルの進化版

 NEC「VersaPro タイプVT」は、10.1型の2in1 PC。最小構成はメモリ4GB、ストレージ64GB/eMMCという仕様からも分かるように、一般的にはエントリークラスとなるが、LTE対応も含め、オプションでいろいろなデバイスや機器が用意され、ビジネスで扱いやすいものに仕上がっている。

 そして今回、2017年モデルが発表された。2016年の同モデルは、プロセッサにAtom x7-Z8750を搭載していたのに対し、Celeron N3350へと気持ちパワーアップ。一番大きい変更点はこことなる。

 そのほかの細かい違いは、デジタイザペンの収納方式の変更とストラップ対応、およびペンがスーパーキャパシタによって15秒で約50分使用可能に。前面カメラの画素数アップ、オプションのキーボードドックの改良、キーボードドックと拡張クレードルのWake on LAN対応……といった部分に手が加わっている。最小構成の主な仕様は以下の通り。

モデルNEC「VersaPro タイプVT」
プロセッサCeleron N3350(2コア2スレッド、クロック 1.10GHz/2.40GHz、キャッシュ 2MB、TDP/SDP 6W/2W)
メモリ4GB/LPDDR3(オンボード)
ストレージeMMC 64GB
OSWindows 10 Pro(64bit)
グラフィックスプロセッサ内蔵Intel HD Graphics 500、Micro HDMI
ディスプレイ10.1型IPS式1,920×1,200ドット(光沢あり)/10点タッチ
ネットワークIEEE 802.11ac対応、Bluetooth 4.1
インターフェイスUSB 3.0×2、前面200万画素/背面500万画素カメラ、microSDカードスロット、音声入出力
センサー加速度、地磁気、ジャイロ、GPS(LTE搭載モデルのみ)
バッテリ駆動時間約11時間
そのほか充電式のデジタイザペン
本体サイズ/重量262×179.9×11.9mm(幅×奥行き×高さ)/約647g
税別価格114,400円(最小構成)より

 プロセッサは、Apollo Lake世代のCeleron N3350。2コア/2スレッドで、クロックは1.1GHzから最大2.4GHz。キャッシュは2MBで、TDP/SDPはそれぞれ6W/2Wとなる。

 メモリはオンボードのLPDDR3で4GB、ストレージはeMMCで64GB(今回届いたのは128GB)。OSは64bit版のWindows 10 Proを搭載している。

 グラフィクスは、プロセッサ内蔵Intel HD Graphics 500。外部出力用にMicro HDMIを備える。ディスプレイは光沢ありの10.1型IPS式1,920×1,200ドット。10点タッチとデジタイザペンに対応。

 ネットワークは、有線LANはなく、無線LANがIEEE 802.11ac対応。Bluetooth 4.1も搭載している。そのほかのインターフェイスは、USB 3.0×2、前面200万画素/背面500万画素Webカメラ、microSDカードスロット、音声入出力。

 また、冒頭に書いたように、スーパーキャパシタによって15秒で約50分使用可能なデジタイザペンが付属する。

 センサーは、加速度、地磁気、ジャイロ。GPSはLTE搭載モデルのみとなる。

 サイズは262×179.9×11.9mm(幅×奥行き×高さ)、重量約647g。バッテリ駆動時間は約11時間。

 この構成で、税別価格114,400円で、カスタマイズでeMMC 128GB、指紋センサー、LTE、Office Home & Business 2016なども選択できる。

 LTEに関しては、Nano SIMカードスロット(SIMロックフリー)、LTE-CAがバンド1+18/1+19/1+21/3+19、LTEがバンド1(2,000MHz)/3(1,700MHz)/18(800MHz)/19(800MHz)/21(1,500MHz)、3Gがバンド1(2,000MHz)/6(800MHz)/19(800MHz)となっている。

前面。パネル中央上に200万画素カメラ。右上に電源LED。下左右にある細いスリットにスピーカー
背面。中央上に背面カメラ。左にオプションの指紋センサー用凹み
左/下側面。左側面にロックポートと電源入力。下側面にDockコネクタ。結構厚みがあるのが分かる
右/上側面。右側面に電源ボタン、音量±ボタン、音声入出力、USB 3.0×2、microSDカードスロット、Micro HDMI。上側面にデジタイザペン収納場所。
重量(本体)。実測で649g
付属品など。ACアダプタのサイズは90×40×28mm(同)、重量174g、出力20V/2.25A。デジタイザペンは側面に電極があり、本体に収納すると充電される

 筐体は、前面から見る限りありがちな10.1型タブレットだ。ただ厚みが11.9mmもあるので、横から見るとそれなりにゴツイ感じがする。

 ただ、これはサイトによると“「耐150kgfクラス」の頑強設計&76cm落下テストを実施”とあるので、強度を保つには仕方ない部分だろうか。

 前面はフチが少し広めだ。パネル中央上に200万画素カメラ、右上辺りに電源LED、下左右の細いスリットにスピーカー。

 背面は中央上に背面カメラ。左にオプションの指紋センサー用凹みがある。

 左側面にロックポートと電源入力。右側面に電源ボタン、音量±ボタン、音声入出力、USB 3.0×2、microSDカードスロット、Micro HDMI。下側面にDockコネクタ。上側面にデジタイザペン収納場所を配置。

 なお、このデジタイザペン収納場所は、ペンの充電も兼ねている。付属のACアダプタのサイズは90×40×28mm(同)、重量174g、出力20V/2.25A。

 ディスプレイは10.1型のIPS。明るさ、コントラスト、発色、視野角全て問題ない。輝度最小でも、暗い室内なら十分見える。10点タッチも良好。また付属のデジタイザペンも、ストレスなく操作できる。

 さて、2016年モデルでは単6電池×1だったのに対して、「スーパーキャパシタによって15秒で約50分使用可能」なデジタイザペンのバッテリベンチマークテストをしたいところだが、充電時間の15秒は良いとして、その前に完全に放電する必要がある。

 考えた末、若干丈のある小物を本体の脇に置き、そこへ斜めにペンを固定、そのままペン先を画面に置くことにした(本体のディスプレイと電源は常時ONに設定)。

 この状態で反応しなくなるまで放電した後(夜セットして、朝起きた時には終わっていた)、15秒収納して充電。映画を観ながら適当にペンで落書きしていたところ、(大雑把であるが)確かに50分以上作動した。

 本体収納中は充電されるので、余程のことがない限り、バッテリ切れにはならなそうだ。加えて、2017年モデルではストラップが取付可能になっている。

 振動やノイズは皆無。発熱はベンチマークテストなど負荷をかけると熱を持つものの、普通の操作の範囲では主に右半分が暖かくなる程度だった。サウンドは、低音などは出ないが、パワーはビジネスモデルとしては鳴るほうだろうか。

 ここまでは本体側。以降はオプションのキーボードドックとクレードルとなる。

キーボードドック。テンキーなしのアイソレーションタイプ。Dockへの固定はコネクタも含む3つの凸と、本体も含めネオジム磁石
キーピッチ。実測で約18.5mm(仕様上はキーピッチ: 18.5mm、キーストローク: 1.8mm)。主に手前と右側のピッチが狭くなっている
閉じたところ。ソリッドな雰囲気でなかなかカッコいい。ただ少し厚みがある
合体時斜め後ろから。パネルの角度はこれが最大。後ろにUSB 3.0×2、HDMI、Ethernet、電源入力、ロックポート
キーボードドック合体時の重量。実測で1,291g
クレードル。キーボードドックと同じ3つの凸がある
クレードル合体時(裏から)。後ろにUSB 3.0×2、HDMI、Ethernet、電源入力、ロックポートと、キーボードドックと全く同じ並び
クレードルの重量。実測で412g
そのほか。VGA変換アダプタ、USB式マウス。ストラップは別売りで、今回は特別に一緒に送られてきた

 キーボードドックは、テンキーなしのアイソレーションタイプ。主に手前と右側のピッチ委が狭いものの、約18.5mm確保されている(仕様上はキーピッチ: 18.5mm、キーストローク: 1.8mm)。打鍵感は少し固めでクリック感があるだろうか。

 ドッキング用として、中央にコネクタ、左右に凸。加えて、本体側も含めネオジム磁石で固定されている。パネルの傾きは写真が最大となる。後ろにUSB 3.0×2、HDMI、Ethernet、電源入力、ロックポートを配置。有線LANはGigabit Ethernet対応だ。

 単独での重量は641g。本体と合わすと約1.3kg。10.1型の2in1としては、キーボードドックが軽いと、後ろに倒れてしまうこともあり、1kgを切らないのは残念だが、このタイプだと一般的な重量となる。

 クレードルは、色は違うがキーボードドックのキーボードがない状態と似ている。後ろの各コネクタの並びも同じ。単独での重量は412g。Ethernetはどちらも「Wake on LAN」対応だ。412gなので、一緒に持ち歩くとしても苦になるほどでもない。

Apollo LakeなCeleron/4GB/eMMC 128GBとしては一般的な性能

 OSは64bit版Windows 10 Pro。Apollo LakeなCeleron/4GB/eMMC 128GB構成なので、爆速ではないものの、一般的な操作やアプリであれば普通に使える環境だ。

 初期起動時のスタート画面(タブレットモード)は1画面。特に追加されたグループやライブタイルはない。デスクトップも、壁紙やショートカットの追加もなく、素のWindows 10そのもの。この辺りはビジネス用途っぽいところだ。

 ストレージはeMMC 128GBの「Toshiba 128G72」。Cドライブのみの1パーティションで、115.23GBが割り当てられ、空き約95.3GB。ビジネスモデルの割に、BitLockerによる暗号化は施されていない。

 Wi-FiとBluetoothはIntel製。またキーボードドックに接続した状態だったので、「Reltek USB GbE Family Controller」の項目も見える。これから分かるように、Gigabit EthernetはUSB 3.0接続となる。

スタート画面(タブレットモード)。Windows 10標準
起動時のデスクトップ。Windows 10標準
デバイスマネージャ/主要なデバイス。ストレージはeMMC 128GBの「Toshiba 128G72」。Wi-FiとBluetoothはIntel製。キーボードドックに接続した状態だったので、「Reltek USB GbE Family Controller」の項目も見える
eMMCのパーティション。Cドライブのみの1パーティションで115.23GBが割り当てられている

 インストール済のアプリケーションは「バッテリ診断ツール」のみ。ほかはシステム系のツール類となる。これもビジネスモデルならではだろう。

バッテリ診断ツール

 ベンチマークテストは、「winsat formal」コマンド、PCMark 8 バージョン2/Home(accelerated)、CrystalDiskMark、BBench。参考までにCrystalMark(2コア2スレッドで条件的に問題ない)のスコアも掲載した。

 winsat formalの結果は、総合 4。プロセッサ 5.9、メモリ 5.9、グラフィックス 4、ゲーム用グラフィックス n/a、プライマリハードディスク 6.75。64bitでメモリ4GBなので、リミッターがかかっている。バンド幅は9,163.51339MB/s。

 PCMark 8 バージョン2のHome(accelerated)は1,453。CrystalDiskMarkは、Seq Q32T1 Read 157.5/Write 91.36、4K Q32T1 Read 22.99/Write 31.56、Seq Read 240.2/Write 79.89、4K Read 16.88/Write 30.29(MB/s)。CrystalMarkは、ALU 18,411、FPU 16,098、MEM 19,217、HDD 24,374、GDI 4,325、D2D 1,723、OGL 3,354。

 Apollo LakeなIntel Celeron、メモリ4GB、eMMCのストレージとしては、クラス相応と言ったところか。

 BBenchは、バッテリー節約機能オン、バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、Wi-Fi/オン、Bluetooth/オンでの結果は、バッテリの残5%で45,424秒/12.6時間。仕様上、約11時間なので、1時間ほど超えているが、パネルの輝度を少し上げると同じになりそうだ。

winsat formalコマンドの実行結果。総合 4。プロセッサ 5.9、メモリ 5.9、グラフィックス 4、ゲーム用グラフィックス n/a、プライマリハードディスク 6.75
PCMark 8 バージョン2/Home(accelerated)。1,453
PCMark 8 バージョン2のHome(accelerated)/詳細。クロックは800MHz辺りから最大の2.4Hz。温度は約50℃から80℃近辺と結構幅がある
CrystalDiskMark。Seq Q32T1 Read 157.5/Write 91.36、4K Q32T1 Read 22.99/Write 31.56、Seq Read 240.2/Write 79.89、4K Read 16.88/Write 30.29(MB/s)
BBench。バッテリー節約機能オン、バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、Wi-Fi/オン、Bluetooth/オンでの結果は、バッテリの残5%で45,424秒/12.6時間
CrystalMark。ALU 18,411、FPU 16,098、MEM 19,217、HDD 24,374、GDI 4,325、D2D 1,723、OGL 3,354

 以上のように、NEC「VersaPro タイプVT」は、最小構成でApollo LakeなCeleron、メモリ4GB、eMMC 64GBを搭載した10.1型の2in1だ。スーパーキャパシタを内蔵したデジタイザペン、そしてオプションでキーボードドック、クレードルなど揃っているのは、さすがビジネス用といったところ。

 コンシューマ向け同クラスの2in1と比較して、価格が気になるものの、仕様的には問題なく、ビジネス用として、同社のサポートなども期待しつつ、オフィスや職場に導入したいユーザーの候補になる1台だろう。